Review

Oculusユーザーは今すぐ遊ぼう! 『アルトデウス:BC』が魅せるVRノベルゲームの新境地

Oculusユーザーは今すぐ遊ぼう! 『アルトデウス:BC』が魅せるVRノベルゲームの新境地

VR機器のOculus Questで遊べるVRノベルゲーム『アルトデウス:ビヨンドクロノス』のレビューをお届けしよう。今のところ遊べるハードはOculusシリーズのみだが、持っていないなら今すぐOculus Quest 2を買ってでも遊ぶ価値はあるはずだ。ノベルゲームファンはもちろん、新しいものが好きという方にも刺さる作品となっているので、本作の魅力をじっくりとお伝えしたいと思う。

文 / 浅葉たいが


ノベルゲームとVRはとても相性がいい!?

“ノベルゲームをVRで遊ぶ”と聞いて、皆様はどんな体験を想像するだろうか。筆者はノベルゲームと呼ばれるジャンルのファンだが、”気軽に遊べる”というのはこのジャンルの良さのひとつだと考えている。イベントCGとともに表示されるテキストを読みながら、物語を楽しむ。プレイヤーに要求される操作は控えめで、コントローラーを握ってゆったりと遊べるのがうれしい。

しかし、VRゲームというとまずヘッドセットがハードルになる。ちょっと重みのあるこのデバイスは、コントローラーを握って遊ぶだけのゲームよりもプレイヤーに疲労がたまりやすい。いくらVRで表現できることが増えるとはいっても、ノベルゲームというジャンルの快適さや遊びやすさを犠牲にしていいのだろうかするほどのものなのだろうか。そして、最近のテキストアドベンチャーだってすごい。アニメーションするものすら出てきている。

『東京クロノス』(PSVR、Oculus、VIVE、WindowsMR)はそんな先入観を吹き飛ばしてくれた。プレイ時間がある程度長くなることを考慮したうえでの物語の区切りがあり、そのうえVRでの空間表現も酔いを感じるほどにはぐりぐり動かないので思っていたい以上に長時間遊ぶことができる(筆者はあまり3D酔いをするタイプではないが、一部のVRゲームは画面の動きが激しく酔い止めが必要なものさえあった)。プレイもじつに簡単で、ノベルゲームを遊んだことがある人であればすんなりと受け入れられるものになっていた。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲各種VR機器向けに配信中の『東京クロノス』

VRとノベルゲームの相性の良さにも、正直驚いた。これは開発陣の絶妙なチューニングの賜なのだろうが、画面上で起きた出来事を瞬時に、考える必要もなく認識することができるというのは体験として新しい。そして、いままで想像することで補完していた、キャラクター同士の距離感も一目で理解できる。多くのノベルゲームは、プレイヤーの想像力を足すことでより物語の世界に没入するが、『東京クロノス』では”ゲームの中にいる自分”として物語を体験できる。プレイする前にあれこれ考えていたことは、まったくの杞憂だったと言っていいだろう。

ミステリアスなシナリオと心地よい揺らぎを生むキャラクターたち

『アルトデウス:ビヨンドクロノス』は『東京クロノス』でも好評だったミステリアスなシナリオを軸とするVRノベルゲームである。主人公のクロエは人型都市防衛兵器”マキナ”のパイロットで、人類の敵である謎の存在”メテオラ”たちの排除に静かな炎を燃やしている。地上はメテオラの驚異に晒されており、生き残った人類たちは地下に潜伏するように過ごし、味気ない生活をごまかすために壁や建物、そして食べ物に”テクスチャー”を貼った世界で過ごしている。

