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4年半ぶり再始動…『ワールドトリガー』が深夜アニメになって帰ってくる理由 プロデューサーが語る大転換の舞台裏

4年半ぶり再始動…『ワールドトリガー』が深夜アニメになって帰ってくる理由 プロデューサーが語る大転換の舞台裏

<TVアニメ『ワールドトリガー』2ndシーズン プロデューサーインタビュー・前編>

2019年開催の「ジャンプフェスタ」のステージで、アニメ2ndシーズンの制作が発表されたときのことが忘れられない。作品を愛し、何年も待ち続けたファンとキャストの想いが爆発したあの瞬間、あの熱さ。それから約1年。読み返すたびに新たな発見がある本作を、多くのファンが反芻しながら、このときを待っていたのではないだろうか。

異世界からの侵略者・近界民<ネイバー>と、防衛組織・ボーダーの戦いを描いた、葦原大介によるSFアクション漫画『ワールドトリガー』(集英社「ジャンプSQ.」にて連載中)。2014年10月~2016年4月まで放送されていたTVアニメ1stシーズンの続編となる2ndシーズンが、2021年1月9日(土)よりいよいよ放送される。

ここでは、4年半ぶりの再始動で注目を集める本作について、1stシーズンより本作を手がける東映アニメーション・永富大地プロデューサーに語ってもらった。2ndシーズン制作決定に至るまでの大きな分岐点、深夜帯のTVアニメとなったことによる表現方法の変化、さらに、この2ndシーズンで「絶対に勝てる戦いを目指さなければいけない」と言わせるほどに、プロデューサーを駆り立てる『ワールドトリガー』の魅力とは。

取材・文 / 実川瑞穂 構成 / 柳 雄大


ハイクオリティなアニメを目指して─「迷わず深夜アニメになりました」

まずは、アニメ2ndシーズンの制作決定に至るまでの経緯をお聞かせください。

1stシーズンのアニメは、ストーリーが原作に追い付いてしまったこともあり、2016年4月に終了することになったんです。さらに原作も、2016年11月頃から2018年10月頃まで休載されていらっしゃいました。ただ水面下では、2018年夏頃に、当時、週刊少年ジャンプ編集部の担当であった齊藤優さんから連載復活の一報をいただきまして、原作の連載再開の記念に、ぜひアニメの配信や有料チャンネルでの放送などをやってほしいというリクエストをいただいたんです。もちろんOKなのですが、でもせっかく連載が再開されるるのであれば、東映アニメーションとしてもこんなにうれしいことはないので、「全力をあげてお手伝いさせてください」と答えました。

そこで決まったのが、2018年12月に開催した「ワールドトリガー復活ナイト」。海谷敏久さん(キャラクターデザイン)の新規描き下ろしでイベント用ビジュアルを作ったり、新宿バルト9さんを巻き込んだり、キャストに協力をお願いしてトークショーをやったりしてどんどん盛り上がっていきました。その時点では、まだ原作のストックも溜まっていないので、2ndシーズンができるかどうかは分からない段階でしたが、原作元の関係者の皆様に“アニメ制作側の想い“が少し伝えられた気がします。

あの復活祭が、2ndシーズンへの分岐点だったんですね。

今思えばそうなんです。とはいえ、お客さんがあのイベントに来なければそこには至らなかったと思うので、やっぱりファンの皆さんのおかげです。実際ものすごい勢いでチケットが売れてしまったので、急遽追加公演を設けました。すると後日、集英社の編集担当さんが公式ツイッターで感謝のツイートをしてくださって。それを見たときは、めちゃくちゃうれしかったですね。

僕としては、ずっと2ndシーズンがやりたかったんです。でもいろんな状況や事情があったので、簡単には実現できないこともわかっていて……。ただあの復活祭があって、2ndシーズンのプロジェクトが確かに動き出したんです。今回の2ndシーズンが、単純に「原作のストックが溜まったから」ではなく裏側には、いろんな人の熱意やドラマがありました。2018年12月の『ワールドトリガー復活ナイト』こそ、2ndシーズンの“トリガー(引き鉄)”でしたね。

制作するためには東映アニメーションとしても多額の出資をするわけで、会社を納得させるための判断材料としても、『復活ナイト』の実績はとても大きかったです。決してテストマーケティングのつもりはなかったのですが、偶然にも最高の結果がでてしまったわけですから。そこで、『ワールドトリガー』の2ndシーズンは、最高のクオリティで作って届けるべきタイトルである、という判断が、社内でもできあがったんです。

