Interview

松下洸平が新たに生み出す『カメレオンズ・リップ』の魅力。そして、今夏頃に再デビューが決定した彼にとっての“音楽”

松下洸平が新たに生み出す『カメレオンズ・リップ』の魅力。そして、今夏頃に再デビューが決定した彼にとっての“音楽”

松下洸平が主演を務めるKERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』(演出・河原雅彦)が4月に開幕する。
NHK連続テレビ小説『スカーレット』(2019年)でヒロインの夫・十代田八郎を演じ、俳優としての知名度を上げ、舞台やドラマ出演のみならず、今年に入ってからはバラエティ番組「ぐるナイ」の『ゴチになります』に新メンバーとしてレギュラー出演も果たしたほか、これまで俳優活動と並行して行ってきた音楽活動を本格的に再始動させるなど、精力的に活躍の場を広げている松下洸平。
そんな彼に『カメレオンズ・リップ』に対する意気込み、また、“松下洸平”名義で今夏頃に再デビューが決まった音楽活動への思いを聞いた。

※「KERA CROSS」とは──劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が手がけた数多くの戯曲の中から選りすぐった戯曲を、様々な演出家の演出で上演するシリーズ企画。これまでに第一弾『フローズン・ビーチ』(演出・鈴木裕美)、第二弾『グッドバイ』(演出・生瀬勝久)が上演された。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 青木早霞(PROGRESS-M)
スタイリスト / 渡邊圭祐 ヘアメイク / 五十嵐将寿


音楽をやっているからこそ見ることができる景色

松下さんの近況としては、今年1月から3月にかけて初めてのツアー「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2021 HEART to HEART」を開催しました。久しぶりのライブはいかがでしたか?

特にここ数年はテレビのお仕事が続いていたこともあって、ファンの方と直にお会いして交流する機会が持てなかったので、“松下洸平”自身としてファンの皆さんと交流できたことがとても嬉しかったです。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

もともと松下さんはシンガーソングライターとして2008年にデビューされていますが、今回初めて開催したツアーの中で、ご自身の音楽に対する思いを再確認されたのではないですか?

ツアーでは音楽をやっているからこそ見ることができる景色を見ることができましたし、ライブでしか経験できない感覚や、音楽を通して繋がれることを実感できたので、音楽を続けてきて良かったなと思いました。ステージ上では、“こんなに素でいいのか!?”っていうくらい素でしたけど(笑)。

3月6日のお誕生日当日には、名古屋公演のライブ配信もありました。

34歳になりたての日にライブをやらせていただいたのは、本当に貴重な経験でした。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

34歳になられて、30代後半に向けた思いというのは何か生まれましたか?

僕は30歳になったときに“どんな30代にしたいか”を考えたんです。そのときに掲げた目標が、“自分が抱いている夢をひとつでも多く叶える”だったので、30代の今の自分はまだその目標を叶える階段の途中にいる。33歳のときに朝ドラに出演させていただいたこともそうですし。特に2020年はコロナ禍でいろんなことを考えた1年でもあって、34歳は“自分が自由に表現できる場所をひとつでも多く作ろう”と思っています。それが、掲げた目標に向かうステップアップにもつながると思うので。

ご自身にとって“音楽”はどんな存在ですか?

自分が普段考えていることや頭の中だけで考えあぐねてしまうようなことを、音楽の力を借りて“整理整頓”していくような感覚があって。すごく楽しかった日にこの思いを形にして残しておきたいとか、つらいことがあったときの悔しさとか、それらを記録していく整理整頓作業が、自分の音楽になっているような気がします。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

松下洸平として届ける音楽では、どんな自分を表現したいと思われていますか?

僕は誰かの思いが音楽の中に入らない、隙間がない音楽は作りたくないと思っています。僕自身の思いや経験を、僕が歌詞に書いて、僕が歌っていても、そこには誰かの思いが入る隙間を作るように心がけていますね。たとえ作り手の一方的な思いであっても、その思いを音楽として伝えることで、聴いてくださる方が共有してくれて、誰かの背中を押すことができたり、一歩を踏み出す勇気になったりする。僕個人の整理整頓という作業がめぐりめぐって誰かのためになる。そんな相乗効果が音楽にはあると思います。音楽はメロディやリズムが自分の思いを残す手助けをしてくれるもので、時に難しい作業でもあるんですけど、ひとつのものが完成したときの喜びというのは、音楽をやっていないと感じることができない楽しさなんだと思います。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

僕たちは初演とどうやって戦わなければいけないのか

続いて、KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』のお話を聞かせてください。堤 真一さん、深津絵里さんが出演された初演時(2004年)の映像を観られたそうですが、どのような感想を持たれましたか?

