LIVE SHUTTLE  vol. 448

Report

Daoko 今年初のライブ「A(nima) HAPPY NEW TOUR 2021」を世界に向けて配信。バンドと共に魅せたDaokoの現在地をレポート。

Daoko 今年初のライブ「A(nima) HAPPY NEW TOUR 2021」を世界に向けて配信。バンドと共に魅せたDaokoの現在地をレポート。

1月31日に渋谷さくらホールで開催されたDaoko「A(nima) HAPPY NEW TOUR 2021」の模様が3月13日に全世界に向けて配信された。昨年は自身がプロデュースに関わり、新たなフェーズの幕開けを告げた4thアルバム『anima』をリリース。本来ならアルバムを携えてのツアーが望まれていたはずだが、コロナの影響でそれもままならず、ようやく2021年の新年に1日限りの有観客でのライブを実現。3月13日の配信は、国内のみならず、海外のファンの視聴を考慮し、各国のタイムゾーンに合せて行われた。ここでは、1月31日当日のライブレポートをお届けしたい。

「二〇二〇 御伽の三都市 tour」以来となるDaokoのライブ。前回の東京公演は、昨年2月10日の満員のリキッドルームでの開催だった。新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう直前であったことを思い出す。あれからおよそ1年。会場となった渋谷区文化総合センター大和田さくらホールは通常の半分の客席でコンサートを実施。客入れのBGMで流れるのは「飛んでイスタンブール」、「異邦人」などの昭和のエキゾチック歌謡。Daoko自身が選曲したそれらの曲は、どこか遠い世界に誘われてしまう効果があった。

オンタイムでDaokoとバンドメンバーがステージに登場すると、大きな拍手が沸き起こった。白いドレスに身を包んだDaokoが1曲目に歌ったのは、アルバム『anima』のラストに収録された「おちゃらけたよ」。インドネシアの若きビートーメイカー、pxzvcがトラックを手がけたこの曲のどこか刹那的なムードは変わりゆく都会の情景を喚起させる。歌詞に出て来る〈漏れ出す疫病〉が、コロナ禍を予兆していたとも言われたが、偶然とはいえ時代の空気を活写する才能はデビュー当初から注目されていた。

「あらためまして。Daokoです。こんな大変な時期にコンサートに来てくださってありがとうございます。今日こうして皆さんと一緒に音楽を楽しめることが嬉しいです」と、MCでは感謝と悦びを素直に表明。

ヘッドセット・マイクを装着し、Daoko流のラップと歌のミクスチャーをポップに聴かせたのは「愛のロス」。続いて披露された「GRY」は、2017年の2ndアルバム『THANK YOU BLUE』から。O.N.O(THA BLUE HERB)と共作したこの曲のアブストラクトな造型は、バンドの生演奏によりさらに強度が増し、〈最近なんだかグレイ〉という歌詞が自粛でモヤモヤしている今はとりわけ響く。裸足でステージを自由に動きながら歌うDaokoの周りにはソファーや小さいテーブルとライトが設えてあり、彼女の部屋をイメージさせる。これは自分の部屋で音楽をつくり、そこから世界へ発信してゆく彼女らしいセットといえるだろうか。

最新作『anima』から披露されたアキレス腱」は、編曲にアルバムのプロデューサーの片寄明人、永井聖一が加わった曲で、この日は永井もギターで参加。バンドにツインギターを迎えるのは、昨年の6月24日にSUPER DOMMUNEとDAOKO公式YouTubeチャンネルで行われた無観客配信イベント以来となる。その手応えが今回のライブに反映されているのは間違いないが、2019年以降、このバンドと共にツアーを行い、彼女は着実に自らの音楽をアップデイトしてきた。

2015年のインディーズの 3rd アルバム『Dimension』収録の「オートリロード」は、ライブアレンジを手がけるキーボード網守将平の巧みなアレンジにより幻想的なトロカピリズモに仕立てられ、そのまま「御伽の街」に突入してゆく。新旧の曲を並べても違和感なく、むしろ今に響かせるリアレンジの手腕は2019年からライブをサポートしてきた網守とバンドの成せるワザだろう。〈新時代生きたい死にたい機械仕掛の未来意味ないきりない〉と歌っていた18歳のDaokoのヒリヒリするような表現力が、このバンドでは存分に発揮されるのだ。

