Interview

崎山蒼志 15歳で現れた異能の少年が、18歳で刻んだ過去・現在・未来と、満を持してのメジャーデビュー・アルバムを語る。

崎山蒼志 15歳で現れた異能の少年が、18歳で刻んだ過去・現在・未来と、満を持してのメジャーデビュー・アルバムを語る。

2018年の衝撃的な登場以来、その才能が注視されてきた崎山蒼志。当時、15歳だった彼は18歳になり、ついにメジャーデビューを果たした。すでに2枚のアルバムを発表し、著しい成長を刻んできた彼だが、メジャーデビュー・アルバム『find fuse in youth』は、独自の音楽性にさらに磨きをかけ、過去と現在と未来を鮮やかに描いた作品となった。そこには思春期の行き場のないエネルギーや言葉、止めどもなく溢れる表現欲、新しい音楽への好奇心、世界中がコロナ禍に包まれた時代の空気さえ入り、真摯に情熱的に音楽と対峙する高校3年生の姿が見えてくる。高校卒業を間近に控え、旅立ちの時を迎える彼が、浜松からリモートでインタビューに答えてくれた。

取材・文 / 佐野郷子


中学時代につくってYouTubeに上げた3曲をあえて「再定義」した理由。

待望のメジャーデビュー・アルバムがリリースされました。現在は高校3年生ですが、今はどういう状態ですか?

3月に卒業式を迎える前の最後の高校生活を浜松でおくっています。冬休みはライブがあって東京にも行ったんですが、2度目の緊急事態宣言以降は地元にいます。浜松も出歩いている人は減りましたが、東京に比べると空気感はユルいというか。東京はやっぱり緊張感がありますね。

2020年はコロナの影響で崎山さんも様々な予定や計画が変更を余儀なくされたのではないですか?

僕の場合は予定されていたライブやツアーがかなり飛んじゃいましたね。

学業と並行しての音楽活動とはいえ、気持ちが挫けませんでしたか?

でも、僕よりもっと大変な境遇の人はいるし、大丈夫な方だったと思います。この前も2月に予定していたCHAIさんと共演するライブが中止になってしまって。CHAIさんは僕も大好きなので、すごく楽しみにしていたんです。

今回のメジャーデビュー作『find fuse in youth』の制作もコロナ禍の昨年に始まったということですね。

そうですね。先行配信された3曲のシングル「Samidare」、「Heaven」「Undulation」に関してのアレンジャーさんとの打ち合わせは、3月くらいから始めていました。

その3曲は、過去の楽曲をバンドアレンジで「再定義」した三部作シリーズということですが、メジャーデビューに際してあえて過去の曲を選んだ理由は?

この3曲は僕が中学時代につくってYouTubeに上げて反響をいただいていた曲で、いずれは音源化したいと思っていたんですが、当時はまだ中学生だったので外界との隔たりがあって、閉塞感がある3曲なんです。「Samidare」は、2018年に「五月雨」として音源化してずっと歌ってきましたが、「Heaven」や「Undulation」はつくってから時間も経っているし、今はあの頃の閉塞感はなくなってきて、歌詞もつたないんだけど、人を一緒に演奏することで新しい解釈ができたらという思いがありました。

君島大空、長谷川白紙、諭吉佳作/menとのコラボレーションで共有できたもの。

アレンジを手がけた宗本康兵さん、江口亮さん、田中ユウスケさん、立崎優介さんは、ももいろクローバーZ、LiSA、あいみょんなどの編曲で活躍している人たちですね。

安易なコメントになりますが、「プロフェッショナル!」だと思いました。「Samidare」のベースのマーティ・ホロベックさんとドラムの石若駿さんは、ジャズ畑でも活躍している超スゴい方々なので、一緒にレコーディングして刺激をもらいましたし、楽しかったですね。

石若駿さんとは、2019年の「潜水 (with 君島大空)」が初共演ですが、あれが崎山さんにとって初めてのバンドサウンドでしたね。

そうですね。中学のときに一応バンドは組んでいたんですが、ちゃんとしたのはあれが最初でした。石若さんは君島さんのバンド形態のときのドラマーで、僕もぜひお願いしたかったんです。おかげで「Samidare」もバンドっぽいグルーヴが出ていると思います。

