Interview

加藤和樹&矢田悠祐らが届ける2021年最高に楽しいエンターテインメント。ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』まもなく上演

加藤和樹&矢田悠祐らが届ける2021年最高に楽しいエンターテインメント。ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』まもなく上演

19世紀半ばのアメリカで大きな成功を収め、博物館を経営し、サーカスを上演するために奮闘した興行師のP.T.バーナム。そんな彼の半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』が、3月6日(土)より東京芸術劇場 プレイハウスを皮切りに上演、その後、兵庫、神奈川を巡演する。
本作はブロードウェイで大ヒットを記録し、ロンドンでも公演された人気作で、今回が日本初上演となる。日本版の演出を務めるのは、『アルジャーノンに花束を』、『ドリアン・グレイの肖像』など傑作を手がけた荻田浩一。そして、主人公のフィニアス・テイラー・バーナム役には、音楽・ドラマ・映画・舞台と多方面で活躍する加藤和樹。その妻でヒロインのチャイリー・バーナム役を、元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなとが演じる。ほかにも、矢田悠祐、フランク莉奈と綿引さやか、原 嘉孝(ジャニーズJr.)と内海啓貴、藤岡正明、中尾ミエなどのキャスト陣が、サーカスのゴージャスな世界を彩る。
そこで、バーナム役の加藤和樹とトム・サムなどを務める矢田悠祐にインタビュー。共にミュージカル界を牽引するふたりの豪華な対談となった。

取材・文 / 竹下力


ひとつのショーをお客様と共に完成させる作品

ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM/バーナム』が日本に初上陸します。本作に出演することになったお気持ちを聞かせてください。

加藤和樹 日本初演の作品に出演できることは非常に光栄です。おそらく皆さんは、映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)で興行師のバーナムがサーカスを作り上げ成功していく姿を想像されると思いますが、舞台では、僕が演じるバーナムと妻のチャイリー・バーナム(朝夏まなと)の関係性がメインに描かれています。映画とは描き方が違うので、豪華なサーカスのシーンをお見せするだけではなく、サーカスを作る過程や、サーカスに登場する人物たちの人生をきちんと描くので、映画とは違った感覚を覚えていただけると思います。

矢田悠祐 初めに出演のお話をもらったときは、“世界一背の小さい男性”を演じると聞いて、字面だけではよくわからなくて……「どういう役だろう?」と興味が湧いて文献や映画で調べたんです。すると、背の小さいトム・サムという男性が実際にサーカスにいて、プライドを持って個性を発揮していたと知るようになって。この作品に携わることができて嬉しいし、役の勉強をかなりしたので、それを活かして演じたいと思います。

加藤和樹

脚本を読まれた印象を聞かせてください。

加藤 単純に読み物として面白いだけでなく、脚本に書かれていることを演じたら、観客の皆さんが思わず作品の世界の中に飛び込んで、我々と一緒に役の人生に参加して、舞台にのめり込んでしまうのではという印象を受けました。藤岡正明くんが演じる役が語り部をこなして物語を案内しながら、お客様がサーカスを作る過程を覗き見しているような胸が高鳴る感覚を抱くことができると思います。ひとつのショーをお客様と共に完成させる作品だと思ったので、今作はこれまでに僕が出演したことのないミュージカルになるかもしれませんね。

矢田 僕は「舞台上にどういうふうにサーカスの世界が表現されるのだろう?」というのが第一印象でした。一昨日、初めて立ち稽古に入ったのですが、演出の荻田(浩一)さんの頭の中には、いろんな設計図がすでに出来上がっていて、最初のシーンから大変で。和樹(加藤和樹)さんには大きな負担だなって(笑)。

加藤 大変でしょ?(笑)

矢田 (笑)。僕を含めて多くのキャストは一役を演じるのではなく、サーカスの座員としても出演するので、主役の和樹さんをしっかり支えたいと思います。

楽曲は“ザッツ・サーカス”

