男子禁制!? 乙女ゲームの世界  vol. 2

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『Collar×Malice』島れいこPに訊いた、乙女ゲームに思うこと

『Collar×Malice』島れいこPに訊いた、乙女ゲームに思うこと

2016年に発売された乙女ゲームの中で、女性たちから多くの支持を得た『Collar×Malice(カラー×マリス)』。東京・新宿区を舞台に、連続殺人事件“X-Day事件”の真相に迫るため、男性たちと事件の捜査を行っていくというシリアスでサスペンステイストな物語は、恋愛の甘さがクローズアップされがちな乙女ゲーム業界において、大きな反響を巻き起こした。

そのプロデューサーである島れいこさんは、これまでにも数々のヒット作を手掛け、良質な乙女ゲームを世に発表し続けている。そんな島さんに、『Collar×Malice』制作秘話をはじめ、ゲーム作りの姿勢やこだわりについて伺った。彼女の作品が好きな方はもちろん、乙女ゲームについて知識を深めたい方、また乙女ゲームクリエイターを目指す方にも、ぜひ読んでほしい。なお、乙女の花園的な記事につき、今回も男子禁制!

取材・文 / 菅谷あゆむ


▲プロデューサーの島れいこさん。デザインファクトリー株式会社に在籍し、『オトメイト』ブランドから作品を発表しているヒットメーカー。携わったタイトルは18本(移植含む)!

『Collar×Malice』という傑作ができるまで

 まずは、『Collar×Malice』を制作することになった、出発点について教えてください。

原画を手掛けた花邑まい(※1)のキャラクターデザインを、最大限に活かしたゲームを作ろうというのが出発点でした。それで、「警察モノをやりたい」という花邑たっての希望で、今回の設定が生まれたんです。

え、原画担当の花邑さんが発案されたんですか?

うちではよくあるんですよ。花邑はずっと『AMNESIA(アムネシア)』(※2)の作業をしていたので、脳内で温めていたアイデアがたくさんあったようです。

ある程度の設定も花邑さんが考えられたのでしょうか。

いえ。まずは、警察を題材にいろいろなキャラクターを描いてもらいました。

何よりもキャラクターを先行した、と。

そうです。自由に描いてもらうところから始まりました。そのあと花邑と企画担当のディレクターが話を詰めて、大まかなキーワードを出していって。たとえば、「隔離された新宿区を舞台にする」とか、「主人公の首に毒の首輪がついている」とか。そこから私が「新宿区が隔離された経緯をもっと細かく詰めよう」、「首輪の解除方法を考えないと。っていうか、まず首輪ってどういう構造なの!?」という細かい部分を考えていきました。

▲新人の警察官である主人公は、“X-Day事件”に関わる何者かに襲われ、毒が内蔵された首輪をはめられてしまう。死の恐怖と隣り合わせのまま、事件解決を目指していく

おおまかなキーワードをもとに、島さんが設定を膨らませていったんですね。

はい。キーワード自体は、すごくインパクトがあって面白いと思ったんですけど、じゃあそれをどう構成して物語に入れ込むのか……。それを考えるのが、ものすごく大変でした。

その構成の作業は、島さんがおひとりで?

最初は何人かのスタッフと一緒に考えていたんですが、複数人いると現場が混乱してしまいますし、企画を進めるにはある程度ものごとを確定させないといけないので、シナリオ制作段階で決定権は私ひとりに集約しました。もちろん、スタッフと相談をすることも多かったです。

▲“X-Day事件”の発生によって、物語の舞台となる新宿区では身を守るために銃刀法が解除されると当時に、危険区域として隔離措置がなされているという、乙女ゲームには珍しく重厚な設定

この骨太な設定を考えるというのは、とても大変なことだと思います。銃刀法の解除や隔離措置など、複雑ですから。ふだん、どのように設定を構築していくのですか?

理詰めです。問題点を挙げて、そして解消して。じつは最初、キーワードはもっといっぱいあったんですよ。たとえば、本作はメインのキャラクターたちが探偵事務所を拠点にしているという設定ですが、キャラクターたちにインパクトを持たせるために、“探偵事務所×ニート”という案がありました(笑)。

ニート!?(笑)

そうです。攻略対象たちが全員元警官のニートという。でも、物語の舞台は銃刀法を解除されて隔離措置をされている新宿区なので、「物流は? 生活費は?」という疑問が浮き彫りになりますし、かっこよさを描くのが難しい……。ややこしくなるので、探偵事務所は「警察を辞めた男性たちがあくまで一時的に集まり、協力関係を結んでいる」表現に留め、ニートというワードは消えました(笑)。

なるほど(笑)。逆に、構成を作る途中で生まれた設定はありますか?