崎山さんは15歳とは思えないギター・テクニックを駆使した独自の弾き語りスタイルで登場しましたが、長谷川白紙さんや諭吉佳作/menさんとの共演を経て発表された2nd『並む踊り』(2019)は、音楽観も含めてかなりアップデイトされていましたね。

僕自身、聴く音楽もどんどん変わってきたし、前のアルバムの頃から色んな音楽に挑戦していきたいと思っていました。君島さん、長谷川さん、諭吉さんとは元々ネットで交流があったんです。歳も割と近いし、僕がリスペクトしてやまない3人なので、ここで一緒に音を残しておきたいなと。

自らの音楽をSoundCloudなどで発信して、その才能が発見されるなど、世代の近さも含めて崎山さんとも共通点が多い。

そうなんです。

そこでお互いの音楽を通して意識を共有できる仲間に近い存在に出会ったと?

仲間というと恐縮してしまいますが、共有できる部分があると感じました。だから共作できたし、それは有り難かったですね。まだ自分の音楽が固まっていない時期に新しいことにチャレンジできたのはよかったかもしれないです。

小さい世界の中で人間関係に悩んだり、閉塞感を感じていた中学時代。

メジャーデビュー作でもある新作『find fuse in youth』は崎山さんのなかでは3rdアルバムという感覚ですか?

3rdというより、やはり、メジャーデビューでの1作目という意識の方が強いですね。有名なアレンジャーの方にお願いしたり、ポップなテイストや聴きやすさも意識するようになったので。その一方、アルバムでは今、やりたい実験的なことにも挑戦しました。

崎山さんにはアルバムにどんな構想がありましたか?

3曲の配信シングルの収録は決まっていたので、そこに自分の実験的な曲も入るとかなりカオスな内容になりそうな予感はありました。あと、この春、高校を卒業して上京することになったので、今は自分を振り返るタイミングなんじゃないかと思いました。それで過去を振り返りながら、今の自分と繋がるような内容になっていきました。

アルバムは配信版とはバージョンが異なる「Undulation」から始まります。

〈友達にもらった言葉のナイフを 今日も僕は頭の中で握っている〉という歌詞は、書いた当時の心の叫びでもあった?

中学3年の時に書いた曲なんですが、小さい世界の中で人間関係に悩んだりしていたから、そんな言葉が出できたんだと思います。今はその頃とは違うけれど、大切な気持ちでもあるので、振り返るように歌っている気がします。次の「Heaven」も中2で書いた曲です。

〈この街から逃げてしまえばいい〉〈全てから脱皮したい〉と、現実からの逃避願望がパンパンに膨らむ年頃らしい歌詞ですね。

中二病みたいな感じですかね。中学時代は行動範囲も限られるし、閉塞感をすごく感じていたので、ここではないどこかへ行きたい願望が強かったんだと思います。僕のなかでは1stアルバム『いつかみた国』の「国」という曲に近いですね。江口さんのアレンジによって、YouTubeに上げていた時よりアグレッシブな曲になりました。

去年の自粛期間は、自由気ままに色んな曲をつくることができた。

その頃は地元でライブもやっていたんですよね?

そんなに頻繁ではないですけど、家の近くのライブカフェや公共施設でやったり、たまにバンドで高校生のイベントに呼んでもらったりしていました。

そこでストレスは発散はできていたんですか?

できていたと思います。曲をつくって人前で歌うことである程度は発散できたんですが、将来に対する不安やモヤモヤした気持ちはありました。

弾き語りの「鳥になり海を渡る」はいつ頃の曲なんですか?

