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誰の人生にも少なからず存在する『あの頃。』。 松坂桃李が説く“何かに夢中になれる日々の素晴らしさ”

誰の人生にも少なからず存在する『あの頃。』。 松坂桃李が説く“何かに夢中になれる日々の素晴らしさ”

主演・松坂桃李、監督・今泉力哉、脚本・冨永昌敬。映画ファンには垂涎のトライアングルがつくりあげたのは、“遅れてきた青春”を謳歌する男たちの輝ける日々=『あの頃。』! 原作は、ミュージシャン/漫画家として活躍する劔樹人が2014年に上梓した自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』。2000年代前半、松浦亜弥を筆頭にアイドルシーンを席巻したハロー!プロジェクトのタレントたちに魅了されたオタクたちの、暑苦しくも微笑ましく、ちょっとせつなくて…だけど、やっぱり最高な“推しのいる日常”を、エモく描いていく。

松坂が演じたのは、主人公の劔。今や、よく知られた話だが、劔の人生を変えた松浦亜弥とは同じ中学の出身という縁もあって、感慨深い一篇となったようだ。そんな当時のエピソードも踏まえつつ、『あの頃。』に思いを馳せてもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 増永彩子


好きなものを共有できる人とは壁を軽々と超えて仲良くなれるという強味があることを実感しました。

もはや、さまざまなところでお話されていますが…今考えるとすごい世界線ですよね。松浦亜弥と松坂桃李が同じ中学に通っていたって。

それはもう偶然というか、たまたま同じタイミングだっただけで。しかも、当時の僕は当たり前ですけど…何者でもない、フツーの中1でしたから(笑)。

あややはすでにトップアイドルでしたよね。

そうなんですよ、なので松浦さんは学校にもなかなか通えていなかったみたいなんですけど、合唱祭とか行事には参加していらっしゃって。そういう時、地元のヤンチャな人たちとかがワーッとうちの中学まで押し寄せてきたりして、ちょっとした騒ぎになっていました(笑)。

あの頃。 松坂桃李 WHAT's IN? tokyoインタビュー

ちなみに、松浦さんとお仕事をご一緒したことは…?

これが残念ながら、ないんですよねぇ。全然、ご縁がなくて。たぶん…というか確実に松浦さんは僕が当時同じ中学に通っていたことなんて、まったく知る由もないと思いますが。

しかも、中学1年の男子と中3の女子を比べると、ほぼほぼ子どもと大人ですよね。

本当、それです! 当時の僕には3年生は女子も男子も大人に見えましたから。「2歳違うだけでこんなに大人になるのか」って。

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こうして松浦さんをモチーフにした作品で主演を務められたことも奇縁ですが、コズミン役の仲野太賀さんとも、久しぶりの共演ですよね?

絡みはないけど同じ作品に出演していたこともありましたが……『ゆとりですがなにか』(16/NTV)以来になるんですかね…。最近の彼は『恋あた(この恋あたためますか)』(20/TBS)をはじめとして好感度の高そうな役が多いですけど(笑)、『ゆとり~』では憎たらしい役どころでしたからねぇ。

確かに(笑)。そういう意味では、今作で太賀さんが演じているコズミンはケレン味と切なさのバランスが絶妙なキャラクターですよね。

そうそう、あの憎みきれない感じっていうのは、もう太賀の手腕の最たるところだなと思います。とことん嫌なヤツとして演じようと思えば、そうもできるんですけど、何だかんだ言われても「恋愛研究会。(=ハロー!プロジェクトに魅せられた男たちのサークル名)」のみんなから愛されていたんだなって思えるのは、まさしく太賀のお芝居ならでは、であって。心からさすがだなと、敬意を抱いています。

その「恋愛研究会。」のメンバーみんながイベントのステージ上で歌うシーンで、桃李さん、いや劔と一緒に涙を流していた自分に気がついて。

そこまで作品に没入していただけるのは本当にうれしいですね。ありがとうございます。

あのシーンは資料によるとカメラワーク的に撮るのが大変だったそうですね。

そうでした! いろいろなアングルから撮っていたこともそうですけど、お客さん役のエキストラさんも入れていた、というところで、もし今だったらあのシーンはステージと客席は別撮りになっていただろうなって。

コロナ禍になる前の端境期に撮っていた、という意味でも、忘れがたい作品になったのではないかと思います。

確かに…。コロナ禍以後は成島組(=成島出監督・吉永小百合主演『いのちの停車場』)と白石組(=白石和彌監督『孤狼の血 LEVEL2』)、それからNHKの連ドラ(4月スタート予定の『今ここにある危機とぼくの好感度について』)を撮っているんですけど、現場そのものが『あの頃。』ぐらいを境に変わったなという気がしています。特に地上波のテレビドラマはコンプライアンス的に映像にできない表現が増えてきている中、密を避ける必要から表現の幅が狭まっていってしまうのは、個人的には悲しいことだなと思っていて。そうなると、配信系が強くなっていくんでしょうけど…劇場で映画を見ることでしか得られない体験があるんです、ということは声を大にして言いたいですね。

