Interview

秦 基博が語る、“自分にしか書けない歌”を追い求めて得た確信とさらなる高みに向かう覚悟

秦 基博が語る、“自分にしか書けない歌”を追い求めて得た確信とさらなる高みに向かう覚悟

曲を作ること、歌うこと、演奏することの3つが揃うためにはミュージシャンであることが重要だと思うんです

今回のベスト・アルバムに収められている曲のなかでは、例えば「Q & A」や「透明だった世界」のようにロック・チューンと形容されてもおかしくないようなサウンド感の曲でも、アコースティック・ギターがその柱になっている印象を受けます。それは意識されていることですか。

そのサウンドを自分がやる意味を考えて、バンドのようにやっても意味がないなって。じゃあ、何がポイントかな?と考えたときに、やっぱりアコギだと思うんです。アコギを持って歌うというのが自分の一番ベーシックな表現方法で、だからアコギと歌がサウンドの真ん中にあることで、「Q & A」や「透明だった世界」のようなロック的なグルーヴの曲をやっても自分のサウンドになると思ってるんです。だから、そのアコギ自体の音作りとか、サウンドの中でどこにあるかとか、そういうことはけっこう考えてやってますね。

アコギは、サウンドのどういう役割を担うのがいいと考えていますか。

それは、歌との関係性によると思うんです。サウンドを作り上げていく過程で、音色の部分でもリズムの部分でもいろんな音が関わってくることになるので、そのなかで僕の歌と何が一番近しいかというと、自分のギターだと思うんです。で、サウンドを作り上げていくなかで歌に寄り添うものがないといけないと思うし、自分でギターを弾いて歌うという形が自分の歌なので、音源でもそういうものとしてアコギが入ってくるのが基本だと思います。

ちなみに、アコギは練習しますか。

しますよ(笑)。

10年で、より上手になりましたか。

相当、上手になってると思います。

それは、“技術的にもっと高めないといけない”と意識する局面があったんですか。

ありました。2009年に初めて弾き語りの“GREEN MIND”をツアーでやったときですね。それまでは、弾き語りを聴かせるのは長くても30〜40分でしたけど、そのツアーでは誰にも頼らないで2時間のステージをやりきることにしたので、これはもっと上手にならないといけない、と。それに、弾き語りで曲を作って、そこからバンド・アレンジされたものを、またバンド・アレンジをはずして歌えば弾き語りが成立するかというとそうでなくて、やっぱり弾き語りのアレンジをしないといけないと思うようになってきたんです。そうなってくると、やっぱりギターの弾き方も変わったし。1曲のなかでどういうビートを使い分けるかとか、2時間をどう使うかとか、そういうことに意識的になったので、はっきりと変わりました。

技術的に高まると、歌との近しさがより増すことになるんでしょうか。

その近しさというのは、曲によっていろいろあって、ギターと歌のリズムが揃っていたほうがいい曲もあれば、ギターはスクエアで歌は自由に聞こえたほうがいい曲もあるんです。それに、アコギ1本でやってると、自分のタイム感で速くなったり、逆に遅くなったりするんですよね。でも、ある程度以上の速さの曲だと一定のリズムがないとお客さんがノレなくなっちゃうんですよ。ギターは一定のリズムを刻みつつ、でも歌は自由に、という演奏のほうがよりノリやすいと思うんですよね。となると、そういうバッキングを練習しなきゃ、ということになるわけです。だから、「上手になる」というのは、どういうふうにグルーヴを作り出すかとか、どういうニュアンスで弾くとどうなるのかとか、そういう意味での技術の追求なんですよ。

ということは、ギターの練習というよりは、歌と合わさった総合力を高めるための練習ということですね。

まさに、そうですね。“弾き語り力”を高める練習というか。歌を聴いてもらうためにはギターも上手くないといけないし。技術が上がれば上がるほど自由になっていくので、表現の幅もどんどん広がっていくと思いますね。

ここまで、10年の積み重ねとしての曲を作ること、歌うこと、そして演奏することについてお聞きしてきましたが、いまの時点ではその3つのなかで一番の武器はどれだと思いますか。

難しいなあ…。自分としては、その3つの要素が全部揃っていないといけないと思っていて、どれかひとつがストロングポイントだというふうに考えたことはないんですけど…。ひとつ言えるのは、その3つが揃うためにはミュージシャンであることが重要だと思うんです。言い換えると、音楽をやっているかどうか、音楽を味わおうとしているかどうか、ということが重要で、それにおいては自分は非常に意識高くやっているんじゃないかと思うんです。つねにミュージシャンであろうと思ってるというか。だからこそ、ミュージシャンの先輩たちに憧れるし、音楽をしっかりやっていくとこんなふうな世界があるんだということを知りたいと思うし。だから、いまの時点でどれかひとつというふうには選べないです。どれに対しても貪欲でありたいし、どれかを捨てる気はまったくないですね。

では、ちょっと話の角度を変えて、好き嫌いでその3つに順番をつけるとすると、どうなりますか。

ええっ(笑)。それはもっと難しいなあ。

嫌いなものはないと思うんですが、どれも好きなんですか。

全部好きだし、全部重要っていう。

美味しい肉と美味しい魚と美味しいゴハンと、どれから箸をつけていいのか困ってしまう、というような感じですか。

そうですよ。パンもパスタもケーキも食べたい、みたいな(笑)。あっ、そうか。だから、似通ってて選べないというのではなくて、それぞれ違う種類のことなのかもしれないですね。寝ることと食べることくらい違うんだけど、でもどれも必要っていう。しかも、それぞれが相互関係にあるというか、ひとつの環のようにつながってるんですよね。

では、その環をさらに広げて、いい曲といいライブをもっと届けてください。今日はありがとうございました。

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秦 基博

2006年11月シングル「シンクロ」でデビュー。“鋼と硝子で出来た声”と称される歌声と叙情性豊かなソングライティングで注目を集める一方、多彩なライブ活動を展開。「鱗(うろこ)」「アイ」などはロングヒットとなり、2013年に新海誠監督作品『言の葉の庭』のエンディングテーマ「Rain」とイメージソング「言ノ葉」を手がけ、話題を呼ぶ。2014年、映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌として書き下ろした「ひまわりの約束」が130万ダウンロードを超える大ヒットを記録。幅広い層に愛されるスタンダード曲となった。その後も数々の映画、CM、TV番組のテーマ曲を担当。2016年11月にデビュー満10周年を迎え、2017年5月に横浜スタジアムでのワンマン公演を開催、6月に初のオールタイム・ベストアルバム「All Time Best ハタモトヒロ」をリリース。また、今年5年ぶりに再始動するオフィスオーガスタのスペシャル・ユニット「福耳」に新曲を書き下ろし、この夏リリース予定。9月23日“Augusta Camp 2017”(富士急ハイランド・コニファーフォレスト)に出演する。

オフィシャルサイトhttp://www.office-augusta.com/hata/

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