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北村 諒&和田琢磨&赤澤 燈&徳山秀典らが人間の尊厳と信念を抱くことの大切さを訴えかける。「怪盗探偵山猫 the Stage」上演中!

北村 諒&和田琢磨&赤澤 燈&徳山秀典らが人間の尊厳と信念を抱くことの大切さを訴えかける。「怪盗探偵山猫 the Stage」上演中!

舞台「怪盗探偵山猫 the Stage」が、1月21日(木)にヒューリックホール東京にて幕を開けた。
原作は、累計発行部数90万部を記録している神永 学の人気小説シリーズ。鮮やかな手口で盗みを働き、ついでに悪事を暴いて颯爽と消え去る天才怪盗“山猫”の活躍を描く。
主人公の山猫を演じるのは北村 諒。彼を追う刑事の霧島 役に和田琢磨が挑む。また、とある事件に巻き込まれる雑誌記者の勝村 役を赤澤 燈、霧島と共に山猫を追いかける警視庁のエリート刑事 関本 役を徳山秀典が演じ、ほかにも手練れで豪華なキャストたちが揃っている。
初日前にゲネプロが行われたのでレポートをしよう。

取材・文 / 竹下力


張りつめた緊張感を生み出す、手に汗握るすさまじさ

数多くのアーティストにカバーされてきた有名なブルーズ「ストーミー・マンデー」に“月曜日は最悪だと言われるけど、火曜日も負けずにもっとひどい”という歌詞の一節がある。何曜日だろうと最悪な状況なんて変わらない。現代社会に流れるどこか醒めた諦念を掬い上げているかのような本作は、同時にそんな通奏低音を蹴り飛ばそうとするポジティブで熱気に満ちたバイブスもせめぎあって張りつめた緊張感を生み出す、手に汗握る作品だった。

しかも、その感覚は終演まで途切れることはない。ジェットコースターに乗っているように感情が激しく波打ち続ける。座席から前のめりになって俳優たちの芝居に見入ってしまう。観客と俳優との間に緊密な関係が生まれ、俳優が舞台にい続ける限り、鳥肌がずっと立っている。それらの原因は、無数に散りばめられた謎を解き明かそうと奔走する俳優たちの真摯な芝居にある。そして、その幾多の謎が回収されたときに迎える大円団には筆舌にし難いカタルシスがあった。

舞台は、山猫(北村 諒)がとあるビルに鮮やかに忍び込み、金庫から金を盗むと壁にスプレーで「山猫参上」と記して颯爽と消えていくシーンから始まる。

彼は世間を賑わせている怪盗だ。その事件現場に区域の所轄刑事である霧島(和田琢磨)と福原(瀬戸祐介)が到着する。ふたりは長い間、山猫を捕らえようとしているが彼の痕跡はまったく見当たらない。

そこで霧島は、大学の後輩でジャーナリスティックな雑誌記者の勝村(赤澤 燈)と連絡を取り、情報を交換し合うことに。だが、山猫の有力な手がかりは掴めない……。

そんなとき、警視庁のエリート刑事の関本(徳山秀典)が本庁より派遣されてくる。霧島は警視庁の介入に難色を示すも、上司の森田(村田 充)から関本とコンビを組んで事件解決に努めるよう言われる。そんな矢先、ある出版社で強盗殺人事件が起きる。

殺されたのは、勝村にとっての恩師である今井(宮下貴浩)。現場には「山猫参上」の張り紙があり、誰もが山猫の犯行だと断定する。しかし、山猫の盗みの信条は、決して人を殺めないこと。殺人の覚えがない山猫は、真犯人を突き止めるべく調査を開始。

追われる男たちと追いかける男たち。その抜き差しならない攻防は、一進一退のまま続き、物語は混沌の様相を呈していく──。

この作品には3つの見どころがある。
まず数段の入り組んだ構造のシンプルな色合いの“舞台装置”。そこにはいくつもの出入り口がある。俳優たちは出ハケを繰り返し、目まぐるしくシーンが展開する。段違いの舞台装置を活かした魅せるアクロバティックな彼らの動きは、パルクールのように華麗でダイナミズムに溢れている。会話だけのシーンでさえ何かが蠢いている様子で、舞台にテンションが保たれ、観飽きることがない。

