Report

壮大なスケールで描かれた舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-。刀剣男士たちが見上げた空に馳せた想い──

壮大なスケールで描かれた舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-。刀剣男士たちが見上げた空に馳せた想い──

舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- が、3月28日(日)に千秋楽を迎えた。1月10日(日)の開幕から約3ヵ月間にわたり、IHIステージアラウンド東京で上演された話題作だ。
本作は、「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)を原案とした舞台シリーズ、通称“刀ステ”の中でも最大規模のステージ。ダイナミックな殺陣と壮大な物語で観客を魅了した。
あらすじと共に、刀剣男士をはじめとする登場人物たちの魅力、活躍ぶりを振り返る。

取材・文 / 片桐ユウ


戦い抜いた刀剣男士たちには、突き抜けるような蒼空がふさわしい

冒頭、「大坂の陣」の説明を担うのは刀剣男士・一期一振(本田礼生)。心地よく柔らかな声で「方広寺鐘銘事件」を発端にした、豊臣と徳川の衝突について語り出す。

続く場面では、豊臣秀頼(小松準弥)と大野治長(姜 暢雄)、徳川家康(松村雄基)の両陣営が戦の準備に入る様が描かれる。背景に浮かぶ家紋の迫力も相まって、歴史作品としての重厚感が溢れる。
ここで驚かされるのは、家康の側に刀剣男士・太閤左文字(北乃颯希)の姿があることだ。
なぜ、太閤左文字は徳川家康の元にいるのか……。

そして豊臣軍にも、「ジョ伝 三つら星刀語り」(2017年上演)で黒田官兵衛の元に身を寄せていた織田信長の従者、弥助(日南田顕久)と、「時間遡行軍」の阿形(安田桃太郎)と吽形(杉山圭一)が現れる。
いったいなぜ弥助と時間遡行軍が行動を共にしているのか……。

場面が切り替わり、並び立つ刀剣男士が次々に名乗りを上げる。一期一振による「それでは、出陣いたしますか」との優雅な宣言を合図に、殺陣とダンス、歌を織り交ぜたオープニングがスタート。
彼らのカッコよさと、提起された不穏な謎を焼き付けて「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」は始まった。

まず惹きつけられるのが、IHIステージアラウンド東京特有の巨大スクリーン、回転する座席の浮遊感、そして舞台セットの迫力である。

豊臣側の戦国武将・真田信繁(鈴木裕樹)が作り上げた出城「真田丸」の朱色、出陣した刀剣男士たちが落ち合う場所として使用する「岩場」の高さ。広い空間に組み立てられた舞台セットの説得力をこれでもかと見せつけられた心地だ。

一方で、太閤左文字が回想する「二条城」会見のシーンは、スクリーンの派手な映像とポンポンを持ちチアリーディング風に場を盛り上げる兵士たちによってファンシーな仕上がりに。秀頼と家康のやりとりはコメディタッチに綴られ、シリアスな物語の中で清涼剤的な役割を果たす。

今作は多方向から描かれ、それぞれに重みと見応えがある。

まず戦国武将たち。
豊臣秀頼は天下人だった父・秀吉から世を任されたという重責に加えて、自分が本当に秀吉の息子なのかという疑念もあり、「豊臣秀吉の息子」と呼ばれる己の立場に思い悩んでいる。秀頼にとって「大坂の陣」は、戦国武将として“間に合った”千載一遇のチャンスだ。

秀頼を支える大野治長は、そんな悩み多き主君に寄り添い、支えようと奮闘。真田信繁は秀頼同様、偉大な父という存在に悩みつつも戦国武将としての活躍を切望している人物。だが「歴史」の行く末を知ってしまったばかりに苦しむことになる。

徳川家康は、後世で“狸”と呼ばれるような慎重でしたたかな人物とは思えぬ豪胆さで周囲を圧倒する。しかし彼もまた戦国武将として戦の中で散りたいという願望を抱いており、その人間くささがひと波乱を巻き起こす。