高校1年の時だったと思います。自分の過去の曲を洗い直した時にこの曲も入れておきたかったんです。弾き語りのスタイルは、abemaTV「日村がゆく」で急に人に知られるようになり、沢山の人の前でライブをやるようになってから徐々に身についてきたんですけど、この曲は放映される前に書いた曲なので、中学の思いが高校に入って新たなフェーズに入ったような曲ですかね。進化した中学生というか。

ストリングスを入れたスローナンバー「そのままどこか」は、今までとはタッチの違う曲で新鮮ですね。

これは去年、初めて恋の歌をつくってみようとして書いたので、ある意味、挑戦でした。だんだん空気が冷たくなってくる金木犀の香る季節の夕暮れの青春っぽい情景にストリングスがハマっていると思います。去年は自粛期間もあって家にいる時間が長かったので、自由気ままに色んな曲をつくることができた気がします。

最近はヒップホップの影響を受けつつ、自分の中ではロックの成分がいちばん高い。

崎山さん自身がアレンジを手がけ、音楽的にも新たな冒険をした「waterfall in me」や「目を閉じて、失せるから。」は、その自由気ままな時間につくった曲ですか?

そうです。トラックはiPadのガレバン(GarageBandでつくったんですけど、アメリカのJPEGMAFIA(ジェイペグマフィア)というヒップホップ・アーティストの影響が反映された曲ですね。ここ1、2年は、ヒップホップも聴くようになって、中でもJPEGMAFIAに衝撃を受けて、コピー&ペイストっぽく景色がころころ変わる歌詞の書き方も面白くて。

JPEGMAFIA はGorillazの新作にCHAIと一緒に参加していましたね。

そうなんですよ。CHAIさん、スゲぇ! と思いましたよ。CHAIのヴォーカルにJPEGMAFIAのラップが乗っかるなんて! と一人家で感動していました。

崎山さんがそんな異能のヒップホップまで聴いているのは少し意外な気もしますが、これまでのギターを弾き語りながら歌う崎山さんのイメージを刷新するような曲でもありますね。

そうかもしれないです。自分なりに音だけでなく言葉の実験にも挑んで、今、やりたい実験的なことをアルバムで出来たと思います。

崎山さんが登場した当初は、卓越したギター・テクニックから大人の音楽ファンに注目を集めましたね。

最近は若い人も増えてきたんですが、最初の頃は大人のギター好きな人に「なんでオベーション使っているの?」とか訊かれたりしましたね。オベーションは父が高校時代に好きだったBLANKEY JET CITYの浅井健一さんが使用されていたからなんです。僕はバンドみたいな弾き語りをしたいと思っていたので、中1の時に買ってもらって、それ以来使っています。

なるほど。BLANKEY JET CITYのようなロックに憧れはある?

ありますね。ギターを始めるきっかけになったのはthe GazettEというバンドなんです。最初は母の影響でヴィジュアル系のロックから入って、その後はBLANKEY、ナンバーガール、凛として時雨、洋楽だとリンキン・パークなどを聴いてきたので、自分の中ではロックの成分がいちばん高いと思います。

コロナ禍の混沌とした状況から生まれた曲、「回転」、「Repeat」。

緊急事態期間の2020年4月に、Youtubeで発表した「回転」は、〈わかり合えないね〉と言いつつ、〈祈りは届くよ〉と希望も匂わせていますね。

世界がコロナの影響で混乱して、何だかよく分からない陰謀論とか出て来たりした頃に書いたんです。何か巨大なものに対して、自分ではどうしようもない無力感はあるけれど、それに抗いたい気持ちもあるというか。これはあの時期でないと書けなかったと思います。

「観察(interlude)」のジャジーなギターも新境地ですね。

次の「ただいまと言えば」が映画用に書き下ろした曲なので、ここでインタールードを入れたいなと。最近はジュリアン・ラージやコンテンポラリー・ジャズなんかも聴くようになってきたので。

幅広い音楽をどんどん吸収している過程で、池田エライザさん原案・初監督の映画『夏、至るころ』の主題歌「ただいまと言えば」も手がけて。

映画の主人公が同年代だったし、脚本を読んで、自分の気に入っていた「ただいまと言えば」というフレーズが映画にも合うんじゃないかと思ったんです。そこから世界から取り残されたような、ぽつんとした寂しさのイメージを連想して。

「Repeat」も崎山さん自身がトラックを作っていますが、ギター以外で曲をつくることはいかがですか?