僕が演じさせていただく“ルーファス”を、堤さんは40歳のときに演じられていたので、今回のキャスティングは、年齢層が少し下がったんですね。ましてや、初演はKERAさんが当て書きしたキャスティングでもあるので、まさにルーファス=堤 真一さんであり、エレンデイラ=深津絵里さん、そのものがいる舞台だと思いました。僕たちはそことどうやって戦わなければいけないのかを考えたときに、演出の河原さんが「たしかに初演の方たちと比べれば年も若いし、演劇的なキャリアも少ないけれど、全体的に君たちは愛らしさがプラスされて、可愛いぞ」とおっしゃってくださって(笑)。

可愛い!?

河原さんもそこは妥協点ではなく、いかに魅力に変えるのかと強調されていて。この座組みで舞台に立つ僕たちが、どう胸を張って台詞を言うのか、役柄を作っていくうえで何を大切にしなければならないのかということを、河原さんと稽古のたびに丁寧に話し合いをさせていただいています。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

河原さんには音楽劇『魔都夜曲』で初めて演出を受けていますが、松下さんは今回の稽古に対しては、どのような気持ちで挑んでいますか?

『カメレオンズ・リップ』は登場人物たちがお互いに騙し騙されていく物語で、それこそクレイジーな人しか出てこない。そんな物語の中で、先程も話しましたが、初演時に当て書きされた役柄を自分たちはどう自分のものにして演じ、それを僕らの魅力にしてどう押し出して作品を作っていくのか。今は台詞を覚えながら、動きを決めながら、頭の片隅でそのことを考えながら稽古をしています。

2020年に上演されたケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』では、KERAさんの演出を受けていらっしゃいますが、KERAさんにはどのような印象を持っていらっしゃいますか?

とてもシニカルな戯曲をお書きになるので、哲学的な難しいことをおっしゃる方なのかなと、演出を受けるまでは勝手に想像していたんです。でも、『ベイジルタウンの女神』で実際に演出をしていただくと、とても丁寧にひとつひとつの会話を作ってくださったので、そこにとても救われました。僕は舞台での芝居をまだまだ勉強中なので、KERAさんが丁寧にアプローチをしてくださったのは、とてもいい経験になりました。あと、KERAさんはとても優しさに溢れた方です。『ベイジルタウンの女神』が終わってからも連絡をくださって、誕生日当日にも“おめでとう”メールをいただきました。KERAさんからこんなふうに連絡をいただけるなんて、と感動しましたね。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

『カメレオンズ・リップ』で演じられるルーファスに対しては、どんなキャラクターだと捉えていますか?

ルーファスはこの作品の中では一番人間らしいというか。ただ、彼もクレイジーではあるので、ルーファスの人間らしい部分を残しながら演じられたらと思っています。

ルーファスと松下さんが似ている部分、似ていない部分があれば教えてください。

似ていない部分で言うと、ルーファスは“なんでこんな嘘をつくの!?”っていう意味のない嘘を時々つくので、そこはなかなか理解できないです(笑)。似ている部分は、基本的に後先を考えていないところかな。僕も後先考えずになんでも先に進めちゃうので。“これがこうなったら、その先をどうする”っていう先読みをしないルーファスの野性的な部分が、彼の愛らしさにつながればいいなと思っています。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

本作で主演を務められますが、心がけていることはありますか?

多くのキャストさんがいらっしゃる中で、一番初めに自分の名前があるのは初めてですが、この作品は登場人物それぞれが活躍する、全員が主役の物語だと思っているので、自分が主演として何かをしなくてはという感じにならないんです。これだけの素晴らしいキャストさんがいらっしゃるので、皆さんの力を借りながら千穐楽まで走り抜けたいです。

自分の好きな音楽を聴くことがリセットになる

このご時世なので、稽古場もマスク着用をされていると思いますが、マスク以外に稽古場に持っていく必須アイテムはありますか? 

僕は稽古場の床や舞台の上でも平気でゴロゴロ寝転がっちゃうほうで(笑)、皆さんはストレッチするときにヨガマットみたいな敷物をよく使われているんですが、これまでほとんど使わなかったんですよ。それが、今はコロナ禍なので、稽古場でも床や地べたに直接座らないというルールがあるので、初めてヨガマットを稽古場に持って行ってます。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

特にここ数年は多忙な日々を過ごされていると思いますが、気分転換にされていること、自分のテンションを上げてくれるものは何かありますか?