小袋成彬の抑制の効いた「御伽の街」のトラックもバンドの躍動感溢れる演奏で踊り出したくなる要素満載だが、今はまだステージに拍手をおくる以外にない。続く「ZukiZuki」は、バンドメンバーであり、DATSやyahyelで活躍する大井一彌(Dr)が編曲したナンバー。アルバム以上に実験的なサウンドながら、こういう攻めの曲でより個性が磨かれるのがDaokoのワン&オンリーな面白さ。歌とラップと声を自由に使い分け、独自の世界に染め上げてゆく。SNS時代の危うさや脆さを描いた「ネガティブモンスター」をダビーなアレンジで斬新に聴かせた後は、鈴木正人(B)が編曲した『anima』の「Sorry Sorry」。鈴木の雄弁なベース、西田修大のエモーショナルなギターの渦の中で、自らが紡いだ鋭く尖った言葉をゆったり踊りながら歌うDaokoは、やはりただ者ではない。

10分間の換気タイムの後の第二部は、「VOICE」から始まった。前半で緊張がほどけたのか、リラックスした表情は伸びやかな歌声にも表れている。配信を考慮した上でのライブだけに通常より神経を使う部分はあるはずだが、新作を携えて1年ぶりのステージを信頼のおけるバンドと行い、観客が目の前にいる悦びが彼女から溢れているようだった。ドラマチックで幻想的な「ゆめうつつ」の重厚な演奏に決してひけを取らないDaokoの歌と表現力は、昨年よりスケールアップしている。

〈ハロー ハロー こちら東京は渋谷区から「こんにちは」「こんばんは」〉。

ソファーに腰掛け、本を手にとった彼女が囁く。その本に書かれたストーリーを語るように披露されたのは「海中憂泳」。自身がプロデュースや作曲に携わり、アルバム制作に深くコミットした『anima』は、Daokoにとって新しい扉を開けた作品になったが、その中でも白眉ともいえる画期的な曲がタイトル・チューンの「anima」。「網守さんの作るDaokoの曲を聴いてみたかった」彼女も「スゴい曲が来ちゃった」と怯んだほどだというが、複雑でスリリングな展開のこの曲がライブでも聴けたのは興奮した。演奏力と集中力の高いミュージシャンたちのプレイにDaokoは自らのスタイルで挑み、音の海の中を泳ぐように見事に歌いきった。

「ゆめみてたのあたし」で、〈みんなと出会えて良かった あたしひとりじゃないんだ〉と歌った彼女は感極まったように見えた。15歳で動画配信サイトに投稿を始めてキャリアを重ねてきた彼女にとって、ライブは人と繋がるかけがえのない時間でもあるのかもしれない。

「言いたいことがありすぎてまとまらないけれど……」と、気持ちを表す言葉を探しながら、「今はお話ができないけど、脳内に直接語りかけています。皆さん、一緒に楽しんでいきましょう」と語った。

ゆったりしたテンポで穏やかな春のような空気を運んだのは、十代の頃の曲「fly」、「真夏のサイダー」。新作を中心としながら、過去を愛おしむようにポップでドリーミーなバンドサウンドで繋ぐ過去と現在と未来。そのまま「水星」へ続くと、いつもならここでミラーボールが回り、体を揺らすところだが、コロナ禍では着席のまま手を左右に振ることしかできなくとも、惜しみない拍手をおくり、熱演に応えようとする客席の景色は忘れ難いものだった。

「こんなにたくさんの拍手をいただくのは久しぶりで、少し照れくさいです。これしか言えないんですけど、最後まで一緒に音楽を楽しみましょう」。

郷愁を誘うイントロが印象的な「ストロベリームーン」では孤独や痛みを抱えた人に寄り添うように歌う。切れ味鋭い言葉や表現に才気をほとばしらせながら、彼女は〈わたしの悲しみにきみが気づいてくれたとき すごくうれしかったよ〉というリリックを優しく伝えられるヴォーカリストでもあるのだ。

