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2020年の大作RPGに生まれ変わった『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』色褪せない物語とバトル

2020年の大作RPGに生まれ変わった『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』色褪せない物語とバトル

古今東西の神々や伝説上の人物、魔物などを合体させて使役する“悪魔合体”、文明が崩壊した世界で相反する思想がせめぎあう物語など、ゲームシステムや世界観ともに独自性の高いRPGとして長年に渡って多くのゲーマーに支持されている『真・女神転生』シリーズ。そのなかでも初めて3DCGで描かれ生き生きと躍動する悪魔たちがもたらしたインパクトや、のちのアトラス制作のRPG(『ペルソナ3』~『ペルソナ5』など)にも大きな影響を与えた戦闘システムで評価の高かった『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE』(以下、『真III』)が、HD化されてPlayStation®4/Nintendo Switch™向けソフト『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』(以下、『真III HD』または本作)として再リリースされた。今回の記事では、オリジナル版『真III』からは17年、本作のベースになっているエクストラダンジョン&イベントが追加された『真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション』(以下、『マニアクス クロニクルエディション』)からは12年という歳月が経っても色褪せない、ストーリー、バトル、主人公や悪魔の育成の魅力について語っていきたい。

文 / マンモス丸谷


ボリューム十分で重厚なストーリー

まずは『真III HD』のゲーム内容に触れるまえに、どのような“リマスター”を施されているのかという基本的な情報に触れておきたい。かつてPlayStation®2(以下、PS2)で発売された『真III』には3種類のバージョンが存在するが、今回HDリマスター化されたのは2008年に発売された『真・女神転生』シリーズの派生作、『デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王』の限定版に収録されていた『マニアクス クロニクルエディション』。本作はタイトルに“マニアクス”というワードは入っていないものの、2003年に発売された『真III』の時点では用意されていなかったエクストラダンジョン、アマラ深界にまつわるシナリオや戦闘、『デビルサマナー』シリーズからゲスト出演した葛葉ライドウに関わるイベントといった追加要素も余すことなく収録されている。さらにダウンロードコンテンツの『マニアクスパック』を購入すれば、葛葉ライドウの代わりに『デビル メイ クライ』シリーズ(カプコン)の主人公ダンテを参戦させ、イベントを2004年に発売された『真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス』(以下、『マニアクス』)仕様にすることも可能。

長々とした説明になってしまったが、つまり『真III HD』は『真III』すべての要素が入った仕様でリマスター化されているということ。また現代のゲームらしく、キャラクターのボイスが増量されており、物語上で重要な役割を担う“人間”のセリフに関してはフルボイス化されている。

真・女神転生 III NOCTURNE HD REMASTER WHAT's IN? tokyoレビュー
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▲“原作尊重”を掲げたリマスターということで、ゲーム内容や大元のデザインに変更は加えられていない。とはいえHD化とPS2時代からのプレイ環境 (筆者の場合はブラウン管+D端子ケーブルで2003年に『真III』をプレイ)の進化で、主人公の体に刻まれた紋様の“輝き具合”やフィールドのディティールなど、細かい部分はシャープに見やすくなっている印象を受けた

オフィシャルサイトであらかじめアナウンスされているように、『真III HD』で展開される基本的なストーリーは『真III』から変化していない。プレイヤーは人類と現代社会を崩壊させた“東京受胎”を経て悪魔の力を得た主人公となり、荒廃したトウキョウの下に生まれた“ボルテクス界”にて、理想とする“コトワリ”を持つ世界の創世を目指す人間、神、悪魔らと出会い、あるいは戦い、共感できるコトワリがあれば協力していくことで創世のあるべき姿を選択していく。

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▲コトワリは、他の『真・女神転生』シリーズではカオス(混沌)、ロウ(秩序)、ニュートラル(中庸)といった思想(属性)にあたる要素。東京受胎を引き起こす一因を作った張本人の氷川が掲げるコトワリは“シジマ“。生物は静寂な世界を成立させる歯車と定義した世界を創世しようとしている

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▲“強者のみが存在する楽園作りを目指すコトワリ、”ヨスガ“。ヨスガを信奉する悪魔の集団のマントラ軍はゲーム序盤で崩壊するが、ゲームを進めていくと東京受胎を生き残った主人公のクラスメイトの橘千晶がヨスガの体現者となり、他のコトワリに属す者と対立していく

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▲東京受胎を生き延びたもうひとりのクラスメイト、新田勇が拓くのは“ムスビ“のコトワリ。個々人がそれぞれ独りだけで完結する世界を至上とした究極の個人主義思想を掲げ、創世に必要なエネルギーのマガツヒを収集する

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▲創世の巫女として氷川に利用された担任教師の高尾祐子。彼女に寄り添うことでどのコトワリにも属さず、人間もしくは悪魔として生きていくニュートラルルート的な分岐も用意されている

本作は、このコトワリをめぐったメインストーリーを進めていく際に訪れることになるダンジョンの大半になんらかのギミック(特定のアイテムやスキルを使わないと周囲が見えないダークゾーン、法則性に気づいて正しい順序で移動しないと先へ進めないパズル要素の強いエリアなど)が配置されている凝った作りなうえ、どのコトワリに賛同またはすべてに背くかによって終盤のストーリー展開が大きく変化。ひとつのルートをクリアするだけでも数十時間のゲーム体験が約束されている。そのため「PS2時代に『真III』の全ルート+『マニアクス』のアマラ深界も全部回りました!」という筋金入りの“メガテン”ファンでもない限り、いまストーリー目当てで本作を買っても十二分に満足できるボリュームが備わっている。
ナンバリングの『真・女神転生』シリーズを経験したことがない人にとっては、プレイヤーが選んだ思想(本作の場合はシジマ、ヨスガ、ムスビと呼ばれる3つのコトワリ)で物語の結末がガラリと変わる点が新鮮に映るようにも思う。『真III』が17年まえのゲームだからといって古臭さや食い足りなさを感じることはまずないので、当時を知らない人にとってはシンプルに質の高いRPGとして楽しめるはずだ。

