LIVE SHUTTLE  vol. 444

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YOASOBI 一夜限りの1st ワンマンライブ。普遍性と新しさをバランスよく含んだ素晴らしいパフォーマンスを振り返る。

YOASOBI 一夜限りの1st ワンマンライブ。普遍性と新しさをバランスよく含んだ素晴らしいパフォーマンスを振り返る。

豊かなストーリー性を感じさせる楽曲、Ayaseを中心とした、現代的なポップセンスを備えたアンサンブル、そして、歌詞の世界観を的確に伝えながら、シンガーとしての個性を際立たせるikuraのボーカル。初めての単独ライブでYOASOBIは、普遍性と新しさをバランスよく含んだ素晴らしいパフォーマンスを繰り広げた。

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『KEEP OUT THEATER』とタイトルされたこのライブは、東京・新宿ミラノ座跡地の建設中のビルの中から配信。Ayaseとikura、バンドメンバーは工事用のエレベーターに乗り、新宿の夜景に囲まれた“ステージ”に移動。YOASOBIのロゴをバックに<夜の空を飾る綺麗な花 / 街の声をぎゅっと光が包み込む>というフレーズ――“都心のビルのなか”というシチュエーションにピッタリ重なる――をikuraがアカペラで歌唱し、ライブはスタートした。オープニングは「あの夢をなぞって」(1st EP『THE BOOK』収録)。プロジェクションマッピングで周囲の壁に花火を映し出しながら、“夢に向かって進んでいきたい”という決意を込めた歌が響き、一瞬にしてYOASOBIの世界が海さ出される。さらに「YOASOBIの1stライブ『KEEP OUT THEATER』へようこそ!画面の向こうのみなさん、ぜひ一緒に盛り上がっていきましょう」(ikura)という言葉に導かれた「ハルジオン」(1st EP『THE BOOK』収録)へ。生ドラム、アコギ、シンセベース、鍵盤のアンサンブルにより、近未来的なダンスビートと生楽器の音色が見事に融合。切なさに溢れたメロディともに描かれるのは、別れた恋人への思いと日々に飲み込まれる自分自身の感情。歌詞に込められた物語をオーディエンスに手渡すように歌うikuraのボーカルが素晴らしい。

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最初のMCでikuraは、「夜、私たちが立ち位置禁止の場所に入り込んで音楽を奏でていて。そんなYOASOBIらしい場所からお送りしてます」とライブ会場について説明。さらに衣装(Ayase、ikuraは、白のMA-1を自分でペイントしたという)を紹介したり、リアルタイムで視聴者からのコメントを読み上げた後、「ずっと同じ部屋で過ごしてきた2人の別れの朝を描いた曲」(ikura)という「たぶん」(1st EP『THE BOOK』収録)を披露。音数を抑えたゆったりとしたグルーヴとともに、恋人との別れを淡々と受け入れる“僕”の感情が描かれ、没入感が増していく。続く「ハルカ」(1st EP『THE BOOK』収録) では、温かいメロディと“君のそばにいられること”の幸せを綴った歌が広がる。YOASOBIは“小説を音楽にする”ユニットだが、いくつかの楽曲が連なることで、物語と物語が共鳴し、さらに奥深いストーリーにつながっていく。この現象もYOASOBIのライブの魅力だろう。繊細な転調を効果的に取り入れた構成、ファルセットを交えたメロディラインも絶品だ。

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「いまお届けした『ハルカ』という曲は、鈴木おさむさんの『月王子』という小説が原作となってまして。マグカップが一人の少女の人生を追い続ける愛のお話なんですけれども。ということで、(メンバーが)それぞれのマグカップを用意してますので、カンパイしてみましょうか?」と、マグカップを持って視聴者といっしょに“カンパイ”。リラックスした雰囲気とともに、メンバー同士の気の置けない関係が伝わってきた。

「画面の向こうのみなさんもきっと、人に言えないような悩みや葛藤、夢を追う中での迷いを抱えていると思うんですが、みなさんの心のなかをさらけ出せるような、背中を押せるような曲を届けられたらなと思います」

ikuraのそんな言葉とともに演奏されたのは、「怪物」(TVアニメ『BEASTARS』第2期オープニングテーマ)不穏な雰囲気のシンセのフレーズ、鋭利なギターサウンド、アグレッシブなビートが絡み合い、自分の在るべき姿を探し、悩みながら生きる“僕”の複雑な感情をダイナミックに解き放つ。紫、赤、青に染められたスモークに包まれたステージ、メンバーの手元や表情、そして、ビル全体の様子を交互に映し出す映像も、楽曲のムードを増幅させていた。