他者と同時に時間と空間を共有することで、思いもよらない感動や感情が生まれますよね。

そうそう、劇場という空間ならではの一体感というか、グルーヴ感のようなものって、映画だからこそ得られるものだと思うんです。

それこそ劇中の「恋愛研究会。」が主催するイベントもそうですよね。彼らの言う“現場”でしか味わえないものって確実にあるなぁと。

そこは僕も同感でして、共有/共感できることの強味というものを、改めて実感したんですよね。それによって居合わせた人たちの間にグルーヴが生まれて、自然と仲良くなっていくという現象が起こる。特に仲良くなろうと思っていなくても、不思議なことに仲良くなれる──自然発生的な強味というものは“現場”だからこそ、と思いますし、自力ではなかなかつくることのできないものだと感じました。

ハロプロの人たちはプロフェッショナルすぎるくらいにプロ。アイドルというよりもアスリートに近いかもしれない。

これも劇中で描かれていますけど、「恋愛研究会。」に後から入ってくる(大下ヒロト演じる)新参者のアールが、「ハロー!プロジェクト」というお互いに好きなものがあるということで、初対面の壁を軽々と超えていきますよね。

なんて言うんですかね、お互いに好きなものが一緒というだけで、“プライベートゾーン”に簡単に入れるっていうか。他人同士が一気に距離を縮められるという強味がありますよね。

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ということは、桃李さんご自身もゲームを熱く語る人には、やっぱり心を開きやすいということになるんでしょうか(笑)?

今やもう、菅田のラジオ(『菅田将暉のANN』)のネタと化してますからね。だから、彼のラジオに出た時は、何となくゲームの話をしないといけないのかなって、勝手に思っていたりもして。結果必ず触れるんですけど(笑)。でも、好きなものや夢中になれることがあると人生が豊かになりますよね、確実に。僕自身もしみじみ思いますけど、まったく自分の中で知らないジャンルについて、ものすごく好きな人が喋ってる姿って、なんか面白いんですよね。『マツコの知らない世界』(TBS系)を見ていて、よく思うんですけど…。

あの番組に出てくる人たちの熱量たるや、ものすごいですよね。

そう、熱量がハンパじゃない。「なんで、この人はこんなにこれが好きなんだろう?」って、最初はちょっと斜に構えて見ていても、だんだんとその人が魅力的に見えてくるんですよね。で、その人が喋ってる内容も「ほほ~、何かいいかも!」とかって思えてきたりするっていう。つまるところ、好きなことを本当に本心から喋ることほど説得力があるものはないなって思います。やっぱり、『好きだ』っていう思いから生まれるエネルギーは、何よりも強いなって。

『蜜蜂と遠雷』(19)でご一緒された松岡茉優さんはハロプロの熱烈なファンとして知られていますから、『あの頃。』をご覧になった感想を個人的には聞いてみたいなと思ったりもしていまして(笑)。

それは僕もぜひ聞いてみたいですね。彼女の目にどんなふうにこの作品は映るんだろうって。

松岡さんに限らず、ハロプロを熱烈に推す若い女性たちが増えているみたいですね。

最近多いって聞きますよね。リアルタイムでモーニング娘。の1期から応援してきた世代と若い女の子世代がアツい、と。でも、若い男子の世代にもうちょっと響いてほしい、と劔さんご本人は嘆いていらっしゃいました(笑)。

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ちなみに、桃李さんが『あの頃。』を通じて感じたハロー!プロジェクトの魅力というのは?

プロフェッショナルすぎるぐらいに、プロなところ…ですかね。絶対的アイドル感っていうのが、ハロプロの人たちにはあるのかなぁ、と。モーニング娘。の9期だったかな? “体力おばけ”って言われていたくらい、ものすごい運動量でステージをこなすんですよ。アイドルっていうよりも、アスリートに近いものがあるかもしれない。で、また輝きが色褪せないっていうか…昨年、歌番組で後藤真希さんが出演されていて、センターでの堂々たるオーラというか。思わず「すごい!」って言っちゃいましたから(笑)。松浦さんもソロではもちろん、グループやユニットを組んでも強かったですよね。

そういう意味では、当時…“あの頃”を懐かしむ楽しみ方もあり、リアルタイムを知らない人たちには新鮮な気持ちで“あの頃”に出会ってもらうという、さまざまな見方ができるのではないかと。

はい、“推し”のある生活への入門編としても楽しんでいただけたら、と(笑)。

「無駄な時間」と思われてしまうかもしれないけど、大人になったら“あの頃”は二度と再現できないんです。

ベースは劔さん直伝だと思うんですけど、左ききの桃李さんが右のフォームで弾くというのは、なかなか大変だったのではなかろうか、と。しかもピッキングとフィンガリングの両方をマスターする必要があった、と。

そうですね、『蜜蜂と遠雷』のピアノも大変だったので、できればそういう習得系はもう避けていきたいですよね(笑)。シーンによっては実際に音を出して弾いているんです。劔さんは「全然テキトーで大丈夫っすよ」みたいにおっしゃったんですけど、実際にやってみたら全然テキトーなんかじゃなくて(笑)。思っていたよりも苦戦しました。