己の人生という“一人分”以上のものを背負って葛藤しながらも、ひとりの人間としての在り方を模索する彼らの生き様が熱い。

歴史上の人物たちの顛末だけでも“物語”となるのは数々の歴史創作物が証明しているが、舞台『刀剣乱舞』という世界の中で描かれることによって、これまでの作品とは違った一面を目にすることができる。

松村雄基の演じる家康は一声で天下人のそれとわかるような強さを備えており、大物感がすさまじい。有無を言わせぬ気迫と貫禄だ。
真田信繁 役の鈴木裕樹と大野治長 役の姜 暢雄は、特撮やドラマ、舞台と幅広く活躍中。鈴木は泥くさく激しく、姜は落ち着きと色気を持って、豊臣家に使える忠臣を演じ切る。

豊臣秀頼 役の小松準弥は、2.5次元ミュージカルで人気を博しつつ、硬派な舞台作品にも精力的に出演してきた注目の舞台俳優。悩み多き青年の等身大さと唯一無二のカリスマ性を繊細に織り交ぜ、風貌や性格は冴えないものとして描かれがちな秀頼を魅力的な人物として存在させてみせた。

そして、この戦を大きくかき回す弥助と「時間遡行軍」の阿形・吽形。
彼らが今作で登場した理由には、“刀ステ”シリーズとして脈々と続く因縁がある。「歴史の狭間(はざま)人」になった弥助の思いもよらない行動が、この「大坂冬の陣」を形作っていく。
弥助 役の日南田顕久は「ジョ伝 三つら星刀語り」の頃より異彩を放っていたが、今作ではさらに重要な役どころを担い、その役割を存分に果たしている。

それから、刀剣男士たち。
混乱を極める各陣営に入り込み、歴史上の人物たちを見守りながら過ごす刀剣男士たちもまた、この「歴史」のひとつとして激しい戦いを繰り広げることになる。

歴史上の人物たちや敵対する弥助らの生き様を目の当たりにして、刀剣男士たちも各々の悩みや因縁に決着をつけていく物語が今作の要であり、大きな見どころだ。

中でも大きな変化を起こすのが、今作の中心である一期一振。
刀剣の一期一振は、豊臣秀吉の愛刀とされた太刀。「大坂の陣」で焼け、打ち直しをされたという経緯がある。それ故に刀剣男士の一期一振は、刀であった頃の思い出を持たない。一期一振は兄弟たちから「いち兄」と慕われる存在でもあるが、だからこそ秘めたる“喪失感”を処理しきれずにいる。
そんな彼が秀頼に共感を覚え、元の主(持ち主)であった秀吉を思い起こす場面は感動的だ。

一期一振 役の本田礼生は今作が“刀ステ”初出演。柔和な顔立ちと穏やかな物腰が一期一振にハマっている。さらにダンスとアクロバットで培ってきた身のこなしで、複雑な立ち回りをダイナミックかつ優雅に見せた。

一期一振と同じ刀工、粟田口吉光の作である鯰尾藤四郎と骨喰藤四郎も記憶が焼失している刀剣男士。骨喰藤四郎は特に記憶が残っておらず、アンニュイな雰囲気が漂っている。それを励ます前向きな鯰尾藤四郎という、兄弟関係が微笑ましい。
鯰尾藤四郎 役の前嶋 曜、骨喰藤四郎 役の北川尚弥、両者とも弟としての可愛らしさと、立ち回りのときに見せる切れ味の良さとのギャップが印象的だ。

豊臣と徳川の手を渡り歩いた太閤左文字は“刀ステ”シリーズ初登場。両陣営を見てきた刀剣として、また謎めく存在として物語の鍵となる刀剣男士である。
演じる北乃颯希もシリーズ初参加だが、物怖じしない立ち振る舞いで場面をグイグイと引っ張り、テンションを落とさぬままラストまで愛くるしくステージを駆け回った。

太閤左文字の兄弟である宗三左文字を演じるのは佐々木喜英。初演とその再演である「虚伝 燃ゆる本能寺」(2016年・2017年上演)以来の“出陣”となったが、久々とは思えぬ安定した存在感、かつ妖艶さを振り撒いた。彼の太刀筋は優美で力強く、目を奪われる。

