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加藤和樹&朝夏まなと&矢田悠祐らがバーナムの作ろうとした“楽園”を高らかに歌う。ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』上演中!

加藤和樹&朝夏まなと&矢田悠祐らがバーナムの作ろうとした“楽園”を高らかに歌う。ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』上演中!

日本初上陸となるブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』が、3月6日(土)に東京芸術劇場 プレイハウスで幕を開けた。
19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収めた興行師のP.T.バーナムの半生を描くストーリー。主人公のフィニアス・テイラー・バーナム役はドラマ・映画・舞台のみならず音楽シーンでも活躍する加藤和樹、ヒロインでバーナムの妻のチャイリー・バーナム役を元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなとが務め、矢田悠祐、フランク莉奈と綿引さやか、原 嘉孝(ジャニーズJr.)と内海啓貴、中尾ミエなどが出演。顔ぶれ豊かな実力派キャストたちが、「木下大サーカス」の協力も得てサーカスの世界をゴージャスに舞台上に立ち上げる。
初日が開けた翌日に行われた公開ゲネプロの模様をレポートしよう。

※ゲネプロのWキャストはフランク莉奈と原 嘉孝(ジャニーズJr.)。

取材・文 / 竹下力


みんなを笑顔にしてくれる感動作

きらびやかなメロディーのオープニング・ナンバー「夢追い人が生まれてくる」で、バーナム役の加藤和樹が軽快なタップダンスに合わせ、力強いチャーミングな歌声を劇場に響かせる。すると、一瞬にして太平洋を渡り、19世紀半ばのアメリカのサーカス小屋にトリップ。P.T.バーナムの作ろうとした“楽園”が目の前に現れる。

物語は、バーナム(加藤和樹)が自らのサーカスを紹介。そこにパフォーマーであるリングマスター(矢田悠祐)が、茶々を入れながらバーナムの人生を語るところから始まる。

人を楽しませるためなら口八丁手八丁を尽くすバーナムが、ジョイス・ヘス(中尾ミエ)という女性を“世界最高齢の160歳”としてサーカスで売り出したことから、彼の興行師としての人生はスタートする。一方、妻のチャイリー(朝夏まなと)は、バーナムには夢追うことを諦めてきちんとした職業について欲しいと願っている。

しかし、「見世物こそが自分の世界に彩りを与えてくれる」と考えるバーナムは、博物館の経営をはじめ、世界で最も小さい男、トム・サム将軍(矢田悠祐)やスウェーデン人のオペラ歌手、ジェニー・リンド(フランク莉奈)をプロデュースして、その名をアメリカ全土に広めていく。

バーナムはちょっとした気の迷いでジェニーに心を奪われチャイリーを裏切ってしまうのだが、それでも献身的に愛してくれるチャイリーを忘れられず、ジェニーの元を離れ、チャイリーが望むような人間になろうと決心する。時計工場で働いたり、地元の市長に選ばれたりと、安定した生活を送ってはいるが、バーナムはサーカスの華やかな世界を忘れることができなかった……。

白い壁が舞台を囲み、天井からサーカスのテントを模した電飾がぶら下がり、ミラーボールが光を明滅させる。その中で壁に動物たちの映像が映り、実際に俳優たちが曲芸を披露する。すると、目の前でサーカスのアトラクションが本当に行われているようなスリリングな体験を味わう。悲しさや切なさを蹴飛ばして、バーナムの人生譚がコミカルに笑いを交えながら進んでいく。

加藤和樹がインタビューで「時代に見合った作品」と語ってくれたけれど、少数精鋭に絞ったキャスト、映像出演のフィリップ・エマールと石田純一(Performer Ai)のパフォーマンス映像を巧みに使いながら、何十人もの人たちがそこに生きている、そんな壮大な演出にしてみせた荻田浩一の手腕が見事だった。

