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錚々たるアーティストが参加した『TRIBUTE TO TRICERATOPS』から感じる、“仲間”からの愛とTRICERATOPSの「いい音楽」

錚々たるアーティストが参加した『TRIBUTE TO TRICERATOPS』から感じる、“仲間”からの愛とTRICERATOPSの「いい音楽」

今の時代に必要なのは、ワクワクさせてくれるものと、幸せな気持ちにしてくれるものだ。そして、その両方を兼ね備えたアルバムが、『TRIBUTE TO TRICERATOPS』だ。

TRICERATOPSは2017年にデビュー20周年を迎えた後、メンバーの和田 唱、林 幸治、吉田佳史はソロ活動に入った。それぞれに力を高めた3人は今年、もう少し早い時期に再集結して、最強のスリーピースバンドとしての新しいキャリアをスタートするはずだった。しかしパンデミックが世界を襲い、すべてのライブがキャンセルに。その状況下、全力を上げて開催に至ったツアー“THREE HORNS IS BACK 2020”の初日が10月16日にZepp DiverCity TOKYOで行なわれ、TRICERATOPSは格段にスケールアップした姿を見せてくれた。メンバーがソロ活動で得た新たな高みと深みが、バンドを輝かせていた。 

その熱の冷めやらぬうちに、今回の『TRIBUTE TO TRICERATOPS』のリリースが発表され、“失われた半年間”に翻弄されてきた音楽ファンに明るいニュースとなって拡散していった。

今、シーンの期待を集めるトリビュートの全貌が明らかになる。アルバムには最初に書いたように、リスナーの心をワクワクさせ、聴く者を幸せにする音楽が詰め込まれている。

参加したのは、TRICERATOPSの先輩や同期生、後輩のミュージシャンやバンドたちだ。面白いのは先輩とか後輩とかは関係なく、全12アーティストが“仲間”として参加していること。それはTRICERATOPSがテーマとしてきた「いい音楽を届ける」、「いい音楽を愛する」という点において、キャリアや年齢に関係なくさまざまなミュージシャンと親交を結んできた証である。遠慮のない仲間たちが、TRICERATOPSに今、熱いエールを贈るアルバムなのだ。

「10才年下の後輩だけど、大切な仕事仲間。弾き語りツアー(ひとり股旅)を始めた頃、移動の車の中でこの曲をよく聴いてたから、すんなりやれた」と奥田民生は告白する。アルバムのオープニングを飾る奥田の「ロケットに乗って」は、ベイシックなアレンジはオリジナルに拠っているが、ギター・サウンドは奥田独自のものになっている。まるで自分の曲のように歌いまくり、ハモりまくり、弾きまくる姿に、TRICERATOPSへの愛情がひしひしと感じられる。

続く2曲目は、同期生バンGRAPEVINEの「2020」。GRAPEVINEとTRICERATOPSは対バンライブを重ねるなどしていて、お互いに「戦友である」と公言してはばからない。GRAPEVINEのチョイスした「2020」は、先のZepp DiverCity TOKYOでライブ中盤のハイライトとなった曲で、そうした曲をトリビュートするあたりがさすがに戦友だ。楽曲をよく理解した上で、原曲のリリカルな側面を見事に引き出している。

LOVE PSYCHEDELICOは2000年デビューの少し後輩ユニット。ギターのNAOKIは「GOING TO THE MOON」を聴いたとき、「やられた!」と思ったとリスペクトを隠さない。ボーカルのKUMIは「同じルーツを感じるから、身近に感じてレコーディングできた」と共感する。二人は「New Lover」をグルーヴィーなアコギ・サウンドで自分たちの曲のようにカバー。この“仲間感覚”が、聴く者を幸せな気持ちにさせてくれる。

そして、スキマスイッチの「if」には驚かされた。珠玉のミディアムバラードを、何とニューソウル風にカバー。これがメロディにめちゃくちゃ似合っている。オリジナルとはまったく違うニュアンスになってはいるが、原曲の奥底に秘められたグルーヴを見事にすくい上げている。大橋卓弥と常田真太郎の大胆な冒険には、和田唱作品に対する真摯なリスペクトが込められている。必聴!!

