Review

ただのクロスオーバーじゃない『ゼルダ無双 厄災の黙示録』忠実再現された“BotW”の世界と“無双”の幸せな出会い

ただのクロスオーバーじゃない『ゼルダ無双 厄災の黙示録』忠実再現された“BotW”の世界と“無双”の幸せな出会い

もはや説明不要と言える任天堂の人気作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『BotW』)の世界設定と、定番の人気を獲得しているコーエーテクモゲームスの『無双』シリーズのシステムがコラボレーションした『ゼルダ無双 厄災の黙示録』は、大勢の敵を一気になぎ倒す爽快さが特徴のアクションゲームで、『BotW』の100年まえに起こった“大厄災”の時代を描きます。筆者を含め、本作が発表されたときに驚いたファンは多かったのではないでしょうか。なぜかというと、実はこの大厄災でリンクたちハイラル軍は大惨敗していて、その敗戦の先を描いたのが『BotW』のストーリーだったからです。起きた事実が決まっている話を本作ではどう描き、『無双』のゲーム性とどうマッチさせているのでしょう。気になる要素はいくつもあるのですが、まずはトレーラームービーでその世界を確認してみてください。

文 / 内藤ハサミ


『BotW』世界の再現度だけでなくオリジナル要素も高いクオリティ

まずは『BotW』を少しだけおさらいしておきましょう。この作品は、100年まえに起こった大厄災でハイラル王や4人の英傑たちがいなくなった世界を描いています。ゲーム開始直後のリンクは記憶を失っていますが、旅の過程で大厄災のときに起こったこと、英傑たちの人となりや活躍、ゼルダ姫との関係などが少しずつ明らかになっていきます。そこで私たちプレイヤーは、完膚なきまでに厄災ガノンに打ち負かされたハイラルの惨状を知りました。100年まえのバッドエンドがあってこそ成立するストーリーだったのです。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲リンクはハイラル軍の兵士として戦います

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲100体撃破ごとにKO数が出ます。頼もしいリンクの立ち回りを『無双』のシステムが盛り上げます

その時代の本作では、そう遠くないうちに起こるであろう大厄災に備えるべく奔走しているハイラルの人々が描かれます。ゼルダ姫は自分に備わっているはずの大厄災を封印する力が一向に目覚めないことに苦悩し、今できることをしようと遺物の研究を行うも父であるハイラル王からは咎められるばかりで自信を失っています。『BotW』では過去にあったこととして断片的に語られていた物語が、肉付けされたムービーで体験できるのは嬉しい限りです。特に序盤は『BotW』の内容を補完するストーリーとして楽しめる……と思いきや、当たりまえのようにゼルダについて回る、小さいガーディアンが新たに登場しています。何者なのでしょう?

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲愛嬌たっぷりの小さいガーディアン。言葉は通じませんが、共に戦う仲間となります

このガーディアンの存在も含め、序盤からいくつか『ゼルダ』ファンも見たことのない要素が登場します。これは今まで語られてこなかっただけなのか、100年の月日が歴史を曲げて伝えてしまったということなのか、それとも別の理由があるのか……。大厄災のことは概ね明らかになっているはずなのに、最初から謎が多い本作のストーリーには即引きこまれてしまうこと間違いなしです。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ミファーの父ドレファン王など、おなじみのキャラクターも登場

プレイアブルキャラクターについてもたくさんの驚きがありました。特に若い頃の姿で登場するインパは一番のお気に入りになりました。忍者のようなシーカー族の能力を使って繰り出される技の数々は、トリッキーながらも強力。同じく初期から使用できるリンクに比べて慣れが必要ではあるものの、ゲーム開始後すぐに使用できるキャラクターとして非常に頼もしい性能なのです。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲シリーズ作品によって、それぞれまったく違うルックスと年齢で描かれるインパ。その多くがキリッとした大人の女性でしたが、今回はかなりイメージが違います

『BotW』に出てくるインパは100歳を超えた落ち着きのある老女ですが、本作のインパは彼女の孫娘パーヤそっくりの顔をした、真面目でちょっとヌケたところもある女性だということが面白い点のひとつです。ハイラル王室の執政補佐官としてではなく、同じ年頃の女性同士としてゼルダと親しくしている姿には心温まります。ハイラルの未来を真剣に憂いているからこそ苦悩するゼルダの姿に胸を痛め、そっと支える優しくひたむきな姿は100年後の世界でのインパを思い起こさせ、『BotW』との深い繋がりを感じさせるのです。もちろんインパだけでなく、リンク、ゼルダ、4人の英傑たちの100年まえの姿もしっかり描写されています。勇敢に厄災と戦った彼らの雄姿、その強さをプレイヤー自ら操作することで体感できるというのはとても興奮することです。特に『無双』のゲームシステムは、彼らの強さを表すうえでも抜群にマッチしていると言えるでしょう。ゲームシステムと世界設定の合致は、それだけにとどまりません。例えばゼルダはリンクや英傑、インパのような戦闘能力を持ち合わせていませんが、プレイアブルキャラクターとして戦闘に参加します。非力な彼女はどうやって戦うのでしょうか。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲マグネキャッチで鉄のキューブを振り回す!