あの頃。 松坂桃李 WHAT's IN? tokyoインタビュー

それと“あの頃”…すなわち「恋愛研究会。」で劔たちが過ごした好きなものに夢中になれた日々を自分も思い出して、何だかグッときちゃいましたね。

何ていうんでしょうね。振り返ってみて、「無駄な時間」と思われてしまうかもしれないんですけど、当の本人たちにとっては決して無駄ではなかった時間というか。ただ、あの時間をもう一度再現しようと思っても、大人になってからだと、なかなかできなかったりもするんですよね。責任を負わないからこそ、ああいうことができるっていう楽しみ方は、まさしく「恋愛研究会。」ならではのオリジナルな時間だったなと。でも、だからといって、あれが一番良かったのかっていうとそうではなく、ああいった経験があるからこそ、働いていて責任ある立場になった今の状態でも、違う楽しみ方ができるんだなっていうのは実感しますね。

確かに! それと…今よりもSNSがまだ未発達だったというか、コミュニケーションツールの1つに過ぎなかったという環境も、リアルで集まった時のグルーヴを形成していたのかなと思ったりしました。

それは関係していたかもしれないですね。イベントだったり、直接的な集まりみたいなことが頻繁に行われていたっていうのは、SNSが今ほど普及していなかったっていうのも大きかったでしょうし…「毎日がオフ会」みたいな(笑)。そうやって振り返ってみると、10数年前なんですけど、のどかでいい時代だったんだなぁって思えてもきますね。

プラス、大阪という土壌のノリもあったかもしれないですよね。めちゃくちゃマニアックなこと言っているんですけど、どこかカラッとしてるというか。

なんか本当に日常会話に近いレベルで、マニアックな話題をフラットに話すっていうノリが、確かにありました。「さぁ、しゃべるぞ」っていうのじゃなくて、なんかこう…「お~、おはよ~!」みたいなノリで、「恋愛研究会。」(を演じた役者)の面々もやっていましたからね。

その「恋愛研究会。」のメンバーだったロビさんご本人とも面会されたそうで。

そうなんですよ。今回は珍しく登場人物のモデルになったご本人の方々が、現場にいらっしゃったんですよ~(笑)。いらっしゃるたびに、俳優部の面々は緊張するっていう…。やっぱりご本人に見られていると思うと、ちょっと居心地がよくないというか(笑)、ソワソワしてしまったりもしたんですけど、反対に助けになる部分もあって。「本当にこういう感じの方なんだ」っていう確認もできましたし、それによって安心もできたし、発見もありました。だから結果的には、みなさんが現場にいらっしゃったことが、すごくありがたかったですね。

ディテールを掘り下げることができた、という意味でも。

はい、仕草とかたたずまいをよく観察することができました。

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見ていて、アドリブっぽい感じの会話とかやりとりも結構ありましたけど、あれは…?

そこは今泉さんの演出のなせる技と言いますか、芝居の鮮度を保たせてくださる方なので、今泉さんの演出によって鮮度が落ちることなく、お芝居としてちゃんとリアルな感じのやりとりを続けることができた、っていう感覚が僕の中にはありました。

ちょうど1年ぐらい前、テレ朝のドラマの取材時にコメディーをやりたいと。このところシリアスだったり重ためのトーンが多かったので、単純に現場が楽しかったのかな、なんて想像もしていて。

そうですね。本当にここ最近は重たい作品が続いていたので、演じた後に重くならない作品をやりたいと思っていて。だから『あの頃。』の現場が本当に楽しかったんですよ。何よりコロナ禍という状況下ですから、重たくてシビアな作品よりも、こういった元気になれる作風の映画を観ていただく方がいいんじゃないかな、というふうに個人的には思っていて。こういうご時世ですから、映画が公開されることに対するうれしさは、ひとしおだなと感じています。

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松坂桃李さん直筆サイン入りチェキ
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2月18日(木)~2月25日(木)23:59


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松坂桃李

1988年、神奈川県生まれ。近年の主な出演作に映画『居眠り磐音』『新聞記者』『蜜蜂と遠雷』(19)、『約束のネバーランド』(20)、ドラマ『パーフェクトワールド』大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19)、『微笑む人』(20)などがある。主演ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』が4月から放送。出演映画『いのちの停車場』(5/21公開)、『孤狼の血 LEVEL2』(8/20公開)、『空白』を控える。3月26日公開の映画『モンスターハンター』日本語吹替え版にも参加している。

オフィシャルサイト
https://topcoat.co.jp/tori_matsuzaka

オフィシャルTwitter
@Mtoriofficial

フォトギャラリー

映画『あの頃。』

2月19日(金)全国ロードショー

出演:松坂桃李 仲野太賀 山中 崇 若葉竜也 芹澤興人 コカドケンタロウ ほか

監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
音楽:長谷川白紙
原作:劔樹人「あの頃。 男子かしまし物語」(イースト・プレス刊)
製作幹事:日活 ファントム・フィルム
配給:ファントム・フィルム

オフィシャルサイト
https://phantom-film.com/anokoro/

©2020『あの頃。』製作委員会