Interview

安田レイ ドラマ『君と世界が終わる日に』挿入歌に込めた“誰かと一緒に生き抜きたい”という強いメッセージ。約9ヵ月ぶりの新作について訊く。

安田レイ ドラマ『君と世界が終わる日に』挿入歌に込めた“誰かと一緒に生き抜きたい”という強いメッセージ。約9ヵ月ぶりの新作について訊く。

「光と闇」をテーマに、愛する人を守るために自分の身を削っても何かしたいという強い思いを込めた前作「through the dark」から9ヵ月。安田レイの通算15枚目のシングル「Not the End」は竹内涼真主演のゾンビドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌として書き下ろしたミディアムバラード。歌詞は本人が手がけており、世界の終わりのような極限状態に取り残されたヒロインと、当たり前の日常を失った現代の世の中を重ね合わせたメッセージソングとなっており、「まだ終わりじゃない」という意味のタイトルは、緊急事態宣言が延長された今、リアリティをもって胸に響く。暗闇を抜けた先に広がっていたのは終わりの見えない絶望だったのだろうか、それとも一筋の光が見えたのだろうか。「2020年をひと言で表すなら“孤独”だった」という彼女が本作に込めたメッセージとは――。

取材・文 / 永堀アツオ


今私たちが置かれている状況と重なって

「Not the End」はドラマ『君と世界が終わる日に』のために書き下ろしたんですよね。

そうです。ドラマのプロデューサーさんと監督さんとお話をして、ドラマの台本を読ませていただいたら、今私たちが置かれている状況と重なって“これ、他人事じゃないぞ”って思ったんです。

ゾンビ=ウイルスって考えると、意外と近い状況にいるんですよね。

ゾンビって作られた話のように感じるんですけど、今、私たちが生きている世界と同じことが起きている。しかも、ドラマの中のゾンビは目に見える形で襲ってくるけど、今の私たちは見えない世界で生きているなって。

ドラマサイドからのからリクエストは何かありましたか。

ポジティヴな楽曲ではなく、“絶望”をメインのテーマにしてほしいって言われていて。その中で少しの希望というか、諦められない強さみたいなものを感じる内容が欲しいですって言われました。そのバランスが結構、難しくて書くのに結構、時間がかかりました。間に合わないんじゃないかって思ったくらい、何度も何度も書き直しました。

どうしてそんなに苦戦しましたか。

台本を読ませていただいて、作品に寄り添った内容ではあるんですけど、それと、同じ量の今のリアリティのようなものを書き出したいなと思って。今、実際に自分が感じていることもそうだし、みんなが感じている痛みを代弁したいっていう責任感をすごく感じたんですよ。そうなると、ちゃんと心の底から納得したものじゃないと意味がないなと思って。

自分一人じゃなくて、誰かと一緒に生き抜きたいっていう強いメッセージを表現したいと思ってました

今、ご自身が感じているこというのは?

今も不安な時間は続いてますけど、自粛期間に感じたのは、リアルな痛み、不安、無力感ですね。その気持ちはちゃんと忘れないように言葉に残しておこうと思ったし、去年の経験はこの作品のためになったと思います。みんなも感じていた孤独感や不安感、どうすることもできない無力感……。あとは、人との繋がりを、ほんとにもう一度、どれだけ自分に必要なのかっていうことも再確認できました。だから、生きる!っていう生命力みたいなもの……それも、自分一人じゃなくて、誰かと一緒に生き抜きたいっていう強いメッセージを表現したいと思ってました。

前作と通じるテーマでもありますよね。「光と闇」から「希望と絶望」っていう。

そうなんです。ちょっとシリアスな光と闇、あと、深さというか……水の奥みたいな世界観を今、自分が一番表現したいことなんだなって感じてて。だから。スタッフさんとは「through the dark」の続きとして作っていきたいねって話してました。

“水の奥”っていうのはどんなイメージですか。

今回のテーマは、「今、目の前に広がっている絶望感」だったんですけど、なんかこう、終わりがないというか……。進んでも進んでも、ずっと同じ状況が広がっている。それが、湖とか海とか、深いところで自分が一人、孤独感を感じながら葛藤してて。必死に動いているのに、何も変化がないっていうのとすごくリンクしているなと思って。そういう、怖さみたいなものを水からすごい感じる。