なんとゼルダは『BotW』でおなじみのアイテム、シーカーストーンの能力をフル活用して戦うのです。シーカーストーンに備わったマグネキャッチ、ビタロック、リモコンバクダン、アイスメーカーの機能をフル活用します。敵への攻撃でゲージを溜めることにより発動できる必殺技にはウツシエを使います。ゼルダに撮影された敵が吹き飛ぶという、非常に個性的なものです。他のキャラクターもウツシエ以外の機能を通常攻撃とは別の特殊アクションとして使えるのですが、ゼルダは通常攻撃にシーカーストーンを使用するのが他キャラクターとの大きな違いです。未だ封印の力は発現せず強い戦士でもないゼルダが、持ち前の知恵と工夫で立ち回るけなげな姿には胸が熱くなります。もしここでゼルダが剣を持ちリンク顔負けの活躍がいきなりできてしまうのなら、姫付きとなる騎士リンクの存在は不要となってしまいますし、ゼルダに関する設定もめちゃくちゃになってしまいますからね。世界設定を丁寧にかみ砕いて取り入れるばかりではなく、プラスアルファの遊び心と驚きの解釈を組み込んでいるところが、ゼルダの戦いかただけでなく全編にわたって取り入れられていて感心するほかありません。

爽快アクションに重きを置いたシステム

ゲームの流れはわかりやすく、基本的には好きなキャラクターを選んで始め(使用キャラクターが固定されているステージもあります)、ステージごとに設定されている勝利条件を達成すればステージクリアです。ボスクラスの敵を倒す、とあるキャラクターを指定ポイントまで護衛するなど条件はステージによっていくつか存在します。概ね従来の『無双』シリーズに倣ったシステムですね。ステージの地形はさほど複雑ではなく凝った戦略も必要ありませんが、各所に隠れているコログ族を見つけ出したり宝箱を発見したりと、『BotW』でおなじみの探索要素を盛り込んでいるのが本作の特徴です。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ゾーラの隊長たちを救援することが目的のステージ。ちなみに戦っているのは、『BotW』では面倒な敵ベスト3に入ると筆者が思っているウィズローブです。とにかく攻撃しづらく鬱陶しい! 本作ではいくらか戦いやすくなっています

アクションはやや大味に感じるものの、ポンポンとボタンを押しているだけである程度コンボが繋がる楽しさはライト層にも受け入れやすいですね。タイミングよくボタン入力して発動する “回避ジャスト”で反撃に転じる流れを作るなど、テクニカルな操作も楽しめます。アクションの爽快感と面白さを重視したバランスなのでしょう。
中ボス、ボスクラスに相当する強敵には“ウィークポイントゲージ”が設定されていて、特定の攻撃を当てて削りきると“スマッシュ”で大ダメージを与えることができるのですが、ファイアロッド、アイスロッド、エレキロッドという3つの属性攻撃で強敵の弱点を突いてより多くのゲージを減らしたり、さらに前述したシーカーストーンの効果を組み合わせたりして短時間で多くのダメージを叩き込み、効率のいい敵のせん滅を追求するのも楽しさのひとつです。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲次々に技を叩きこんで敵を屠る!

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲大量の敵をザクザク斬っていく爽快さ

キャラクターごとに使う武器種は固定ですが、リンクに限っては片手剣、両手剣、槍など豊富に用意されていて、それぞれ攻撃パターンが異なります。このバリエーションを使いこなすためのプレイだけでもやり甲斐があるでしょう。どの武器種でも安定して使いやすく、いくつものステージで必須メンバーとなっているリンクは育てておくに越したことはありません。そんな面白い要素がいっぱいのアクションパートにひとつだけ注文をつけるとするならば、『BotW』でも重要な役割を担っていた巨大な兵器、4体の神獣を使った“神獣戦”についてです。プレイヤー自ら神獣を操作して何千という敵と戦う大興奮の展開があるのですが、大きな神獣の目線から見る敵キャラクターは小さすぎて見にくいこと、それを射撃でコツコツと攻撃していくことが主な作業になってしまうことにイメージとのギャップを感じました。ただし神獣戦は数が多くないので、巨大な体で敵を蹴散らしていくスケールを味わうためのものと割り切って楽しみましょう。

ゼルダ無双 厄災の黙示録 WHAT's IN? tokyoレビュー

▲マップは『BotW』そのまま。画面デザインもかなり近づけています。ファンには馴染み深いですね。まるで『BotW』を遊んでいるかのようです

メインストーリーに関係するステージ以外にも、クリアすることでキャラクターたちのアクションを解放、ハートの上限を増やすなどの強化ができるハイラルチャレンジ、ルピー(お金)を支払えば武器やキャラクターを強化できる鍛冶屋や訓練場など、すべての要素を含めるとかなりの大ボリュームになる本作。ひととおり遊ぶためのプレイ時間は、少なくとも50時間を超えるのではないでしょうか。
『BotW』ではその結末がはっきりと明言されていた“100年まえの大厄災”を描くという大きなチャレンジをしている『ゼルダ無双 厄災の黙示録』。クロスオーバーの妙味や爽快なアクションだけにとどまらず、物語もラストまで制作陣の熱意を感じるもので、『ゼルダ』の世界を魅力的に演出してくれました。おそらく、多くのプレイヤーが発売まえに想像していたものとは違った驚きが待っていることでしょう。きっとエンディングのあとは『BotW』という壮大な物語の成り立ちに改めて興味が出て、追求してみたくなるかも。感動に溢れたラストシーンをあなたもぜひ体験してみてください。

フォトギャラリー

■タイトル:ゼルダ無双 厄災の黙示録
■発売元:コーエーテクモゲームス
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:アクション
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年11月20日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 7,920円(税込)


『ゼルダ無双 厄災の黙示録』オフィシャルサイト

© Nintendo © コーエーテクモゲームス All rights reserved. Licensed by Nintendo