演出に限らず、今作の特徴は、一度聴いたら耳から離れないナンバー。曲を聴くだけでも相当楽しめる。曲調はポップなのに、半音階だらけのコード進行で構成された難曲揃い。なのに、歌い手は笑顔で楽しそうに歌っていて、リズミカルな曲調に心もウキウキしてしまう。
ジョイス・ヘスが歌う「年寄りで良かった」の中尾ミエのコブシの効かせ方も、「大きいことがいいわけじゃない」で見せたトム・サム役の矢田悠祐の透き通る声のソロも個性的だったし、固有名詞を高速でまくし立てる「博物館ソング」はラップのように現代的なリズムを刻み、加藤和樹と朝夏まなとがデュエットとそれぞれソロを取るバラード「我が人生の色」ではふたりの色彩豊かな声色が混じり合い、バーナム夫妻の“愛と絆の強さ”を感じることができる。さらに作曲家のサイ・コールマンの精神性を引き継ぐ、キャスト一同によるマーチング・ナンバー「サーカスこそ人生だ」はつい踊り出したくなるキャッチーで秀逸な曲だった。

加藤と朝夏以外の俳優は二役・三役を演じ、キラキラした衣裳の早替えを幾度もこなして大変そうながらも、笑顔を忘れない“プロフェッショナル魂”を炸裂させた芝居で見応えがあった。すべての役に存在する意味があって、みんなが生き生きしている。ミュージカルの大きな魅力である、メソッドを超えた、観客の心を鷲掴みにして世界に引き込む瞬間をたくさん作ってくれている。

ジョイス・ヘスとブルースシンガー役の中尾ミエの心に染みわたる枯れた台詞回しやブルーズは一聴の価値があり、ジェニー・リンド役のフランク莉奈の瑞々しいソプラノは今作のハイライトのひとつ。エイモス・スカダー役の原 嘉孝(ジャニーズJr.)もブレない安定した芝居を見せる。

三役以上を担当した矢田悠祐は、リングマスターで語り部をこなし、ジェームス・A・ベイリーでバーナムの人生を導くメンターのような役を演じ、トム・サムでは可愛らしいキャラに声色を変えてソロを歌ったりと、縦横無尽の大活躍。芝居には隙がなくて、歌はどこまでも伸びやかに劇場を駆け巡る。

チャイリー・バーナム役の朝夏まなとは、バーナムを叱咤したり、反駁しあうけれど、彼を支えようとする母性を感じさせる力強い芝居を見せる。現実を見据えながら、夢見ることは悪くないと自らに言い聞かせ、バーナムを支え続ける芯の強い彼女の、どんな現実にも負けない凛とした佇まいが美しかった。朝夏の低域から高域まで安定した歌声が、チャイリーのブレない信念を伝えてくれる。

フィニアス・テイラー・バーナム役・加藤和樹の、コミカルにステップを踏み、表情を崩して可愛らしく彼の心象を表現し、チャイリーの愛に生きる、シニカルさとは無縁の芝居が実在のバーナムの生き写しのようにリアルだった。
このお話は、“無垢さ”が無敵であるというテーマもあるはず。それは「60秒ごとに素晴らしい現象が起きてあらゆる夢を支えている」といった夢見がちなバーナムの台詞にも表れているだろう。だからこそ、彼は誰に対してもフラットに接するし、ユーモアと優しさと博愛に満ちていて、みんなを巻き込んで輝きに溢れた未来を想像する。何度失敗しても夢見ることを諦めないし、そのたびに立ち上がって笑顔で夢を追いかけ続ける。そんなイノセンスを加藤は一心に体現していた。