心のこもったトリビュートが続くので、本当に息つくひまもない。ここまで聴いてきて、つくづく「TRICERATOPSは音楽仲間から愛されているなぁ」と感じる。先輩も同世代も後輩も、垣根を取り払ってTRICERATOPSの音楽を楽しんでいる。アルバムはさらに深みに入っていく。

Base Ball Bearの小出祐介は「中学生の時から聴いてきたから、どう崩していいかわからない。正面突破しかないな」と語って、「Raspberry」をオリジナル通りに演奏。その生真面目さが、J-ROCKのスタンダード・ナンバーの新たな魅力を浮き彫りにする。奥田のギター・サウンドと、和田のギター・サウンドと、この小出のサウンドを比べて聴いてみるのは、本当にワクワクする体験だ。

エキゾチックな「Guatemala」を選んだのはOKAMOTO’Sだ。ループ・トラックを使って浮遊感を演出し、ラブ&ピースな雰囲気を醸し出す。「これを聴いて、また可愛がってもらえるといいな」と、いい意味でのヒッピー的発言をしているのが快い。

ほんわかしたOKAMOTO’Sとは対照的に、超アグレッシヴなのがUNISON SQUARE GARDENだ。TRICERATOPSのハードエッジな面が押し出された「赤いゴーカート」を、オリジナルよりはるかにテンポアップして演奏。スピード感がハンパない。ギター&ボーカル斎藤宏介の強い思いに、鈴木貴雄がセットが壊れそうな凄まじいドラミングで対応。ベースの田淵智也も含めて、疾走感に貫かれたカバーとなった。

「同じコード進行の繰り返しなのに、メロディが変わるのは大好物」と、山崎まさよしは「シラフの月」を彼らしい言葉で称賛する。このスタイルのメロディ作りは、和田の得意とするところ。洋楽の名曲もこのパターンが多い。山崎はTRICERATOPSのイベントに呼ばれたとき、「シラフの月」を歌わせてもらったという。「これぞ!」と思った曲だけに、山崎は一人多重録音でレコーディングに臨み、磨きぬかれたアコギのアンサンブルを披露している。

感動的なのは仲井戸“CHABO”麗市の「New World」だ。TRICERATOPSの20周年イベントで日比谷野音に登場した仲井戸は、この曲を歌った。3人との演奏を楽しむことで、バンドを祝福していたのが印象的だった。今回は一人で全楽器を演奏してレコーディング。ギターはもちろん、マンドリンの音色が曲にマッチしていてグッとくる。仲井戸はライブ・セッションのとき、終わりにバンドの名前を必ずコールする。このカバーでもそれは同じで、たった一人のレコーディングの最後に「TRICERATOPS!」とコールした仲井戸の心情を思うと、さらにグッとくる。

にっこりしてしまうのは、KANの「トランスフォーマー」だ。90年代初頭のデジタルロック風にアレンジされている効果で、リリックの面白さが強調される。この挑戦に「えっ?」と驚くリスナーの顔を想像して、にんまりするKANの笑顔が見えるようだ。

ラストを飾るのは桜井和寿とTRICERATOPSの合体バンド“Quattro Formaggi”。「ラストバラード」ではメンバー3人の演奏をバックに桜井の泣き節ボーカルが炸裂していて、他のどのアーティストとも異なるトリビュートとなっている。

『TRIBUTE TO TRICERATOPS』は、2020年という忘れられない年の最後にTRICERATOPSから届いた、ワクワクと幸せが満載のプレゼントだ。カルチャー全般がピンチを迎えたこの時代に、ミュージシャン同士、あるいはミュージシャンとリスナーがお互いを信頼し合い、未来を共有する。世代を超えて日本の音楽シーンを俯瞰するこのアルバムは、TRICERATOPSというバンドの存在感と可能性を力強く告げている。

文 / 平山雄一

【トリビュート盤特設サイト】
https://eplus.jp/triceratops-ttt/

ライブ情報

TRICERATOPS
THREE HORNS IS BACK 2020 “MORE”

12月26日(土)大阪・なんば Hatch open_1700/start_1800
12月30日(水)東京・新木場 STUDIO COAST open_1630/start_1730
※東京公演はSOLD OUT

TRICERATOPS

1997年のメジャーデビュー以降、国内屈指の3ピースバンドとして邦楽ロックシーンをけん引、楽曲のセンスやグルーヴィーなバンドアンサンブル、そして圧倒的なライヴパフォーマンスなどに、「唯一の存在」として一般音楽ファンのみならず多くのアーティストからもリスペクトを集めているトライセラトップス。
2018年から個々にソロ活動を開始し、それぞれのフィールドで活躍してきた彼らが、2020 年秋、2年半ぶりの活動を再開。

オフィシャルサイト
http://triceratops.net