2つ目は、物語に張り巡らされた“いくつもの謎”。それらがストーリーの至る所に仕掛けられ、一瞬繋がったかと思うと、すぐにバラバラになって別の謎に変貌を遂げてしまう。なんとか謎を解き明かそうとする俳優たちのちょっとした台詞や所作が幾重にも積み重なり、誰もが想像だにしないひとつの大きな答えへのヒントとして提示され、観客の好奇心をくすぐってくる。ディティールの細かさが舞台にリアリティを生みだすことに成功し、面白さに拍車をかける。

3つ目は“バディもの”であること。山猫に渋々従うことになる勝村。山猫&勝村と似たような霧島と関本の関係。似た者同士の2組のバディが絡み合い、ちょっとしたことで壊れそうなギリギリの関係性を保ちながら、様々な角度から事件の真相に迫っていく様がスリリングだ。ミステリーの王道である“バディもの”であるが、いくつもの視点から謎を解決する仕掛けが、物語に厚みと奥行きを与えている。
この3つが噛み合ったとき、とんでもないグルーヴが生まれる。

そこには、脚本・演出の私オムの手腕が冴えわたっていたと言うべきだろう。原作に忠実に、それでいてアレンジを効かせた脚本の面白さだけでなく、バディ同士のアドリブのようなテンポの速い台詞の掛け合いの楽しさや、俳優の激しい運動量で舞台を遊園地のアトラクションのようにしてみせるパワフルな演出が、本作を格段に魅力的にしている。

俳優陣は、誰もがキャラクターの造形をきちんと理解して演じていて見応えがあった。その中でも、2組のバディがこの物語の主軸。
関本 役の徳山秀典はメガネをかけた気難しそうな警視庁のエリート刑事を、芯の通った声量を効かせた台詞でクールに演じる。一見、霧島を所轄の部下だからと粗雑に扱っているように思いきや、わずかに垣間見せる優しさや思いやりがスパイスになって、ただの嫌な上司という平板なキャラクターではなく、深みのある人間くさい人物に仕立てていた。非常に難しい役どころのようにも見えたけれど、徳山の熱演だからこそ成立したキャラクターで、彼にとってハマり役だと思う。

彼のバディである霧島 役の和田琢磨は、いつ見ても凛とした居ずまいに惚れ惚れしてしまうが、台詞、動き、余分なものが削ぎ落とされた隙のないストイックな芝居を見せた。

山猫、関本、後輩の勝村から無理難題を突きつけられて困り果ててしまうキャラクターなのに、感情の流れに淀みがないから、客観的に同情するよりも、思わず彼に同化してしまう。霧島の心の痛みや喜びや苦しみがありありとわかる。和田琢磨の真骨頂の芝居を存分に体感できる。

山猫のバディとなる勝村を演じた赤澤 燈は、ストーリーを展開させるエンジンの役割を十二分に果たしていた。彼の馬力が今作のすべての原動力となり、舞台の良し悪しを采配する。それでも、いじられキャラで根が明るくて、観ているこちらの心が弾むほど、一心不乱に役を生きて、そんな重責を感じさせないので観ていて楽しい。明るく華やいだキャラクターとしてしっかりと演じている姿は、山猫のダークな色合いの芝居の対比として屹立していたと思う。と同時に、本作は彼の成長譚であると感じさせてくれる。今井という大切な先輩を失った悲しみから仲間に背中を叩かれて立ち上がろうとする勝村を、赤澤は力感のある芝居で見せつけ、心を震わせるものがあった。

そして、山猫 役の北村 諒の芝居は絶品だった。まず、目で見せる芝居が素晴らしい。彼は目の動きだけで山猫の心の動きを観客に伝えようとしていたと思う。睨んで苛立ちを表現したかと思えば、麗しい目でアンニュイな雰囲気を醸し出してなごませる。ピンチに陥ったときに勝機を伺う鋭い目では舞台に転換が訪れることを告げて緊張感を高める。それが劇場のどこの場所からでもわかるのが北村のすごさだ。

さらに、とてつもないアクションを軽々とこなしながら、剽軽になったかと思えば、ハードボイルドにも早変わりする。台詞の抑揚、動きの強弱、緩急自在の目まぐるしい芝居。八面六臂の活躍に拍手を贈りたい。野暮で音痴で暴力的な側面もあるピカレスクなキャラクターだけれど、あからさまに反社会的な存在ではないし、退廃の匂いもルサンチマンも感じさせない。彼は自分の存在を“悪”だと受け入れる度量の広さを持って、己の“信念”のために物語を駆け巡るヒーローとして舞台の真ん中にいた。そして人間の尊厳と信念の大切さを切実に訴えていた。

