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SEKAI NO OWARI 初のベストアルバムをリリースした“セカオワ”の唯一無二の音楽世界10年の軌跡(前編)

SEKAI NO OWARI 初のベストアルバムをリリースした“セカオワ”の唯一無二の音楽世界10年の軌跡(前編)

Nakajin、Fukase、Saori、DJ LOVEによるSEKAI NO OWARIは、ライブハウスを自らの手で作るところから始まった。京浜急行電鉄空港線大鳥居駅が最寄り駅の“club EARTH”。メンバーが借金しながら作ったこのライブハウスは、初期のSEKAI NO OWARIの拠点であり、メンバーや仲間たちが集まる秘密基地でもあった。ライブハウスに出演するのではなく、まずは自分たちの場所を作る。この発想は、その後のセカオワの指針になり続けた。

メンバー自身が設立したライブハウスclub EARTHを拠点に、00年代後半から活動をスタートさせたSEKAI NO OWARI。ドラムとベースが存在せず、エレクトロとバンドサウンドを融合させたスタイルは、いまでこそ一般的だが、当時は極めてレア。ライブハウスに出演する際もPCを持ち込んでいたわけだが、当時はそのやり方が理解されず、バカにされることもあったという。00年代後半は、DTMもいまほど発達しておらず、機材も高価だった。そのなかで4人は、ひたすらトライ&エラーを繰り返しながら、自らの独創性を追求し続けた。既存のスタイルではなく、自分たちだけのやり方を貫き、他にはない音楽を作り出す。そのスタンスもまた、現在まで続いているセカオワの基盤だ。

筆者が初めてSEKAI NO OWARI(当時は“世界の終わり”名義)の音楽に触れたのは、「幻の命」。2010年2月10日にリリースされた最初のシングルだ。作詞:Fukase、作曲:Saoriによるこの曲は、クラシカルなピアノから始まるミディアムチューン。叙情性と高揚感を共存させたメロディライン、生命の神秘を生々しいリアリティとともに映し出す歌詞、そして、打ち込みのビートと生楽器の響きを活かしたアレンジなど、セカオワの音楽的な起点となった楽曲だ。ご存知の通りセカオワは、その後、大きく音楽性を広げ続けることになるのだが、その原点はまちがいなく「幻の命」だ。

同年4月に発表された1stアルバム『EARTH』のインタビューのために、筆者は初めてメンバーに会った。場所はもちろん、club EARTH。“自分たちでライブハウスを作って、共同生活しながらバンド活動を続けている”という前情報から“内向きな雰囲気の人たちなのかな”と勝手な先入観を持っていたのだが、実際の4人はとても明るく、オープンマインドな人たちだった。また、当時からメンバーは自らの音楽性に確信を持っていた。それは「このバンドの使命はFukaseの言葉を伝えること」というNakajinのコメントに表れていたと思う。

「幻の命」「虹色の戦争」「インスタントラジオ」など初期の代表曲を収めたアルバム『EARTH』はスマッシュヒットを記録。初の全国ツアー『世界の終わり Heart the eartH Tour』の初日の公演(2004年4月7日/下北沢QUE)でFukaseは「自分たちの初めてのアルバムが思った以上にたくさんの人に聴いてもらえて嬉しい」という趣旨の話をしていたが、既にこのとき、セカオワの音楽——奥深く、生々しいメッセージ性とポップにして多彩な音楽性を兼ね備えた——はリスナーを強く惹きつけはじめていた。

2010年の秋には、シングル「天使と悪魔/ファンタジー」を引っ提げたワンマンツアー「世界の終わり 秋のワンマンツアー2010」を開催。12月23日には初めてのホールライブを渋谷C.C.Lemonホール(現LINE CUBE SHIBUYA)で行った。“DJ LOVEの瞬間移動”などイリュージョン的な演出も施されたこのライブは、“エンターテインメントしてのセカオワ”の始まりだったと言っていい。

翌2011年8月にシングル「INORI」でメジャーシーンに進出した4人は、同年11月22日に日本武道館でのワンマンライブを行った。インディーズ1stシングル「幻の命」のリリースからわずか1年9ヵ月で武道館に到達したわけだが、当時を思い返してみると、「それくらいは当然だろうな」と思わせる勢いが確かにあった。この公演からSaoriがライブ演出を担当。まるでアミューズメントパークのようなSEとアナウンス、OMC-1と名付けられたロボットによる前説(声は山寺宏一)、シェイクスピア、スティーブ・ジョブズ、村上春樹、北野武、甲本ヒロト、「ONE PIECE」のDr.ヒルルクによる“死にまつわる言葉”ともに奏でられた「不死鳥」の演出など、独創的なエンターテインメントに溢れたステージは、既存の“バンド”の枠を大きく超えていた。

2012年7月にはメジャー1stアルバム『ENTERTAINMENT』をリリース。シングル「スターライトパレード」「ファンタジー」「天使と悪魔」「眠り姫」が収録されたこの作品は、セカオワの最初の集大成。Fukase、Nakajin、Saoriによる、それぞれのセンスと技術を活かしたソングライティング。そして、ロック、エレクトロ、ヒップホップ、民族音楽などを自由に取り入れたサウンドメイクは、まさに唯一無二。アルバム『ENTERTAINMEN』のヒットによりSEKAI NO OWARIは、完全に日本の音楽シーンのど真ん中に突き進んだ。完全にブレイクを果たした4人だが、本作のインタビューの際はとても穏やかで、自分たちが置かれた場所を俯瞰していた。その根底にあったのは「自分たちがやりたいのは、まだまだこんなものじゃない」という強い意思。それはその後、前代未聞のエンターテインメントとして具現化していくことになる。

<後編へ続く>

文 / 森朋之

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SEKAI NO OWARI 初のベストアルバムをリリースした“セカオワ”の唯一無二の音楽世界10年の軌跡(後編)

SEKAI NO OWARI 初のベストアルバムをリリースした“セカオワ”の唯一無二の音楽世界10年の軌跡(後編)

2021.02.10

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【「SEKAI NO OWARI 2010-2019」 特設サイト】
https://sekainoowari2010-2019.com

SEKAI NO OWARI

2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。同年4月1stアルバム『EARTH』をリリース後、2011年8月にTOY’S FACTORYよりメジャーデビュー。圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーにアプローチ、「セカオワ現象」とも呼ばれる加速度的なスピード感で認知を拡大する。2015年アルバム『Tree』をリリース、同年7月18日、19日には日本最大規模の会場日産スタジアムにて「Twilight City」、2016年アリーナツアー「The Dinner」、2017年ドーム・スタジアムツアー「タルカス」を完遂。2018年、その圧倒的なスケールで彼らのライブエンターテインメントを世の中に知らしめた野外ライブの全国版「INSOMNIA TRAIN」を開催することを発表。また、同年2月平昌オリンピック・パラリンピックNHK放送テーマソング「サザンカ」を担当。2019年、約4年振りのアルバム『Eye』と『Lip』を2枚同時リリースした。名実ともに、日本を代表するグループとなったSEKAI NO OWARI。新しい音楽シーンの最前線の旗手として、止まることなく、攻め続ける新世代の才能である。

オフィシャルサイト
https://sekainoowari.jp/