Interview

ASCA ニューアルバム『百希夜行』は、希望しか詰まってない1枚。全曲について彼女の真摯な想いを訊く。

ASCA ニューアルバム『百希夜行』は、希望しか詰まってない1枚。全曲について彼女の真摯な想いを訊く。

さまざまなアニメソングやゲーム主題歌を歌うASCAが、前作『百歌繚乱』から約1年2ヵ月ぶりとなる通算2枚目となるニューアルバムをリリースする。TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者』のOPテーマ「Howling」やアニメ『ダーウィンズゲーム』のOPテーマ「CHAIN」というシングル曲に加え、アプリゲーム「ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング」主題歌の「進化論」やVRゲーム「ALTDEUS: Beyond Chronos」主題歌として制作された初の英語曲「DESIRE」、初めて作曲にも携わったバラード「君の街へ」などを収録した本作に彼女は“百鬼夜行”ならぬ『百希夜行』というタイトルをつけた。西川貴教、阿部真央、足立佳奈や MaRuRiやmizukiなどのボーカリストも参加したアルバムをもって、彼女はどこへ向かおうとしているのか。新たな挑戦とたくさんの希望に満ちたアルバムの曲順通りに話を聞きながら、彼女が希望とともに行進した先の目的地を探る。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志


みんなを最高の場所まで連れて行きたいっていう思いから、この四字熟語になりました

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

まず、アルバムのタイトルの意味からお伺いできますか。これがいわば全体のテーマですよね。

そうですね。最初に、この時代を一緒に生き抜いてきたみんなに希望のある1枚にしたいっていうのがテーマとしてありました。「Howling」のインタビューでも話させてもらったと思うんですけど、みんなを最高の場所まで連れて行きたいっていう思いが今回のテーマとも繋がっていて。こんな2020年だったけれども、2021年は実際に会いに行ける機会が増えていくっていう望みを捨てずに、みんなを最高の場所まで連れて行きたいっていう思いから、この四字熟語になりました。

その“最高の場所”については最後に聞きたいと思ってます。ここからアルバムの曲順通りに楽曲について解説していただきたいのですが、1曲目の「進化論」はアプリゲーム「ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング」主題歌になってますね。

歌詞は共作なんですけど、冒頭の<命がけの生存競争 まだ終わらないから>っていうフレーズからして、今の時代にぴったりだなって思って。2020年は悲しいことがたくさんあったけど、自分自身は立ち止まってちゃいけないし、なんなら進化しながら活動していきたいと強く思ってて。そんな自分の気持ちとゲームのお話がすごくリンクしてたんですよ。

キリトとユージオがいなくなってしまった世界で、後輩のロニエとティーゼが立ち向かっていくストーリーとなっています。

悲しみを乗り越えて進んで行かなきゃいけないターンに入るんですよね。私もライブがいっぱい中止になって、ファンの皆さんとの関係も滞ってしまったけど、そういうのを乗り越えていきたいし、もっと進化したところを見せ続けていきたいって思ってて。だから、「進化論」っていうタイトルにしたんですが、ロニエとティーゼは物語の中で記憶を消されてしまうんでね。だけれども、思いはちゃんと繋がっていく。ネタバレになるから詳しくは話せないんですけど、未来に繋いでいくっていうことも大事にしながら描いていきました。

ブレスからすごい勢いで始まりますね。

ありがとうございます。最初に仕留めていくっていうか……。

仕留めるの? 何を?

このアルバムを聴いてくださる皆さんの心ですね。この曲は絶対に何回も録らないぞって決めていって。目の前にファンのみんながいると思って歌ったんですけど、そう思うと、絶対に失敗できないじゃないですか。進化してるところを見せたいから。そういう気持ちで歌ったので、レコーディングはすぐに終わりましたし、とにかく鮮度を大事にしようっていう思いで進んでいきましたね。

本当に2020年が詰まった3曲ですね

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

進化したASCAを見せた後、「CHAIN」「Howling」と作詞に関わったシングル曲が続きます。冒頭の3曲は作詞曲でもありますね。

すごく思いの入った楽曲たちですね。まず、進化した私をお届けして、「CHAIN」は絆をテーマに歌ったんですけど、リリースイベントが一度しかできなくて。ファンの皆さんとの絆みたいなものがストップしてしまったイメージがあったんですけど、「CHAIN」があったから、こんな時代だからこそ、みんなと一緒に声を出したいんだよっていう「Howling」が生まれて。本当に2020年が詰まった3曲ですね。いろんな影響があったからこそ生まれた楽曲で始めさせていただきました。