“月曜日よりもひどい火曜日”が続くと人間は、いつしか負のスパイラルに陥って、いつだって最悪な気分のまま日常を過ごす羽目になってしまう。現実とはそんなものかもしれない。けれど、このカンパニーが生み出す演技のグルーヴと物語がそれを弾き飛ばして、いつのまにか青空に向かって飛んでいくような心地よさを味わうことができる。観劇することの愉悦に満ちた、演劇でしか成立しない面白さを味わえる感動的な作品だった。

公演は、1月31日(日)までヒューリックホール東京にて。なお、最終日のマチネとソワレの公演は生配信が決定しており、チケットが発売中だ。さらに、本公演のBlu-ray&DVDが5月21日(金)に発売される予定。2月28日(日)までにパッケージ版を予約すると、早期予約特典として購入者にメイキング映像が配信される。詳細は公式サイトをチェックしよう。

フォトギャラリー ※上記未掲出含む

「怪盗探偵山猫 the Stage」

2021年1月21日(木)~1月31日(日)ヒューリックホール東京


<ライブ配信>
配信公演:2021年1月31日(日)11:30公演/16:30公演
チケット券種:
①通常版:4,420円(税込)
②通常版+全景版:6,420円(税込)
③通常版:2公演FULLセット:7,400円(税込)
④通常版+全景版:2公演FULLセット+特典映像付き(キャスト4名によるトーク映像):10,040円(税込)
販売期間:
①〜③:2021年2月8日(月)21:59まで
④:2021年2月14日(日)21:59まで
アーカイブ配信期間:
①〜③:2021年2月1日(月)18:00~2月8日(月)23:59まで
④:2021年2月1日(月)18:00~2月14日(日)23:59まで
※アーカイブ期間中は何度でもご視聴いただけます。
※生配信時にご購入いただいたチケットをお持ちの方も、アーカイブ配信をご視聴いただけます。
配信チケット購入先:
「ぴあ」から購入の場合はこちらから
「DMM」から購入の場合はこちらから


<「怪盗探偵山猫 the Stage」Blu-ray&DVD発売>
発売日:2021年5月21日(金)
価格:Blu-ray2枚組 8,200円(税別)/DVD2枚組 7,200円(税別)
収録内容:
DISC1:本編映像
DISC2:バックステージ映像、キャストコメント等(予定)
詳細はオフィシャルサイトにて
※2月28日(日)までの期間中に特設サイトから予約した方に限り、「未収録メイキング映像」を配信
特設サイトはこちら


【STORY】
鮮やかな手口で盗みを働き、悪事を暴く、天才怪盗“山猫”。
現場に貼り紙を残し颯爽と消え去る、その謎めいた存在は世間を賑わせていた。
山猫の信条は“人を殺めないこと”。
しかし、出版社社長の今井が殺害された強盗事件の現場に「山猫参上」の貼り紙が見つかる。
事件の捜査を担当する所轄刑事の霧島は、長年山猫を追い続ける警視庁のエリート刑事関本といがみあいながらも共に捜査を進めることに。
一方、雑誌記者で今井のかつての後輩である勝村は、今井から託された”とある物”に事件を解き明かす鍵があることを知り、今井の死の真相を掴むため山猫と手を組むことを決意する。
犯人は一体誰なのか?
今井が勝村に遺した真のメッセージとは?
事件を中心にひしめく様々な人間模様と思惑を巻き込んで、山猫が事件の真相を暴きだす!

原作:神永 学(角川文庫)
脚本・演出:私オム

出演:
山猫 役:北村 諒
霧島 役:和田琢磨
勝村 役:赤澤 燈
福原 役:瀬戸祐介
今井 役:宮下貴浩
里佳子 役:平田裕香

上杉 輝
中根 大
宮川 連
酒井和真
相田真滉
古笹原大和

関本 役:徳山秀典
森田 役:村田 充

ほか

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@yamaneko_stage)

©Manabu Kaminaga/KADOKAWA/エイベックス・ピクチャーズ