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映画『AWAKE』インタビュー・若葉竜也「アマチュアであり続けることが本当の意味でプロ」

映画『AWAKE』インタビュー・若葉竜也「アマチュアであり続けることが本当の意味でプロ」

気のいい兄ちゃんから負のオーラを纏ったサイコな役まで、変幻自在の確かな演技で同世代の俳優陣の中でも一種独特の存在感を放つ若葉竜也。大衆演劇の一座に生まれ、物心ついた頃には舞台に立っていたという経歴ゆえ、役者という仕事に屈折した思いを抱いてきた彼の芝居に対する思い、今を生き抜くライフハックとは? 将棋プログラムとの対局に挑む天才棋士を演じた映画『AWAKE』のエピソードと共に、話を聞いた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 増永彩子


どんな役でも、ひとりの人間として成立させたいんです。

AWAKE 若葉竜也 WHAT's IN? tokyoインタビュ

今回、棋士の役を演じるにあたって調べたり、準備されたことはありますか?

たまたま僕の中学からの同級生で、今でも週一で遊ぶぐらい仲が良い友人が奨励会出身の棋士だったんですよ。だから僕自身は将棋はほとんどできないんですけど、将棋の世界の厳しさみたいなのは何となく話には聞いていて。将棋って、運とか流れとかで勝負が決まるものではなく、本当に実力だけで勝ち負けが決まる世界なんです。それに対して、僕らのやってる役者は勝ち負けもない、すごく曖昧な仕事で、一介の俳優がシビアな勝負の世界を生きてる棋士の考えてることを理解するなんて、不可能に近い。じゃあ、何ができるだろう? と考えると、棋士の指し手とか面持ちみたいなところをコピーするしかないなと思って。監督に相談して友人にスタッフとして参加してもらい、彼の話を聞いて、一挙一動を体に落とし込んで現場にのぞみました。

若葉さんが演じた「陸」は、吉沢 亮さん演じる「英一」と幼少期からのライバルで、圧倒的な強さと才能を誇ってきた天才棋士ですが、彼は寡黙で感情を露わにすることもない。どこかつかみどころのない魅力のある人物です。

実は脚本の段階では、監督もプロデューサーも「英一が陰、陸が陽」と、おっしゃっていて。英一が歪んでドロドロしたマグマみたいなのを持っているのに対して、陸は快活という設定だったんです。でも、僕は陸には陸の苦悩があるはずだし、そういうふうにキャラクター化してしまったら、おもしろくない気がして。役といってもあくまで人間なので、こういう部分もあるんじゃないっていうのを監督にテストで提示して、採用してもらった感じですね。

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なるほど。若葉さんが演じる陸には、マンガ的にデフォルメされたキャラクターにはないリアルさや奥行きが感じられます。

陸っていう人物はこういう人間だ、みたいに単色化してしまうことは、ある意味すごく簡単だけど、人間ってそういうもんじゃない。僕も今は俳優の仮面を被って、格好いい服を着せてもらって、俳優っぽく格好つけて喋ってますけど、家に帰ったら、間違えていいセーターを洗濯しちゃったとか、どん兵衛か赤いきつねのどっちを買おうかとか、くだらないことを考えてる。役者に限らず、みんなそうだと思うんです。なのに「陸はこれはやらない」と限定してしまうと、人間として匂いがなくなるし、作品としての可能性を狭めてしまうことにもなる。それは稀有な役を演じる時でも一緒で、キャラクターではなく、ひとりの人間として成立させたいんです。

そのためには、役作り云々ではなく「生身の人間としてそこにいる」ことが大事?

そうですね。僕、どの映画でも役作りってやってなくて。セリフを覚えていくとか必要最低限の準備だけして現場に行って、あとは監督にすべて委ねる。謙遜でなく、映画の中で役者ができることって少ないんですよ。映画って企画書があって脚本があって、美術とか照明とか撮影とか録音とか、いろんなスタッフが集まって映画の世界を作り上げる。その中に入ってやるのが僕らの仕事なので、その時点で9割方は完成してる。あとは、みんなが可能性として見てなかったことをどれだけ提示できるかなんです。

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常に何者でもない自分でいられるかが、俳優の奥深さなのかなと思います。

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芝居というものにこだわりを持つ役者さんは多いと思うのですが、若葉さんはその点、俯瞰されてますよね。

僕はすごくリアリストで、どうしても芝居が大好きで役者になったとかではなくて……役者を自己表現ではなく、純粋に仕事として見てるんですね。僕、大衆演劇出身で、子供の頃から自分の意思ではなく役者をやっていて、ずっと役者以外のことをやりたいと思っていて、一時期、役者をやめていろんなことを試していたんです。でも、たとえばボクサーやプロ棋士に年齢制限があるように、どれも芽が出ないまま二十代半ばになって、可能性が切られていって…。自分がお金をもらって生活できる仕事って、やっぱり役者しかないなって、覚悟したというよりは挫折した感じだったんです。なので、役者とか映画とかエンタメというものを、ものすごく冷酷に見ている部分はあります。

