LIVE SHUTTLE  vol. 117

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木村カエラ 凄腕バンドをバックに、彼女は何を表現したのか?

木村カエラ 凄腕バンドをバックに、彼女は何を表現したのか?

KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017『DIAMOND TOUR』
2017.3.3 国際フォーラム ホールA

木村カエラの最新ツアーは、年をまたいでライブハウス編とホール編が続く構成で、最新アルバム『PUNKY』の魅力を立体的に楽しめる趣向だ。ここでは、後半戦のホール・ツアー『DIAMOND TOUR』から、東京・国際フォーラムでのステージをレポート。最新アルバムの魅力のみならず、彼女のライブの楽しさがたっぷり表現されたステージの模様を紹介する。

昨年10月にリリースしたアルバム『PUNKY』をフィーチャーしたツアー“KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017”は、前半戦のライブハウス・ツアー『STUDS TOUR』がリリース直後にスタートして全国7カ所をまわり、年が明けたこの1月から後半戦のホール・ツアー『DIAMOND TOUR』がスタート。この日の東京・国際フォーラム公演はその佳境に入った7本目のステージだ。

ステージ後方には、バック・バンドの衣装やこのツアー用のTシャツのデザイン・モチーフにもなっている壮大なスケルトンのセット。首元の部分にボウタイが結ばれているのがなんともオシャレだ。が、カラフルな照明のなかで、そのセットも暗示的に様々なイメージを喚び起こす。ステージ空間も客席も十分な広がりを持つこの会場では、その効果はとりわけ大きい。

「フォーラムはやっぱりデカイね。届いてるかな、私の歌。今日の私なら、マイク無しでも届く気がするわ」

彼女は、2010年にこの場所でYUKIのライブを見て感激し、自分もいつかここでやってみたいと思っていたのだが、その念願はこの日、ひなまつりの日にかなったわけだ。本人の気持ちも、いつにも増して盛り上がっているに違いない。

「ひなまつりは女の子が健やかに成長することを願う日だよね。みんな、ちらし寿司、食べた? 私はわりと毎年ひなまつりにはちらし寿司を食べたりハマグリのお汁をすすったりしてますよ(笑)。健やかに、いくつになっても成長したいもんね」

セット・リストは、そんな女の子的な部分、あるいは女性的な愛とボーイッシュなパンク性の両方が表現された最新アルバムの魅力がいっそうヴィヴィッドに感じられる構成で、アッパーに弾けるところはよりアッパーに、そしてしっとりと歌を聴かせるパートではより印象的に彼女の歌声が響いた。

なかでも、この日のひとつのクライマックスとなったのは、「自分を取り戻せる曲ということで3曲選びました」と話して披露した「リルラ リルハ」からの3曲。まず、「リルラ リルハ」はヒイズミマサユ機のキーボードとカエラ自身が弾くアコースティック・ギターだけの演奏。♪忘れないで 見つめることを/忘れないで 感じることを♪という歌詞があらためて意識される。自分を見つめ、自分を感じた先に♪個性を隠し生きたらつまらない♪という「PUNKY」のメッセージが重なってくるからだ。その上で♪この手であなたを抱きしめてあげたい♪と歌う「EGG」の包み込むような愛を体感すると、アルバム『PUNKY』に込められた奥行きのある感情がいよいよ自分の気持ちのなかに染み込んでいくように感じられたのだった。

そして、新曲「HOLIDAYS」。リリースは5月10日だが、すでにJRAのCMなどでも流れているから、ファンもしっかりチェック済みのよう。コーラス・パートをみんなで練習してみると、カエラも驚く完成度だった。

“自分を取り戻せる曲”コーナーで彼女のメッセージをしっかりと体に馴染ませた後、今度は新曲でしっかり発声し、会場のみんなと心を合わせると、あとはもう盛り上がるだけだ。ステージは一気に加熱していったのだが、そこであらためてバンドのスキルフルでありながら個性的なサウンドが威力を発揮する。會田茂一(g/FOE、ATHENS)、柏倉隆史(ds/the HIATUS、toe)、佐藤征史(b/くるり)、そしてヒイズミマサユ機(key/H ZETTRIO)というラインナップは、名前を見ただけでもオルタナティヴだが、出てくる音は熱を帯びるほどに一筋縄ではいかないメンバーそれぞれのキャラクターがきらめき、それぞれの演奏が奔放に弾ければ弾けるほど全体のアンサンブルはドライブ感を増していく。パンキッシュなパッションと幅広い音楽性を兼ね備えたこのバンドの演奏が確実にカエラの音楽的個性を増幅させていたのだが、同時にカエラのボーカル力がこのバンドのポテンシャルをより引き出していたことも見逃せない。時にお茶目に、時にアグレッシブに、あるいは雄々しさを感じさせる場面がある一方で繊細に声を響かせる彼女のボーカルは、どの楽曲の魅力もいっそう際立たせ、そこに込められたメッセージを真っ直ぐにオーディエンスへ届けてみせた。

ステージ後方のスケルトン・セットは、“自分らしくあれ”というアルバム『PUNKY』のメッセージを受けて、おそらくは“装飾を剥ぎ取った自分自身を見せろ”という暗示ではあるのだろうけれど、この日のライブを見通した後ではライブ・パフォーマーとしてのカエラの骨格の確からしさを意識せずにはいられない。なんとも熱く、十分にロマンチックなライブだった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 太田好治

KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017『DIAMOND TOUR』
2017年3月3日@国際フォーラム ホールA

セットリスト
1.There is Love
2.SWINGING LONDON
3.PUNKY
4.SHOW TIME
5.TODAY IS A NEW DAY
6.ワニと小鳥
7.向日葵
8.Circle
9.Sonic maniac
10.オバケなんていないさ
11.THE SIXTH SENSE
12.KEKKO
13.TREE CLIMBERS
14.リルラ リルハ
15.Sun Shower
16. EGG
17.HOLIDAYS
18.Ground Control
19.僕たちのうた
20.好き
21.Yellow
22.BEAT
23.BOX

PUNKY
木村カエラ

2016年10月19日発売
全12曲

木村カエラ

2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビュー。
2013年、自身が代表を務めるプライベートレーベルELAを設立。
2014年、10周年を迎え、ベストアルバム「10years」、8枚目となるアルバム「MIETA」をリリース。
同年10月、横浜アリーナ2days公演を成功させた。
2016年、新曲「BOX」のMusic VideoでMicrosoft「Surface Book」とのコラボレーションが実現。
同年10月、アルバム「PUNKY」リリース。
アルバム収録曲「向日葵」が映画『バースデーカード』主題歌で話題となる。
全国ツアー“KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017”を完走。

オフィシャルサイトhttp://kaela-web.com

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