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梅津瑞樹がたったひとりで舞台上に浮かび上がらせる物語。SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」開幕レポート

梅津瑞樹がたったひとりで舞台上に浮かび上がらせる物語。SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」開幕レポート

俳優・梅津瑞樹の一人芝居、SOLO Performance ENGEKI 「HAPPY END」が2月17日(水)シアターサンモールにて開幕、絶賛上演中だ。
脚本は宮本武史(TV「バイプレイヤーズ」他)、脚色・演出は粟島瑞丸(演劇集団Z-Lion)、音楽は坂部 剛(TV「仮面ライダーゼロワン」他)と豪華スタッフが集結。“最少人数”で“演劇”をするプロジェクトの立ち上げを担っている。
2年前、所属している「虚構の劇団」で同劇場に立ったことがあるという梅津。囲み取材では粟島と共に登壇。「その空間に今回は僕ひとりで立っていることが不思議な気持ち」だと心境を明かし、「“(梅津瑞樹の)ひとりで客席に届けられる”と信頼して任せてくださった方に、とても感謝しています」と微笑んだ。
初日直前に行われたゲネプロでの熱演と囲み取材の模様を舞台写真と合わせてレポートする。

取材・文・撮影 / 片桐ユウ


すべてが梅津による芝居ひとつで立ち上ってくる

HAPPY END WHAT's IN? tokyoレポート

役者は“ひとりきり”だが、観客が目にする登場人物は“ひとりだけ”ではない。
梅津瑞樹が複数の役を演じるばかりでなく、その彼らが出会い、語りかけ、寄り添う人物たちも舞台上に確かな輪郭を持って浮かび上がってくる。

役者がイマジネーションと身体表現で生み出す“シチュエーション”と“相手”が、これほどまでダイレクトに届くのかと驚かされた“一人芝居”だ。

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以下、あらすじと内容を含めたレポートとなる。

梅津瑞樹が主に演じるのは、「太陽の膨張によって100年後に人類が滅ぶことが発表された日」に生まれた小山内風太。
世界が人類滅亡を回避すべく、様々な対策に奔走するなか、風太は「役者になる」という夢を抱いて生きている。

人類が滅びるかどうか、というときに夢などと何を呑気な、と呆れる気持ちが起こらないのは、この現実世界もまた危機的状況に瀕しながら、“日常”と“人生”を忘れるわけにはいかないことを観ている側が身をもって知っているからだろう。

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とはいえ、20代後半の風太はハツラツと夢に向かって邁進しているとは言い難い。飲み屋でなるべく安いメニューを頼み、小さな事務所が取ってくる小さな仕事に渋い顔をしながらも、酔っ払いに絡まれるとついハキハキとお辞儀してしまい、その後やるせなさに顔を曇らせたりしている。
もう駆け出しとは言えない、だからといって腐って諦めることもできない。いわゆる“くすぶっている”頃合いである。

役者として売れていない、という描写のリアルさが切なく可笑しい。と同時に、風太の苛立ちの根底には、彼が生まれたときから始まった“人類滅亡までのカウントダウン”が張り付いているようにも思える。

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“100日後”ならぬ「100年後」という太い軸を真ん中に据えながら、その中で歩み続ける小山内風太の“人生”、その“日常”、その中の“瞬間”と、フォーカスして描いていく物語だ。

時系列は前後しながら、風太が親に「役者になりたい」と告げる場面、やがて夫婦になる相手と出逢う場面、風太が中年となり久しぶりに自分の息子と会う場面などを繰り広げていく。

メガネや上着など多少の変更はあるものの、上下黒の衣裳は変わらない。
梅津は姿勢や表情、声色で風太の各年代を表現する。
細やかな仕草に梅津の技巧が光る。年齢変化は加齢シミュレーションを見ているかのようなスムーズさで驚かされた。

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さらに梅津はひとりきりで舞台上の時間と空間の手綱を引くことに、臆することも焦ることもない。落ち着いた様子からは、確かな自信と演劇という表現への愛着がにじみ出ているような気がした。

