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新感覚観劇体験レポート。内海啓貴出演のVR演劇『僕はまだ死んでない』配信中!

新感覚観劇体験レポート。内海啓貴出演のVR演劇『僕はまだ死んでない』配信中!

VR演劇『僕はまだ死んでない』が、2月1日(月)より配信されている。
本作は新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言発令下において、劇場で観劇することが困難な状況が続いている“今だからこそ届けられる演劇”があるはずだ、という出発点から企画が立ち上がり、VR技術を使って撮影、配信することで、観客が新しい演劇体験を楽しめる作品として生まれた。視聴者が物語の主人公の視点となって、まるで舞台上にいるかのような感覚になれる新感覚演劇。
ウォーリー木下が原案・演出を手がけたVR演劇『僕はまだ死んでない』の観劇レポートをお届けする。

取材・文 / 松浦靖恵


“あなたはこれからどう生きますか?”

VR演劇を観劇するためには、VR専用のヘッドマウントディスプレイをはじめ、パソコン、タブレット、スマートフォンなど対応デバイスの選択肢がいくつもある。その中で、私が今回使用したのは、スマホをゴーグルにセットするモバイル型VRゴーグル。自分が普段使っているスマホにVR動画配信視聴サービス「Blinky」から観たいコンテンツ『僕はまだ死んでいない』をインストール。前もって購入していた視聴チケット(シリアルコード)でログインし、ゴーグルにスマホをセットすれば視聴前の準備は完了だ。

『僕はまだ死んでない』の物語の主人公は、ある日突然病に倒れ、奇跡的に意識が戻ったあとも、瞼と眼球以外、身体をまったく動かすことができなくなってしまった白井直人(内海啓貴)。

病院のベッドで寝たきり状態の彼の身体に繋がれている生体情報モニターが発し続けるピッピッピッという無機質な音が響く病室では、そんな直人の傍らで、直人の父・白井慎一郎(斉藤直樹)と、直人が兄のように慕っている幼馴染みの児玉 碧(加藤良輔)、直人の妻・白井朱音(渋谷飛鳥)、担当医の青山樹里(輝 有子)がなにやら話をしている。

身体を動かすことはできないが意識はあるため、直人にはみんなの会話は聞こえている。つまり、自分がなぜ今ここにいて、どんな状態になっているのかを、他者の会話の中から知ることになるのだ。だが、みんなは身動きができない直人が自分たちの会話を聞いている(聞こえている)ことも、その内容を理解していることにも気づいていない。

担当医が発した「現状、一命をとりとめていることがすでに大きな幸運なんです」という不幸中の幸いとも受け取れる言葉も、今後の治療をどうするのかというやりとりも、自分のことを話されているのに、直人は何も意思表示ができない。
みんなと同じ場所(病室)にいても、“こっちの世界”にいる直人は“あっちの世界”にいる人たちとの間にある見えない壁に向かって気持ちをぶつけるしかないのだが、ぶつけた言葉は届くことなく、自分自身の中に降り積もっていくだけ。

ベッドを囲みながら、「直人はこんなヤツだった」とか「あんなことがあった」とみんなが笑いを交えながら自分にまつわる思い出話をするのをただ聞いているだけの直人は「こんな状態にさえなっていなかったら」「何を勝手なこと言いやがって」と言い返せない様々な思いを募らせていく……。

そんな直人の視線で物語を眺めていくから余計に、私の中にももどかしい気持ちがどんどん広がっていく。そして、通常の舞台演劇では立ち入ることができない舞台上に自分がいて、この物語の一部になっているのだなという実感があった。VR演劇は、視聴者が自分の観たい部分を上下左右360度、どの視点から選んでも観ることができるため、例えば、演者のひとりが台詞を話している間、他の演者がどんな表情でその話を聞いているのかを見たければ、アングルを移動させてその様子まで観ることができてしまう。また画面をズームアップすることもできるので、役者の視線や指先の細かな動きなども、劇場観劇では客席からはなかなか観ることができないような部分も、自分が選択したカメラワークで自由に観ることができるからだ。

さらにVRゴーグルとヘッドフォン装着での視聴は没入感をより感じられる。いろんな感覚が研ぎ澄まされ、そのうえ舞台上の音がダイレクトに耳から入ってくることもあり、病室の窓を開けると鳥の鳴き声や風の音が近くに聞こえたり、病室を歩く誰かの靴音などもリアルで、臨場感を掻き立ててくれる。

また、本作は視聴チケット購入やシリアルコードを登録した日から1週間の間であれば何度でも再生できるため、自分の都合や環境に合わせていつでもどこでも視聴することができるのも良いポイントのひとつ。何度でも観られることで、主人公・直人の視線だけで物語を進めることもできるし、父や碧や朱音の思いに寄り添うように観ることもできる。そうやって何度でもこの物語を視聴することで、登場人物たちそれぞれに寄せる思いが観る者の中で変化を起こすこともあるかもしれない。

本作は、コミュニケーションがとれない直人を通して、父、妻、幼馴染み、それぞれの登場人物の立場や思いを通して、自分の生き方や考え方をこの物語に重ね合わせることになる。
もし自分が直人のような状態になってしまったら、もし自分の家族や大切な人が直人のような状態になってしまったら……そのとき、自分は何を思い、どんな選択をし、どのような答えを見つけようとするのだろう。尊厳死や安楽死の問題、終末医療、長期にわたる治療によってかかる家族への負担など、直面したことがない人にとって普段の会話ではなかなか話題に上がることが少ない、でも避けては通れない問題が本作では描かれている。
どの選択をしても、果たしてそれが正しい答えなのかはわからない。けれど、どんな状況であれ、誰もが“最期”を迎えるからこそ、この物語の中にそっと置かれた「良く死ぬことも含めて良く生きること」という言葉に、“あなたはこれからどう生きますか?”と問われたような気がした。

VR演劇『僕はまだ死んでない』は、好評配信中!

VR演劇『僕はまだ死んでない』

視聴開始:2月1日(月)18:00〜
閲覧期間:7日間
配信チケット販売:発売中
配信チケット価格:3,500円(税込)

原案・演出:ウォーリー木下
脚本:広田淳一
音楽:吉田 能

出演:
白井直人 役:内海啓貴
白井慎一郎 役:斉藤直樹
児玉 碧 役:加藤良輔
青山樹里 役:輝 有子
白井朱音 役:渋谷飛鳥
白井直人(幼少期)役:瀧本弦音
児玉 碧(幼少期)役:木原悠翔

主催・企画・製作:シーエイティプロデュース

オフィシャルサイト