無理やりハッピーエンドにしても、リアリティが減ってしまうのかなと思った

状況が変わってないということは、まだ光や希望は見えてないんでしょうか。

そうですね。もちろん、希望は捨ててないですし、「大丈夫だ」って言い聞かせているところはあります。でも、この楽曲の中では、ストーリーは完結してなくて。最後に<二人は/この道に迷う>で終わってるんですよ。最初のサビでも<二人は/この道に迷う>と歌ってるので、最後はハッピーエンドにしてもいいのかなって思ったんですけど、実際に私たちって、全くハッピーエンドに近づけてもいないのかなと思っていて。これを無理やりハッピーエンドにしても、リアリティが減ってしまうのかなと思ったので、あえてのそのまんま<二人は/この道に迷う>で終わっているんですよね。だから、少しの希望は信じているけど、まだ、葛藤や不安、孤独は続いている。この楽曲の続きがまだあるよっていう、To be continued…というか、まだまだこれで終わりじゃない。

それはタイトルにもなってますよね。「終わりじゃない」っていう。

これで私のストーリーって終わりじゃないよねっていう英詞で始まるんですけど、私は普段から、強い言葉を使いたいときに英語にするんですね。この強い言葉をそのままタイトルにしたいなと思ったし、このタイトルにも少しの希望が見え隠れしてるかなと思います。

「この状況がまだ続く」と捉えるとネガティブに聞こえるけど、「世界はまだ終わりじゃない」って捉えると少しポジティブに聞こえます。リスナーさんもいろんな捉え方ができると思いますが、それにしても今の自分の状況と重なるような箇所が多いですよね。

そうですね。いろんなところに自分の状況と作品を重ねたところがあって。例えば、1Bの<片隅の祈り 真っ白にして汚して行く>もいろんな日常や常識が失われているっていうのを表現したくて書いた部分なんですね。普通なら“真っ黒にして”っていうワードを入れると思うんですけど、今までの当たり前が当たり前じゃなくなったことを表現したくて、あえて“真っ白”っていうワードにしたんです。これまでだったら、安心する場所だった自分の街も不安になる場所になってしまっているなっていう大きな変化も去年はあった。外に出れない時期は街がすごく静かになって、ゴーストタウンみたいな感じになったじゃないですか。この大きな地球の上に私しか存在してないんじゃないか?って不安になったこともあったので、世界が歪んで壊れていく感じを歌詞の中に入れたりとか。あと、まだみんなが気づいてないところもあって。

え?どこですか。何か隠しワードが入ってます?

Dメロに竹内涼真さん演じられている“響”くんの名前を入れたんです。歌詞を書いていく中で、“響”っていうワードを入れたいなと思って。誰が一番最初に気づいてくれるかをすごく楽しみにしてます。

諦めない強さもいろんな場所に隠れているので、そういうところを楽曲の中から見つけて出してほしい

あはははは。楽曲の主人公は響くんの彼女、中条あやみさん演じる来美ちゃん目線ですよね。

そうです。最初のサビの<あの日の約束>は1話目のシーンを書いてます。でも、いろんな約束を果たせない方がいっぱいいると思うから、きっと皆さんもリンクするワードかなって思います。あとは、孤独感や寂しさ、無力感も大切なテーマなんですけど、私がドラマを見ていて感じたのは、誰かと繋がりたい、早く会いたいってい思いなんですね。大切な人と離れ離れになることがこんなにも苦しいんだなっていう気持ちはリアルに書けたんじゃないかと思います。だから、絶望感はものすごく大きいけど、またその人と一緒に生きていけるんだ!っていう、諦めない強さもいろんな場所に隠れているので、そういうところを楽曲の中から見つけて出してほしいですね、

歌入れはどんな思いで臨みましたか。

サビスタートで、強い言葉から始まる曲なので、結構、パワーがいる曲だなって。レコーディング終わったあとは、いつもの10倍はへとへとになってましたね。ワンマンライブが終わったあとくらいのやり切った感がありました。

現実の世界では成り立たないですけど、全身燃えながら、水の中で必死にもがいて泳いでる映像を想像しながら歌ってました>

生命力というか、エネルギーが歌声にこもってますよね。

全身に力が入ってしまいましたね。本当はもうちょっとリラックスしたほうがよかったかもしれないんですけど、それくらい、自分からどんどん力が生まれてくる感覚があったので、それが、声に現れているかなと思います。頭の中に浮かんでいたのは、水と火。水の中なのに燃えてる、みたいな。絶対にありえないことなんですけど、水も火も、ものすごい力を持っていて。現実の世界では成り立たないですけど、全身燃えながら、水の中で必死にもがいて泳いでる映像を想像しながら歌ってました。