あります。じつは最初、アドニスという組織は存在しなかったんですよ。“毎月犯人が違う”という大枠だけは決まっていたんですが、「それぞれの犯人がネットワークを持っていないと連続して事件が起こらないから、組織化していないとおかしいのではないか」、ということでアドニスを考え出しました。そこから「じゃあ彼らの理念は何か」と考え、表向きはわかりやすいテロリストという形になったんです。

▲“X-Day事件”の実行犯とされているテロ組織“アドニス”。“新宿区を足掛かりにこの国を再生する”ことが目的だと宣言している。攻略のルートによって、彼らがなぜ犯行に至ったのかという動機もしっかり描かれており、その思いもグッと胸にくる

なるほど。しかし、そういった複雑な設定をひとりで考えていると、スルーしてしまう矛盾点もあるのでは?

粗探しするのが仕事のようなものなので、致命的な見逃しは少ないです。ただ、設定の改変を重ねると古い設定が残っていたりして、シナリオ担当のライターさんが指摘をしてくださることもあるので、そこで矛盾点を解消していきます。

そのような制作過程で、とくに気をつけて作った点は何でしょうか?

どこまで硬派にできるかという点と、斬新さを意識しすぎないという点です。壮大すぎる過去設定とか、急に豹変するとか、そういったひねくれた展開をなるべく減らして、いい意味で無難なキャラクター作りをしてみようと。ただ、それでは地味になってしまうので、匙加減が難しかったですね。心がけたのは、3次元のドラマのような作りです。

3次元のドラマ、ですか。

ゲームなのでもちろん2次元ですが、リアリティがあるものを作ってみたいと思って。設定が毒の首輪や隔離措置など突飛な要素が多いので、キャラクターの考えかたや行動理念は硬派で王道に。その世界の中で振り回されるふつうの人たちというのを描きたかったんです。もちろん、シナリオだけでなく、演出やBGM、システム部分など、総合したバランスも大切にしました。

演出やBGMも? 関わっていない部分がないくらいですね。

役割としては、すべての要素を包括したバランス調整をしています。各素材の制作は専門職のスタッフに任せつつ、どこにどのタイミングで入れ込むと効果的かを考えるのが仕事でもありますね。

さらに、島さんはブログなどのプロモーションにも力を入れてますよね。

はい。じつは、プロモーションのことを考えているときがいちばん楽しいです。私にとっては、いちばんの癒しです(笑)。

そこまで(笑)。御社の宣伝は、情報誌に限らず、ブログ、グッズ……本当に多岐に渡るので、展開を考えるのは大変でしょう。

どの媒体でどんな風に扱っていただけるか、どう展開していくかは本職の広報の方が奔走してくださっているので、私は作品の魅力をどれだけ出していくかに集中できて楽しいです。いいとこ取りというか(笑)。情報を待っている方の期待値を上げたいんです。それによって、発売前から皆さんのご意見を聞くことができ、手応えを感じられますから。……まあ、期待値を上げるということは、自分の首を絞めることになるんですけど(笑)。

たしかに(笑)。でも、乙女ゲームにおいて、作品の印象というのはとくに大事だと思います。だから、どういった展開で作品を見せるかということはとても重要ですよね。

重要です。だからこそ、雑誌に載せるために作ったCGもあるんですよ。

宣伝のために? まさかの逆パターンですね(笑)。

制作ではときどきあるんです(笑)。初報を出す段階ではゲームの制作途中ということもあってCG素材が少なかったので、「作品の魅力を伝える印象的なCGを作りたい!」と。プロモーションの観点から発想が出る例かなと思います。でも、皆さんの目に触れるCGというのはとても大事で、実際にプレイしたときにそれが出てくると、さらなるインパクトに繋がると思うんです。

▲初報に向けて作られたCG。主人公が毒の首輪をつけられたところを、メインキャラクターの柳愛時が見つけ、抱き寄せる印象的なシーン

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