今、知っておくべき注目声優を解説します!  vol. 12

Column

『進撃の巨人』The Final Seasonでの活躍が待ちきれない! 声優「谷山紀章」と“アウトロー”キャラの華麗な系譜

『進撃の巨人』The Final Seasonでの活躍が待ちきれない! 声優「谷山紀章」と“アウトロー”キャラの華麗な系譜

この人の声を知っておけばアニメがもっと楽しくなる(はず)! 今、旬を迎えている声優の魅力をクローズアップするマンスリー連載コラム。最終回となる今月は、『進撃の巨人』ジャン・キルシュタイン役、『うたの☆プリンスさまっ♪』四ノ宮那月役、『文豪ストレイドッグス』中原中也役などで知られる谷山紀章(たにやまきしょう)さんを総力解説。KISHOW名義でロックユニット・GRANRODEOのボーカリストとしても15年のキャリアを誇る、その唯一無二の声の魅力を明らかに……!


『天元突破グレンラガン』で切り拓いた“愛すべきアウトロー”への道

当連載ではこれまで、さまざまなタイプの男性声優と、その魅力が最大限に発揮されてきた “ハマリ役”について書かせてもらったが、生身の俳優においても、声の演技に特化した声優においても、誰しもの心に残り続ける“ハマリ役”をしっかりと持っている役者は、実に強いと改めて思う。熱血感の元気な主人公キャラがバッチリとハマる人がいれば、クールなインテリキャラがハマリ役の人もいる。それぞれ「この役はこの人じゃなきゃ!」「この人にはこういう役どころが最高に似合う!」というキャラクターが確かにあり、その積み重ねが彼らのキャリアを確実なものにしているのだ。

今回紹介する谷山紀章はまさに、「こういう役柄を演じさせたら天下一品!」と断言できる圧倒的なハマリ役で強烈な印象を残し続けている役者のひとりだ。そのハマリ役とはズバリ、人間くさい切れ味の鋭いアウトロー。口の悪い不良、やさぐれたチンピラなど、人間としての強さと愚かさが男気となってあふれ出す男を今演じさせたら、なかなか右に並ぶ者はいないのではないか。

その片鱗を確実に見せつけた代表作のひとつは、TVアニメ『天元突破グレンラガン』(2007年)のキタン・バチカ役だろう。その名前の由来からも“短気”であることが分かるように、獣人狩りのハンター集団のリーダーでもあったキタンは、直情的で喧嘩っ早く情に厚い、切り込み隊長的存在だ。キタンはもともとの設定では、早い内に出番を終えるハズだったが、制作スタッフが谷山演じるキタンに新たな魅力を見出し、出番が増えたという逸話も有名だ。キタンのラスト、彼の男気と強さが炸裂した雄叫びの後に残した「……これが螺旋の力かよ。たいしたもんじゃねぇか」という万感の想いを込めた一言は、涙なしには観られない名場面だ。

不良!狂気!バトルマニア!個性溢れるハマり役の系譜

谷山のハマリ役として、男気あふれるチンピラ口調の不良っぽいアニメキャラクターは多い。根っからの戦闘狂で、残虐な危険人物である『Dies irae』のヴィルヘルム・エーレンブルグ。『BLEACH』で檜佐木修兵(CV:小西克幸)が持つ残忍かつ好戦的な斬魄刀・風死や『咎狗の血』のグンジなど、まさにマッドな“ヒャッハー”キャラも谷山が演じることでよりその狂気性を増していた。

主演を務めた『幕末Rock』の坂本龍馬役や『SHOW BY ROCK!!』シリーズのクロウ役での熱血感っぷりも、谷山のアウトロー感あふれる演技あってこそ。変わり種では『よんでますよ、アザゼルさん。Z』のエウリノームも、谷山のチンピラ演技が光る印象的なキャラクター。最近の作品では、心根は優しい男だが、ぶっきらぼうな広島弁を話す実力派バスケプレイヤー『あひるの空』の夏目健二も、谷山らしい不良っぽさがとても魅力的だ。

そして、好戦的な口の悪さ、男気あふれる言動で作中でも非常に人気の高い『文豪ストレイドッグス』のポートマフィア幹部・中原中也も、谷山が演じるからこそ人間味にあふれた魅力的な人物へと昇華されたキャラクターだろう。圧倒的な体術による高い戦闘能力を持つ中也は、“ヒャッハー”な戦いっぷりも痛快だが、敵対勢力である武装探偵社の頭脳・太宰治との過去の因縁により、太宰に振り回されるユーモラスな言動、ふと見せる心の優しさも、実に人間らしい魅力に満ちている。他のキャラクターでも、そういうギャップを演じ分ける谷山は常に自然体。大上段に構えた芝居ではないところに、彼の演技者としての実力の高さをしっかり感じ取ることができる。

ロック・ボーカリストとしての活躍が持つ意味

谷山の基本的な声質は、直線的ではなく少し掠れた丸みを帯びており、音域としては割と高め。そして何より印象的なのは(とくにミドルレンジの)圧倒的な強さと太さだ。その“太さ”があるから、彼の音域を“高い”と感じさせないところもポイント。太い声だが “野太い”印象はない。『グレンラガン』のキタンもそうだが、柄の悪いべらんめぇ口調や、怒声を飛ばす演技が谷山紀章にとてもハマるのは、そんな彼の太く・強い声に因るところも大きいと思う。