なかでも、バーナムとチャイリーは、お互いパートナーとして平等であることを大切にしている。ちょっとした諍いも仲睦まじいやりとりも愛おしくて、“夢見る男性”と“現実的な女性”の対立というステレオタイプな関係にならない奥行きが、加藤と朝夏の芝居の掛け合いにはあった。
ふたりが奏でていたのは、長い歴史に積もった、世界中のいくつもの記憶にかけがえのない想いが混じり合って生まれる、“説明できない普遍的な感情”だ。バーナムとチャイリーという19世紀の夫婦の物語なのに、ふたりの想いは時代を超え“楽園”を飛び出し、2021年の現実を優しく包み込んでくれる。それをどう受け止め、どんな答えを導くかは、この舞台に魅了された観客の数だけある。

カーテンコールで加藤は「舞台に立てることが当たり前ではない今、キャスト・スタッフの想いをひとつに初日を終え、ゲネプロを迎えられました。明日がどうなるかわからない日々ですが、自分たちのやってきたことを信じて、P.T.バーナム同様に、人に喜びを与えられるような作品を千秋楽まで作り上げたいです」とコメントしていた。

そんな真摯なメッセージから、カンパニーのすべての人たちが観客を愛し、観客から愛されたいと望んでいることを感じる。それこそがバーナムが描いた“夢”ではないか。世界にどんな危機が訪れても、どんなにつらい現実が待っていようとも、今作を千秋楽まで届けようとする強い決意表明に溢れた、みんなを笑顔にしてくれる感動作だ。日本初上陸の本作が、回数を重ねるごとに花を咲かせ、千秋楽の4月には満開になっていることを予感する。

東京公演は、3月23日(火)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、兵庫公演が3月26日(金)から3月28日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて公演される。そして、4月2日(金)に相模女子大学グリーンホールにて神奈川公演が上演され、大千秋楽を迎える。

ブロードウェイ・オリジナルミュージカル
『BARNUM/バーナム』

東京公演:2021年3月6日(土)~3月23日(火)東京芸術劇場 プレイハウス
兵庫公演:2021年3月26日(金)~3月28日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
神奈川公演:2021年4月2日(金)相模女子大学グリーンホール

【STORY】
バーナムの興行師としての人生は、「ジョイス・ヘス」という女性を“世界最高齢の160歳”として売り出すことから始まる。彼の誇大な広告や作り話によって、見世物の興行は成功をおさめるが、妻のチャイリーは人々をだますような仕事ではなく、社会的に尊敬されるような安定した職に就くことを望んでいた。しかし、見世物こそが自分の世界に彩りを与えてくれるのだと考えているバーナムは、博物館を経営したり、世界で最も小さい男「トム・サム将軍」といった話題性のある見世物を手掛けることによってますます有名になっていく。
その後スウェーデン人のオペラ歌手であるジェニー・リンドと契約した彼は、すっかり彼女に熱中し、チャイリーを置いて彼女とともにツアーへと旅立つ。公演は大成功となり、ジェニーとの距離も縮まる中、バーナムはふと愛する妻が共にいない生活への虚しさを感じ、ジェニーのそばを離れる。
チャイリーの元に戻った彼は、時計工場で働いたり、ついには市長に選ばれたりと、彼女が望む通りの安定した生活を送ることになるが、そんな生活にも突如終わりが訪れ……。
バーナムは再び、自らの才能をショーの世界で生かそうと決意するのだった……。

翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:荻田浩一
音楽監督:荻野清子

出演:
フィニアス・テイラー・バーナム 役:加藤和樹
チャイリー・バーナム 役:朝夏まなと
トム・サム/リングマスター/ジェームス・A・ベイリー ほか 役:矢田悠祐
ジェニー・リンド 役:フランク莉奈・綿引さやか(Wキャスト)
エイモス・スカダー 役:原 嘉孝(ジャニーズJr.)・内海啓貴(Wキャスト)

章平
工藤広夢
斎藤准一郎
泰智
福田えり
咲良
米島史子
廣瀬水美

ジョイス・ヘス/ブルースシンガー 役:中尾ミエ

映像出演:
フィリップ・エマール
石田純一(Performer Ai)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@musical_BARNUM)

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©ミュージカル「BARNUM」製作委員会/岡 千里