そして、前作に収録された「NO FAKE」に続き、阿部真央が楽曲提供した「regain」に。

阿部真央さんは、私にとっての神なんですよ。この楽曲は、実は1年以上前にいただいた曲なんですね。

じゃあ、『百歌繚乱』の時にもうあったんですね。

そうなんですよ。2曲も提供してくださって。ただ、「NO FAKE」は私のライブを見ていただく前に描いた楽曲で、「regain」が、真央さんが私の1stライブを見に来てくださった後に描いてくださった楽曲なんです。だから、真央さんの「ASCAちゃんのライブを見て、この楽曲で盛り上がってほしいと思った」という気持ちが入っているのとともに、楽曲を作る前に真央さんと二人で話す時間もあって。

ファンのみんなが惹かれるのは、その人の中から出てくる自分らしさというものだよねっていう話をしていただいて

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

どんな話をされたんですか。

自分らしく生きることって大変だよねっていう話になったんですよ。アーティストは自分の中のものを貫くのは難しいけど、ファンのみんなが惹かれるのは、その人の中から出てくる自分らしさというものだよねっていう話をしていただいて。その後に、この曲が上がってきたので、泣けましたね。

誰かになろうとせずに、私を取り戻そうと歌ってます。

私の人間性やライブを見てくださった真央さんから「ASCAは自分らしくいけばいいんだよ。そのままでいけばいいんだからね」っていう言葉を頂いた感じがして。しかも、<錨を上げて進むのは私だから>っていうフレーズがあるんですけど、今回のジャケットに船が出てくるんですよ。偶然なんですけど、みんなを船に乗せて引き連れていくっていうテーマともすごく合っていて。改めて、順番に並べて聴いたときに、このアルバムに入れて、本当によかったなって思いました。

綺麗に歌うというよりは、汚くてもいいくらいの荒々しさを重視して歌いましたね

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

楽曲としては、すごい低いトーンから始まるますよね。

真央さん節が炸裂していて最高ですよね。自分的には女性という性にとらわれずに歌いました。もがいてもがいてというか、殴るようにというか。綺麗に歌うというよりは、汚くてもいいくらいの荒々しさを重視して歌いましたね。

これもライブで盛り上がりそうな曲になってます。

真央さんはBメロの<取り戻す>をファンの皆さんに言ってほしいと言っていたので、ファンのみなさま、よろしくお願いいたします!

(笑)誌面を通してお伝えしておきます。ここから恋愛ゾーンに入ります。

以前、配信限定でリリースした「偽物の恋にさようなら with 分島花音」という曲があるんですね。それが、こっぴどく相手を振る曲になってて。「SAYONARA」は振られた相手側の気持ちを描きました。

同じ男女ということ?

そうですそうです。振られた側ですね。「偽物の恋にさようなら」の作詞も共作で、テーマも私から投げかけたんですけど、ひどい女だなって思いながら歌っていて(笑)。あのままで終わらせることに心残りがありまして。綺麗に終わらせておきたいって気持ちがあったんですよ。なので、メンズの気持ちを妄想しながら、最後は<いつか笑顔できっと会えますように>っていう希望を持って終わらせていただきました。

振られた男性の方はいい思い出だけを残してるんですね。この子、健気でめちゃくちゃいい子じゃないですか(笑)。続く「曖・アイ・愛」はデビューシングルから携わってる、ツアーメンバーでもあるSakuさん曲ですが、途中、4ビートになってますね。

Sakuさんが「ライブでヨコノリになれる曲をASCAに歌わせたい」と言ってくださって。「CHAIN」のカップリング「いかれた世界だろ構わないぜ」の2番のDメロにもジャズっぽい要素が入ってて。そこからの流れも感じるし、最初にデモを聴いたときにカッコいいね、ライブでやったら楽しそうだねって思ったので、レコーディングも迷いなく、楽曲の主人公の気持ちになりきって歌いました。

どんな女の子でしたか?