その芝居の中で見えてくるのは、小山内風太の葛藤や心情のみならず、彼の周囲である。居酒屋や路上の喧騒、あるいは妻と暮らす家の静けさ。彼を取り巻く人々の喜怒哀楽。親子関係。世界情勢。すべてが梅津による芝居ひとつで立ち上ってくる。

しかもひとりで何もかもを演じるすごさを見せつけるのではなく、たまたま観客の網膜が捉えられるのが梅津ひとりなのだ、といった感。それだけ自然に周囲の存在が感じられるのだ。一人芝居だが、ひとりだけの芝居を見た気がしない。 余計な発想ではあるが、もし取り巻く人々の想定キャストを思い描いていたのであればぜひ知りたい、とすら思ってしまった。

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演劇自体、実際のステージ上には存在しない景色を見せ、その役の生涯というすべては描かれないものを匂わせるといった、その場で見えるもの以外の世界を感じることで感動を得るものではある。
それでも、この満足感の元が“ひとりの役者による芝居”であったことに、あらためて演劇が呼び起こす想像力の素晴らしさと無限大の可能性を見た思いがした。そして、それを“役者”と“観客”の間で共有することの、このうえない楽しさを感じられたひとときだった。

もちろんクリエイター陣の力が、その“元”をガッチリ支えていたことも見逃せない。宮本武史による脚本の巧みさ、坂部 剛による音楽の美しさ。粟島瑞丸の脚色・演出は各場面の配置と緩急が絶妙だ。舞台芸術、という総合力のエネルギーも伝わってくる作品である。

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本作は2月23日(火・祝)まで上演。アフタートークやライブ配信日も予定されている。

さらにSOLO Performance READING 「HAPPY END」として、同作品を朗読劇でも配信上演。2月21日(日)20:00の回は佐藤 元[アニメ『弱キャラ友崎くん』(友崎文也 役)、アニメ『Dr.STONE』(クロム 役)]、2月22日(月)15:00の回は永塚拓馬[アニメ『KING OF PRISM』(西園寺レオ 役)、アニメ『アイドルマスター SideM』(冬美 旬 役)]が出演する。

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僕の喜びがお芝居を通して皆さんに伝わればいい

この後は、ゲネプロ後に行われた囲み取材の模様をレポート。
登壇者は、出演の梅津瑞樹、脚色・演出の粟島瑞丸(演劇集団Z-Lion)の2名。

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開口一番、梅津は「ええ~、そうですね……」と劇中の老人口調で話し出すという茶目っ気を発揮しながら、「めちゃくちゃ緊張しています。ひとりで1時間20分しゃべり続けなくてはいけないのは、なかなかキツイなというところではありました(笑)。でも稽古場ではずっと(粟島と)ふたりで濃密な時間を過ごさせていただいて。しっかりしたものができたなという手応えもあるので、あとは良いものを見せるだけだなという気概です」と、初日を迎えての心境を語る。

粟島も、稽古場でふたり籠もりっきり……ではなく、換気とソーシャルディスタンスには配慮したことを付け足しつつ、「親心みたいなものが湧いています(笑)。あとはとにかく見守るという心境ですが、ゲネプロを見て“これはイケるな!”と感じたので楽しみです」と自信を覗かせた。

見どころには、粟島が「各セクションの本気度」を挙げ、「役者が各年代を演じることもそうですし、映像しかり音楽しかり、すべてのスタッフがすべてを出し切ってこの作品に懸けてくれているなと感じています。梅(梅津)の後ろにある部分にも注目していただければ」とアピール。

梅津も「今(粟島が)おっしゃったとおり」と頷き、「カンパニー全員が演劇のアナログな楽しみ方をしているところが見どころなのではないかと思います。映像や照明、舞台上のギミックも凝っていますし、僕も予想打にしていなかったので、劇場に入ったときに“まさかこんなに!”と驚きました。負けないようにしなければと思いました」と気を引き締めたことを明かした。

またゲネプロを終えた率直な感想として、梅津は「物語の終盤に“みんながこうして生きているのって、誰かを信じていなきゃダメなんだ”という台詞があるのですが、演劇はそれに尽きるのかな、と思いました。特に今の状況では、我々とお客様という互いの信頼が重なり合って、ようやく実現できているものなので。そういったものをあらためて実感しているところです」としみじみ。