歌稽古も進んで、実際のナンバーを聴いて印象はいかがですか。

加藤 “ザッツ・サーカス”という曲揃いです。ブロードウェイ版の作曲のサイ・コールマンさんの楽曲なのですが、日本語を乗せるとものすごく早口になってしまう曲があったりもして。

矢田 僕も最初はラップかなと思いました(笑)。

加藤 (笑)。たしかに歌うのは大変ですが、楽曲にワクワク感だったり、テンポやノリの良さがあるので、お客様は楽しめると思います。

矢田 僕も歌うのが難しい印象があったのですが、歌い慣れていくと気分が高まって気持ちよくなってくるんです。少し複雑だけどキャッチーな音楽で、僕のソロのナンバーもかなりクセのある曲ですが、お客様は楽しめると思います。僕らはコーラスワークも多いので、綺麗に歌声を揃えて、和樹さんがおっしゃったように、まさにサーカスにいるような感覚をお客様に覚えていただけるまで稽古をしていきたいです。

矢田悠祐

加藤さんが演じるフィニアス・テイラー・バーナムと、矢田さんが主に演じるトム・サムはどんな役だと思いますか。

加藤 バーナムは興行師ですが、いろいろな経験を経て獲得した話術に長けている人物です。そのせいもあって、世間一般から“イカサマ師”と言われ疎まれ、良くない印象を持たれてしまうのですが、彼の根底にあるのは“人々を楽しませたい。喜ばせたい”という気持ちです。とにかく夢見る子供のように、どんなときもエンタメ性を抱いているのが魅力的で。いつまでも少年の心を忘れないように演じたいですね。妻のチャイリーとは意見が合わずに喧嘩ばかりしていますが、心の深いところではきちんと彼女を愛していて、まっすぐな人だと思います。

矢田 トム・サムはもともと見せ物小屋で働いていた人間で、あるきっかけでバーナムと共にする実在の人物です。先ほどもお話ししたように、自分の個性に誇りを持っているから、現存している写真を見たりすると凛々しいんです。映画『グレイテスト・ショーマン』で彼を演じていたサム・ハンフリーのお芝居は上品でジェントルだし、観ているだけで面白くて(笑)。そういうところを参考にしながら、僕なりに上手に消化していきたいですね。

表現する我々が心から楽しむことを大事にしたい

では、演じるにあたって気をつけようと思っている点はありますか。

加藤 さっき矢田(矢田悠祐)ちゃんも言ったように、歌がとてつもなく難しい(笑)。「こんな展開を見せるのか!」というほど半音を上げたり下げたりを繰り返します。それでも、歌いこなしてハマってくると心地よいので、表現する我々が心から楽しむことを大事にしたいですし、“素敵なショーをお届けします”という初心を忘れずにいたいですね。あらためて表現者としての基礎を大事にしたいと思うようになって……。

矢田 そうですね。今の世の中には、僕らが本作で演じる世界とはまったく異なった現実があります。マスクをしていない人を見るだけで違和感を覚えてしまうようなつらい現状で。やっぱり、今作をご覧になったら楽しい気持ちを抱いて帰って欲しいんです。これほどショーアップされた世界を、どうやってエンターテインメントとして届けようか、しっかり考えて演じないといけないですね。それでも、和樹さんと同じ気持ちで、演じる側が楽しむことが大切で、きちんとしたエンターテインメント作品にしたいと思います。

我々の知恵を絞って皆様を楽しませたい

おふたりはミュージカルに数多くご出演している百戦錬磨の俳優だと思っているのですが、今作が他のミュージカル作品と違うところはありますか。

加藤 難しい質問ですね(笑)。まず、冒頭でお伝えした、日本初演ということに注目していただきたいです。それからブロードウェイもロンドンも大人数のカンパニーで演じた作品でしたが、時勢柄少数精鋭で、大きなショーとしてお届けしようとすること。セットもこだわって工夫を凝らしていますし、悪い意味ではなく、まさに“イカサマ”のように、我々の知恵を絞って皆様を楽しませたいですね。