クロエを戦いに駆り立てるものは、かつての友人であったコーコがメテオラによって捕食されたという暗い過去。そして、ある日クロエの前にコーコを捕食したメテオラが再び姿を現す。見間違えるはずもないそのメテオラを攻撃すると、その中からはコーコの面影を残した姿が垣間見える。明らかに人ではない巨躯を持ちながらも、その顔はコーコのものだったのだ。プレイヤーはクロエの視点からこの謎めいた残酷な出来事に向き合い、謎や真実と出会っていくことになる。一見話は複雑そうだが、シナリオの進行は会話文中心で行われ、目に飛びこんでくるVR表現から直感的に世界設定が感じられるため、すんなりと没入感を得ることができるだろう。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲本作の主人公“クロエ”。彼女は地上の脅威に立ち向かうべく作られた“デザインドヒューマン”

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲クロエのかつての親友“コーコ”。メテオラに捕食され命を落とした

一目で強烈な印象を残すほどに描き分けが行われたキャラクターたちも実に魅力的だ。登場人物の数こそ多くないが、彼らと対面したとき、そのキャラクターの内側すら想像してしまうほど強烈な深みを感じる。

そしてシナリオを読むとわかるのだが、誰もが内側に、強烈な思いと秘密を秘めており、これがサスペンス色の強い世界設定と合わさってプレイヤーの想像を掻き立てる。筆者も、多くのプレイヤーもそうだろうが、仲間と思わしきキャラクターを見回して「本当に仲間なのか」と疑いをかけるのはサスペンス色の強いゲームでのお約束のようなものだ。これは疑いを仕向けるようなシナリオ上でのキャラクターの書き分けがうまく作用しているからこそ起きる揺さぶりなのだが、そこに彼らの内面まで透けて見えるようなキャラクターデザインが合わさって彼らのへの印象ががさらに揺れ始める。腹黒いものを抱える人の中にピュアな心が残っているように感じたり、また自分を甲斐甲斐しくサポートしてくれる仲間にも一筋縄ではいかない”ねじれ”のようなものが存在していることをデザインから想像しまう。

そしてこの揺さぶられるようなプレイフィールは、任務と私情の間で揺れ動くクロエの葛藤と重なっていく。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲VR描写で映えるキャラクターデザインにも注目。左側の女性はマッドサイエンティストと一部で囁かれる“ジュリィ”。右側の男性は、メテオラに対抗するための組織“プロメテウス”の司令官“デイター”

また、本作ではノベルゲームではおなじみのシステムに、設定や用語をつけることで物語を補強する装置としても活用している。たとえば、ノベルゲームの分岐手段として採用されることの多い”選択肢”を、本作ならではの設定である”決断補助システム リブラ(LIBRA)”へと落とし込んでいるのも面白い。

リブラは、人々の意思決定の負担を減らすことを目的につくられたパーソナルAIで、作中の二者択一の選択肢などは、このシステムから導きだされたものとして描かれる。現実においては、選択肢が綺麗に分かれることが続くわけではないが、本作の世界ではAIが綺麗に選択肢を分けてくれるというわけだ。選択肢などによって発生した分岐は”アリアドネ”という運命の糸のつながりを可視化したシステムで閲覧することが可能で、これが”すべての物語を見る”という目的をサポートしてくれる。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ノベルゲームということで難度は低めだが、選択肢でハマってしまうと同じシーンを何度か観ることになる。ライブパートや戦闘パートはスキップできないため、行き詰まってしまうとテンポの悪さを感じるかもしれない

ノベルゲームの枠を超えたVR表現

本作の世界設定の肝となるマキナに搭乗してのバトルは、VR表現をふんだんにいかした迫力あるものとなっている。あくまでアドベンチャーゲームの文脈で作られているものなのでアクションゲームのようなプレイフィールではないが、搭乗のときに手を操作デバイスに入れたり、空中に浮かんだタッチパネル状のオブジェクトに触れてバリアを展開したり、強力な武器を使う際には事前に武器同士を合体させたりと、大型ロボットものの醍醐味ともいえる要素が楽しめる。