ビートから曲をつくる面白さは、ギターとは違う即興性があって楽しいですね。この曲を書いたのは、2020年の4月くらいで、欧米がコロナで大変な状況になったり、著名な方が亡くなられたニュースもあったので、歌詞にはその影響が表れていると思います。あと、『新世紀エヴァンゲリオン』のカヲルくんからのインスピレーションもありつつ……。

〈権力者は皆神様のつもりで 愚民を見捨て穴に埋めるのか?〉という言葉がコロナ禍の混沌とした状況を思い起こしますね。

そうですね。不安や怒りや悲しみが溢れていた頃だったので。ただ、音楽的にはあまり新しいことをやろうとしていなくて、僕は2002年生まれなんですけど、『2002年宇宙の旅』的に浮遊している感じというか、ちょっとレトロなSFのようなイメージもあります。

自分でもやっと素直な歌詞が書けるようになってきた「find fuse in youth」。

アルバムタイトル曲の「find fuse in youth」は、どういう意味を込めているのでしょうか?

fuse=導火線という言葉は、いずれ火が点いて爆発してしまうようなイメージですね。それを若いときに見つけるという意味で付けました。

今、まさに新たな旅立ちの時にいる崎山さん自身が見えてくる曲でもあるし、過去が去来すると同時に未来に向かう力強さがありますね。

そうですね。自分の原風景も入れつつ、歌詞にもあるように〈大きく息を吸っておこう〉という今の自分に重なりますね。

崎山さんの歌の中ではかなり素直でポジティブな歌詞なのでは?

自分でもやっと素直な歌詞がちょっと書けるようになった感じがします。今まではこねくりまわしながら、何とか自分を表現しようとしてきたと思うんですが、こういう歌詞も書けるようになってきた。

〈優しい今日ありがとう〉は、最後にグッときました。

よかったです。この曲は、やっぱり最後しかなかったですね。僕もこの1年は音楽にずいぶん助けられたし、コロナ禍の状況でも色んな音楽を聴いて楽しい時間を過ごすことができたのは大きかったと思います。自分の音楽もそういう風に聴いてもらえたら嬉しいです。

最近は刺激になる音楽と出会いましたか?

今はカナダのフォークとか、日本だとKIRINJIさんがめっちゃ好きです。ああいう自分には足りない上質なポップへの憧れもあるし、これからも色んな音楽を取り入れながら、自分のヘンテコな部分を活かしていきたいですね。

高校卒業後は、音楽一筋ですか?

はい。地元を出て、東京の方を拠点に活動していきます。東京で同世代のミュージシャンの人たちやラッパーの方と、ちょっと怖いんですけど(笑)、知り合いになって共演できたらいいなと。でも、仏教にも興味があるので、いつかは大学で勉強したいと思っているんです。

2月後半からはツアーも始まりますね。

12月に配信ライブでやったように弾き語りと、iPadを使いながらギターと歌というスタイルのライブになると思います。ライブはパッションとソウルがその日によって変わるのが面白いし、ガチンコで熱くなれるのが好きなんです。今年はお客さんの前でライブをいっぱいしたいですね。

その他の崎山蒼志の作品はこちらへ。

ライブ情報

崎山蒼志 TOUR 2021 「find fuse in you(th)」
2月23日(火) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2月27日(土) 大阪・心斎橋 BIGCAT
3月21(日) 東京・恵比寿 LIQUIDROOM
※やむを得ず公演中止や延期となる場合は、オフィシャルHPでご案内いたしますのでご来場前にご確認をお願いいたします。

崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。2018年、インターネット番組の出演をきっかけに世に知られる。2018年夏に「夏至」と「五月雨」を配信リリース、12月にはファースト・アルバム『いつかみた国』をリリース。地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーは、即日全公演完売となった。2019年5月には自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで開催。10月にセカンド・アルバム『並む踊り』を発表。全国10公演のリリースツアー「並む踊りたち」を行う。2020年には、アルバムに先駆け、11月に「Samidare」、12月に「Heaven」、2021年1月に「Undulation」を連続配信リリース。1月27日にアルバム『find fuse in youth』でメジャーデビュー。2月からは東名阪の3箇所で行われるツアー崎山蒼志 TOUR 2021 「find fuse in you(th)」が開催予定。現在、テレビドラマや映画主題歌、CM楽曲などを手掛けるだけではなく、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

オフィシャルサイト
https://sakiyamasoushi.com/