Interview

内海啓貴がVR演劇に挑む。そのとき自分は何を思うのか、『僕はまだ死んでない』から投げかけられるメッセージ

内海啓貴がVR演劇に挑む。そのとき自分は何を思うのか、『僕はまだ死んでない』から投げかけられるメッセージ

舞台上の主人公の視点に設置された360度撮影できるVRカメラで収録した映像を自分が観たい方向を選んで観られる演劇の醍醐味と、まるで出演者のひとりとなって舞台上にいるかのような感動を味わえる、新感覚演劇体験。そんな最新テクノロジーを活用した新たな演劇スタイル“VR演劇”は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けている演劇界にとって、新たな活路、新たな文化になる可能性を大いに秘めている。
今回、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」などで映像技術を巧みに演出に取り入れているウォーリー木下が原案・演出を手がけた新感覚演劇体験、VR演劇『僕はまだ死んでない』が完成。2月1日(月)より配信がスタートする。
本作で、病に倒れ身体を動かすことができなくなった白井直人 役を演じた内海啓貴に、VR演劇のことから作品への想い、2021年の抱負などを聞いた。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 冨田望


直人の気持ちにだんだんなっていく。舞台上にいる感覚になる

まずは、VR演劇『僕はまだ死んでない』への出演のお話を聞いたときのお気持ちから聞かせてください。

僕自身は「35MM:A MUSICAL EXHIBITION」(2020年)で初めてVRで観せる演劇というものを経験させていただいていて(※本公演はTBS赤坂ACTシアターで上演、一部VR動画配信を行った)、観てくださった方から、演者はこんな目線でいつもお芝居をしているんだ、こんな表現をしているんだという反応、新鮮で楽しかったという感想をいただいていました。「35MM」は劇場で公演していたミュージカルだったので、どういう画になるのかという想像はついていたんですけど、今作は“VR演劇”として立ち上げるものだったので、いったいどんな作品になるだろうなって思っていました。

その感覚は実際に稽古に入って変化しましたか?

本番はベッドに横たわっている僕が演じる白井直人の視点でVRカメラが置かれているので、視聴者は直人の気持ちにだんだんなっていくんだろうなって思っています。客観席ではなく舞台上にいる感覚になるというか。僕の役に寄り添う形で観るといった面でも楽しんでいただけたらと思います。それに(視聴者は)上を見ると照明も見えたり……という、普段はなかなか見られない舞台の裏側も見ることができるので、新しい感覚になれると思います。

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VRを取り入れた作品は初めてではないですが、また違った緊張感があったのでは?

映像のお芝居や生の舞台ともまた違う緊張感がありました。今回は病室の壁に囲まれた形のセットの中に入って演じるという緊張感が新しかったです。映像作品であれば間違えたらまたやり直すことができるんですけど、この作品は演劇でもあるので、長尺のシーンだと18分くらいあって、もし18分目で台詞を噛んじゃった、飛んじゃったってなると、またイチから撮り直さなくてはいけなくて。間違えちゃったらまわりのキャストさんやスタッフさんに迷惑がかかるし、しかもVRカメラは繊細でもう一度撮り直すために30分くらい冷やさなければいけないので、絶対に間違えられないという緊張感はありました。ただ、そういうことを考え出しちゃうとヤバそうだなと思ったので(笑)、本番はVRをいったん忘れてお芝居に集中しよう、と。

かなり緊張感がある特殊な撮影現場だったんですね。

VRカメラのレンズとレンズの間のところに立ってしまうと映像上で身体が途切れてしまったり、歪んでしまうので、立ち位置がきっちり決められているという難しさもありました。意識し過ぎてしまうと気持ちが乗らなくなってしまうので、最終的にはあまり意識はしなかったですけど。

直人が人として成長した姿を見せられたら

内海さんが演じられた白井直人は、意識はあるけれど身体が動かない、喋れない役です。どんな人間、どんなキャラクターだと捉えましたか?

