Interview

“プラモデルで遊べる”を前提にしたリアルロボットとは―YouTube限定配信アニメ『OBSOLETE』監督に聞く新しい形のロボットアニメ

“プラモデルで遊べる”を前提にしたリアルロボットとは―YouTube限定配信アニメ『OBSOLETE』監督に聞く新しい形のロボットアニメ

企画プロデュース髙橋良輔、原案・シリーズ構成虚淵玄(ニトロプラス)、メカニックデザイン石渡マコト(ニトロプラス)、キャラクターデザイン吉田明彦・永井悠也(Cydsignation)といった蒼々たるメンバーが顔を揃え、気鋭のCGアニメーションスタジオ・武右ェ門が制作をてがけるたリアルロボットアニメーション『OBSOLETE』。企画プロデュースに『装甲騎兵ボトムズ』シリーズで監督を務めた髙橋良輔が加わっている時点でわかる人には“リアルロボット”を本気で描こうとしていることが伝わると思うが、なぜ、あえてこの時代にリアルロボットをアニメーション作品で描いたのだろうか? ロボットファンであれば作中に登場するエグゾフレームと呼ばれるロボットの方に注目が行くとは思うが、そこにはエグゾフレームを介して虚淵流の世界の描かれ方があった。本作で監督を務めている山田裕城(武右ェ門)と白土晴一のおふたりを迎え、『OBSOLETE』が生まれた経緯、そして今後無料配信されるEP10以降の見所などについて聞いた。

取材・文 / カトウカズヒロ(K-Labo)


目指したのは今描く“リアルロボットアニメーション”

今回、監督がおふたりという体制でしたが、どのような役割分担で進められたのでしょうか?

白土 私の方はもう映像に関しては山田監督にお任せして、時々確認しては口を出させていただいた程度です。あとは虚淵さんや石渡さんの文芸や設定考証面での通訳と言いますか、山田監督の現場の声を虚淵さんらに伝えつつ、逆に虚淵さんらの声を山田監督ら現場の人に伝えたりという感じでした。

山田 私は制作の方に専念するという感じでした。全ての黒幕は白土さんであり虚淵さんです(笑)。

白土 今回は武右ェ門さんというか、山田さんだからこそこのような映像になったと思っています。他の方にお願いしていたらどうなっていたかわかりませんでしたから、そこは間違っていなかったと今も思っています。

今回、企画プロデュースとして髙橋良輔さんが参加されていますが、髙橋さんはいつぐらいから参加されたのでしょうか?

白土 虚淵さんがこの企画を考えられた時に、すでに“リアル”というキーワードがありまして、『ボトムズ』のような作品を今だからやりたいということを話していました。そこで、“リアルロボット”って何だろう?という疑問が出て、「本家本元に聞こう!」ということになったんです。ご本人は快く受けていただきまして、今本読みをやっているのでとお話しをしたら制作にも参加してくださったんですよ。そこで我々の経験不足な部分だったり、色々と貴重なアドバイスをいただきました。背中を押していただいたような感じですかね。

キャラクターデザインには吉田明彦さんが参加されていますが、参加された経緯は?

白土 これは武右ェ門さんとバンダイナムコアーツさんの方で、世界観に合ったリアルなキャラクターが描ける方として吉田さん・永井さんにお願いすることになりました。

山田 私は吉田さん・永井さんの上がってきた絵が既にある状態から参加したので、「わかりました」という感じで。そこからはイラストのタッチを活かすにはどうすれば良いのかと考え、キャラクターにタッチを入れた表現方法を実験してみました。セルアニメの整理した絵にしてしまうと元の儚げな魅力が消えてしまうし、かといってあまり絵画調にしてしまうと動きのない画面に見えてしまいますし、時間いっぱい粘ってルック開発の方に調整してもらいました。メカの表現もキャラに対する表現と合う様に処理を加えています。

あとはCGっぽい感じにならないように気を配っているつもりではあります。「CGっぽい」という言葉って、あまり良い意味で使われないと思います。私もあまり好きな言い方ではないです。そういった事を気にしながら制作しているうちに、慣れてくると欲が出ますし、前に作った要素を省くことができません。結果的に自分達の首を絞めていった様なもので、担当してくれた人に大変苦労をかけました。まあ、引き返せなくなってしまったというのが事実ですかね(笑)。

虚淵さんが以前、インタビューで「乗っている人間の顔が見えなくても、ロボットを見ているだけでおもしろい。そんな作品を作りたいという想いが発端でした」と仰っていましたが、キャラクターに頼らずロボットだけで魅せるという作品作りで気を付けた部分は何でしょうか?