MVはまさに水の中でびしょ濡れになってますね。

お風呂の中でもがいてるんですけど、私も部屋で歌詞を書いてるときとか、アイデアが出てこないなと思ったら、お風呂の中に入って、裸になって水を浴びると、意外と言葉が出てくるんです。だから、私の日常が現れているシーンだと思ってて(笑)。嫌なことがあったり、悔しいことがあったり、失恋したときとか。お風呂の中で感情を全て吐き出して、ボロ泣きしてっていうことが、日常的に私の中であって。感情を包み隠さずに出せる場所だと思っているし、狭い空間から抜け出せないっていうのは、狭い部屋の中にいないといけなかった時期とも重ね合わせてて。その中で、なんでこうなっちゃったの?なんであの人に会えないの?ってもがき苦しんでるっていうシーンになってます。逃げたいけど、出口が見つけられない、不安や無力感がありつつも、誰かと繋がりたい、話したい、触れたいという思いを表現していて絶望の中でもまだ諦められないんだよっていう少しの希望を込めたMVに仕上がりました。

映画を観て、「これ、自分じゃん。そのまんまだな」っていう気持ちに

もう1曲の「amber」は深川麻衣さんが主演の映画『おもいで写真』の主題歌になってます。

主人公の結子ちゃんが自分と重なる部分がたくさんありまして。

それは意外です。結子さんは、常に眉間に皺を寄せてるくらい、頑固で融通効かない役柄でした。

本当ですか?私、すごく不器用で、自分が思ってることをそのまま人に伝えることを、もう諦めてるくらい(笑)、自分にはできないことだなと思っていて。だから、映画を観て、「これ、自分じゃん。そのまんまだな」っていう気持ちになったんですね。

共感できたんですね。

そうですね。結子ちゃんは、不器用で、全てをずっと睨みつけてるんですけど、それって、自分の弱さを隠したいがための行動なのかなと思ったんです。私は自分のダメな部分を人に見せるのが怖くて。本当はダメな部分がいっぱいあるのに、そう思われたら嫌だなと思って、あえて、いい子ちゃん風に行動したり、発言したりする。そうしている自分は嫌なんですけど、そうやってしまいます。そういう意味では結子ちゃんと重なるところがあったし、彼女が写真を通して、いろんな人と話していく中で、自分の奥に仕舞い込んでいた感情みたいなものをどんどん開けていった経験も似てて。劇中では結子ちゃんが出会った人が、自分らしくいていいんだよって、彼女が進むべき道や居場所を優しく温かく指し示してくれた。私も仕事で出会った人や応援してくれる人たちに、いろんな言葉をもらうことによって、“あ、ダメな自分も受け入れてくれる人がいるのか。じゃあ、大丈夫かもしれない”って気づくことがいっぱいあって。特に二十歳の頃ができなくて。

デビューしたばかりの頃ですよね。

20代前半は、いい子を演じなくちゃいけないんだと思ってしまっていました。アーティストはみんな完璧なんだって、謎なことを常に考えていたんですよね。だから、歌詞を書くのも難しかったんです。本当はダメな部分がいっぱいあるのに、そこはみんなにバレたくないから、ちゃんとしたものを作らなきゃって思ってた。でも、最近は、ファンの皆さんや周りにいるスタッフの皆さんが「もっとダメな部分出しちゃっていいよ。みんな、レイちゃんの深いところの本当の姿を知りたいんだよ」って言ってくれて。まさに、この作品と同じように教えてもらった経験があるので、すごく自分の言葉として歌うことができたかなと思います。

<遠く遠く離れた>って、いろんな風に考えられるワードだと思っていて

映画を観てから聴くと、結子ちゃんと彼女を応援していたおばあちゃんの関係性も見えてきますね。

私もこの楽曲を歌ってて、自分のおじいちゃんを思い出しました。<遠く遠く離れた>って、いろんな風に考えられるワードだと思っていて。実際に存在している人にも当てはまるし、コロナで会えなくて距離を感じてしまうときにも使えるし、もう会えない大切な人にも重なる部分もあると思う。私は今回、映画を観てから歌うことができたので、おじいちゃんという存在を思い出した1曲になってます。