だからでしょうか。今の20代後半~30代前半の役者さんはすごく層が厚いイメージがあるんですが、その中でも若葉さんは、どこか達観した独自のスタンスを貫かれている気がします。 

僕、昔からもっと売れたいとか、俳優としてひとつ上に行きたいとかいう感覚が皆無で。誰がどんな動きをしてようが、あんまり興味がないし、それよりも自分の生活を第一に、地に足を付けて粛々と生きていられればいいやって思ってるんです(笑)。逆に、その感覚があったから、ここまでやってこられたのかなとも思うし。『AWAKE』の陸と英一みたいな、因縁のライバルみたいな人もいないんじゃないかな。

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作中の奨励会の先生の台詞で「強い相手とやりたくなるのは棋士の本能だよ」という言葉がありましたが、コイツと芝居したいみたいなのもない? 

基本的にはないですけど、ちゃんと芝居を受けてくれる人とやると、やっぱりおもしろいなと感じることはあります。本番でいきなり違うことをやっても、それに対してちゃんとリアクションしてくれる。芝居を型とか方程式でやってない人は、やっぱり魅力的ですよね。僕自身、芝居をしていて超おもしろい! と思ったことは一回もないんですけど(笑)、映画の撮影って理屈じゃなく奇跡的な瞬間が起こることはあって、それを目撃できるのは役者の仕事の特権だなと思いますね。

先生が陸たち棋士のことを「将棋の奥深さに対して恐れずに突き進んでいこうとしてる」と語るシーンも印象的でした。将棋の奥深さは役者の仕事にも通じると思われますか? 

個人的には役者って、プロフェッショナルになればなるほど、見る側にとってはおもしろくなくなると思ってるんです。だから、いかにアマチュアで居られるかーー。自分が何者であるかを理解した瞬間に、僕は終わってしまうと思うので、アマチュアであり続けることが本当の意味で役者がプロになっていくことなのかなって。だから、いかにキャリアを重ねても、常に何者でもない自分でいられるかが、俳優の奥深さなのかなという気はします。

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それは深いですね…。作中では、英一は奨励会で出会った陸の圧倒的な強さに、上には上がいると思い知らされ、将棋をやめますが、後に将棋プログラム「AWAKE」を開発して、再び陸と戦うことになります。そういう競争の厳しさと一発逆転のおもしろさは、役者の世界にも通じるものなのでしょうか?

役者に限らずどの仕事もそうですよね。役者の場合で言うなら、自己顕示欲が強い人が多くて、たいてい小さい頃から可愛いとか格好いいとか言われて、この世界に入ってみたら、とんでもない奴ばっかりだぞ!って気付く。そこで、ただ崩れていくか、じゃあどう戦おう?ってなっていくか、本当の勝負はそこからだと思うんです。それって小学生が運動会で50m走ビリになった子が、俺は運動はダメだから違う方向を探そうってなるのと一緒で、最近はなんでも順位を付けないのが流行ってるけど、順位を付けなかったら、自分が何が得意で何が苦手かもわからなくなる。そうなると自分は何ができるか思考しなくなる人がいっぱい出てくるので、挫折や苦悩は生きていく上で必要な事だと思います。競争の厳しさや挫折を感じるのは何も役者や棋士に限った事ではないんじゃないかな。

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挫折した上で、そこから自分は何ができるか考えないと、どんな世界でも生き残っていけない?

だと思います。役者の世界は特に、格好いい人も芝居が上手い人も山ほどいるから、受け身でいることはすごく危険。その中でどう自分を自己プロデュースできるか、みたいなことは僕もめちゃくちゃ考えます。

今回の陸のモデルになった電王戦の阿久津主税さんの戦い方は、あえて手筋にない悪手を指してAIの変調を誘ったとして、現実でも賛否両論を巻き起こしたんですけど、僕は完全に阿久津さん派なんです。相手がAIだろうが人間だろうが、勝つために相手のことを徹底的に研究するのは、勝負をする上で当たり前のことだと思うし、何か障害があったとして、そこからどうしていくか考えることは、生物として当たり前。特にいま、いろんなことが急激に変わっていく中で、思考停止になってしまうことは危険だと思うし、役者としてもひとりの人間としても、思考することを放棄したくはないですね。

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若葉竜也

1989年、東京都生まれ。近年の主な出演作に、映画『愛がなんだ』(19)『台風家族』(19)『生きちゃった』(20)『朝が来る』(20)『罪の声』(20)などがある。NHK連続テレビ小説『おちょやん』に出演、映画『あの頃。』『街の上で』『くれなずめ』が2021年に公開を控える。

オフィシャルサイト
http://www.ryuya.net/

オフィシャルInstagram
@ryuya_wakaba.official

フォトギャラリー

映画『AWAKE』

12月25日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

出演:吉沢 亮 若葉竜也/落合モトキ 寛 一 郎/馬場ふみか 川島潤哉 永岡 佑 森矢カンナ 中村まこと
監督・脚本:山田篤宏
配給:キノフィルムズ

オフィシャルサイト
https://awake-film.com/

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