彼は芸術家で、自分が興味を持ったものにしか身体が行動しないというところは僕と似ているかなって思いました。直人が罹ってしまった病気というのは、誰もが発症する可能性を持っている。本番ではベッドにVRカメラがあるんですけど、稽古では僕がベッドに寝たまま動かずに皆さんの芝居を見ていたので、役としてこのタイミングにこうしゃべりたい、意思表示したいっていう思いがいっぱいこみ上げてきて。伝えることができないというのは、ストレスという言葉だけでは言い表せないぐらいのストレスなんだろうなって思いました。人は動けなくなると、人の話をより聞くようになるんだなって思ったし、五感がすごく働くようになりましたね。感覚の触覚を全部立てながら演じていました。

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自分と似ていない部分はありましたか?

愛情表現がへたくそなところかな(笑)。ありがたいことに僕は家族に愛されて生きてきたのですが、愛情表現が不器用な直人が変わっていくという面白さがありました。彼は文字盤を使って意思表示ができるようになっても、「やってられるか、バカヤロー」って伝えるだけでも5分以上かかってしまうんです。だから余計に、自分の過去を振り返ったり、想像する時間が多くなるので、当たり前のことをすごく感謝するんだろうなって感じました。いろんな登場人物たちが「白井直人はこういう人間なんだ」、「ああいう人間なんだ」って言っている彼のイメージみたいなものを、あるシーンであえて裏切りたいなっていう思いがすごくあって……。

というと?

妄想の世界や過去に戻った世界の中で、白井直人自身が成長すると思うんです。その成長した姿を僕のシーンの中で見せられたら、と。この病気になってしまった直人をネガティブな状態じゃなくて、直人が人として成長した姿を見せられたらと思って演じました。

実年齢より上の役を演じることに対してはどのような役づくりをしましたか?

(白井直人には)娘がいるので、そこに対してのアプローチは台詞としては少なかったんですけど掘り下げました。直人は愛情表現がなかなかできない不器用な人間なので、過去を振り返るなかで「もっとああすればよかった」という後悔をすごく持っていると思うんです。だからきっと、娘に対する愛情も大きく膨らんでいったんだろうなと思いながら役をつくりました。(台本の)ト書きに書いてあることは絶対なんですけど、今回は直人のまわりにいたものも箇条書きにして、彼はこういう人間なんだろうなと想像しながら、そういう人がどういうふうに成長していくんだろうという物語を自分の中で作りました。

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ほかに、白井直人を演じるうえで意識したことはありますか?

白井直人はこういう人間です、というところを強く出し過ぎてしまうと、味が強すぎるんじゃないか、なんか違うなと思っていたので、最初から最後までフラットなお芝居を続けました。そうすることで観てくださる方がいろんな想像を膨らませることができるんじゃないかと思ったので。だから、僕自身も直人を客観的に見て、皆さんが寄り添えるような演技プランや役づくりを考えました。それも難しかったんですけど、今回はVR演劇で、生で観る作品ではないというところでトライできたことだとも思います。

今作からどのようなメッセージを受け取りましたか?

この作品ってコロナ禍じゃなければできなかった作品だと思います。それに、VRという文化や手法を発展させようというスピードの速さも、今までどおりの演劇ができない世の中になってしまったからなんじゃないか、と。

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VR演劇は視聴者がどこにいても観ることができますからね。

(コロナ禍で)僕自身も出演舞台が中止になってしまったことで、どこにもぶつけようのない悔しさをVR作品や配信作品によって解消することができたところはあります。本作は生死を扱う作品なので、僕が演じる直人を通じて、お客さんが少しでも前向きな気持ちになってくれたらと思いますし、もし自分が直人のようになったら、誰が(病室に)来てくれるのかなとか、いろんな想像をしてしまうと思います。誰にでも罹ってしまう可能性のある病気ですし、このコロナ禍で、今生きていること、自分の命を大切にしてほしいというメッセージを強く込めて芝居をしましたし、この作品は夢を与えるというよりも、リアルに知ってほしいという思いがある。だからこそ生死を大切に考えてほしいと、あらためて思った作品でした。

年上に甘えるところとか、自分とリンクしている

白井直人には碧(加藤良輔)という兄貴分の幼馴染みがいますが、内海さんには碧のような存在はいらっしゃいますか?