レイさんにとっておじいさんはどんな存在ですか。

私、おじいちゃんと二人で過ごす時間がいっぱいあって。すごくお茶目なおじいちゃんだったんですよ。将棋と相撲が大好きで、いつも私が見たいテレビを見させてくれなかった(笑)。おじいちゃんの影響で和菓子が好きになったし、よく二人で出かけてご飯を食べたりもして。なんというか、いろんなことを気にしないで生きているおじいちゃんがめちゃくちゃカッコよかったんですよね。もちろん、悩みはあったと思うんですけど、いっつも元気で、いっつもパワフルで、「もうしょうがないよ!」って言ってくれてた。私は他にも、もう会えない大切な人を思った「きみのうた」という曲があるんですけど、ライブで歌うとおじいちゃんをすごく近くに感じることができて。この仕事をしていると未来のことが不安になったりするんですけど、そういう楽曲を歌うと、しょうがない、どうにかなるっていうおじいちゃんのマインドを思い出してパワーが出ますね。

では、もし今のレイさんが「おもいで写真」を撮るならどこがいいですか?

小学生の頃の記憶が一番色鮮やかに残ってて。すごい大きい市民プールがあって。その市民プールに、夏休みに週に一回行っていたんですね。そのプールを上がって、お蕎麦とかうどんを食べる小さなお店があったんですけど、そこで写真を撮りたいです。今あるのかもわからないんですけど、そこで、日焼けした体を冷ましながら、みんなでなぜか熱い蕎麦を食べるっていう、訳のわからないことしてましたね。そこで撮りたいですね。

レイさん泳げるんですね。今日、海や湖、お風呂、プールと水にまつわる場所がたくさん出てきましたが、水というのはどんなモチーフなんですか。

いや、泳げないんですよ、私(笑) 。

市民プールは流れるプールで、浮き輪につかまり永遠に浮かんでただけで。昨日もインスタでくじらが地上に出て水飛沫を上げてる動画を見ただけで、ゾワゾワってするんですよね。だから、水=恐怖なんですよね。

一人で生きていたらわからなかった正解を、繋がりを通して見つけられる

(笑)楽曲に戻ると、サウンドは優しくて温かくなってます。

この2曲、サウンドの世界観は遠いように聴こえるんですけど、実は歌詞はどちらも“繋がり”が共通の大事なキーワードになっていて。「Not the End」は繋がりたい、「amber」は繋がりがあるから自分の居場所が見つけられるっていう。一人で生きていたらわからなかった正解を、繋がりを通して見つけられるっていう。実はそういう繋がりが、どっちの楽曲にも存在しているので、全然違った世界観ですけど、ぜひ2曲並べて聴いていただきたいですね。

「through the dark」「Not the End」の物語は続いていきますか。

まだ完結してないので、光や闇、自分の中の深いところというテーマは今後もチャレンジしていきたいですね。ただ、とにかく今は、「Not the End」を聴いてほしいです。私だけじゃなく、みんなの中にある孤独感や絶望感が出発点ではありますが、それでも諦めたくない気持ちや大切な人との繋がりという大きなテーマで書かせていただいたので、みんなでポジティヴに!っていうことではないんですけど、この楽曲を聴いて、お互いに少しでも、自分の中の正解のようなものを見つけられたら嬉しいですし、早くライブでこの曲を歌いたいですね。私がいま、感じている孤独感や不安感もみんなの顔を見たらきっと晴れると思うから。

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安田レイ

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州生まれ。
3歳で日本ヘ。10歳の頃、母親が聴いていた宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志す。13歳で音楽ユニット『元気ロケッツ』に参加。
20歳を迎えた2013年「自身の歌声をもっともっとたくさんの人々の心に直接届けたい」という強い想いを胸に、同年7月シングル「Best of My Love」にてソロシンガーとしてデビュー。その後も、ドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など、話題の楽曲を次々とリリース。
2015年11月にリリースした「あしたいろ」は、TBS系ドラマ『結婚式の前日に』主題歌として共感を呼び、その年の活躍が認められ、「第57回輝く!日本レコード大賞」新人賞も受賞。これまでにリリースしたアルバム3作全てがiTunesにてJ-POPチャートTOP10入りを果たしており、さらなる活躍が期待されている。

オフィシャルサイト
https://www.yasudarei.net