矢田 “イカサマ”という意味でいえば、僕がどのように“世界一小さい”トム・サムを演じるのか、荻田さんが考え抜いた演出をしてくださると思うので、僕の登場するシーンも楽しみにしてください。歌も含めて、少人数のキャストならではの日本版『BARNUM/バーナム』を楽しんでいただきたいです。

おふたりの互いの印象はいかがですか。

矢田 僕も和樹さんも世代は違いますが、“テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)”に出演しているので、和樹さんは“大先輩”にあたります。役者を始めたときにいろいろ映像を拝見してお手本にしていたので、雲の上の存在だと思っていました。今回初めての共演で、どこかクールな方だなと思ってお話してみたら、とてもやさしくて気さくな感じで、頼れる先輩ですね。最近は、和樹さんのオフィシャルYouTubeチャンネルを観ていたのもあって、“自宅でラーメンを作る人”というイメージが強くなってますけど(笑)。

加藤 そこかい(笑)。まさに今、リモート取材を受けている僕の部屋のキッチンで作ってるんだよね。

矢田 そうなんですね。二郎系のチャーシューを作っていらっしゃって、僕もラーメンが好きなので、いつかご一緒したいです!

加藤 そうだよね。というか、“大先輩”じゃなくて、“ラーメンの人”になっちゃったよね?(笑)

矢田 あはは。

加藤 (笑)。矢田ちゃんの第一印象は、人懐っこそうで、やる気と負けん気の強さを感じるので、これからの稽古を楽しみにしています。

いかに少人数で作るショーを壮大なミュージカルに見せるのか

今作のポイント、テーマがあれば教えてください。

加藤 時代に見合った演出を取り入れて、大胆に映像を使いながら、いかに少人数で作るショーを壮大なミュージカルに見せるのかがポイントです。バーナムがしてきたように大掛かりな“イカサマ”を作り上げることがテーマだと思います。

矢田 和樹さんがおっしゃったとおりで、少数精鋭で、大きな世界観を見せる必要がありますね。最初のシーンから入れ替わり立ち替わりが激しい場面の連続で、キャストは一生懸命に動くのですが、本物のサーカスの一座を観にきたようなワクワクする気持ちになっていただけると思います。

おふたりは、コロナ禍の大変な状況のなかでも、ミュージカル作品に出演されてきましたね。この状況下でミュージカル、ひいては演劇のあり方は変わってきたと実感しましたか。

矢田 今も客席を間引いて上演しているわけですが、去年、久しぶりに板の上に立ったときに、お客様からいただける力が減るかもしれないと不安でした。でも、演じてみたらそんなことはなくて、これまで以上のパワーをもらっていると感じたんです。お客様ひとりひとりと僕らが強く繋がっている、そんな印象を受けました。舞台上と客席の距離は離れていますが、むしろ近くなったような気がして。

加藤 そうだね。ミュージカルに限らず、エンターテインメントのあり方が問われた時期だと思います。我々がしていることは娯楽の一部になるので、生活に必要ないかもしれない。けれど、それを求めてくださるお客様の存在のありがたさを再認識した日々でした。明日も明後日もあたりまえに公演があるわけではなく、いつ千秋楽を迎えてもおかしくない。そんな現状に戸惑うよりも、我々の意識が変わっていったんです。もともと、キャストに病気や怪我があればいつ千秋楽になっても良いという強い意思を持って舞台に臨まなければいけなかったなって。舞台に立つ覚悟がこれまでとは変わって、もう一度俳優としての認識を見直すことができた。辿り着いたのは、我々を求めてくださる方がいるかぎり、いつでも最高のエンターテインメントをお届けしたいという純粋な気持ちでした。

全身全霊で素晴らしいエンターテインメントを届けたい

それでは、最後にお客様へのメッセージをお願いいたします。

矢田 劇場に足を運ぶのは勇気がいる時代ですが、お客様には全身全霊で素晴らしいエンターテインメント作品を届けるので、観劇してくだされば嬉しいです。舞台は非日常の世界で、今作をご覧になっていただいている間は現実を忘れて楽しんで、作品世界に身を委ねて、皆さんの人生の明日への糧になれば幸いです。

