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前川優希&井澤勇貴らがスイートなフィーリングを届ける。畠中恵「しゃばけ」シリーズ Presents『シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~』上演中!

前川優希&井澤勇貴らがスイートなフィーリングを届ける。畠中恵「しゃばけ」シリーズ Presents『シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~』上演中!

畠中恵「しゃばけ」シリーズ Presents『シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~』が、3月13日(土)よりCBGKシブゲキ!! にて幕を開けた。
原作は発行部数890万部を突破した畠中恵の人気小説「しゃばけ」シリーズ。病弱な主人公と彼を手助けするこの世の存在ではない妖(あやかし)たちが難事件に挑む、笑いと人情味溢れるミステリー。本作は「Shining編」と「Shadow編」で紡ぐ連作集となっており、演出は今年ソロ活動をスタートさせたばかりの錦織一清が務め、音楽をNONA REEVESの西寺郷太、脚本を神楽澤小虎が担当。キャストには主人公の一太郎 役を前川優希、彼を守る妖たちを、仁吉 役に井澤勇貴、佐助 役に小沼将太、屏風のぞき 役に反橋宗一郎、獺(かわうそ)役に阿部大地、アマビエ 役に真城めぐみが名を連ねる。また、キーパーソンとなる場久 役を磯貝龍乎が挑み、人気原作の世界を歌や踊りで華やかに再現する。
初日前に行われたゲネプロ、「Shining編」、「Shadow編」の両作をレポートしよう。

取材・文・撮影 / 竹下力


幸せも不幸せもひとりで抱えることなく誰かと分かち合う

スイートなフィーリングに満ちている。アドリブを交えた楽しげなキャストたちの芝居、NONA REEVESの西寺郷太によるファンキーでソウルフルなディスコ・グルーヴ。全編にわたり笑いと優しさが通底し、ポップで親しみやすく、舞台にのめり込んでいる間は心がひと息つける安心感がある。わずか7人のキャストが描くのは、究極のイノセントな世界。誰しもお互いにいたわり助け合えば、誰もが幸せになる。そんなロマンティックな想像をかき立ててくれる。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

本作「Shining編」と「Shadow編」は、お互いの物語が繋がり合う構成となった連作集。どちらも見応えがあったが、もちろん、片方ずつでも楽しめる。
ここでは、それぞれの魅力を紹介していこう。

錦織一清のポップな演出と前川優希の優しい芝居が際立つ「Shining編」

「Shining編」は、怪談話の得意な噺家・場久(磯貝龍乎)が高座で口上をするシーンから始まる。それが終わると、アマビエ(真城めぐみ)が朗々とした美しい歌声を響かせ、今作の主題歌であるファンクナンバーに全員が歌って踊る圧巻のオープニングへと続いていく。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の一人息子、若だんなの一太郎(前川優希)は立派な商人になりたいと願うものの、病弱ゆえに寝込みがち。それでも「仕事をさせてくれ」と嘆願する一太郎をなだめるのは、手代であり、実は妖(あやかし)の仁吉(井澤勇貴)や佐助(小沼将太)。ふたりは一太郎のことが心配で何かと世話を焼いている。そこに屏風のぞき(反橋宗一郎)、獺(阿部大地)も集い、「長崎屋」の日常はいつも賑やかだ。

ある日、一太郎は誰かが助けを呼ぶ声に導かれる夢を見る。目を覚ました彼の手元には、謎の木札。それが何かの暗示のように、友人の七之助から助けを求められる。祖父が遺した船箪笥の引き出しが、どんなことをしても開かないという。七之助のために箪笥の謎解きに挑もうとした一太郎たちだったが、獺から誘われ、江戸で評判の噺家・場久(磯貝龍乎)の寄席を観に行くことに。しかし、噺の途中で場久が武士に斬りつけられる騒ぎが起きる。

その後、江戸中で摩訶不思議な事件が勃発。一太郎たちは七之助の相談事、江戸で起こっている悪夢のような出来事を解決する糸口を探し始める……。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

「しゃばけ」シリーズの基本構造は人間と妖怪が協力し合って事件を解決するというミステリーだが、一太郎の自己発見のお話でもある。一太郎はしばしば悪夢を見る。その悪夢とは、仁吉や佐助たち妖がいないひとりぼっちの世界。彼は妖たちが自分を助けてくれることのありがたさに気づきながら、自身の居場所を見つめ直していく。一太郎が仲間と共に歩む成長譚になっているのだ。「Shining編」では、一太郎という“個”にスポットが当たり、彼の葛藤や仲間との喜びが中心に描かれている。