仮タイトルが「あまのじゃく」だったんですよ。ツンツンした女子が、曖昧な関係はいらないのでさようならっていう曲なんですけど、最後に<御機嫌よう それでいいの?>って言ってるんですよね。これはきっと、自分自身に問いかけてて。ほんとにお別れしちゃっていいのかな? みたいな乙女な部分が出てる。だから、ツンツンしてるけど、本当は乙女っていう女の子ですね。

まだ迷ってるのかな。

そうですね。完結してないんですよね。これもまたアンサーソングできちゃうな。散々振り回されてるから、戻ったとしても、いい恋愛にはなれないかもしれないけど。

今後の展開を楽しみにしてます。西川貴教さんとのデュエット曲「天秤 -Libra-」はアルバムの中に入ってどう感じましたか。

この楽曲の存在感はほんとにえげつないなって思いましたね。百希夜行バージョンっていうことで、4つ打ちのビートに生まれ変わってるんですけど、この楽曲、テンポ早いんだなっていう新たな気づきがあって。あとは、西川さんと私の声だけになるところがあって。改めて、この楽曲の魅力を感じることができましたし、新しい発見もたくさんあるなって感じました。

特に<My DESIRE!>っていうサビのロングトーンはこだわって何回も録り直したので、ぜひ注目して聴いてほしいです

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

「DESIRE」はVRゲーム『ALTDEUS: Beyond Chronos』主題歌は初の全編英語歌詞になってます。

ゲーム制作の方々がすごく熱くて愛に溢れた方ばかりなので、クロノスチームの皆さんと一緒に新たな挑戦をさせていただけることはすごくありがたいし、誇らしいことだなと思って。歌詞を書いてくださったR!Nちゃんは澤野弘之さんのライブでご一緒したあと、プライベートでもご飯に行かせていただいたこともあって。仲良くさせてもらってるんですね。ゲームは、すごい悲しみを持っているけれども、ここで止まっちゃいられないっていうお話になってて、R!Nちゃんは劇中曲も担当してて。この「DESIRE」という曲には、実は『ALTDEUS』の劇中曲のタイトルが歌詞の中にいっぱい散りばめられているんですね。R!Nちゃんには、「主題歌でありながら、集大成の曲にしました」って言われてたので、私は持てるもの全部出し切ろうという思いで歌って。特に<My DESIRE!>っていうサビのロングトーンはこだわって何回も録り直したので、ぜひ注目して聴いてほしいです。

続く、「命に嫌われてる。」はボカロPであるカンザキイオリさんのカバー曲です。

アニメ「魔法科高校の劣等生 来訪者編」の放送が延期になってしまって、しばらく皆さんに新しい楽曲をお届けできない期間ができてしまって。じゃあ、何か届けようってことで、カバーしたんですね。レコーディングしたのは自粛明けで、3ヵ月ぶりのレコーディングだったので、歌う喜びや楽しさをめちゃくちゃ感じながら歌ってて。この歌詞を、言葉1つ1つをとても大事に歌っていったんですけど、いざ、音源を公開するタイミングが来たときに、世界全体的に暗くなってしまっているときだったので、意味を持ちすぎてしまうのかなって思ったんですけど、楽曲を聴いてくださった方々から、「励まされました」とか、「とっても心に響いて号泣しました」とか、たくさんの声を頂いて。

ASCAさんの歌声は “生”や“命”と密接に結びついているし、とても説得力を持って胸に沁みます。

ほんとですか? ありがとうございます。最近、言われます。まさに、このアルバムは、<命>や<生きていくこと>と向き合って書いた曲がたくさんありますし、2020年はみんなも、<命>や<生きていくこと>をすごくたくさん考えていたんだなって改めて思って。今の時代に素晴らしい楽曲をカバーさせていただけて、2020年を一緒に生き抜いたみんなに、2021年にこの楽曲を届けられるのはすごく意味のあることだなって思っています。

私からしか出てこないメロディは絶対にあるし、今やらないで、いつやるんだ、私。今しかないよねって思って

ASCA WHAT's IN? tokyoインタビュー

<生きる>や<生き抜く>という言葉がとても似合うんですよね。そして、「君の街へ」ではツアーメンバーでもあるSakuさん、重永さんとの共作ではありますが、初めて作曲にも参加してます。

アルバムを制作することが決まったときに、作曲にも関わりたいなって思いまして。私からしか出てこないメロディは絶対にあるし、今やらないで、いつやるんだ、私。今しかないよねって思って。Sakuさんと重永さんと3人で集まって作ったんですけど、<君の街に逢いに行くよ>っていうテーマと、バラードにしたいっていう思いは最初からあったんですね。繰り返しになりますけど、2020年はほんとに、みんなと全然逢えなかったから。2021年は、私もみんなも悔しい思いを回収していく。逢えなかった分、逢いに行くよっていう約束をしたくて。なるたけ等身大の言葉で、自分から今、出てくる、嘘偽りのないメッセージを届けようって心がけて作りました。

ファンへの手紙のようですよね。

まさに。日本の方だけじゃなく、海外の方にも応援していただいるので、世界中の方に届いたらいいなって思ってますね。応援してくれてるみんなが元気でいてくれたらいいし。難しいかもしれないけど、幸せでもいてくれたらいいなっていう願いを込めました!