山田 キャラクターに近すぎないように気を付けていました。誰かをメインに据えて、そのキャラクターが物語を進めていくというものではない様に気を付けていました。ただ、あまり離れすぎると感情がなくなります。やはりある程度はキャラクターの事を知りたいとは思いますから、その辺のバランスが難しかったです。虚淵さんは、もう少し第三者からの視点を保ったままでも良かったみたいですが。

白土 初期の頃はもっと突き放したようなお話で考えていましたからね。虚淵さんの作風でもあると思うのですが、人間を客観視したストーリー作りをしたくて、僕の方はもう少し技術論的な感じで作品を作れたらと考えていました。エグゾフレームが主人公なんだけど、それに関わる人達で物語を見せられたらと思っていたんです。それを山田さんの方で、もう少しキャラクターの方に寄せてもらった感じでしょうか。

作品クオリティの試金石となったEP3

作品の構成的に、EP1~6まではエグゾフレームの魅力を見せて、EP7以降はエグゾフレームの解析や世界の情勢などを見せていると感じました。EP1~6、EP7~12までの見せ方はどのように考えられていたのでしょうか?

山田 自分が参加した段階でEP12までのシナリオがありましたので、それを見た段階で物語が人から世界全体へと広がっていくのはわかっていました。それに従って映像化していったという感じです。

白土 作品の世界をより深く見せていきたいというのは、初期の頃に虚淵さんと話をしていた時から決めていたことでした。放送されている各EPに関しても、多少順序を入れ替えた部分はありますが、当初に虚淵さんが話をしていた展開とほぼ変わりないですね。こういう世界が出来上がりますというのをまずEP1で見せて、その次に発端を見せて、どういう風に世界が変わっていくかを徐々に見せていく構成でした。

個人的にEP3のインドとパキスタンの国境付近で交戦するシーンがとても印象に残っているのですが、EP3に関してはいかがでしょうか?

白土 実はEP3が最初に作った話なんです。3、4、1、2という順に作っていました。EP3は一番動きが多かったので、まずはそこを作れればこのあとのEPもやっていけるんじゃないかと思っていたのですが、そうはいかなかったですね(笑)。

山田 確かにEP3は印象深いです。まだどうしていいか分からない中で苦労しましたから(苦笑)。11分に収めるにはどうすればいいのか、試作の意味も強かった回です。実際に1話分11分作るのにこれだけかかるんだと思ったら愕然としました(笑)。でも完成した時にはやっとスタートを切れたという実感はありました。

EP7ではアザニア共和国の軍事パレードでエグゾフレームが行進するシーンがありました。あそこは『装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』を彷彿させると感じたのですが、そのような意図はあったのでしょうか?

山田 間違いないですね。髙橋さんに参加していただいている訳なので、パロディーではなく本家ですから。ここでやらなければいつやるんだとファンの方から怒られるとさえ思いこんでました。もう見ている人にはレッドショルダーのマーチが聞こえていると思っています。でも髙橋さんご自身が監督を務められていたら、また同じ事はされないでしょう。きっともっと新しいことをやろうよと言われるに違いないと思います。

現用兵器と地続きの世界に存在するエグゾフレーム

人類に通商を持ちかけてきた異星人ペドラーに関しては、映像では一切姿を見せませんでした。これにはどのような意図があるのでしょうか?

白土 これは物語の根幹に関わることなので、あまり多くは言えませんが、ペドラーは完全に自由貿易主義で、彼らとの貿易の表現方法をどうするかというのは、初期の段階で沈黙貿易にしたいと伝えていました。コミュニケーションを伴う異星人との貿易も当然考えたのですが、ペドラー側にとって一番人類と摩擦が無い方法を考えた時、沈黙貿易が敵意もないけど善意もないという姿が見せられるかと思い、虚淵さんに提案してみました。彼らがどういった形で物語に影響を与えるのかについては、今後の展開にこうご期待ですかね。

本作に登場するエグゾフレームは、各国が様々なカスタムを行い、まさに量産型の魅力に溢れたロボットと感じたのですが、エグゾフレームが誕生した経緯を教えてください。

白土 最初のコンセプトは、とても安い、タダ同然で手に入る物、世界にばらまかれてしまうようなレベルのロボットにしようと思っていました。強さに関してはスーパーロボットのようなバランスを破壊するような物では無く、かといって現状の運用兵器よりも強力というギリギリのラインはどこなんだろう?と、そういうロボットとして設定するのに苦労しましたね。初期の段階で虚淵さんが石渡マコトさんを打ち合わせの場に呼んで、一緒にディスカッションしながらエグゾフレームを考えていきました。石渡さんにはミリタリー描写に関してはリアルにしたいとお伝えして、銃を前屈みで構えられるとか、そういったリアルな部分を意識してデザインしていただきつつ、造形としての格好良さが加えられて段々と完成していったという感じです。

ちなみに、エグゾフレームは全高が2.5メートル程度なのですが、これは市街戦が出来るギリギリのラインにしました。屋内での戦闘シーンも見せられるようにと考えてのことです。後ろに乗るデザインも、前に乗るよりは生存率が高いだろうという所から来ています。

山田 石渡さんはご自分で3Dモデルを作ってみてデザインされる方でしたので、かなり辻褄のあった形になっていました。その3Dデータ自体もいただけたのでとても明確でした。

今回、エグゾフレームのプラモデルの発売や素体の3Dデータの配布など、立体物とのコラボレーションが注目されていますが、これはどの段階で決まっていたことなのでしょうか?