最も大きな変化は、アニメの放送時間帯かと思います。深夜アニメにすべきだと思ってのご判断だったのでしょうか。

そうですね。1stシーズンは、日曜朝6時30分から放送という、ファミリー向けのアニメーション枠の作品としてスタートしました。でも蓋を開けてみたら、特に10代以上の大人のファンが熱烈に応援してくださっている作品だということが分かったので、当時も徐々にシフトチェンジしていったんです。とはいえ全日帯の枠ですから、当然テレビ局さんのルールも厳しいですし、多くの制作スタッフは「子供向けアニメ」という意識の元で制作していたんです。これは僕の力が足りなかったことの大きな反省ですが、作品性と放送枠とのギャップを埋める作業は、苦戦しました。

だからこそ、2ndシーズンは迷わず深夜放送枠のアニメでお願いしました。。原作が休載になっても、アニメ放送が終わっても『ワールドトリガー』を愛してくれる熱心なコアファンに向けたアニメを作らなければという想いが第一にあったので、当初からこれだけは決めていました。次こそは、コアなワールドトリガーファンの皆さんに心底共感してもらえる『ワールドトリガー』のアニメーションをお届けしたいという気持ちがずっとあったんです。幸いにも、深夜アニメとして新たにリボーンさせるぞという強い気持ちを持ったスタッフが、周りにたくさん集まってきてくれたのも大きかったですね。それから、キャストの作品愛もすごかった。たまに別作品の現場や打ち上げで会うたびにワールドトリガーの話になる。これはとても励みになりましたね。2ndシーズンは、十全に準備をして挑むわけですから、絶対に勝てる戦いを目指さなければいけないと思っています。

原作譲りの「情報量の多さ」へのチャレンジ

2ndシーズンの絵コンテを拝見させていただきましたが、随所に「深夜アニメであること」が強調されていたのが印象的でした。

それに関しては、スタッフから「もうわかってます」と言われるくらい、何度も言い続けています。それでも僕は言うんです(笑)。なぜなら、東映アニメーションはキッズ向け、ファミリーアニメをメインにやってきた会社ですが、大人やコアなファンが観る深夜アニメにも今後は力を入れていかないとダメだと思っていまして。とても素晴らしい作品や尖った作品を作ることのできるアニメ制作会社が増えているいま、ただ売上金額や利益が業界トップクラスだと言われる製作会社なんて、作り手や作品ファンから見ると全く面白くない(笑)。だからこそ2ndシーズンで、東映アニメーションの空気が少しでも変わったらいいなと思って作っています。

長い歴史を持っている東映アニメのスタジオでも、こういうアニメーションが作れるんだということを、プロデューサーとしては勝負していきたい、「キッズアニメもあるけど、『ワールドトリガー』のような作品だって作れる製作会社なんだ!」と視聴者に言われるようでなければだめだなと思っています。

深夜アニメになったことで、具体的にどんな表現がパワーアップしているのでしょうか。

分かりやすいものでいえば、戦闘シーンでのダメージ表現、トリオン漏出ですね。惑星国家ガロプラと近界民<ネイバー>との戦いの見せ場にも関わってくることですし、1stではエメラルドグリーンの光を傷口から出すことで表現していましたが、ああせざるを得なかったのは、やはり全日帯のアニメだったからなんです。原作にある黒いガスが噴き出るような表現が、血しぶきのように見えてしまうことがNGだった。例え色を黒にしたとて、OKが出なかった過去があります。

でも今回は深夜帯。制約も減ったので、切断を含めて原作準拠の表現ができるようになりました。他にも、色彩設計や画面の情報量を大人の視聴に耐えうるようにレベルアップしています。本編の映像を作る前に「ポストビズ」というテストカットで指針を決めるのですが、線の多さや色彩・撮影の処理を深夜アニメにふさわしいものにするべく、監督を中心に時間をかけて作っていきました。

「この空閑遊真のカットでは、まずキャラクターの線画があって、色彩が塗られていて、背景があって、そこに撮影処理がされていて、部分的にライトが当たっていて、空気の表現がされていて。遊真の腕の切断面やトリオンの表現もそう。それぞれをいろんな表現のなかから組み合わせて、2ndの作画はどうすべきかを、監督や僕、原作の担当編集さんも含めて協議していったんです。こういったものをまず18カット分制作しました」(永富)

「三雲修と迅悠一のカットでは、室内の絵であれば、ライティングの明るさや1影と2影(影のつけ方)をどれくらいの明るさにするべきなのか、といったようなことを、じっくり時間をかけて決めています」(永富)

「雨取千佳のカットでいうと、トリオンのエフェクトの入れ具合や、背景のボカシ具合などもそうです。いろんな場面いろんなキャラクターで試していきました」(永富)

