夜の本気ダンスが新作「SHINY E.P.」をリリースする。リード曲「SHINY」(テレビアニメ『境界のRINNE』第3シリーズ オープニングテーマ)は作詞・作曲を手がけている米田貴紀(vocal,guitar)が「いままでで一番ポップな曲」というメロディアスなナンバー。このバンド本来の持ち味である海外のインディーロック(特に2000年代前半のUKロック)のテイストもしっかり融合され、エッジーかつポップなナンバーに仕上がっている。昨年9月にギタリストが脱退、新メンバーとして以前から交流があった西田一紀を迎え入れた、夜の本気ダンス。2017年年明けに全国8ヵ所のワンマンツアー〈Too Shy A Key Tour 2017〉を成功させた彼らは、新機軸とも言える本作によって、あらたなスタートを切ることになりそうだ。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 冨田望
自分たちの中にあるものを出していくことで、音楽的な繋がりも感じてもらえると思う
2017年1月にワンマンツアーを開催。西田さん加入後、最初のツアーだったわけですが、手応えはどうでした?
マイケル 西田が加入してしばらくは「新体制、どうしていこうか?」と探っていたんですよね。ライブの中で少しずつ積み上げてきたんですけど、8ヵ所ワンマンをやったことで、新しい体制のスタンスが出来上がってきた感覚があって。
西田一紀 そこまで意識の変化はないですけど、ツアーを経ることでメンバーと共有する時間も長くなったし、セットリストとかステージングとか、ひとつひとつにじっくり取り組めるようになって。全体のサウンドもかなりソリッドになってきた感じがあります。
鈴鹿秋斗 ずっと自分がMCをやってたんですけど、1月のツアーではメンバー全員で回して。みんなの良さを見てもらえたんじゃないかなと思いますね。ベースのマイケルなんて、いるのかいないのかもわからなかったから……(笑)。
マイケル ずっといましたけどね(笑)。
一同 あはは!
マイケル たしかに(鈴鹿に)頼っていたというか、好きにやってもらっていたところもありましたからね。特にワンマンだと、全部ひとりでMCするのはしんどいじゃないですか? で、僕らもスポットライトに当たろうかなと(笑)。
鈴鹿 お客さんの反応もすごく良かったんですよ。初日の札幌は(開演前の)SEが始まった瞬間に鳥肌が立つような歓声が上がって、「こんなに待っててくれたんやな」って感じられたし。広島も印象に残ってますね。西田が喋ったら、ざわめきとどよめきが起きて……。
西田 ん? ざわめきとどよめきって、良くないやん(笑)。でも、どうして広島であんなに反応があったのかは、よくわからないんですけどね。
鈴鹿 あはは。僕は「受け入れてくれてるんやな」って思ったんですよ。
西田 うん。加入したタイミングでラジオ(レギュラーのラジオ番組:J-WAVE『THE KINGS PLACE』)で喋ったりもしていたので、パーソナルな部分をみんなに早い段階で理解してもらえてたのも良かったのかなと思いますね。
西田さん、パーソナルを掘るといろいろ出てきそうですよね。
西田 いやいや、浅いですよ。アサリくらいです(笑)。
マイケル 沖まで出なくても獲れますっていうね(笑)。西田が加入して半年ですけど、すでにすごく馴染んでるんですよ。貫録もあるし。
西田 謙虚にやっていきますよ(笑)。

米田貴紀(vocal,guitar)
(笑)。では、新作「SHINY E.P.」について。セクシーなバンドグルーヴが印象的だった前作「Without You/LIBERTY」とは違う手触りの仕上がりですね。
米田貴紀 自分の中にないものを取り入れて表現したわけではなくて、もともと自分が持っているものを出した感じなんですよ。特に「SHINY」はいままでと違う感じだと思います。意識して変えたわけではないんですけど、自分の中のモードも自然と変化していて、それが出てきたんじゃないかなと。アダルトな雰囲気ではなくて、まっすぐでピュアな感じというか。
かなりポップに振り切ってますよね。
米田 そうですね。いままでの曲の中でも一番ポップやなって、自分も思います。
鈴鹿 夜の本気ダンスではやってなかったタイプの曲ですけど、米田は以前からこういう曲も作っていて。アニメのタイアップだから無理にポップに寄った曲を作ったわけではなくて、自然と出来たっていう感覚なんですよね。アニメソングっぽいところもあるけど、夜の本気ダンスらしい洋楽の雰囲気も入ってるので。

鈴鹿秋斗(drums)
ギターのアレンジにもしっかり個性が出ていると思います。すごくキャッチーなんだけど、どこかにいなたさが残っていて。
西田 音数的には結構詰め込んでるんですけど、実はシンプルにやってるんですよね。
マイケル わりと感覚的にやってるんですよ。とりあえず弾いてもらって、しっくりくるかどうかを判断するっていう。
米田 そこまで細かい指定はしないですからね。抽象的なイメージだけを伝えて、あとは好きなようにやってもらって。
なるほど。ちなみに西田さんの音楽的なルーツって、どのあたりなんですか?