宗三左文字と同じく、落ち着いた物腰で「本丸(刀剣男士たちの本拠地)」の古参感を漂わせていたのが加州清光。“刀ステ”シリーズには初登場だが、劇中では「本丸」に初期からいたことが語られる。
そこに説得力を持たせられたのは、演じた松田 凌のキャリアと覚悟があってこそだろう。この先の歴史を知る存在として家康を叱咤する場面は、心からの叫びに震えた。

“刀ステ”シリーズの軸を担う山姥切国広 役・荒牧慶彦とは共演歴もあってか、山姥切国広と加州清光の二振りで語り合う場面や立ち回りの最中、互いへの信頼感が美しく伝わってきたことも特筆しておきたい。
山姥切国広を演じる荒牧慶彦は、より削ぎ落とされた感触。何気ない言葉や物静かな姿勢の中からも確かな自負心が見える。山姥切国広が対峙する因縁と、その戦いぶりに息を呑んだ。

刀剣男士たちそれぞれが魅了した戦いの果て、クライマックスの壮大な立ち回りはIHIステージアラウンド東京ならではの演出。客席の回転に従って、観客はキャスト総勢による圧巻の殺陣を堪能できる。

戦い抜き、さだめられた「歴史」を守った刀剣男士たち。彼らには、なるほど突き抜けるような蒼空と「天伝 蒼空の兵」というタイトルがふさわしい。

続く後編のタイトルは、「无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」。
「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」から続く伏線が解き明かされる瞬間を心待ちにしている。

TBS開局70周年記念 舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- Supported by くら寿司

2021年1月10日(日)~3月28日(日)東京都 IHIステージアラウンド東京

原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)
脚本・演出:末満健一

出演:
一期一振 役:本田礼生
鯰尾藤四郎 役:前嶋 曜
骨喰藤四郎 役:北川尚弥
宗三左文字 役:佐々木喜英
加州清光 役:松田 凌
太閤左文字 役:北乃颯希

真田信繁 役:鈴木裕樹
大野治長 役:姜 暢雄

豊臣秀頼 役:小松準弥
弥助 役:日南田顕久
阿形 役:安田桃太郎
吽形 役:杉山圭一

徳川家康 役:松村雄基

山姥切国広 役:荒牧慶彦

アンサンブル(五十音順):
及川崇治
淡海 優
奥平祐介
川手利文
工藤翔馬
小西主馬
澤田圭佑
下尾浩章
じゃっき〜
多胡亮平
田嶋悠理
千葉雅大
日野亮太
星 賢太
真鍋恭輔
宮永裕都
村山邦彦
山下 潤
山中隆介
横田 遼

公演オフィシャルサイト
公演オフィシャルTwitter(@stage_touken)

©舞台『刀剣乱舞』製作委員会 ©2015 EXNOA LLC/Nitroplus

TBS開局70周年記念 舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-

2021年4月11日(日)~6月27日(日)東京都 IHIステージアラウンド東京

原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)
脚本・演出:末満健一

三日月宗近 役:鈴木拡樹
数珠丸恒次 役:高本 学
骨喰藤四郎 役:三津谷 亮
薬研藤四郎 役:北村 諒
へし切長谷部 役:和田雅成
大千鳥十文字槍 役:近藤頌利
泛塵 役:熊谷魁人
鶴丸国永 役:染谷俊之

豊臣秀頼 役:小松準弥
猿飛佐助 役:風間由次郎
霧隠才蔵 役:河合龍之介
穴山小助 役:牧田哲也
三好清海入道 役:坂口修一
三好伊三入道 役:竹村晋太朗
海野六郎 役:高田 淳
由利鎌之助 役:行澤 孝
筧十蔵 役:久保田 創
望月六郎 役:伊藤教人
根津甚八 役:星璃

高台院 役:一路真輝

ほか

公演オフィシャルサイト
公演オフィシャルTwitter(@stage_touken)

©舞台『刀剣乱舞』製作委員会 ©2015 EXNOA LLC/Nitroplus