まずは「Shining編」の中心で、一太郎を丁寧に演じていた前川優希に拍手を送りたい。感情の起伏を抑え、抑揚の少ない声に他者を思いやる気持ちを込める。病弱な身体ながら、誰かのために役に立ちたいと奮闘している一太郎を演じる前川の健気な芝居は、観客に生きることの意味を考えさせる。

それを支える仁吉 役の井澤勇貴と佐助 役の小沼将太の一太郎を思いやる愛情溢れる芝居、そして漫才のようなコンビネーションもさすがで面白かった。また、かまびすしい屏風のぞき 役の反橋宗一郎、獺 役の阿部大地のアドリブを効かせた堂々とした芝居も楽しい。そこにスパイスを加えるアマビエ 役の真城めぐみのソウルフルな歌は絶品だ。
この周りのサポートによって前川の優しい芝居がより輝く。それこそが“Shining”たる所以だと思う。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

一太郎の内省的なお話にせずに、エンターテインメントとして昇華した錦織一清の手腕も素晴らしかった。江戸時代の意匠を借りつつも、現代的な歌と踊り、ギャグやアドリブをそこかしこに散りばめて観客を笑わせる。庶民的なユーモアの中に生存の哀しみをも感じさせる味わい深い演出だった。歌、踊り、アドリブ、ギャグ、なんでもありなのに、物語の骨格を理解し、芯が通ったブレない演出にこそ、錦織の矜持がある。それから徹底した平等主義にも目を見張った。どのキャストにも同じように見せ場を作り、見どころ盛りだくさんに、演劇の魅力である生の迫力をも感じさせてくれる。中でも、一太郎の心の機微を芝居ではなくバラードで聴かせたシーンは白眉の出来栄えだった。「Shining編」がエンターテインメントとして優れた作品であることの証左になっていた。

謎解きの快感を味わせてくれる神楽澤小虎の作劇と井澤勇貴や小沼将太らが紡ぐ群像劇が魅力の「Shadow編」

「Shadow編」の見どころは“妖たち”を中心にした群像劇の仕上がり。一太郎と妖たちのドラマをメインにし、「Shining編」より妖たちのキャラクターが際立っていた。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

こちらの物語は、アマビエの口上から始まる。
“からくり箪笥”の謎解きはできたが、噺家の場久は行方しれずのまま。「長崎屋」では相変わらず、寝込みがちな一太郎を、仁吉や佐助が助けている。

江戸に少しの平穏が戻ったかのように見えたある日、場久が一太郎たちに助けを求めにくる。場久は自らのことを、和尚の描いた町民の眠りを守る「ばくのふだ」だと明かす。

そして、武士に斬りつけられてから高座もできなくなった場久に泣きつかれた一太郎は、妖たちに協力してもらって犯人探しを始めることに……。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

「Shadow編」は神楽澤小虎の脚本のキレが見事。後半にかけて伏線が怒涛のように回収されていく様はスリリングだ。原作を忠実にアレンジしながら、舞台ならではの出口を示してカタルシスを生む。原作へのリスペクトも大いに伝わってくる。齢3千年を生きた大妖(たいよう)の皮衣(かわごろも)の血筋であるがゆえに、怪異たちに狙われる自らの悲運に抗おうとする一太郎の果敢な姿勢と、茨の道を進む一太郎と共に歩こうとする妖たちの優しさと勇気。神楽澤は原作から滲み出るポジティブなバイブスを掬い上げ、しっかりと舞台に表出していたと思う。

「Shadow編」での一太郎 役 前川のかすかに微笑む達観した芝居は見逃せない。全体的には妖を演じるキャストを引き立たせることに注力しながら、大きく包み込むようなオーラがあった。アマビエ 役の真城めぐみは、ファンクなナンバーから端正なバラードまで歌い上げ、劇場に感情のグラデーションをつける。獺 役の阿部大地も、屏風のぞき 役の反橋宗一郎も、一太郎のために生きる殉教的な芝居が胸を打つ。「Shining編」では場を回す役だった場久 役の磯貝龍乎は一太郎のメンターとして、人間が生きることの意味を伝える芝居に感動した。