西田 古い音楽のウエイトが大きいかなと思います。特に若いときは……まあ、今も若いと思いますけど(笑)、60年代、70年代のロック、ブルースの影響が強かったので。
米田 僕も洋楽が好きですけど、60年代、70年代の音楽はそんなに聴いてなくて。西田のアプローチは僕とはかなり違うし、それは曲のアレンジにも加わってると思います。
西田 このバンドに入ってから、音楽の間口がどんどん広がってるんですよ。米田くんが勧めてくれる海外のバンドもすごくいいし、「おもろい音楽、いっぱいあるな」って。ついCDを買い過ぎてしまいますね(笑)。
米田 全員が音楽好きだし、だから一緒にやれるんですよね。もともとは僕も音楽オタクみたいな感じだったし、そういう要素は4人とも持っているので。僕も最近、かなりCDを買ってるんですよ。特に2000年代前半あたりなんですけど、昔、買いたくても買えないアルバムがたくさんあって……。キリがないですけど、めっちゃ楽しいんですよね。
そのあたりの音楽が夜の本気ダンスの根幹になってるわけですからね。
米田 そうですね。フランツ・フェルディナンドに代表される、80年代ニューウェイブ、ポストパンクのリバイバルが好きだったので。最近の洋楽を吸収している日本のバンドは結構いると思うんですけど、2000年代前半あたりの感じを表現しているバンドはいないと思うんですよ。
2曲目の「Ride」からは、夜の本気ダンスの新機軸を感じました。こういうヘビーなギターサウンドも、いままではなかったですよね?
米田 「Ride」はUSロック的なアプローチですね。だからギターもガンガン鳴っていて。こういう音も最近はないと思うので、やってみようかなと。
西田 USっぽいアプローチに着手したのは、これが初めてかもしれないです。こういうアレンジも自分たちの強みになると思うし、今後の制作にも活かせるんじゃないかなって思います。
鈴鹿 こういう感じも以前から持ってましたからね、米田は。
マイケル いままでの夜の本気ダンスは、どちらかというと、UK感が強い印象を持たれていたと思うんですよ。だからこそ、US感のある曲も映えるんじゃないかなって。このタイミングで「Ride」みたいな曲をやれたのは良かったと思います。
バンドの音楽性の幅が広がりますからね。「Ride」にもいろいろな要素が混じっているし。
マイケル そうですね。ベースに関して言えば、結構弾き倒してるんですよ。今の日本のバンドっぽい感覚も入ってるというか。これはいつも思ってることですけど、米田が求めていることにしっかり応えたいという気持ちも強いんですよ。曲作りはギターのリフから始まることが多いんですけど、「それにどう対応して、フレーズを作っていくか」というのがこのバンドの基本的なやり方なので。
鈴鹿 一曲の中にいろんな要素が入っているから、「このフレーズは、あの海外のバンドの雰囲気に近い」みたいなことがわかってくると、さらに深みが増していくんじゃないかなと。そういう音楽の繋がりを知ることで、もっと面白くなると思うんですよ、夜の本気ダンスの曲は。
音楽の面白さって、そこですよね。いい曲には必ず、豊かなバックボーンがあるので。
鈴鹿 そうですよね。そういうことを知れば知るほど、音楽がどんどん好きになるはずなので。
米田 うん。さっきも言いましたけど、自分たちの中にあるものを出していくことで、音楽的な繋がりも感じてもらえると思うし。それは今の日本のロックシーンに足りてない部分でもあるんじゃないかって、個人的には思ってるんですよね。

マイケル(bass)
3曲目「Blush」は2000年代のロックンロール・リバイバルのテイストと郷愁感のあるメロディが共存するナンバー。
