Interview

足立佳奈 新たな表情で聴かせる恋愛模様。デビュー4年目を迎え、自分の色を持ち始めた実感と細部にこだわった曲作りについて訊く。

足立佳奈 新たな表情で聴かせる恋愛模様。デビュー4年目を迎え、自分の色を持ち始めた実感と細部にこだわった曲作りについて訊く。

足立佳奈が2021年一発目となる配信シングル「まちぼうけ」をリリースした。これまで何度もコラボしてきたCarlos K.とタッグを組み、細部にわたってこだわりをつめこみまくった表題曲は、大人なにおいを感じさせるままならない恋愛模様を描いたせつないラブソングとなっている。ジャケットやMVでは、気鋭のイラストレーター・ゆのの描く女性をフィーチャーし、楽曲の持つ世界観をより色濃く伝えてくれてもいる。中部エリア ホンダカーズCM曲に起用されているカップリング曲「DRIVE」も含め、デビュー4年目を迎えた足立佳奈の新たな表情満載の本作。じっくりと堪能して欲しい。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 荻原大志


今の私の年代として等身大でリアルな恋愛の形を曲にすることができたんじゃないかなって

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

昨年末からYouTubeで「あだちの絵日記便」をスタートさせた足立さん。フリートークをしながら毎回、1枚のイラストを描き上げる動画ですが、飾らない素の表情が見られるところがすごく楽しいですね。

私としてはまだちょっと恥ずかしいんですけどね(笑)。10分間、何を話していいんだろうって迷いがあるし、みんな楽しんでくれるのかなっていう不安もあったりして。なので、「楽しいです」っていう感想をいただけたのがすごくうれしいです(笑)。

そもそもそういった動画の配信を始めようと思ったのはどうしてだったんですか?

スタッフさんとの話し合いの中で何か新しいことに挑戦してみたいよねっていうことになったのがそもそものきっかけで。今の若い世代の子たちはYouTubeがすごく身近にある生活を送っているので、そこにMVやドキュメンタリー映像をアップしているだけっていうのはちょっともったいないような気がしたんですよ。なので、足立佳奈の人となり、素の部分を感じてもらえるような動画にしようと思いました。私自身のキャラクターや個性を知ってもらえることに関して、デメリットはひとつもないですしね。

しかも視聴者は動画内で描かれたイラストを実際に手にすることもできるんですよね。

そうなんですよ。全国のセブン-イレブンでプリントアウトすることができるんです! 動画をただ観るだけで終わらないところが新しい形ですよね。動画は毎週更新されているので、すでにイラストをコレクションしてくださっている方もいて。「あだちの絵日記便」がファンの方同士の新しいコミュニケーションの場になっている実感もありますね。

イラストを描くのはお好きなんですか?

得意ではないですけど、描くのは楽しいです。続けていく中で、絵の腕前も成長していったらいいですよねぇ。「一回目のイラストはこれでしたけど、今はこんなに上手になりました!」っていう比較動画ができるようになるまで頑張りたい(笑)。上手くならないにしても、ファンの方の手に渡るものでもあるので、どんどん雑になっていかないように心掛けていきたいと思ってます。

「一番にはなれないけど、それでもあなたの隣にいたい」という気持ちを歌った曲を作ってみたかった

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

今後も楽しみにしています! で、そんな足立さんから2021年一発目となる配信シングルが届きました。表題曲となる「まちぼうけ」はせつないラブソングになっていますね。

今回は私の中に書きたいラブソングのテーマが元々あって。「一番にはなれないけど、それでもあなたの隣にいたい」という気持ちを歌った曲を作ってみたかったんですよね。

ままならない恋愛の形は少し大人っぽい雰囲気がありますよね。

私自身、年齢を重ねて思うのは、中高生の頃とは恋愛の形がだいぶ変わってきているところもあるなっていうことで。社会人になったりすると大人にしかわからない恋愛観に直面したりして、「恋ってもっとピュアなはずだったのにな」って悩んだりすることが多くなるような気がするんです。そういう意味では今の私の年代として等身大でリアルな恋愛の形を曲にすることができたんじゃないかなって思います。

作詞は足立さんが手がけられています。ご自身の中に芽生えたテーマを歌詞に落とし込んでいく作業はいかがでしたか?

