Report

小西詠斗&髙石あかり&谷水 力らが青春のもどかしさや煌めきを歌とダンスと芝居で魅せる。「地縛少年花子くん-The Musical-」上演中!

小西詠斗&髙石あかり&谷水 力らが青春のもどかしさや煌めきを歌とダンスと芝居で魅せる。「地縛少年花子くん-The Musical-」上演中!

「地縛少年花子くん-The Musical-」の東京公演が、2021年1月28日(木)に東京ドームシティ シアターGロッソにて幕を開けた。
月刊「Gファンタジー」(スクウェア・エニックス刊)で連載中のあいだいろ による大ヒット漫画のTVアニメが原作。 主人公の「トイレの花子さん」こと花子くんを、今作が初主演、初ミュージカルとなる小西詠斗が務め、ヒロインの八尋寧々を髙石あかり、「かもめ学園」に起こる奇妙な事件に立ち向かう“祓い屋”の源 光(みなもと・こう)を実力派の谷水 力が演じる。
フレッシュな若手俳優たちが学園の七不思議に挑むハートフル便所コメディ。そんな舞台の東京公演初日の模様をレポートしよう。

取材・文 / 竹下力


人間の根源的な優しさを真空パッケージ

“本作を観劇しなかったら人生の何分の一かを損してしまう”と断言してしまいたくなるほど、10代しか持ち得ない心のもどかしさと輝かしさ、人間の根源的な優しさを真空パッケージした素晴らしい作品だった。

キラキラした歌が朗々と劇場に響きわたり、たくさんの友達(ダチ)との戯れには、10代らしいピュアな和気藹々さが感じられる。「かもめ学園」という小さな世界が舞台のお話なのに、ティーンたちにとってはまるで宇宙で起こった大事件のように感じてしまう心のありさまがダイナミックに表現されている。

突き詰めれば、本作は“自分とは? 生とは? 死とは?”という人間の根源に関わる問題を少しずつ理解し始める子供たちの心身の成長が主題だと思う。少年少女たちが心の揺らぎに戸惑いを覚えながらも、前を見据えて困難に立ち向かおうとする痛快な冒険譚。10代ならではの繊細な感情の揺らめきと、演出の吉谷光太郎のもたらす清らかなリリシズムとが合体して、万人の青春期のドキュメントになっていた。まさに“青春舞台”だ。

かもめ学園高等部1年生のおまじないや占いの大好きな八尋寧々(髙石あかり)は、学園に伝わる噂話を耳にする。それは、自分の大切なものと引き替えに願いを叶えてくれるという、学園の七不思議のひとつ「トイレの花子さん」の噂だった。

寧々は大好きな先輩と両想いになりたいと、旧校舎の女子トイレで花子さんを呼び出す。すると、男の子の幽霊・花子くん(小西詠斗)が現れる。花子さん=女の子だと思っていたのに男の子。わかっていても彼は幽霊。戸惑いを隠せない寧々だったが、願いを叶えてくれる花子くんに恐る恐るお願いをする。しかし訳あって、花子くんと“縁”を結んでしまう羽目に。ブーブー文句を言いながらも無下にできないと思っている寧々を花子くんは助手としてこき使う。

そんななか、由緒正しき祓い屋の少年・源 光(谷水 力)が花子くんを祓うために学園にやってくる。同時に学内では異形の存在“怪異”たちが様々な問題を起こしていた。3人はそんな“怪異”たちの暴走を止めるために奮闘していくが、花子くん、寧々、源 光の想いも交錯し始める──。

この物語は、魑魅魍魎が闊歩するホラーであり、異世界を描くファンタジーであるが、大切なのは“学園モノ”であること。七不思議のひとつ「ミサキ階段」の首謀者であるヤコ(佐倉花怜)や、「16時の書庫」の管理人の土籠(【つちごもり】安里勇哉)といった“怪異”たちを仲間にしながら、3人が自分の存在を見つめ直して成長していくビルドゥングスロマンだから。彼らは“怪異”たちと触れ合うことで世界の真の姿を見つめ、生と死、悲しみと喜び……それらの意味や自身の存在意義に迫っていく。

素晴らしいのは、楽しく時には物哀しい歌やダンスを媒介にして、現世とあの世を行き来しながら、登場人物たちの心情が次第に変化し、成長していく様が手にとるようにわかる物語の構成だ。教条主義的な言い回しがないから、すんなり世界に入り込める。10代の少年少女にしか持ち得ない、みずみずしい感性をきちんと体感できるところが見どころだろう。

しかも、青春期によく感じるどうしようもないもどかしさが根底にそこはかとなく流れていて、“人間とは?”と自己に言及した問題を突きつけられる野心的な作品でもある。エンターテインメントとして終わらせない作劇には目を見張る。ファンタジーやオカルトの要素は十二分にあるけれど、現実を生きる人々の姿を活写している点でリアリスティックな作品だ。

脚本・作詞を担当した浅井さやかは、原作を丁寧になぞりながら、舞台でしか表現できないミュージカルという手法を使って、10代の可愛らしさや小憎らしさ、悲しさや喜びを綺麗に切り取っていた。音楽のtakもクラシカルな要素のチェンバー・ポップから、ティーン向きのバブルガム・ポップ、ゴシックなポップナンバーまで、幅広いジャンルを歌にしながら、「地縛少年花子くん」の世界観を立体的に表現することに成功。