佐助 役の小沼将太はべらんめえ調の台詞を巧みに操り、ざっくばらんとした性格の役が憑依して江戸時代に実際にいそうなリアルさがあった。また、仁吉 役の井澤勇貴は、クールなのに愛嬌があって憎めない役を爽快に演じ切った。
「Shadow編」のふたりの芝居には、届きそうなのに届かない、すぐ目の前にいる誰かに注がれた“愛”の儚さまでも表現したかったと感じる。一太郎に対する無償の愛に、いつか失ってしまうのではないかという暗い影が差し込み、愛という普遍的な感情が抱える両義性を、ふたりがデュエットをとる切ないナンバーで端的に表現していた。

そういう意味で、「Shining編」は演劇の持つなんでもありの面白さを、「Shadow編」は物語の楽しさを味わう仕掛けになっていたと思う。もちろん、両編の魅力がそれぞれ丁寧に織り込まれ、互いに影響を及ぼし合ってもいるので、どちらも存分に楽しむことができる。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

「Shining編」と「Shadow編」を通してわかることは、人はひとりでは生きていけないということだ。陽の光があるからこそ影は生まれる。どちらも切っても切れない関係だ。だからこそ、幸せも不幸せもひとりで抱えることなく誰かと分かち合う。そばにいる誰かと繋がり合うことの大切さを教条的でなく、あくまでカジュアルに教えてくれたところに本作の見どころがある。当たり前の、誰にでも平等に与えられた幸せな日常はいつだって身の回りにある。そんな現代にも通じるメッセージがこめられている。

どんな強い人間でもひとりで生きていくことができない

「Shining編」のゲネプロ後に、前川優希、井澤勇貴、小沼将太、反橋宗一郎、磯貝龍乎、阿部大地、真城めぐみ、演出の錦織一清が登壇し、舞台にかける意気込みをひと言ずつ語った。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

まず、演出の錦織一清は「まだまだ大変な時期で、多くの制約があるなか、この公演ができることに感謝しながら本作を作らせていただきました。お芝居はいつもカジュアルにしたいと思っているので、こんな時期でも、フラッと劇場に足を運んで気楽に観劇できるお芝居になったと思います。若い方と一緒になることは、人生の中で最も楽しい瞬間だと思っているので、今作でみんなと仕事ができて楽しくて(笑)。多くの方に観ていただきたいと思っています」と挨拶した。

アマビエ 役の真城めぐみは「私は錦織(一清)さんと同じ歳のせいか、錦織さんのギャグで稽古中も笑ってしまいました。普段、畑の違う場所で活動している人間ですが、皆さんを楽しませたいという目指す場所は一緒なので、このような状況ですが、ひとりでも多くの方が観て、笑っていただければ幸せです」と続けた。

振袖を着た小姓姿に化けた妖の獺 役の阿部大地は「このような時期に、この座組みで、こんなに楽しくていいのかと思いながら毎日稽古をしていました。「Shining編」と「Shadow編」、どちらも素敵な作品ですので、お客様に楽しんで帰ってもらいたいです」と語った。

噺家の姿に化け、悪夢を食べる妖の獏、場久 役の磯貝龍乎は「コロナ禍で大変な時期ではありますが、今作は、なんでもないようなことが幸せだと気づかせてくれる、今の時代にぴったりの作品だと思います」と本作の魅力を紹介。

若だんなの家の付喪神である屏風のぞき 役の反橋宗一郎は「ゲネプロの最中も錦織さんの笑い声が聞こえてきたかと思いますが(笑)、稽古の最中もそうで。錦織さんは脚本の内容をすべて覚えていらっしゃって、脚本を開かない。稽古場では僕たちのやりとりを耳で聞いて、思ったことを全部おっしゃってくれた。僕らと同じような環境で楽しさもつらさも分かち合ってくれたので、板の上にフランクに立てると思います。どの公演も違う味が出てくると思いますし、楽しみながら本番に臨みたいです」とコメント。

長崎屋の手代で犬神という妖の佐助 役の小沼将太は「稽古場から錦織さんが笑わせてくれました。本番も稽古場で得たパワーをお客様に伝えられるように頑張りたいと思います」と述べた。

長崎屋の手代で白沢(はくたく)という万物を知る妖の仁吉 役の井澤勇貴は「“しゃばけ”シリーズは、いろいろなところで舞台化され上演されています。今回は、演出を錦織さん、そして僕らがキャストになって、新しく生まれ変わった“しゃばけ”をお届けできると思います。このご時世でも、思わず笑っていただける作品になっていますので、千秋楽まで怪我なく頑張りたいです」と意気込んだ。