米田 この曲は去年レコーディングしたんですけど、久しぶりに聴いてみたら「この頃はこういう感じやったな」って思い出したし、「すごく面白いし、自分たちにはこういう良さもある」って再確認できて。「SHINY」とは全然違うし、自分のモードが短い間に変化したってことも客観的に見ましたね。「Blush」は西田が加入してから初めてのレコーディングだったんですよ。
西田 フレッシュなテイクが録れたと思います(笑)。いい緊張感もあったし、楽しかったですね。
マイケル 最初は「西田、どんな感じかな?」って思ってたところもあったけど、バッチリ、かっこいいギターを弾いてくれて。レコーディングがいつもやってる関西のスタジオだったり、エンジニアも気が知れた方だったんで、すごくスムーズでしたね。
鈴鹿 僕は……どんな雰囲気だったかあまり覚えてないくらい、自然にやれたと思います。
西田 覚えてないんや?(笑)
鈴鹿 覚えてない……(苦笑)。

西田一紀(guitar)
(笑)そして4曲目「THREE」はラフな演奏が楽しいシンプルなロックンロール。
米田 いい意味で力を抜いてやれましたね。サビのメロディはシンプルだし、楽器隊もそこまでテクニカルなことはやってなくて。曲をこねくり回さなかったのが、逆に良かったんだと思います。
今のバンドシーンは音数を詰め込んだ曲が多いから、すごく新鮮でした。このシングルの曲がセットリストに入ってきたら、ライブの雰囲気も変わってきそうですね。
米田 そこはまだ読めてないし、僕らも楽しみですね。お客さんの反応だったりも、前後の曲の組み合わせ方によっても変わってくるだろうし。
鈴鹿 このシングルの中にも、いろんな方向の曲が入ってますからね。
6月からは全国ツアー〈No rain, new days o’ scene〉がスタート。その後は夏フェスのシーズンですね。
西田 僕、夏フェスって行ったことないんですよ。暑いのが苦手なので……。
米田 見た目はウッドストックですけどね(笑)。
西田 あはは。みんなの話を聞いてると、どうやら楽しそうなので、乗り切れるように頑張ります!
全国ツアー〈No rain, new days o’ scene〉
2017年6月4日(日)大阪 Zepp Osaka Bayside(ワンマン)
2017年6月7日(水)千葉 LOOK(w/0.8秒と衝撃。)
2017年6月8日(木)横浜 F.A.D. YOKOHAMA(w/POLYSICS)
2017年6月10日(土)高松 MONSTER(w/雨のパレード)
2017年6月17日(土)札幌 PENNY RANE 24(w/Creepy Nuts)
2017年6月22日(木)名古屋 CLUB QUATTRO(w/go!go!vanillas)
2017年6月30日(金)福岡 BEAT STATION(w/ねごと)
2017年7月4日(火)東京 EX THEATER ROPPONGI(ワンマン)
夜の本気ダンス
米田貴紀(vocal,guitar)、鈴鹿秋斗(drums)、マイケル(bass)、西田一紀(guitar)。2008年に京都府で結成。2014年3月にミニ・アルバム『DANCE STEP』、11月にアルバム『DANCE TIME』を発表。2016年2〜3月に〈スペースシャワー列伝15周年記念公演 JAPAN TOUR 2016〉に出演後、3月にアルバム『DANCEABLE』でメジャー・デビュー。本作「SHINY E.P.」リリースを記念したインストアイベントを5月に開催、6月からは全国ツアーも敢行する。