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▲主人公が訪れることになるダンジョンには、それぞれ趣向を凝らした謎解きが用意されていることが多い。写真は画面内のヒント(壁や足下に描かれた光る菱形のシンボル)から、足場を動かして道を開いていくエリア

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▲『マニアクス』をプレイしていない筆者にとっては、メインストーリーの進行に合わせて突如として出現する“魔人”とのイベントバトルが新鮮だった

とくに最初に出現する魔人マタドールは序盤で戦う敵ながら回避魔法や衝撃魔法対策がないと倒すのが困難で、初戦ではあっさり全滅。17年ぶりにプレイヤーを容赦なく殺しにくる洗礼を受け、「やっぱこれが『メガテン』だよなあ」と妙にうれしくなってしまった。

ダレないバランスと高い自由度が楽しいバトル

質の高さや長く遊べるボリュームも兼ね備えたストーリーと同様、もしくはそれ以上に評価されているのが『真III』から導入されたシステムが多い戦闘面。一見すると『真III HD』の戦闘はJRPGでおなじみのターン制バトルなのだが、パーティーが行動できる回数は画面右上に表示されている“プレスターンアイコン”と連動している。このアイコンは通常だと1回の行動でひとつ消費されていくが、攻撃する対象の弱点を突いたり物理攻撃でクリティカル判定が出るとアイコンが輝き、行動回数が1回増加する。つまりスタンダードな4人パーティーで弱点を突き続けた場合は最大8回まで行動を続けることができ、一方的に敵をせん滅することが可能となっている。

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▲戦闘は序盤からでも、通常攻撃で殴り続けているだけでは安定して勝つことは難しい。敵の弱点を突き、1ターン当たりの行動回数を増やしていくのがセオリーとなっている

このプレスターンシステムがプレイヤー側だけに適用されているシステムならただのヌルいゲームになってしまうのだが、こちらのパーティーの弱点を突かれた場合は敵の行動回数も増えてしまう。さらに攻撃が命中しなかったり相手に効かない属性の攻撃をヒットさせてしまうと、弱点を突いた際とは逆に行動回数が一気に2回ぶん減少してしまう。初見の敵に無効な属性の全体攻撃を放ってしまい一瞬でターン終了、攻守が逆転→敵にこちらのパーティーの弱点を突かれて大ダメージ→主人公の死亡でゲームオーバー……という悲劇が、ボス戦はもちろんフィールドを移動中にエンカウントする悪魔との戦いでも起こりうる。そのうえで『真・女神転生』シリーズではおなじみの破魔、呪殺系の魔法が命中しての一発死のほか、通常攻撃を反射する悪魔にうっかりオートバトルで殴りにいってパーティーが崩壊する“メガテンあるある”も健在。こういった多彩(?)な死亡パターンは、『真III』を遊んだことのあるプレイヤーにとっては17年経っても忘れられない体験として記憶に残っている。

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▲短期決着が望めないボス戦や終盤でのバトルでは、相手の属性攻撃を無効化する対策が重要になってくる

ただし上記のようなゲームオーバーのリスクを複数の手段でつぶしていき、自分好みのパーティーを作っていけるのが『真III HD』の非常に魅力的な要素でもある。悪魔合体で主人公にない属性の魔法を持つ“仲魔”を作って行動回数アップのチャンスを増やす、弱点持ちの仲魔Aを戦わせる場合はAの弱点の属性を無効化する仲魔Bもセットで出す(Aの弱点である属性の全体攻撃が飛んできても、Bのおかげで敵の行動回数は減少する)、いまいるダンジョンの敵やパーティー構成に合わせて主人公の属性(弱点)を切り替えられる“マガタマ”の装備を活用する、主人公のステータスをスピード特化に育てて回避力を上げる、回避力を上げる補助魔法のスクカジャ、相手の命中率を下げるスクンダ、フォッグブレスを多用する……などなど、隙のないパーティーを作る手段は数多く用意されている。こういった戦法をパーティーの残りMPとも相談しつつ選び、ダンジョンを進んでいくのが楽しい。シナリオだけでなくバトルもプレイヤーの“選択”で、内容や難易度が変化するのも多くの人に体験してもらいたいポイントだ。

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▲マガタマは装備すると主人公の弱点や耐性のある属性を変化させられるほか、レベルアップ時にマガタマの特性に応じたスキルを覚えさせることもできる。この取捨選択で主人公の得意分野が大きく変わる

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▲仲魔も戦闘を重ねることでレベルアップ。ステータスが底上げされるほか新しいスキルも習得し、戦いの幅を広げていってくれる

HDリマスター化によって、PS2を代表する“古典”から現行ハードで手軽に遊べる大作RPGへと生まれ変わった『真III HD』。次回記事では2020年という時代に合わせた追加要素、ダウンロードコンテンツによって格段に遊びやすくなった周回プレイ、強力な仲魔作りなどについて紹介していきたい。

フォトギャラリー

■タイトル:真・女神転生 III NOCTURNE HD REMASTER
■発売元:アトラス
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™
■ジャンル:RPG
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年10月29日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 5,980円+税


『真・女神転生 III NOCTURNE HD REMASTER』オフィシャルサイト

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