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『人喰いの大鷲トリコ』待ち望まれた新たな物語の魅力とは?(後編)

『人喰いの大鷲トリコ』待ち望まれた新たな物語の魅力とは?(後編)

伝統と革新が融合した謎解きアクション

トリコの巨大さは、ゲーム的な謎解きの要素にも存分に生かされている。その巨体を利用して少年ひとりでは行けない場所に移動したり、行く手を阻む障害を排除したり……詳細は控えるが、あっと驚くトリコの行動によって道が開けるシーンも多数登場する。

一方で、少年単独での謎解きアスレチックも充実。建物のへりをよじ上ったり、転落即死の足場を渡ったり、触らずにはいられない仰々しいスイッチを作動させたりといった冒険心が刺激されるアクションは、ある種伝統芸能のような楽しさだ。

少年の抜群の身体能力と度胸、そこに動的に作用する巨大なトリコをフル活用して”道なき道”を見つけ出し、八方塞がりの状況を突破していく謎解きアクションこそ、『トリコ』最大の魅力と言えるだろう。

▲伸び上がったトリコを伝って上階へ移動。(そのままそのまま……)と念じながらよじ上っていく

▲要所でトリコのために道を作ることも必要になる。少年をスイッチの場所までたどり着かせて、鉄格子をオープン!

このタイプのゲームの面白さを決定づける”謎解きの難易度”も、簡単すぎず、難しすぎずの絶妙なさじ加減だ。主人公の回想モノローグという形でそれとなく行動の指針を示してくれる仕組み(前編の記事参照)しかり、注意深く観察すると、進むべき方向に妖しく蝶が舞っていたり、さりげなく違う色の石が混じっていたりといった巧みな環境デザインしかり。いちばん美味しい部分――自力で解けた!(進めた!)という達成感をプレイヤーのために残しておいてくれる”寸止め感”が心憎い(まぁ、それでも行き詰まるときは行き詰まり、明日は解けるに違いない……とホーム画面に戻ることになるのだが)。

また、ときにはトリコが道を示してくれる……ように感じられるのも面白い点だ。”ように感じられる”というのは、ここはトリコが何とかしてくれる場所に違いない! と急いで背中によじ上ってみたところ、「すーん」とノーリアクションを食らったことが個人的に何度もあるからである(笑)。そんなところもじつに猫っぽいというか(猫ではないが)、トリコのアナログっぽさが効いているように思う。

▲トリコ得意の跳躍で離れた場所へひとっ跳び!(予備動作で小さな翼をぴょこぴょこさせるのがキュート)

▲詳細は伏せるが、トリコは戦闘でも大活躍。非力な少年になり変わって荒々しく障害を排除してくれる

待ち望まれた新たな物語

『ICO』と『ワンダと巨像』のスタッフによる新作ということで漠然と期待していた『トリコ』だが、プレイを始めてすぐ、そうそう、これを待っていたのだった、と思い出した感覚がある。それは昔、初めて長いひとり旅をしたときのような、多くの嬉しさと少しの寂しさが入り混じったような気分だ。

近年、”ナラティブ”(*1)という用語で説明されることも多くなったが、前2作と同じように『トリコ』もまた、少年とトリコの行動(アクション)や仕草、神秘的な場所や光景から大小の物語が立ち上る作りとなっている。基本的に、文字(意味)や人があまり出てこない世界はプレイしていてすがすがしく、意味を押し付けられたリ、誰かに指図されたりすることのない自由気ままな嬉しさがある。そして、それと隣り合わせに、微量の寂しさが含まれているのだ。『トリコ』のビジュアル、アクション、ロケーションなどすべてに漂う切なさやもの悲しさ。それは、古来から日本人が好んできたわび・さびを含むエンターテインメントであり、振り返って、『ICO』や『ワンダと巨像』が多くのプレイヤーの琴線に触れてきた一因のようにも思う。

▲冒険の道中で目にする奇妙な場所や光景の数々。直接的に語られる情報は少ないが、物語を最後まで見届けたとき、新たな気づきが得られることもあるかもしれない

ときには忙しい日常を忘れて、最新のテクノロジーと熟練のナラティブ・デザインがもたらす、『トリコ』の新しい異世界の物語に浸ってみてはどうだろうか?


*1 Narrative(物語、語ること、話術)。ゲームデザインでは、文字などで直接的に表される物語(ストーリー)ではなく、プレイヤー自身に感じさせる物語やその語り口(ナラティブ)といった意味で用いられることが多い。


『人喰いの大鷲トリコ』オフィシャルサイト
http://www.jp.playstation.com/scej/title/trico/
©2016 Sony Interactive Entertainment Inc.
©Lisa Larson

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