一緒に住んでいる2歳上の実の兄貴ですね。僕的には弟気質が強いので、碧にぃとの過去を想像したりするシーンはやりやすかったです。加藤さんもとても優しい方で、すごくピッタリな役でしたね。

弟気質ということは甘え上手なんですか?

だと思います(笑)。直人の台詞にもそういう台詞があるんですけど、年上に甘えるところとか、自分とリンクしている部分がありました。

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ウォーリー木下さんはどのような演出家だと思われましたか?

ウォーリーさんの作品は初めてでしたが、僕が疑問に思ったことは必ず返してくださるのですが、あえて細かな演出をしない時などを見て、役者をすごく信頼してくださっているんだなと感じました。

ウォーリーさんからのアドバイスや演出で強く印象に残っていることはありますか?

ロケーションで撮ったあるシーンの台詞がリアルではなくて、比喩というか……どんなふうにでも捉えられる台詞だったので、直人はどういう立ち位置にいればいいのかをウォーリーさんに相談させていただきました。そのシーンは直人の想像の世界でもあるし、碧にぃの想像の世界でもいける。どちらの捉え方もできるので、自分の中でふたりの世界をうまくリンクできなかったところがあったんですが、ウォーリーさんが助け船を出してくださって解決することができました。

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白井直人は油絵を諦めて生活のためにデザインの仕事をしていましたが、やっと油絵の世界に戻れたのに病気になってしまいました。内海さんご自身はやりたいことができずに諦めたことはありますか?

たくさんあります。それが、今回すごくリンクするんじゃないかなって思います。コロナ禍で中止になってしまった舞台に対する思いも、直人がこの病気になってしまったことを誰に対して悔しがっていいのかわからない状態とリンクしたし。今だからこそ、この作品が皆さんの心により響くんじゃないかなって。諦めたことって誰しもが持っているし、自分がその道にもう一度踏み出そうと思ったらまたアクシデントが起こるかもしれない、その繰り返しだと思うんです。僕は25年しか生きてないですけど、その繰り返しなので、そういうリアルをお届けできるんじゃないかな。そのなかでも、喜びというのは必ずあるので、それを演劇として見せられたらいいなって思います。

“テニミュ”卒業からがスタートライン

そんなコロナ禍の2020年を振り返るなかで、内海さんは2016年から出演されていたミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンを卒業されましたが、内海さんにとって“テニミュ”はどんな存在ですか?

僕にとって“テニミュ”の現場は、舞台人として生きていくための学校だったなって。舞台のことだけじゃなくて、役者として大切にしなければいけないことを教えてくれたし、同じ年代の人たちと切磋琢磨して表現を高め合っていく場所だったので、ホントに学校みたいなところだなって思っています。

通常なら卒業のタイミングで「Dream Live」が開催されますが、コロナで中止になりました。その代わりに、収録映像の配信が実施されたんですよね。

ファンの皆さんの前で、キャストが勢ぞろいして卒業式をあげられなかったんですが、同じようにコロナ禍で学生さんたちもいろんなことができなかったと思うんです。悔しい想いももちろんありましたけど、配信でもファンに届けることができたことを、僕は前向きに捉えていますし、自分の役者としての人生は、“テニミュ”卒業からがスタートラインだと思っています。

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あらためて2020年は内海さんにとってどんな1年でしたか?

本当に悔しい想いをたくさんしました。ブロードウェイミュージカル「アナスタシア」では初めてグランドミュージカルデビューができましたけど、公演が途中で中止になってしまって。どこにもぶつけることのできない悔しさがありましたけど、それって僕だけじゃないんですよね。自粛期間中にいろいろ考えたんです。舞台人って舞台に立てないとこんなにも無力な人間なのかと。そんななかで、自分がどういうふうに表現を磨けるのか、何を届けることができるのかって、いろんな思いが巡ったんですけど、何事もプラスに考えて、2020年はいい1年だったと言い切るしかないですね。そういう想いも、このコロナ禍じゃなかったら思わなかったことだと思うので、もう一度自分を見つめ直すことができた1年だったなって思います。あと、僕が2020年に一番得たのは“感謝”です。千秋楽を迎えられることも、舞台に立てる想いも、これまで当たり前のように感じていたところもあったので、それが当り前じゃない世の中になってしまったことで、常日頃感謝する人間になれた。それもプラス思考で良かったなって思います。

プラス思考に切り替わったきっかけは何かあったんですか?