作中のバトルの回数はそれほど多くないが、VRによる表現が映える場所でしっかりと活用してきている。『東京クロノス』がVRでのノベルゲームというチャレンジをした作品だったのに対して、『アルトデウス:ビヨンドクロノス』はVRだからこそできる表現を積極的に取り組んだ作品となっているといえるだろう。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲マキナに登場してメテオラを迎え撃つパートは大迫力。タッチパネルを使ってシールドを展開する遊びなども用意されている。メカニックデザインは『アルドノア・ゼロ』などで知られるI-Ⅳ氏

またVRの見所として、主人公のサポート役であり、バーチャルアイドル的な存在の”ノア”のライブも推しておきたい。美しい楽曲を歌いながら画面中を飛び回り、あらゆるところに姿を現すノアのライブは実に見応えがある。文字で書いてもマキナの操作やライブの良さといったVR表現の魅力はなかなか伝わらず、記事とともに掲載するスクリーンショットや動画でも伝えきれないのがもどかしいところだが、『アルトデウス:ビヨンドクロノス』はVRゲームならではの表現を多数盛り込んだ、VRゲームの入門編としてもおすすめできる作品である。

アルトデウス:ビヨンドクロノス WHAT's IN? tokyoレビュー

▲主人公のサポート役であり、実体を持たないバーチャルアイドル的な存在のノア。彼女のライブは、多くの人々に活気を与えている

進化を見せたVRノベルゲーム

筆者は本作にとても好感を持っている。『東京クロノス』を最初に見たのは徳島県で行われていたイベント”マチアソビ”の出展時だが、そのときから制作スタッフやプロモーションの熱量が高かった。費用をかけたプロモーションというよりは、プレイしてくれるかもしれない人たちに試遊台で熱心に説明を重ね、感想を聞くと丁寧な返答を返していたのがとても印象的だった。面白いか面白くないかよりも”このチームが作るゲームなら遊んでみたい”という感覚に従って『東京クロノス』を遊ばせてもらった。

発売前のクラウドファンディングやファンミーティングが盛り上がりを見せていたのも、開発チームに寄せる期待感が高かったからだろう。そんな活気と情熱ある制作チームの作品はプレイヤーの心を揺さぶるものとなり、『東京クロノス』はいまや日本を代表するVRゲームといっても過言ではなくなった。

同チームの第二作目となるこの『アルトデウス:ビヨンドクロノス』は、VRにノベルゲームを落とし込むというところからさらにアクセルを踏み、このゲームを通じてVRゲームの可能性を見せてくれる傑作となっている。あの活気ある制作チームが同じような作品を作って満足するはずもなく、よりVRというプラットフォームに踏み込んだ作品が生まれたのだ。

ミステリアスなプロローグから始まるタイプのシナリオというのは、真実が明かされたときの驚きの度合いが人によって異なるため、評価も分かれるが、最後までプレイすれば確かな手応えと満足感があるだろう。それは、本作も『東京クロノス』も謎を解くだけのゲームではないからで、大きな真実へと至る過程で明かされていく小さな秘密が、小刻みにプレイヤーの心を揺らすからに違いない。

ちなみに、本作は単独でも十分に楽しめる作品になっているが、最大限に楽しみたい方は『東京クロノス』もプレイすることをおすすめする。そしてさらに楽しみたい方はノベル版の『渋谷隔絶 東京クロノス』も読んでみてほしい。関連作品を遊んでいないと楽しめないということではないが、単独で成立する作品の間に実は、他の作品を遊んだ人にしか見えない糸が存在していることを知ったときの喜びも確かにあるのだ。


■タイトル:アルトデウス:ビヨンドクロノス(ALTDEUS: Beyond Chronos)
■発売元:MyDearest
■対応ハード:Oculus Quest2 / Oculus Quest / Oculus RiftS / Oculus Rift
■ジャンル:VRインタラクティブストーリーアクション
■対象年齢:17歳以上対象
■配信日:配信中(2020年12月4日)
■価格:3,990円(税込)


『アルトデウス:ビヨンドクロノス』オフィシャルサイト

©MyDearest,Inc.All Rights Reserved.