演出の吉谷は、観客が思わず突っ込みたくなるコメディから、目線を釘付けにする大ミュージカル的な演出まで、様々な手法を駆使して舞台を彩る。キャスト、小道具、照明、音楽、あらゆるものを使った手練手管な演出には参ってしまう。吉谷演出の作品を観ていつも思うのは、彼の作品には技術的なもの以上に、清々しいリリシズムが舞台から横溢していることだ。観客も心を洗われるような気持ちになるし、舞台で生きている俳優たちも演じることを楽しんでいる。観客だけでなく演者も満足させることができる稀有な演出家だと思う。

どのキャストも初々しいのに、感情表現豊かな芝居に感嘆する。

ほぼ舞台に出ずっぱりの八尋寧々 役の髙石あかりは、抱えているちょっとしたコプレックスなどどこ吹く風と舞台上を駆け巡りながら闊達な少女を大胆に演じていた。実年齢と役の年齢が近いこともあって、寧々の心情を皮膚感覚で理解していたのだと思う。だから芝居に違和感がないしブレもない。伸びやかな歌も綺麗で、これから俳優として大輪の花を咲かせる予感を感じさせてくれる。

谷水 力は、少しドジなのに一本気な性格の源 光を熱演していた。谷水の芝居はいつ観ても役に人間の心が通っている。感情がフラットにならないでつねに変化し続けている。だからこそ、彼の芝居の少しの感情の揺れ動きにも共鳴してカタルシスを感じられる。そういえば昔、こんな男の子がクラスにいたなという懐かしい記憶までが蘇ってくる。源 光は自分に自信があるのに、時に自己の存在の基盤が揺らぐほど悩んでしまう人物。だけど、凛としてそこにいようとする勇気が、谷水演じる源 光からは感じられ、頼もしいクラスのリーダーのような存在感を発揮していた。

花子くん 役の小西詠斗は、ギャグからシリアスまで縦横無尽に表情を変えながら颯爽と演じていく。情熱と冷静さを保ちながら、一筋縄ではいかない花子くんの心模様を屈託のない芝居でリアルに表現する。初ミュージカルでありながら歌も素晴らしい。役の心情がひしひしと伝わってくる歌声からは感情がこぼれ落ちてくるようで感動的だった。本人もインタビューで「役の心情を大切にしたい」と語っていたけれど、小西らしさを伸びやかに全面に押し出して清々しい演技を見せてくれた。彼もまたこれからの活躍が楽しみな逸材だと思う。

「地縛少年花子くん-The Musical-」は、青春期の煌めきを思い出して胸のうずきを再確認できる。同世代の観客は登場人物たちの一挙手一投足に共感して、この窮屈な日常から少しだけ解放されるだろう。なにより10代の心の煌めきが巧みにミュージカルとして表現されている。演劇でしか感じることのできない“ハレの空間”が本作にはみなぎっていた。

公演は、1月31日(日)まで東京ドームシティ シアターGロッソにて上演。また、千秋楽の1月31日(日)のマチネとソワレが「dアニメストア」にてライブ配信される。アーカイブは1週間、期間内は何度でも視聴できる。詳細は公式サイトをチェックしよう。

フォトギャラリー(上記未掲出写真含む)

「地縛少年花子くん-The Musical-」

大阪公演:2021年1月22日(金)〜1月24日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
東京公演:2021年1月28日(木)〜1月31日(日)東京ドームシティ シアターGロッソ


<ライブ配信>
配信公演:2021年1月31日(日)12:30公演/17:00公演
アーカイブ配信期間:2021年2月7日(日)23:59まで
配信チケット購入先はこちらから


【STORY】
かもめ学園高等部1年生のおまじないや占いの大好きな八尋寧々は、学園に伝わるとある噂話を耳にする。
大切なものと引き替えに願いを叶えてくれるという『トイレの花子さん』。
どうしても叶えたい願いのある寧々は、旧校舎の女子トイレで花子さんを呼び出す。
だがそこに現れたのは、なんと男の子の幽霊だった!?
その日から女子トイレの花子さん、ではなく七不思議七番「花子くん」の助手となった寧々。
そこに花子くんを追ってきた祓い屋の少年・源光も加わり、
3人は学園に潜む怪異たちに立ち向かう!?
果たして学園に巻き起こる事件を解決することはできるのか?

原作:あいだいろ「地縛少年花子くん」(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)/「地縛少年花子くん」製作委員会
脚本・作詞:浅井さやか
演出:吉谷光太郎
音楽:tak

出演:
花子くん 役:小西詠斗
八尋寧々 役:髙石あかり
源 光 役:谷水 力
つかさ 役:設楽銀河
ミツバ 役:三原大樹
赤根葵 役:朝倉ふゆな
ヤコ 役:佐倉花怜
七峰 桜 役:関根優那
日向夏彦 役:黒田昊夢

土籠 役:安里勇哉

アンサンブル:蘆川晶祥、船橋拓幹、熊田愛里、朝日奈杏

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@hanako_mu)

©あいだいろ/SQUARE ENIX・「地縛少年花子くん」製作委員会
©ミュージカル「地縛少年花子くん」製作委員会