こういった作り方は、時間があったからこそできたことで、かなりいろいろなチャレンジが可能になったことは大きいです。『ワールドトリガー』という作品そのものが、設定も物語もとても情報量の多い作品なので、1stの時は4歳のお子さんにも理解してもらう必要もあった。でも2ndは、そういった情報量が多ければ多いほど楽しめるファンのために作ることができる。原作の再開を2年近く、アニメの2ndシーズンを4年半以上待っていてくださったうえ、それだけ時間が空いても『ワールドトリガー』を観よう、応援しようと思ってくださる方が観たときに、「超おもしろい!」と思ってもらえる映像にするべく、頑張っているところです。みなさんからここまでのところご好評をいただいている2ndシーズンの作画については、海谷(敏久)さんが総作画監督として日夜頑張ってくださっていることがとても大きいです。

『ワールドトリガー』の魅力はジャンプ作品の中でも異質だった

そこまでの熱量をひとつの作品につぎ込んでしまって大丈夫なものなのでしょうか?

そうなんです……そうなんですけど、『ワールドトリガー』は特別なんです。ひとつの作品で、打席に2回も立たせていただくことなんて、東映アニメだとまずありませんから。せっかく立たせていただくからには、思いっきりバットを振りたいんです。

永富さんをそうまでさせる、『ワールドトリガー』の魅力とは?

『ワールドトリガー』は、僕が子どもの頃読んできた「友情・努力・勝利」のジャンプ王道漫画とは、一線を画す作品だと思っています。 “親友の死を乗り越えて、何かに目覚めて、急激に才能が開花して、パワーアップして勝つ”。そういった展開と比べると、『ワールドトリガー』は異質なんですよね。『ワールドトリガー』は、例え親友が死んで、何かに目覚めて、才能が開花しても、それだけでは絶対に勝利できない作品だと思うんです。なぜならそこには、必ず現実があるから。その現実を乗り越えるためには、努力をしたり知恵を使ったりして“意図した奇跡”を起こさない限り、勝負には勝てないんです。その厳格なまでのリアリスティックなところが、たまらないですね。

また、葦原先生がキャラクターを大切にしていらっしゃるところも素敵です。ジャンプ作品は、どうしても“主役の物語”が多いと思うのですが、『ワールドトリガー』は、修と遊真の物語にしぼらなくても、いろんなキャラにそれぞれのドラマがあって、それが同時進行で進んでいくところがとても魅力的だと僕は思います。葦原先生が主役と呼んでいる4人――修・遊真・千佳・迅は、誰も「自分のために動いていない」というのも特筆すべきことですよね。4人はみんな誰かのために動いているんです。「俺が、俺が」の物語が多いなか、そういった心持ちのキャラたちはものすごく新鮮でした。異世界から敵が攻めてくるというとてつもなくハードな世界なのに、みんな誰かのことを思いながらがんばってることに胸が熱くなります。

続くインタビュー後編はこちらで公開中!

参加キャストなんと80名以上の総力戦に…『ワールドトリガー』アニメ2ndシーズン+期間限定上映にかける“熱量”を永富Pが徹底解説!

参加キャストなんと80名以上の総力戦に…『ワールドトリガー』アニメ2ndシーズン+期間限定上映にかける“熱量”を永富Pが徹底解説!

2020.12.28

TVアニメ『ワールドトリガー』2ndシーズン

2021年1月9日(土)よりテレビ朝日系列にて
毎週土曜 深夜1時30分~「NUMAnimation」にて放送開始!

【スタッフ】
原作:葦原大介 「週刊少年ジャンプ」「ジャンプSQ.」(集英社)連載
シリーズディレクター:畑野森生
シリーズ構成:吉野弘幸
音楽:川井憲次
キャラクターデザイン・総作画監督:海谷敏久
製作:東映アニメーション

【キャスト】
空閑遊真:村中知
三雲修:梶裕貴
雨取千佳:田村奈央
迅悠一:中村悠一
ヒュース:島﨑信長
林藤陽太郎:浦和めぐみ
ガトリン:江川央生
ラタリコフ:豊永利行
ウェン・ソー:園崎未恵
コスケロ:津田健次郎
レギンデッツ:村瀬歩
ヨミ:白石涼子
ほか

『特別上映版 ワールドトリガー2ndシーズン』

2020年12月25日(金)~2021年1月7日まで
新宿バルト9、梅田ブルク7他全国13館にて期間限定上映

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【1stシーズン第1話 無料公開中】
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©葦原大介/集英社・テレビ朝日・東映アニメーション