最後に、本作の主人公、長崎屋の一人息子である一太郎 役の前川優希が「一太郎は芯が強いけれど病弱で、妖たちに世話を焼いてもらっていますが、どんな強い人間でもひとりで生きていくことができないというメッセージは、現代に生きる僕らにも通じると思います。演劇も同じで、僕ひとりでは舞台に立つことはできませんし、ましてや、お客様がいなければ成立しません。そんなメッセージを込めつつ、皆様に素敵な舞台を届けたいと思います」と締め括った。

シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~ WHAT's IN? tokyoレポート

フォトセッションの後、錦織と前川による合同インタビューと前川によるソロインタビューが行われたので簡単に触れておこう。

錦織の印象を聞かれた前川が「皆さんがおっしゃるように稽古場から笑わせてくださいました(笑)。稽古が進むなか、いろいろ質問させてもらいましたが、真摯に答えていただいて楽しい時間でした」とコメントすると、錦織は「僕は高度経済成長期に育ってガツガツした演出をしますが、前川さん含め今の若い子たちは優しい印象で勉強になりましたね」と笑顔で返した。

その後の前川単独インタビューでも錦織の演出について「錦織さんの提案で作ったシーンが多かったですね。錦織さんは僕らと同じ目線に立ってくださったので嬉しかったです」と触れ、今作で座長を務めることについては「自分の役を大切にしている方が多くて、まとめるよりも皆さんの個性を活かそうと思いました。僕は座組みで最年少ですが、井澤(勇貴)さんに座長として“気負わなくていいよ”と言われて気がラクになったので、カンパニーのみんなと一緒に手を取り合いながら作品を作り上げたいです」とあらためて意気込みを語った。

本公演は3月21日(日)までCBGKシブゲキ!!にて上演。3月15日(月)13時公演「Shining編」と18時公演「Shadow編」は生配信が決定。本作のDVDが9月29日(水)に発売される。詳細は公式サイトをチェックしよう。

畠中恵「しゃばけ」シリーズ Presents『シャイニングモンスター~ばくのふだ(Shining編/Shadow編)~』

2021年3月13日(土)~3月21日(日)CBGKシブゲキ!!


<ライブ配信>
[配信公演]3月15日(月)13:00公演「Shining編」
      3月15日(月)18:00公演「Shadow編」
[アーカイブ期間]各公演生配信終了から4月14日(水)23:59まで
[配信チケット販売]カンフェティ

<DVD発売>
発売日:2021年9月29日(水)
価格:【本公演DVD】7,000円(税別)
   【メイキングDVD】4,000円(税別)
収録内容:【本公演DVD】3月15日(月)公演「Shining編/Shadow編」「ゲネプロ取材映像」
     【メイキングDVD】稽古場映像、バックヤードなど(予定)
【本公演DVD】・【メイキングDVD】同時予約特典:メイキングミニパンフ(非売品)
※特典商品は予約受付のみ。
※収録内容・発売日等は製造状況により多少変更となる場合があり。
●詳細はこちらから


STORY:
今日も元気に(!?)寝込んでいる若だんな。立派な商人になるために働きたいと訴えますが、長崎屋の手代で兄やたちの仁吉と佐助は聞き入れてくれません。渋々おとなしくしているものの、誰かの役に立ちたいと願う若だんなは、ひょんなことから何者かの字で「助けて下さい」と書かれた謎の木札を手にします。木札の主のためにと、持ち前の聡明さとやさしさで、続々と持ち込まれる相談事を解決へと導く若だんな。そんなある日、評判の噺家“本島亭場久”の怪談噺を聞きに寄席へ出かけます。しかし! 突然客の一人が刀を抜くという騒動に! その事件以降お江戸は不思議な悪夢のような出来事であふれ返り……。

原作:畠中恵
「しゃばけ」シリーズ(新潮社刊)より
『ひなこまち』所収
「ばくのふだ」「ろくでなしの船箪笥」
演出:錦織一清
脚本:神楽澤小虎(MAG.net)
音楽:西寺郷太(NONA REEVES)

出演:
一太郎 役:前川優希
仁吉 役:井澤勇貴
佐助 役:小沼将太
屏風のぞき 役:反橋宗一郎
場久 役:磯貝龍乎
獺 役:阿部大地
アマビエ 役:真城めぐみ

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@Lol_inc_www)

挿絵:柴田ゆう
©2001 畠中恵/新潮社 ©2021 Lol