白土 これは最初の段階からですね。虚淵さんが最初からプラモデルで遊べる作品にしようと、そこが主眼くらいの話をしていました。なので、色々なジオラマが作れるように、様々な異なる地形を出していこうとも考えていました。それで本当にありそうなロボットにしようということになったのですが、本当に今の世界と地続き感のあるデザインはどんなだろう?という部分で、現用兵器と並べても違和感の無いようにしないと、とは思っていました。

3Dデータの配布に関しても、皆さんで楽しんでいただけたらとの考えからです。今度のワンフェスで色々と個人の方々の作品が登場してくれたら嬉しいですね。格好いい案があれば僕は採用しますから。でも、月刊ホビージャパンの公式連載で登場したマグロの一本釣り用の漁業用エグゾフレームに関しては、考証してくださいという依頼が来た時はちょっと戸惑いました(笑)。

では最後に、今後無料配信されるEPの見所に関してお願いいたします。

白土 エグゾフレームが世界の色々な場所に拡散と浸透した世界を描こうと当初から考えていました。EP10以降は、ミリタリー描写もちょっとはあるのですが、ミリタリー描写以外のエグゾフレームというのを見せています。世界がエグゾフレームによって少しずつ変わっていく様を見ていただけたらと思います。

山田 どの話数も違った工夫を凝らして作ったつもりですので、色んな中からみなさんが気に入ったエピソードを持っていただけたら嬉しいです。

YouTube Originals『OBSOLETE(オブソリート)』

2020年12月1日よりYouTube「バンダイナムコアーツチャンネル」にて最新エピソード(EP7~EP12)配信中
※YouTube Premiumメンバー対象で全エピソード視聴可能
※EP8以降は毎週火曜日に1話ずつ無料公開
2021年3月26日(金)Blu-ray発売

【配信情報】
EP 1 OUTCAST
EP 2 BOWMAN
EP 3 MIYAJIMA REI
EP 4 LOEWNER
EP 5 SOLDIER BRAT
EP 6 JAMAL
EP 7 RESHEP
EP 8 AREA 51
EP 9 CARHUINCHO
EP 10 SANTA MUERTE
EP 11 FREYJA  ※2020年12月29~無料公開
EP12 九葉このか ※2021年1月5~無料公開

【STORY】
2021年。アメリカ合衆国ら先進工業諸国が中心となったザンクトガレン協定による規制もむなしく、異星人ペドラーがもたらした意識制御型汎用作業機械「エグゾフレーム」は、全世界に拡散していた。世界各地でエグゾフレームを調査してきたボウマンたちは、その背後に、戦場でのエグゾフレームの利用を拡大させようと目論む何者かの存在に気づく。全ての情報はアフリカの新興国・アザニア共和国大統領ライラ・レシャップを示していた。彼は世界中の誰もがタダ同然で入手できるエグゾフレームの利用を拡大させることで発展途上国の技術的独立を促すべく、新しいアフリカ連合の実質的なリーダーとして、あるいは謎の武装組織アウトキャスト・ブリゲードの黒幕として動いている。だが、その危険性を訴えるボウマンたちの報告書は、上層部に握りつぶされてしまう。彼らは、アザニアに対抗すべく、エリア51において秘密裏に海兵隊専用エグゾ開発プロジェクト「ガビアル」を推める。

【STAFF】
原案・シリーズ構成:虚淵 玄(ニトロプラス)
監督:山田裕城(武右ェ門)、白土晴一
メカニックデザイン:石渡マコト(ニトロプラス)
キャラクターデザイン:吉田明彦・永井悠也(CyDesignation)
設定監督:白土晴一
武器考証:鈴木貴昭
CG監督:中島智成(武右ェ門)
撮影監督:小久保将志(武右ェ門)
美術監督:谷口淳一(武右ェ門)
美術設定:曽野由大
デザインワークス:本田大助(オールサンデー)
編集:瀬山武司(瀬山編集室)
音響監督:鶴岡陽太(楽音舎)
サウンドデザイン:笠松広司(デジタルサーカス)
音楽:石川智久(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)
企画プロデュース:髙橋良輔
アニメーション制作:武右ェ門

【CAST】
ボウマン:田中正彦
ミヤジマ:森川智之
レブナー:山野井 仁
フェルナンド:高木 渉
ミシェル:鶏冠井美智子
ジャマル:本城雄太郎
カイラ:杉本ゆう
ザーヒル:大友龍三郎
レシャップ:手塚秀彰

【主題歌】
OPテーマ:「obsolete」 Skrillex and Nightwatch
EDテーマ:「ORB-SOLUTION」TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

©PROJECT OBSOLETE

『OBSOLETE』オフィシャルサイト
https://project-obsolete.com/
『OBSOLETE』オフィシャルTwitter
https://twitter.com/obsolete_anime