各界で注目の俊英・松本花奈監督がthe peggiesのフロントマン北澤ゆうほと撮り上げた異色にして出色の青春ロードムービー「脱脱脱脱17」がユーロスペースにて9月2日から限定レイトショー公開されているが、9月10日上映後に松本監督と主要キャストが登壇するトークショーが行われた。
「脱脱脱脱17」は、松本花奈が当時17歳という若さで、脚本、編集、監督と全霊を込めて製作され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭等で上映され絶賛された作品。あの岩井俊二からも“事件だ”と称賛され、公開が待たれていた。また、現在the peggiesで本年5月にメジャーデビューし、同世代から支持を受けているガールズロックバンドのボーカル&ギターの北澤ゆうほが主演していることも注目されている作品となっている。
上映後のトークショーには、松本監督とリカコを演じた北澤ゆうほ、高校生活17年目のノブオを演じた鈴木理学、リカコの母親役を演じた三坂知絵子の4人が登壇すると、立ち見が出るほどの満員の劇場が大きな拍手で迎えられた。
冒頭、監督から2015年の夏と秋に撮影したことが伝えられた。楽しかったことを聞かれた鈴木は「熱海の別荘に最大30人くらいのキャスト、スタッフが滞在していたんですが、撮影後に一緒にご飯食べたり、寝たりしてたんです。撮影中はテキパキとしてたんですが、緊張感から解放されて、帰ったあとの部活感が楽しかったです。」と答えると、大変だったことを聞かれた北澤は「教室で泣かなければいけなかったシーンで、どうしても泣けなくて、どうしよう…どうしようと思った時に、先生役の方が肩をポンッと叩いてくれた安堵感からワァーと涙が出てきて、その瞬間、松本監督が“撮ろう!”って、カメラが動くっていう(笑)。あれが大変でした。」と初演技で苦労したことを披露した。初演技の北澤について、自分の演技ばかり気にしてきたという鈴木も、「やっと最近客観的に観れるようになってきて、“北澤ゆうほ”いいんじゃね、って思えるようになった」と絶賛していた。
母親役の三坂から松本監督に、「小説になる予定ないんですか?今、観て頂いた映画は108分ですが、入っていないシーンがモノすごくある!」と裏話を披露すると、松本監督が「本当は3時間45分あって(笑)」と暴露すると、キャストも大爆笑。台本も分厚かったようで、90分位の映画にしたいという監督の説明に、キャストも疑問を持っていたという。撮影はしたが、やむを得ずカットしたシーンを振り返り、完全版も上映できたらと話していたので、いつの日にかお披露目されることを期待したい。
本作はthe peggiesの楽曲が5曲使用されており、それがとても印象的に使われ、映画に彩りを与えている。その音楽について松本監督からこの映画のため、北澤につくってもらった曲が2曲あると説明があると、映画の重要なシーンであるストリップ劇場でリカコが唄う楽曲について北澤が「もともとは違う曲だったんですが、“花奈ちゃんのイメージするものと違うかもしれないから、こういう曲つくりませんか”という話をいただいて、なるほどと思い、歌詞から作りました。」と北澤自身もこの映画へアーティストとしても全力でかかわっていたエピソードを披露した。
トークも終盤となり、アコースティックギターが登場すると、北澤をステージに残し、監督、キャストは客席側へ。映画のエンディングで流れる楽曲『青春なんかに泣かされて』を弾き語りで披露。松本監督が北澤に出演交渉の際に見せた映画のプロットのタイトルだったものに、インスパイアを受けてかいた楽曲だ。映画で流れるバージョンもさることながら、このアコースティックバージョンもいい。シンプルなアコギにのる歌詞が響いてくる。楽曲には勢いを感じるが、青春時代に感じる何者でもない自分をそっと肯定してくれるような優しさが心に刺さってくる。そのパフォーマンスに会場も魅了された。
ミニライブが終了し、最後の挨拶で、松本監督は「この映画をつくってたくさんの出会いがあって、自分の人生にとっても宝物だなと思っています。」と作品への愛を感じる言葉で締めくくると、北澤は「はじめてのことを体験しているわたしがずっと映っている映画なんですけど、とにかくこの映画の撮影を通して、120%でやらないと伝わらないし、意味のないことだとすごく勉強になりました。それはthe peggiesのライブの見せ方やミュージックビデオでの表情の作り方へ影響を与えてくれて、とてもいい経験だったと思ってます。演技もそうですが、これからもいろいろなことに挑戦したいと思います。」と映画を通して様々な刺激を受けたことを語っていた。
この作品が、大人の事情によくありがちな限界という概念を飛び越えて、キャスト、スタッフが全力で臨んだ、とっても愛しい青春映画だ。弾き語りで北澤が披露した『青春なんかに泣かされて』に、“想像以上の物に出会うんだ”という歌詞がある。監督した松本花奈、そして初演技だったというthe peggiesの北澤ゆうほは、これからそれぞれの道でも僕たちに“想像以上の物”を見せてくれるに違いない。
「脱脱脱脱17」は渋谷ユーロスペースで9月15日までレイトショー公開中。
取材・文/エンタメステーション
撮影/西田航(WATAROCK)・河邉有実莉(WATAROCK)
映画「脱脱脱脱17」
9月2日(土)~15日(金)ユーロスペースにて2週間限定レイトショーほか全国順次公開

【キャスト】
北澤ゆうほ(リカコ) 鈴木理学(ノブオ)
祷キララ 佐倉萌 朱松真吾
【スタッフ】
監督・脚本/松本花奈
企画/直井卓俊
プロデューサー/上野遼平
撮影/林大智
©2016「脱脱脱脱17」製作委員会
オフィシャルサイトhttp://dadadada17.com/
【ストーリー】
今年で34歳だが、とある事情で高校生活17年目をおくっているノブオ(鈴木理学)。彼の日課は、学校の屋上から空を引き裂くような声で応援歌を叫ぶこと。ノブオはこの学校唯一の応援団部の部員なのだが、なぜ、学校に頑なに居座り、応援し続けるのかは誰も知らない。クラスメートのリカコ(北澤)は、少し大人びていてクールな女の子。彼女の特技は嘘泣きと歌うことだった。自分の涙と歌声さえあれば人生うまくやっていけると思っているが、彼女もまた苦い思い出を胸に秘めていた。