劇場観劇とライブ配信、それぞれの魅力については、粟島が「どちらも良いバランスの見方ができると思っています。この作品は“気持ちで全部、乗り切るしかないね!”と最初の段階から梅と話していたこともあり(笑)、生で観る方には気持ちで乗り切っていくところがダイレクトに伝わるのではないかと思います。そしてライブ配信でご覧になる方には、映像を観ているような派手な演出も入れていますので、そのダイナミックな部分もきっと伝わるのではないかと思います」と語った。

上演形態を変えた「READING」についても粟島が「リハーサルを見た感じ、まったく別物です。気持ちや表情で見せる演劇のパフォーマンスと違い、朗読劇のほうはどれだけ“声”で演じ分けられるかという見どころがあります。梅のほうはもう安心して手放せるので、僕は次の朗読劇に懸けたいと思います(笑)」と笑顔でコメント。
「“劇場”でしか生まれない演劇を、生でも、配信でもちゃんと届けられるように努めます。どういう形であれ、観てもらわないと始まりません。僕たちの『HAPPY END』をぜひ見届けてください」とメッセージを送った。

そして最後は梅津が「シアターサンモールには、所属している「虚構の劇団」で約2年前にも立ったことがありました。今回、その空間に僕ひとりで立っていることが不思議な気持ちです。いろんなことがあった2年間でしたが、“(梅津瑞樹の)ひとりで客席に届けられる”と信頼して任せてくださった方に、とても感謝しています。こんなに贅沢な時間はないなと感じていますので、この僕の喜びがお芝居を通して皆さんに伝わればいいな、なんて思っています。“コイツ、やっぱり演じるの好きなんだな”とか、演劇というものに対して“演劇って楽しいな、演劇っていいな”と心の底から思っていただければ、ただただ幸いです」と締め括り、囲み取材は終了した。

SOLO Performance ENGEKI「HAPPY END」

2021年2月17日(水)〜2月23日(火・祝)シアターサンモール


<ライブ配信>
配信公演[アーカイヴ視聴期間/販売期間]:
2021年2月21日(日)12:30[アーカイヴ視聴:2021年2月26日(金)23:59まで/販売期間:2021年2月26日(金)22:00
2021年2月21日(日)16:00[アーカイヴ視聴:2021年2月26日(金)23:59まで/販売期間:2021年2月26日(金)22:00
2021年2月23日(火・祝)13:00[アーカイヴ視聴:2021年2月28日(日)23:59まで/販売期間:2021年2月28日(日)22:00
2021年2月23日(火・祝)17:00[アーカイヴ視聴:2021年2月28日(日)23:59まで/販売期間:2021年2月28日(日)22:00

配信サービス:
『Streaming +』
ローチケ LIVE STREAMING

※詳細は、オフィシャルサイト、各配信サービスにてご確認ください。


STORY:
小山内風太が産まれた日。
その日は、太陽の膨張によって100年後に人類が滅ぶことが発表された日だった。
世界は人類滅亡を回避すべく、さまざまな策を講じていく。
そのいっぽう、風太は、ごくごく日常的な生活を送っていた。
勉学に励み、友人を作り、役者になるという夢を抱いて生きていた。
しかし、年月の経過に伴い、彼を取り巻く環境もじりじりと変化していく。
未来がないということを実感した人類は、どのような生き方を選ぶのか。
そして風太は、友と、家族と、そして夢と、どう向き合っていくのか……
この物語はただただ、日々を懸命に生きるごくごく平凡なある男の物語。

脚本:宮本武史
脚色・演出:粟島瑞丸(Z-Lion)
音楽:坂部 剛

出演:
梅津瑞樹

オフィシャルサイト


SOLO Performance READING「HAPPY END」

2021年2月21日(日)・2月22日(月)
配信サービス:
Streaming +
ローチケ LIVE STREAMING

※詳細は、オフィシャルサイト、各配信サービスにてご確認ください。

脚本:宮本武史
脚色・演出:粟島瑞丸(演劇集団Z-Lion)
音楽:坂部 剛

出演:
2021年2月21日(日)20:00 佐藤 元
2021年2月22日(月)15:00 永塚拓馬
*粟島瑞丸(演出)とのアフタートーク付