“太い声”といえば……谷山紀章はロックユニット・GRANRODEOのボーカリストKISHOWとして、声優アーティストの枠には止まらない圧倒的な歌唱力を発揮していることでも有名だ。GRANRODEOの楽曲は、カラオケで歌ってもらうとよく分かるのだが、男性が歌うにはかなりキーが高く、むしろ女性のほうが歌いやすい音域。カラオケ好きの谷山本人も、女性の楽曲を歌う時は、原曲キーのまま歌うのが常だという。だが、GRANRODEOで歌っている曲は普通に聴くと、けっして「すごくキーが高い曲」とは感じないハズ。それは谷山の声が丸みを帯びた“太さ”と“強さ”を持っているからだ(同じ曲を、例えば声優なら透き通ったハイトーンが魅力の蒼井翔太が歌えば、「この曲、高い!」とすぐに実感できるはず)。

そんな谷山の声の太さが、他の声優アーティストの追随を許さない谷山の“ロック”なボーカリストとしての魅力を増幅していることも確かだろう。ちなみに谷山は、学生時代からハードロックはヘヴィメタル系の洋楽を聴いていて、自分でもよくハイトーンシャウトが得意なロックボーカリストの真似をして歌い込んでいたそうだ。その鍛錬がGRANRODEOの楽曲に活かされていることはもちろんだが、谷山の声優としての武器である切り裂くような雄叫びや“ヒャッハー”キャラの演技にも、大いに活かされているのではないかと思う。『うたの☆プリンスさまっ♪』を筆頭に、『幕末Rock』『SHOW BY ROCK!!』『グランブルーファンタジー』(アオイドス役)など枚挙にいとまがない、演技力と歌い手としての実力を同時に必要とされる出演作が多いのも、谷山ならではの個性だ。

『進撃の巨人』のジャンに見る“自然体”な演技の魅力

チンピラキャラを巧みに演じる一方で、まろやかな声質を活かした優しさと甘さを兼ね備えた女性人気の高いキャラクターも谷山の代表作には欠かせない。谷山紀章の名を一躍有名にした『君が望む永遠』の“ヘタレ”キャラ・鳴海孝之、クールな中にも優しさを秘めた上品さと艶が共存する『金色のコルダ』の月森蓮、甘い言葉をクールに囁く『AMNESIA』の王子様キャラ・イッキ、物腰柔らかだが内に熱い想いを秘めた『黒子のバスケ』の氷室辰也、『うたの☆プリンスさまっ♪』のふわふわ天然キャラ・四ノ宮那月。なかでも四ノ宮那月の場合は、那月がメガネを外すと出現するもう一人の凶暴な人格・四ノ宮砂月も、実に谷山らしいキャラクターだ。優しさと狂気に足を踏み入れていくギャップを一度に演じたキャラクターとしては、超個性的なSFファンタジー原作マンガを意欲的に描いた『pet』の司役も、どろついた生々しい感情をえぐり出した非常に人間味あふれる印象的な役どころだ。

人間味あふれたキャラクターで忘れられないのは、ついにシリーズ最新作「The Final Season」の放映もスタートした『進撃の巨人』のジャン・キルシュタインだ。人智を越えたキャラクターが多い『進撃の巨人』の中では、死闘の中でコミカルな場面を担うことも多く、誰よりも弱さ、無力さを自覚しながら懸命に成長していく普通の青年として描かれていくジャン。ビビリで臆病ながらも、仲間と自分のために勇気を出して戦いに挑んでいくジャンは、性格にハッキリとした特徴のあるキャラクターを演じることが多い谷山には、珍しい役どころかも知れない。それを気負うことなく谷山が自然体で演じているからこそ、色の強い『進撃の巨人』キャラクターの中で、ジャンは視聴者が最も親近感を抱ける存在として、生き残り続けているのだろう。

シーズンを重ねるごとに仲間のまとめ役として力を発揮していくジャンの演技は、才能あふれるライバルとの力量の差に悩みながらも、自分の居場所を見つけてチームのまとめ役として成長していく『おおきく振りかぶって』の西浦高校キャプテン・花井梓の自然体な演技にも重なるところがあるように思える。

もう1ジャンル、“ヒャッハー”キャラとは真逆の、一見、谷山が演じているとは思えない、だがぜひ注目してほしいキャラクター達がいる。それが『しろくまカフェ』のナマケモノと『ぼくらベアベアーズ』のパンダだ。ナマケモノは想像通り、セリフも行動もあまりにもおっとりした癒しキャラ。アメリカのカートゥーン・ネットワークから世界中に発信されている海外アニメ『ぼくらベアベアーズ』のパンダは、内向的でネット中毒のジャイアントパンダ。普段の谷山キャラでは味わえない、あざとく甘えた口調のかわいいキャラクター表現にきっと驚くことだろう。

凶暴なチンピラからジェントルな王子様まで、人間の強さと弱さの両方を自然な芝居にのせていく谷山紀章。声優生活25年、アーティスト生活15年を迎え、役者としても作詞家・ボーカリストとしても円熟の域に達しようとしている彼の歩みは、まだまだ止まらない――。

文 / 阿部美香

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