「また会える日があることを信じています」という言葉と共に本編ラストに披露されたのは「Cinderella step」。ポップでハッピーな曲を伸び伸び歌う彼女の姿に、今はたとえ先が見えなくても、希望の匂いがした。

大きな拍手の中、アンコールに登場した彼女はバンドのメンバーを一人ずつ紹介。アルバム『anima』にも参加し、この2年のDaokoのライブを支えてきた5人はいずれも今の音楽界に欠かせないミュージシャンだが、「より深く音楽が楽しめるようになった」同志でもある。

アンコールの1曲目は、ゲーム・ミュージックの巨匠、田中宏和がChip Tanaka名義で作曲に参加した「帰りたい!」。ゲーム音を取り入れ、遊び心たっぷりなライブ・ヴァージョンにしてしまうこのバンドは、Daokoの魅力を進化させ、その音楽をさらに想像力豊かに拡げてくれた。彼女が「この音の中に自分がいることが嬉しくてしょうがない」というのもこの日のステージからはダイレクトに伝わってきた。

「皆さんのちょっとの光になればと思って表現を続けています。応援してくれると嬉しいです。ありがとう」

ようやく実現したライブに気持ちがいっぱいになるのも無理はない。最後は、Daokoが高校卒業時につくった「そつぎょう」。〈自力でここまで来れた訳なくて 見に来てよいつか私のライブへ〉と歌っていた彼女は今、大きなステージに立ち、世界に配信を待っているファンがいる。

「また会えるときを楽しみにしています」という言葉と晴れやかな笑顔を残し、ステージを後にした。

文 / 佐野郷子

Daoko「A(nima) HAPPY NEW TOUR 2021」
2021年1月31日 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

〈SET LIST〉
1. おちゃらけたよ
2. 愛のロス
3. GRY
4. アキレス腱
5. オートリロード
6. 御伽の街
7. ZukiZuki
8. ネガティブモンスター
9. SorrySorry
10. VOICE
11. ゆめうつつ
12. 海中憂泳
13. anima
14. ゆめみてたのあたし
15. fly
16. 真夏のサイダー
18. 水星
19. ストロベリームーン
20. Cinderella step
〈ENCORE〉
22. 帰りたい!
23. そつぎょう

配信ライブ情報

Daoko「A(nima) HAPPY NEW TOUR 2021」

出演:Daoko
サポートメンバー:キーボード・網守将平、ギター・永井聖一/西田修大、ベース・鈴木正人、ドラム・大井一彌

アーカイブ配信期間 : 2021年3月14日(日)18:00〜3月20日(土)23:00
チケット販売期間 : 2021年2月15日(月)18:00 〜3月20日(土)21:00
価格:2,750円(税込) ※投げ銭システム導入

チケット販売URL
https://l-tike.com/daoko/

Daoko

1997年生まれ、東京都出身。15歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1st アルバム『HYPER GIRL- 向こう側の女の子 -』をリリース。2014年には映画『渇き。』の挿入歌に「Fog」が抜擢され、庵野秀明氏率いるスタジオカラーによる短編映像シリーズ「日本アニメ( ーター) 見本市」の第3弾作品『ME!ME!ME!』の音楽をTeddy Loid と担当し、世界から大きな注目を集める。2015年には1st アルバム『DAOKO』でメジャーデビュー。2017年は映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌「打上花火」をDAOKO × 米津玄師で発表し、YoutubeでMVが3億回視聴される大ヒットを記録。2018年には3rdアルバム「私的旅行」をリリースし、第69回NHK紅白歌合戦に出場。昨年は写真と絵の個展 ”DAOKO × SHINKAI BABA 気づきEXHIBITION『Enlightening my world』、自主企画ライブイベント「チャームポイント」、新たなバンド形式でのツアーを成功させ、今年は「二〇二〇 御伽の三都市 tour」を開催。2021年にはDAOKO自身がプロデュース/作曲に深く関わった4thアルバム『anima』をリリース。小説や絵、自身のMVのコンテ・企画・衣装を手がけるなど多彩なクリエイティブ活動を展開している。

オフィシャルサイト
https://daoko.jp/

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