曲としての終わり方をどうするかって部分をものすごく考えましたね。これまで出してきたラブソングは「これで最後の恋にします、さよなら」とか、「君と過ごせて幸せでした」とか、結末がわりとはっきりしているパターンが多かったんですよ。でも今回は最後までどっちつかずな感情のまま、ストーリーをあえて完結させないで終わることにしたんです。そこが私なりにこだわった部分ですね。

気持ちはずっと繰り返されていくっていうこと

あえて結末を描かなかったストーリーの中で、足立さんが一番伝えたかった感情はどんなものなんでしょうね?

私が伝えたかったのは、気持ちはずっと繰り返されていくっていうことですね。2番のサビにある“勝手に耐えて 苦しんで/それでもやっぱときめいて”というフレーズが象徴的ですけど、好きな相手のことを考えているといろんな感情が行ったり来たりするものだと思うんですよ。一番になれないのであれば一歩引こうと自分に言い聞かせてみても、相手の些細なしぐさやSNSの投稿を見たりするとまた好きという気持ちが大きくなってしまったり。

あきらめた方が楽になることはわかっているけど、なかなかそうはいかないっていう。

そうそう。難しいですよねぇ(笑)。そういう感覚って恋愛だけに限らないと思うんですよ。例えば自分の中の夢なんかも同じですよね。あきらめようと思ってもあきらめられないことって、世の中にほんとにたくさんあると思います。今回の曲は恋愛にフォーカスしてますけど、そういう思いにみなさんが共感してくれたらうれしいですね。応援歌のように解決策に向けて背中を押すタイプの曲ではないけれど、「あーその気持ちわかる!」「わたしも同じ気持ち!」っていうふうに思ってもらえたらいいなって。そういった曲にすることもまたひとつのテーマではあったので。

曲はCarlos K.さんとの共作ですね。

これまでに「ひとりよがり」や「面影」という曲を一緒に作ってくださったCarlosさんとまたタッグを組ませていただきました。いつものようにCarlosさんのスタジオにおじゃまして、「こんな曲が作りたいんです」ってお伝えしながら、いちから一緒に作らせていただきました。

Carlosさんから「もっといいメロ出せるでしょ」って言われて

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

この曲はメロディがとんでもなくいいですよね。Aメロ、Bメロ、サビ、大サビと、すべてのパートのメロディがすごく強くて。

ありがとうございます! 実はこれ、元々私が作っていたデモでは、今Bメロになっているところがサビだったんですよ。“きっと何歳になっても忘れないんだろう”っていう歌詞も含め、自分としてはすごく気に入っていたところで。

なるほど。元々はBメロがなく、Aメロ~サビという構成だったわけですね。

そうですそうです。でも現場でCarlosさんから「もっといいメロ出せるでしょ」って言われて、新たなサビをくっつけることになったんですよ。言ったら“2段階サビ”にするような意識ですよね。

その新たなサビは現場で作ったんですか?

はい。その場で「こんな感じはどうですか?」って私からメロディを提案して、それに対して「ん~ちょっと違うね。それだったらなくてもいいね」みたいなやり取りを繰り返して。Carlosさんに加えて、スタッフさんたちも「もっと行けるよ!」って気持ちを高めてくださったので、かなり頭を悩ませながらもいいメロディを生み出すことができました(笑)。

用意してあったデモを一度まっさらにして、いちから作り直すこともあったりしますし。私としてはそういう作り方にワクワクできるんですよね

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

すごいなぁ。かなりスパルタな現場ですよね(笑)。

あははは。いやでもCarlos.さんとご一緒するときはけっこうそういう感じの作り方が多いんですよ。用意してあったデモを一度まっさらにして、いちから作り直すこともあったりしますし。私としてはそういう作り方にワクワクできるんですよね。そこまで妥協なくこだわったほうが自分でも納得がいきますし、曲に対しての思い入れもより強くなりますからね。なので全然スパルタだとは思わずにやれています(笑)。

ご自身から湧き出すメロディのバリエーションが、この3年強の活動の中で広がってきた実感ってあります?

そうですね。これまでの活動の中で自分なりの色みたいなものはきっと出来上がってきていると思うんですけど、だからこそつい似たようなメロディを書いてしまうこともあるんです。でも、Carlos.さんをはじめ、プロフェッショナルなクリエイターの方々とご一緒させてもらってきたことで、新しいアイデアもたくさん出てくるようにはなっていて。今回のように即興でメロディを作るときなんかでも、自分なりにいろいろ考えて対応できるようになっているような気はしますね。

アレンジに関しても現場で練り上げていった感じですか?