加藤 先にも言ったように、我々だけでは作り上げることができない舞台です。皆様の力をお借りしながら素晴らしい作品にできるように頑張りますので、初日を楽しみに待っていただければ嬉しいです。ご無理せずに機会があえば、ぜひ劇場に足を運んでください。

ブロードウェイ・オリジナルミュージカル
『BARNUM/バーナム』

東京公演:2021年3月6日(土)~3月23日(火)東京芸術劇場 プレイハウス
兵庫公演:2021年3月26日(金)~3月28日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
神奈川公演:2021年4月2日(金)相模女子大学グリーンホール

【STORY】
バーナムの興行師としての人生は、「ジョイス・ヘス」という女性を“世界最高齢の160歳”として売り出すことから始まる。彼の誇大な広告や作り話によって、見世物の興行は成功をおさめるが、妻のチャイリーは人々をだますような仕事ではなく、社会的に尊敬されるような安定した職に就くことを望んでいた。しかし、見世物こそが自分の世界に彩りを与えてくれるのだと考えているバーナムは、博物館を経営したり、世界で最も小さい男「トム・サム将軍」といった話題性のある見世物を手掛けることによってますます有名になっていく。
その後スウェーデン人のオペラ歌手であるジェニー・リンドと契約した彼は、すっかり彼女に熱中し、チャイリーを置いて彼女とともにツアーへと旅立つ。公演は大成功となり、ジェニーとの距離も縮まる中、バーナムはふと愛する妻が共にいない生活への虚しさを感じ、ジェニーのそばを離れる。
チャイリーの元に戻った彼は、時計工場で働いたり、ついには市長に選ばれたりと、彼女が望む通りの安定した生活を送ることになるが、そんな生活にも突如終わりが訪れ……。
バーナムは再び、自らの才能をショーの世界で生かそうと決意するのだった……。

翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:荻田浩一
音楽監督:荻野清子

出演:
フィニアス・テイラー・バーナム 役:加藤和樹
チャイリー・バーナム 役:朝夏まなと
トム・サム/リングマスター/ジェームス・A・ベイリー ほか 役:矢田悠祐
ジェニー・リンド 役:フランク莉奈・綿引さやか(Wキャスト)
エイモス・スカダー 役:原 嘉孝(ジャニーズJr.)・内海啓貴(Wキャスト)

章平
工藤広夢
斎藤准一郎
泰智
福田えり
咲良
米島史子
廣瀬水美

ジョイス・ヘス/ブルースシンガー 役:中尾ミエ

映像出演:
フィリップ・エマール
石田純一

オフィシャルサイト
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©ミュージカル「BARNUM」製作委員会/岡 千里

加藤和樹(かとう・かずき)

1984年10月7日生まれ、愛知県出身。2005年にミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、俳優としてドラマ・映画・舞台、ミュージカルに出演するほか、声優としても活躍。2006年にはミニ・アルバム『Rough Diamond』でCDデビュー。最新作『Addicted Box』を2020年6月にリリース。近年の主な出演作品には【舞台】ミュージカル『ローマの休日』、ミュージカル『フランケンシュタイン』、ミュージカル『ファントム』、ミュージカル『怪人と探偵』、『BACK BEAT』、『暗くなるまで待って』、『Defiled-ディファイルド-』【CV】スーパー!ドラマTV「S.W.A.T. season 3」、ゲーム「黒騎士と白の魔王」、ゲーム「ディズニーツイステッドワンダーランド」などがある。

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矢田悠祐(やた・ゆうすけ)

1990年11月16日生まれ、大阪府出身。2012年に舞台『合唱ブラボー!』で俳優デビューし、同年、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン青学7代目の不二周助 役で脚光を集める。2017年と2020年に、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』で主演を務める。近年の主な出演作品には【舞台】ミュージカル『EDGES-エッジズ-』、『Defiled-ディファイルド-』、ミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド〜汚れなき瞳〜』、恋を読むvol.2『逃げるは恥だが役に立つ』、ミュージカル『ハムレット』、舞台『マラソン』、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、ミュージカル『王家の紋章』などがある。

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