結局、自分が好きなものって“表現すること”しかないなって。今までできてきたことに感謝だなってあらためて思ったんですよね。直人じゃないですけど、過去を振り返ってみたり、自分ってどういう人間だったんだっけとか考える時間がたくさんあったからこそ感謝できました。自粛期間の後半には感謝の気持ちでいっぱいだったので、また舞台に立てたら、表現ができることは当たり前じゃないんだっていう思いも込めて、丁寧に届けたいなって思っています。

自粛期間中はどのように過ごしていたんですか? 何か新しく始めたこと、頑張ったこととかはありますか?

頑張るのは当たり前だと思っているので、“頑張ってる”ってあまり言いたくないんですけど(笑)、レッスンや勉強は続けていました。あと、これまでいっさい料理をしてこなかったんですけど、料理を始めました(笑)。

ちなみに得意な料理はありますか?

チャーハンかな。パラパラにするのって意外と難しいんですよね。あと、ハンバーグの肉汁を閉じ込めるために粉ゼラチンを入れてふわっとした美味しいハンバーグも作ってます!

料理の腕が上がりまくりですね!

料理以外でやって良かったなって思うのは、『猫のひたいほどワイド』(TVK)の木曜レギュラーをやらせていただいてることです。普段なかなか出会う機会がない職業の方やいろんな方たちのインタビューでリアルな言葉を直接聞くことができたことは、とても勉強になりました。役者として、表現者としてリアルな言葉を聞くってすごく大事なんだなって感じました。

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観に来てくださった方の背中を押せるような表現者になりたい

では、2021年にやってみたいこと、抱負を教えてください。

たくさんありますよ~。25歳になって、“テニミュ”を卒業して、またここからリセット、リスタートだなってあらためて思います。僕の今の目標は、ミュージカルで帝国劇場に立つこと。ずっと前から目標に掲げてやってきて、まだその延長線上ですけど、自分を表現者として磨きたいとつねに思っています。エンターテインメントは心を明るくできるので、新しい自分を出せる作品にもいろいろとトライして、観に来てくださった方の背中を押せるような表現者になりたいなと思っています。

最後に、VR演劇『僕はまだ死んでない』を観てくださる皆さんにメッセージをお願いします。

この作品はどこでも観られるというのが武器だと思っていますし、この作品を手に取ってくださった方たちの心を少しでも明るくできたらいいなと思っています。VR演劇は視聴者の方のいろんな感覚も研ぎ澄まされると思うので、その新鮮さを楽しんでいただけたらいいなと思います。

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1月31日(日)~2月7日(日)23:59


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VR演劇『僕はまだ死んでない』

視聴開始:2021年2月1日(月)18:00〜
閲覧期間:7日間(最終閲覧は2021年3月7日(日)23:59まで)
配信チケット販売: 2021年1月17日(日)18:00~2月28日(日)23:59(期間中何回でも購入可能)
配信チケット価格:3,500円(税込)

原案・演出:ウォーリー木下
脚本:広田淳一
音楽:吉田 能

出演:
白井直人 役:内海啓貴
白井慎一郎 役:斉藤直樹
児玉 碧 役:加藤良輔
青山樹里 役:輝 有子
白井朱音 役:渋谷飛鳥
白井直人(幼少期)役:瀧本弦音
児玉 碧(幼少期)役:木原悠翔

主催・企画・製作:シーエイティプロデュース

オフィシャルサイト

内海啓貴(うつみ・あきよし)

1995年1月16日生まれ、神奈川県出身。近年の主な出演作品には【ミュージカル】「35MM:A MUSICAL EXHIBITION」、「アナスタシア」、『テニスの王子様』3rdシーズン、「いつか~one fine day~」、「黒執事」-Tango on the Campania-、【映画】映画『BLOOD-CLUB DOLLS 2』、『おかざき恋愛四鏡』はちみつイズムなどがある。TVK『猫のひたいほどワイド』木曜レギュラーを務めている。

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