はい。私のデモのサビ……今のBメロと、新たに作ったサビの繋がりが自然になるようにどうしたらいかっていうのを現場でかなり考えましたね。結果、転調をすることにしたんですよ。しかも、通常サビで転調するってなると音を上げることが多いんですけど、今回はあえて下げる転調にしたんですよね。他にもピアノのアレンジに関しては、最初は単音でポーンポーンと始まるんだけど、どんどん気持ちと共に大きくなっていくイメージをお伝えして作っていただきました。自分の中に完成形のイメージがわりと鮮明にあったので、それを生かしてもらった感じですね。

大サビから後半に向けての流れは最高にグッとくるポイントですよね。

あー! そうなんですよ。そこもかなりこだわったところで。大サビの最後にブレイクが挟まるんですけど、それを入れるかどうかですごく悩んだんです。もうほんとにタイムリミットぎりぎりまで、「やっぱりブレイクいりますよね?」「いや、いらないですかね?」みたいな試行錯誤を何度も繰り返しました。

結果、そのブレイクがすごくいい溜めになって、その後のフレーズがより印象深く響いてくることに。しかもそのフレーズ頭に入るブレスがまたヤバイんですよねぇ。

あははは。うれしい! 私は息を吸い込むブレスを効果的に使った曲をずっと作ってみたかったんですよ。その夢が今回叶いました。大サビ後の“もっと欲張っていいなら奪いたいんだよ”のところも、声が震えている感じのいいテイクを録ることができて。「相手との関係を壊したくない、でも……」っていう主人公の葛藤をボーカルからもきっと感じていただけるんじゃないかなと思いますね。

ピアノの演奏と呼吸を合わせつつ、自分の間で歌うことで、主人公の思いにしっかりと寄り添った表現ができたような気がします

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

ボーカルに関して他にこだわったところはありますか?

ピアノのアレンジに通ずるところではあるんですけど、歌に関しても最初は自分の思いをボソボソとつぶやいていく感じから始まって、それがサビでエモーショナルに歌い上げる展開になるっていうイメージでレコーディングしました。ピアノと歌だけの冒頭の部分はクリックを聴かずに歌うという挑戦もしたんですよね。ピアノの演奏と呼吸を合わせつつ、自分の間で歌うことで、主人公の思いにしっかりと寄り添った表現ができたような気がします。

足立さんのこだわりは今回、ジャケットやMVにも注がれたようですね。

今回のジャケットは初のイラストなんですよ。「話がある」のリリックビデオでもお世話になったイラストレーターのゆのさんに、この曲の主人公が思いを寄せる女性像をイラストとして描いてもらいました。口角の上がり方や視線の行き先など、細かな表情に関してもいろいろリクエストさせていただきましたね。

この曲の中の2人がこんなところで思い出を作っていたらいいなって思いながら撮影した景色の中に、ゆのさんがいろんな表情の女性を描いてくださいました

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

曲の主人公である男性がどんな女性に惹かれているのかっていうことが、ジャケットのイラストから伝わってきますよね。それによって曲の世界観をより深く、リアルに味わうことができます。

そうそう。歌詞の中では男性の思いがメインで、相手の詳細はあまり伝えられなかったので、そこをジャケットやMVでちゃんと受け取ってもらえたらいいなっていうことですね。MVは私が撮影した動画や写真で構成されていて。この曲の中の2人がこんなところで思い出を作っていたらいいなって思いながら撮影した景色の中に、ゆのさんがいろんな表情の女性を描いてくださいました。

イラストを見た感じ、決して悪女ではなく好感の持てる女性ですよね。男性としてはそこにちょっと救われた感じもしたんですよね。

はい。自分勝手な感情であいまいな関係な恋をする女性ではないっていうことをどうしても伝えておきたかったんですよね。主人公の男性のことを大事に思う気持ちが強いからこそ、そういう関係になってしまっているっていう。歌詞には1行だけ“満たされない虚しい2人の心”っていう女性側の感情を読み取れるフレーズを入れましたけど、彼女も苦しんでいるんだよっていうことを、曲はもちろん、ジャケットやMVからも感じ取ってもらえたらなって思います。

今回の配信シングルにはもう1曲、「DRIVE」というナンバーも収録されます。中部エリア ホンダカーズCMソングとして作られたそうですね。

この曲は元々、中村泰輔さんに作っていただいて、いつかリリースしたいなと思ってあっためていたものなんですよ。で、今回タイアップのお話をいただいたときに、「あ、あの曲がぴったりかも!」と思って提案させてもらいました。疾走感のあるサウンドがドライブにピッタリで、ホンダカーズさんのCMとの相性もいいんじゃないかなって。で、そこから歌詞を書かせていただいた感じですね。「まちぼうけ」同様、この曲もギリギリまでこだわって作らせてもらいました。

