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“最上級の部室感”をいまだに楽しめる、電気グルーヴ会心のニューアルバム『TROPICAL LOVE』

“最上級の部室感”をいまだに楽しめる、電気グルーヴ会心のニューアルバム『TROPICAL LOVE』

ここ数年、長年好きなアーティストの「○周年」的な文字を多く目にするようになった。そういった文言を目にするたびに、こちらも年を取ったんだなあと、思わず遠い目をしてしまうわけだが、電気グルーヴも2014年に結成25周年を迎え、ミニアルバム『25』の発売、東名阪記念ツアー「塗糞祭」、さらに翌年には大根仁監督によるドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE?〜石野卓球とピエール瀧〜』を公開し、アニバーサリーイヤーを駆け抜けた。

『25』収録の「電気グルーヴ25周年の歌」の脱力感、「野糞」やら「糞尿」やらと、電気のツアータイトルではおなじみの安定フレーズに祝祭感が込められた見事なツアータイトル。自分にとっては、部活のキレッキレな先輩的な存在(勝手に思ってるだけ)であるところの、電気グルーヴが作り出す相変わらずな部室感にニッコニコなのである。

あえていちいち説明しますが、石野卓球とピエール瀧は高校からの同級生である。彼らを中心とした人生で活動を1985年にスタートし、KERA主宰のナゴムレコードで作品を発表。人生解散後の1989年に電気グルーヴを結成。いろいろあって現在に至る、である。「いろいろあって」の部分は映画『DENKI GROOVE THE MOVIE?〜石野卓球とピエール瀧〜』に見事に凝縮パッケージされているので、そちらをご参照いただきたい。脱退したCMJK、砂原良徳ら、過去には何人かのメンバーが在籍していたが、あくまでも核は卓球と瀧。彼らの本気の、真剣な悪ふざけこそが電気グルーヴの真骨頂といっていいだろう。いいですよね?

そんな電気グルーヴの2013年リリースの『人間と動物』以来となる4年ぶりのフルアルバム『TROPICAL LOVE』が到着した。1999年の砂原良徳の脱退、2001年から3年の活動休止期間からの2004年の活動再開、スチャダラパーとのコラボ「電気グルーヴ×スチャダラパー」などなど紆余曲折と言っても過言ではない活動の結果、発表された前作は「原点回帰」として多くの電気ファンを喜ばせた。卓球自身がインタビューで「あらゆる点で、間違いなく最高傑作」と豪語する今作は、前作以上に抜けのよい会心の一枚となった。

全10トラック、アルバムとしての流れが見事である。1曲目の「人間大統領」(『伊集院光のてれび』テーマソング)でマック赤坂のごとく上がる口角。「東京チンギスハーン」「顔変わっちゃってる。」「プエルトリコのひとりっ子」とタイトルを見ただけでもニヤつく曲が続き、5曲目の「柿の木坂」、そして2015年にシングルで発表された「Fallin’Down」とメロウ寄りな展開へ。インスト曲「ユーフォリック」をはさみ、トミタ栞が参加の「トロピカル・ラヴ」、夏木マリのヴォーカルによる「ヴィーナスの丘」を経て、ラスト10曲目で瀧ヴォーカルに戻って「いつもそばにいるよ」。コーラスの「ガマガエル」フレーズを聴き終えた時には、口角は10度20度30度と上がり、無意識に1曲目からリピートを始めると、またカエルの鳴き声が聞こえてきた。至福の60分といったら大げさと思われるかもしれないが、とにかく一枚のアルバムとしての流れが気持ちいいのだ。

今回、この原稿を書くにあたり、電気グルーヴについて自分なりにぼんやりと思いを巡らせていたところ、頭に浮かんだのが昨年公開されたリチャード・リンクレイター監督の『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』という一本の映画だった。大学野球部の新学期直前3日間の馬鹿騒ぎをただただ描いた作品で、DEVOやブロンディなどがガンガンかかるサントラもゴキゲンな一本である。この作品で描かれる、ひたすら続いてほしい部活感、それを30年近く……人生を含めるとそれ以上続けているのが電気グルーヴという存在であり、私を含めたファンも電気グルーヴを聞いて、見ることで、今となっては日常では味わうことのない部室感、それも最上級の部室感を楽しんでいるような気がするのだ。

人生〜電気初期の頃はお2人とも10代、20代である。どんなバカをやっても「若気の至り」の5文字で世間も納得していたはずだ。そんな卓球さん、瀧さんも今年で50の声を聞く年代。いい大人だ。公私ともにいろいろあって当然である。テクノの世界では日本のみならず世界的に活躍する石野卓球。今や日本を代表する名バイプレーヤーであり、俳優としても大活躍のピエール瀧。それぞれの立場も30年前とは異なるステージに立っている。そんな彼らのいつでも帰ってくる場所としての電気グルーヴ。今回のアルバムで感じる抜けのよさは、そういった背景があるような気がしてならないのである。

電気グルーヴという部室では相変わらずバカだけれど、石野卓球、ピエール瀧にしか作れないかっこよく、気持ちいい音楽をやってくれている部活の先輩。今の電気グルーヴの姿に、後輩中年としては神々しさまで感じ、さらに言えば美しさすら強く感じるのである。先輩方、西暦2525年までこの調子でお願いいたします!

文 / モリタタダシ


電気グルーヴ 『トロピカル・ラヴ(Video Edit)』

ライブ情報

電気グルーヴ『TROPICAL LOVE TOUR』

3月12日(日)Zepp Sapporo
3月17日(金)Zepp Nagoya
3月18日(土)Zepp Osaka Bayside
3月20日(月・祝)福岡DRUM LOGOS
3月21日(火)岡山YEBISU YA PRO
3月24日(金)Zepp Tokyo
3月25日(土)Zepp Tokyo

電気グルーヴ

石野卓球、ピエール瀧。
80年代後半、インディーズで活動していた”人生”を解散後、石野卓球とピエール瀧らが中心となり電気グルーヴを結成。
1991年、アルバム『FLASHPAPA』でメジャーデビュー。1997年のシングル「Shangri-La」、アルバム『A』は国内で約50万枚の売り上げを記録。1998年にはヨーロッパ最大のダンスフェスティバル”MAYDAY”、ヨーロッパ6ヶ国をまわるツアーを行う 。このツアーを最後に1991年から活動を共にしていたメンバー、砂原良徳が脱退。2001 年、”WIRE01″のステージを最後に活動休止するが、それぞれのソロ活動を経て、2004年に活動を再開。結成25周年の2014年にはFUJI ROCK FESTIVAL 14’のGREEN STAGEにて2ndヘッドライナーを務め、25周年記念ツアー“塗糞祭”、25周年記念ミニアルバム「25」をリリース。2015年12月には電気のこれまでを総括するヒストリー&ドキュメンタリームービー『DENKI GROOVE THE MOVIE?  -石野卓球とピエール瀧- 』が全国ロードショーされ好評を博した。
2016年にはワンマンライブ「お母さん、僕たち映画になったよ。」を大阪・東京にて開催し、20周年を迎えたFUJI ROCK FESTIVAL‘16のGREEN STAGEにクロージングアクトとして出演し、その存在感を見せつけた。

オフィシャルサイトhttp://www.denkigroove.com/

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