マンスリーWebマンガ時評  vol. 13

Column

『はめふら』『梨泰院クラス』など大ヒット。2020年ウェブ小説発マンガ、ウェブトゥーン振り返り&21年展望!

『はめふら』『梨泰院クラス』など大ヒット。2020年ウェブ小説発マンガ、ウェブトゥーン振り返り&21年展望!

2020年ももうすぐ終わり。おそらく誰にとっても大変だった一年だったはずだ。
エンタメ界の中ではライブエンタメと比べると、ウェブマンガ・ウェブ小説発の動きは数少ない、変わらず活発だったジャンル/メディアだ。
そんな分野の今年の振り返りと来年に予測される動きをまとめていこう。

文 / 飯田一史


TVアニメ化、Netflixドラマ化によってウェブトゥーン人気が加速

2020年にはNAVERウェブトゥーン発の『神之塔』『ゴッド・オブ・ハイスクール』『ノブレス』が米国のアニメ配信会社クランチロールの製作と、日本のアニメ制作会社の制作によって全世界配信&日本でのTVアニメ化が実現した。これによって特に『神之塔』は日本でもLINEマンガ上で大きく売上を伸ばし、ウェブトゥーン人気に拍車をかけた。

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2020.04.22

さらにNetflixで実写ドラマ『梨泰院クラス』が『愛の不時着』と並んでコロナ禍で大ブームとなり、『梨泰院クラス』の原作ウェブトゥーンである『六本木クラス』(日本ローカライズ版のタイトル)を配信するピッコマでもよく売れた。

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2020.06.30

ピッコマのウェブトゥーン作品ではほかにも『俺だけレベルアップな件』などが月に1億円以上売り上げるタイトルに成長。コミックス単行本がほとんど出ないことからメディア上で「○○万部突破!」などと謳われたり、書店ランキングに登場したりといったことがないため取り上げられることは少ないが、すでに日本でも毎日数十万~数百万人が閲覧する韓国ウェブトゥーン作品がゴロゴロ存在する時代に突入している。

アニメやドラマが配信の充実によって日韓のタイムラグなく視聴でき、原作ウェブトゥーンの翻訳も読める流れは、来年以降もますます加速するだろう。

また、今年はピッコマで人気ウェブトゥーンの原作となる韓国ウェブ小説も翻訳が始まっており、さらなる韓国コンテンツの広がりが予想される。韓国の女性向けウェブ小説のテンプレを知りたければピッコマでウェブトゥーン版と小説が両方読める『ネット小説の法則』(作画:A Hyeon、原作:Yu Han-ryeo)がおすすめ。

『はめふら』人気爆発――なろう発異世界コミックブーム

小説家になろう発の山口 悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』のTVアニメが4月期に放映されて爆発的な人気を博し、マンガ版もよく売れた。『はめふら』はなろうの女性向けで2013年頃から増えたと言われる「悪役令嬢もの」のひとつだが、比較的ギスギスした話がよく見られる悪役令嬢ものをパロディにしたようなコミカルな要素が満載。男女問わず広く支持を得た。

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2020.05.18

笑いを主たるニーズにする小説ジャンルは、児童向けの読みものと(広い意味での)ライトノベルにしか見られない。ギャグマンガも少年マンガと比べると青年マンガや女性マンガでは比較的少ないが、TVではお笑い芸人を見ない時間帯がないほどバラエティ番組だらけの日本では、笑える作品への支持は根強い。

『はめふら』をはじめとする、なろうの異世界ファンタジーのコミカライズは、原作小説の書籍版より売れることが少なくなく、手軽に楽しめる娯楽として相当数のタイトルが好調だ。2016年頃からすでにその傾向は顕著だったが、最近ではサブカル界・出版界の話題を超えて「文春オンライン」のような週刊誌を母体とする一般向けメディアにまで記事にされるようになるほど、その存在が無視できないものになっている。

なろうでは近年、現代もののラブコメの人気作も増えているが、映像化によって跳ねる作品がひとつでも出れば、ウェブ発ラブコメ小説のコミカライズも(すでにいくつもあるが)、異世界もの同様に早晩ブーム化するはずだ。

たとえば「マンガUP!」で配信されている『現実の彼女はいりません!』(原作:田尾典丈、漫画:三雲ジョージ。原作は小説家になろう連載[現在は削除]、GA文庫刊『中古でも恋がしたい!』)などがある。

大型人気作品のTVアニメ化を控えるウェブ小説

2021年もウェブ小説発のアニメ、マンガの勢いは止まらないだろう。

大型作品として、2013年10月から2019年2月までなろうの累計ランキングで総合1位を誇った『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』や、アルファポリスの看板作品のひとつ『月が導く異世界道中』、カクヨムの(これは異世界ファンタジーではないが)『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』など、有力プラットフォーム発の作品のアニメ化が控えている。

2016年1月期に『この素晴らしい世界に祝福を!』がTVアニメ化されたときには「数あるなろうの定番作品より先に、なろう系のお約束をパロディにしまくった『このすば』がアニメになっちゃうのか」と思ったものだが、2008年から書き始められた伝説的なウェブ小説『Unnamed Memory』が2019年にようやく書籍化された(そして書籍版がやはり好評を博し、2020年9月末からコミカライズが始まった)ことを思えば、この種の「ウェブ小説界で投稿・人気になった順番」と「マンガ化・アニメ化される順番」のズレはまだしばらく解消されそうにない。

そのタイムラグによる反響の時間差、映像化によって影響が遅れてほかのジャンルに波及していくこと――なろうで異世界転生・転移が落ち着いたあとでなろう以外のところでこのフォーマットの作品が増えた、等々――を含めて、ウェブ発コンテンツの多メディア展開を見ていくのはおもしろい。

当初は色モノ扱いだったウェブ発作品は、2010年代を通じて完全に市民権を得た。

2021年大型アニメ化と言えば『転生したらスライムだった件』の続編もある。筆者が『転スラ』刊行後すぐにGCノベルス編集部を取材したときは当然ながらマンガ化もアニメ化もされておらず、「変わり種を書籍化しましたね」くらいの感じだったが、思えば遠くまで来たものである……。

2020年代にはウェブ発作品がますます主流になっていくだろう。

WHAT’s IN? tokyoリニューアルに伴い、ウェブ発マンガ/ウェブトゥーンを紹介する連載は今回で終わるが、またどこかでこんな話の続きをしていければと思っている。
良いお年を。

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