自分なりのタイミングで夢を見ればいいんだよって

足立佳奈 WHAT's IN? tokyoインタビュー

いわゆる聴き手の背中を押す応援歌だと思いますが、歌詞の書き方がすごくおもしろくて。“走り出す理由なんていらない”“目指す目的地なんていらない”と否定的なフレーズを用いながら、でもちゃんと前を向いたメッセージとして鼓舞してくれているっていう。

そうですね。人間は自由であっていいし、いろんな道を見つければいいと思うんですよ。で、自分なりのタイミングで夢を見ればいいんだよっていう。私のお兄ちゃんは夢を見つけられなくて苦しんでいる時期があったし、周りの友達にもそういう子がけっこういて。時期的にも学校の卒業を控えて進路の選択に迫られている人もたくさんいると思うんです。なので、このタイミングでこういう形の応援歌をかけたことは自分としてもすごくうれしかったですね。

“Oh Oh Oh”と歌うパートがあったりして、ライブで盛り上がる曲になりそうな印象もありますね。大サビなんかはみんなで高らかに大合唱したい雰囲気ですし。

まさに私もそのイメージをしてました! もちろんタイアップという部分を意識して作りつつも、一方ではライブで盛り上がれたらいいなっていう思いもあって。なのでクラップの音に厚みをもたせたりとか、細かいところまでしっかり考えながら作っていきました。BPMはそこまで速くないのに心地いい疾走感を感じるのは、サウンド的な厚みがあるからこそだと思いますね。この曲では、テンポだけに頼らない疾走感の形を学ぶことができたような気がします。

サビで“ぼくら”という言葉を使ったので、みんな一緒に肩を組んで夢に向かって走っていきたいっていう気持ちが強かった

強さだけで引っ張るのではなく、サビにファルセットを混ぜるなど繊細なボーカルを響かせているところもいいですよね。

サビで“ぼくら”という言葉を使ったので、みんな一緒に肩を組んで夢に向かって走っていきたいっていう気持ちが強かったんですよね。私が前に立って引っ張っていくのではなく、みんなで寄り添いながら一緒に行きたいっていう気持ちを歌でも上手く表現できたんじゃないかなって思います。

本作の配信スタート後、2月12日からは全8公演の全国ツアー「ADACHI KANA LIVE TOUR 2021 ~Dear.~」が開催されますね。

去年のツアーがすべて中止になってしまったので、「やっとライブできる!」っていう気持ちが強いです。今のコロナの状況を考えると、完全に晴れやかな気持ちで迎えることはできないですけど、でもだからこそ光を生み出すようなツアーにできたらなと思っています。オレンジ色をしたあたたかい空気を感じていただけるように、今回はアコースティックなアプローチを考えているので、楽しみにしていて欲しいですね。タイトルの“Dear.”が示すように、全国にいる大切な人たちに愛を届けに行くので待っていてください!

https://adachikana.lnk.to/2E8q11

その他の足立佳奈の作品はこちらへ。

ライブ情報

ADACHI KANA LIVE TOUR 2021~ Dear. ~
2月12日(金) 北海道・cube garden
2月27日(土) 広島県・SECOND CRUTCH
2月28日(日) 福岡県・DRUM Be-1
3月12日(金) 宮城県・仙台MACANA
3月14日(日) 東京都・EX THEATER ROPPONGI
3月25日(木) 大阪府・大阪BIGCAT
3月27日(土) 石川県・金沢AZ
4月2日(金) 愛知県・DIAMOND HALL

詳細はオフィシャルサイトにて
https://www.adachikana.com/live/

足立佳奈

岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。
2014年、LINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月メジャーデビュー。
Twitter・Instagram・TikTokなどのSNSフォロワーが計130万を超えるなど若者から幅広い支持を得ており、2020年8月31日にリリースした配信シングル「朝になったら削除します」はTikTokのハッシュタグ視聴で760万を超え、SNSに投稿された動画の総累計再生数は1000万を超え話題に。
2021年2月3日には配信シングル「まちぼうけ」をリリースし、2月12日からは全国8か所をまわる「ADACHI KANA LIVE TOUR 2021~ Dear. ~」の開催を予定している。

オフィシャルサイト
https://www.adachikana.com/

オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UChthsNDWnGTCsAJSY-yGSyg