僕は、やっぱり音楽ですね。昔からR&Bやソウルなどのブラックミュージックが好きなので、自分の好きな音楽を聴くことがリセットになります。例えば、稽古が終わっても「今日も難しい芝居だったな」「あの場面どうしようかな」って考えをめぐらせている自分を、いったんリセットするために好きな音楽を大音量で聴きます。

最近お気に入りのアーティスト、楽曲は?

ブルーノ・マーズです。彼の新しい曲にドはまりしているので、それを聴くとリセットできますね。(人差し指と親指で丸を作って)仕事をしている自分がこの“丸”の中にいて、普段はその中でうろうろしているんですけど、そんな僕を包んでくれている“側”の部分が、自分の好きな音楽なんですよ。なので、迷っているときはいったん“丸”の外=“側”に出る。すると、ぐるぐる迷っている“丸”の中にいる自分を俯瞰で見ることができるので、僕は自分が好きな音楽を聴くっていうのを大事にしています。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

『カメレオンズ・リップ』は登場人物たちの騙し騙されの応酬も見どころのひとつですが、松下さんご自身は、何があっても絶対に信じていることはありますか?

十数年前に、“俳優になって有名になってやる!”って思ったときの自分ですね。あのときの自分を裏切りたくないし、“まだ信じてるぞ!”って言いたいです。十数年後の将来の自分も、きっと若かりし頃の自分を信じていると思いますし。

いつのまにか彼らの嘘に巻き込まれていく

では、『カメレオンズ・リップ』に足を運んでくださる皆さんにメッセージをお願いします。

全員が嘘をつきまくっているのに、騙し騙されながらも、なんとか自分はおかしくないんだというのをそれぞれが見せ合う本編を通して、お客さんもいつのまにか彼らの嘘に巻き込まれていくと思います。その嘘の戦いに、渦巻きのようにお客さんもキャストたちと一緒に引き込まれていくことで、すごく楽しい舞台になると思っています。観客の方たちも彼らの嘘に麻痺していただけたら(笑)。劇場に足を運んでくださる皆さんには、時に笑いながら、時にうるっとしながら、生のお芝居を思う存分に感じていただきたいです。

カメレオンズ・リップ 松下洸平 WHAT's IN? tokyoインタビュー

最後に、意気込みをお願いします。

自分にとって“舞台”というのは、ホームだと思っています。この1年間、テレビや音楽の世界、様々な場所で経験したことがあります。そこで自分がつけた力はどれくらいのものなのかを、それは芝居のことだけではなく度胸だったりも、この舞台にどれだけ還元できるのかを目標にして、『カメレオンズ・リップ』に挑みたいと思います。

衣装協力 / 中綿シャツ ¥36,000、パンツ ¥33,000[共に、エドウィナホール]

KERA CROSS第三弾
『カメレオンズ・リップ』

東京公演:2021年4月2日(金)〜4月4日(日)シアター1010
             2021年4月14日(水)〜4月26日(月)シアタークリエ
福島公演:2021年4月11日(日)南相馬市民文化会館(ゆめはっと)
大阪公演:2021年5月2日(日)〜5月4日(火・祝)サンケイホールブリーゼ
愛知公演:2021年5月6日(木)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
新潟公演:2021年5月15日(土)長岡市立劇場

作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽:伊澤一葉(東京事変、the HIATUS)

出演:
松下洸平
生駒里奈
ファーストサマーウイカ
坪倉由幸(我が家)
野口かおる
森 準人
シルビア・グラブ
岡本健一

企画・製作:東宝 キューブ

「KERA CROSS」オフィシャルサイト

松下洸平(まつした・こうへい)

1987年3月6日生まれ、東京都出身。2018年に『母と暮せば』にて平成30年度(第73回)文化庁芸術祭演劇部門新人賞を、2019年に『母と暮せば』『スリル・ミー』にて第26回読売演劇大賞杉村春子賞・優秀男優賞を受賞。2008年よりペインティング・シンガーソングライターとしてライブ活動を行い、同年11月に「STAND UP!」でCDデビュー。2009年に入りTV、舞台と活動の幅を広げる。近年の主な出演作品には【舞台】ケムリ研究室no.1『ベイジルタウンの女神』、こまつ座『木の上の軍隊』、ミュージカル『スリル・ミー』、舞台『テロ-TERROR-』 、ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』【TVドラマ】『知ってるワイフ』、『#リモラブ〜普通の恋は邪道〜』、『スカーレット』などがある。7月には、舞台『母と暮せば』の出演も控える。また、夏頃には“松下洸平”名義でのCDリリース、再メジャーデビューも決定。

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@kouhei_staff_)
オフィシャルInstagram

フォトギャラリー