最後にもう1曲、「Wings to fly」なんですが、何ですか、このメンツ?

あははははは。正しいです、その反応。どういう繋がりかわからないですよね。(足立)佳奈ちゃんは学年は違うけど同じ高校に通っていて、MaRuRiはカラオケ仲間で、mizukiさんは澤野弘之さんのライブで出会ってから仲良くなって。私が歌声が大好きで尊敬している3人に声をかけました。

女性ボーカル4人でどんな歌を歌おうと思いましたか。

みんなには「ハッピーでピースフルな楽曲を大好きなあなたと一緒に届けたいと思ってます」って言ったんですよ。そしたら、「すごくいいテーマだし、是非やりたい」って言ってくれて。イメージとしては、一人ずつ順番に歌っていって、サビで大勢で歌う感じ。全員のボーカルディレクションに立ち合わせていただいたんですけど、本当に一人一人がすごくエネルギーがあって。4人の声が合わさったときの感動もすごかったけど、私が好きなのは2番目のサビのところ。周りの音がなくなって、私の声、MaRuRi、佳奈ちゃん、mizukiさんと一人ずつ入ってきて、オーラスで全員になるところで痺れましたね。これもいつかライブでみんなで歌えたらいいなって思ってます。

<感じるままに 自分を生きていこう>っていうのは、全体を貫くテーマとも共通してますね。全11曲が揃って、ご自身としてはどんな感想を抱きましたか。英語曲、初の作曲、カバー、デュエット、ヨコノリ……とさまざまなチャレンジをした1枚でもあります。

それがリード曲の「進化論」にも繋がっていくんですけど、この1年は、自分の可能性を自分で決めつけないで。挑戦してみようと思えたんですね。また、最後の曲を4人で歌ってることで、聞こえ方的にも、一人じゃないっていうことが伝えられる1枚になったなって思って。そして、これはほんとに「Howling」 からの流れでもあるんですけど、2020年、みんな、頑張って生き抜いたよねっていう。自分もそうだし、みんなのことも、生きてるだけで褒めてあげたいですし、希望を全て詰め込んだアルバムが1枚、完成したので、みんなには自信を持ってついてきてほしいなと思います。

希望しか詰まってないアルバムができたので、みんなとこのアルバムを持って集まりたいですね

その、みんなを連れていく先というのはどんな場所をイメージしてますか。

ワンマンライブや初めてのツアーのとき、ファンのみんなが目の前ですごく輝いていたんですよね。表情だけじゃなく、体全体で喜びを表現してくれていた。それがほんとに美しかったんですよ。いい顔をしてるなって感じたし、生きてるなっていう実感もあった。そういう記憶があったから、私は2020年を生きてこれたし、2021年はそれ以上の光景をみんなと見ていきたいと思ってます。いつものバンドメンバーとみんなで集まりたい。場所はどこでもいいんです。大事なのは私とみんながいること。まだ状況はわからないですけど、希望しか詰まってないアルバムができたので、みんなとこのアルバムを持って集まりたいですね。

ライブ情報

詳細はオフィシャルサイトにて

ASCA

愛知県出身、9月5日生まれ。A型。
中学生時代、大倉明日香として第5回「全日本アニソングランプリ」に出場、応募者10,000人以上の中からファイナリスト3名まで勝ち抜き注目を集める。
2017年8月、アニメ音楽誌『リスアニ!』誌上にてASCA初となるオリジナル楽曲「RUST」を発表。
2019年2月27日に4枚目となるシングル「RESISTER」(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』第2期オープニングテーマ)をリリース、10万ダウンロードを突破しゴールドディスクに認定されるヒットを記録。同年、9月にトリプルA面シングル「RUST / 雲雀 / 光芒」をリリース。そして2019年11月6日、1stアルバム『百歌繚乱』を発表。12月より自身初の東名阪ツアーを敢行。
2020年11月に「Howling」を発表。そして待望のニューアルバム『百希夜行』を2021年1月27日にリリース。

オフィシャルサイト
https://www.asca-official.com/