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「怯えるような日々のなかで、こうやってみなさんと画面を通して繋がり合うことできて幸せです。明日も明後日も音楽が鳴り続けますように」というMCに導かれたのは、「アンコール」(1st EP『THE BOOK』収録)。美しく、ドラマティックな旋律とともに奏でられる<ありふれたあの日々をただ思い返す>というライン、繊細さと強さを併せ持ったボーカルは、当たり前の日常が失われた世界を生きるリスナーの感情を大きく揺さぶったはずだ。抑制を効かせ、歌を引き立てる演奏にも唸らされた。幅広いいジャンルと高度なアレンジを融合させたYOASOBIの音楽性を支えているのがAssH(G)、やまもとひかる(ベース)、禊萩ざくろ(Key)、仄雲(Dr)のサポートメンバーであることはまちがいないだろう。

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早くもライブは終盤。ここでメンバーの二人は、を改めて今の気持ちを言葉にした。まずはikura。

「YOASOBIの活動が始まってから、追いつくのに必死だったというか。振り落とされないようにしがみつくのに必死で、そのときはまだまだ怖さがあって。でも、今日この日を迎えて、一人じゃないんだなってすごく思って」「いまは怖さよりも、これからのワクワクにつながっているというか。この場に立てていることも、こうやって音楽を続けられていることも、幸せだなって……ライブが始まってから、ずっとかみしめています」

さらにAyaseは。

「最初は僕とikuraちゃんと、屋代、山本(YOASOBIを担当しているソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平氏、山本秀哉氏)の4人だけで駆け上がってきたというか。しんどいこともたくさんあったし、どうなるかわからない状況のなかで、新しいスタッフさんが入ってきたり、バンドメンバーも来てくれて。大勢のスタッフさんに囲まれて、ライブができて。こたつでPCで作った曲から始まったことが、これだけ大きなことになっている実感は、今もまだないんだけど、本当に幸せ者だな、周りに恵まれているなと日々感じています」と語った。

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このユニットに対する思いを真っ直ぐに話した直後に披露されたのは、YOASOBIの存在を世に知らしめた大ヒット曲「夜に駆ける」(1st EP『THE BOOK』収録)。きらびやかなシンセのフレーズ、切れ味のいいギターカッティング、奥深いファンクネスをたたえたベースライン、4つ打ちを軸にしたカラフルなビートが共鳴し合い、ライブならではの有機的なサウンドが出現。緻密な構築美と圧倒的なダイナミズムを同時に感じさせるメロディライン、そして、<怖くないよいつか日が昇るまで / 二人でいよう>というラインが生み出すカタルシスはまちがいなく、このライブのハイライトだった。ラストは「群青」(1st EP『THE BOOK』収録)。<知らず知らず隠してた>からはじまるシンガロング系のサビでは、画面の向こうのオーディエンスに対してikuraが手拍子を要求。オンラインならではの一体感を演出し、ライブはエンディングを迎えた。

パフォーマンス、演出、ライティング、会場のシチュエーションを含めて、まさに“一度だけ”のライブを見せてくれたYOASOBI。“物語を歌にする”という古典的な手法と最先端のテクノロジーを組み合わせることで日本のポップスの在り方を更新しているこのユニットは、今年も音楽シーンの中心的な存在で在り続ける。そのことを確信させる圧巻のステージだった。

文 / 森朋之 撮影 / Kato Shumpei

YOASOBI 1st ワンマンライブ『KEEP OUT THEATER』
2021年2月14日

<セットリスト>

1.「あの夢をなぞって」
2.「ハルジオン」
3.「たぶん」
4.「ハルカ」
5.「怪物」
6.「アンコール」
7.「夜に駆ける」
8.「群青」
【ファンクラブ『CLUB 夜遊』限定】
9.「夜に駆ける (THE HOME TAKE Ver.)」

YOASOBI

コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる、「小説を音楽にするユニット」 。2019年11月に公開された第一弾楽曲「夜に駆ける」は2020年12月にストリーミング再生3億回を突破し、Billboard Japan 総合ソングチャート”HOT100″にて2020年年間1位を獲得。第二弾楽曲「あの夢をなぞって」は原作小説がコミカライズ、第三弾楽曲「ハルジオン」は飲料や映像作品とのコラボレーションを果たし、7月20日に第四弾楽曲「たぶん」、9月1日にブルボン「アルフォートミニチョコレート」CMソング「群青」をリリース。12月には鈴木おさむが原作小説を手掛けた楽曲「ハルカ」を発表。2021年1月6日に満を持して初のCD『THE BOOK』をリリース。豪華な仕様が大いに話題を呼び、オリコンデイリーランキング初登場2位を記録しながら、配信ではインストを除く全ての楽曲がApple Musicストリーミングチャートで15位以内に同時ランクインするという快挙を達成した。原作小説の書籍化や映画化など、音楽以外の領域にも展開の幅を広げている。

オフィシャルサイト
https://www.yoasobi-music.jp

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