Interview

佐藤ミキ 諦めずに乗り越えたから今がある。TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のEDテーマで繊細な歌声を響かせるニューフェイスの歩み

佐藤ミキ 諦めずに乗り越えたから今がある。TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のEDテーマで繊細な歌声を響かせるニューフェイスの歩み

TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のEDテーマを歌う北海道在住の女性シンガー、佐藤ミキがデビューシングル「名もない花」をリリースした。
高校生時代に結成していたガールズグループの活動が音楽関係者の目に留まり、大学在学時には学業と音楽の両立を果たしながらレッスンや作詞の勉強などの準備を重ね、2020年についに始動。7月には初のオリジナル曲「Play the real」を自身のYouTubeチャンネルで公開し、8月にはプレデビュー曲「A KA SA TA NA」を配信限定でリリース。そして、10月からはアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のオンエアが始まり、全くの新人ながらもEDテーマに抜擢されたバラード「名もない花」が流れた。温かさの中にある切なさや儚さにも焦点を当てた楽曲で、繊細ながらも意志の強い歌声を響かせる彼女は果たしてどんなシンガーなのか。彼女がこれまで歩んできた道程を振り返ってもらった。

取材・文 / 永堀アツオ


この仕事を始める前からずっと音楽に関わりがある人生だなって思います

音楽に目覚めたきっかけから振り返ってもらえますか。

物心がつく前からずっと音楽がかかってる家だったんですよね。安室奈美恵さん、平井堅さん、ポルノグラフィティ、CHEMISTRY、KinKi Kidsとか。保育園では、モーニング娘。やミニモニ。を仲の良かったみんなで歌ったり踊ったりしてましたし、小学生の時の学習発表会では、私のソロがある劇だったのでステージで歌たわせてもらって。高校の時は英語科で、3年生になったら英語でミュージカルをするっていう伝統があったので、そこでもメインキャストでミュージカルをやっていて。だから、この仕事を始める前からずっと音楽に関わりがある人生だなって思いますね。

高校時代は軽音楽部に入ったんですよね。

そうですね。高校に入学したときに、新入生歓迎会があって。見た目で言うとお淑やかな感じの子ばかりだったんですけど、軽音部の先輩たちは、演奏をはじめた瞬間に急にカッコよくなって。私もやりたいなと思って、ボーカルで軽音部に入りました。

そこで部長にまでなるんですよね。

そういうのが多いんですよね。小中学の時はずっとソフトテニスをやっていて、その時も部長と生徒会長と、学級委員もやっていて。私についてきなさいっていうタイプではないんですけど……。

バンド組んでみたい子が入ってきた時に、何も教えられないと嫌だなと思って、ギターとドラムもできるようにして

資料を見ると、ベース&ボーカルだったとあります。

ボーカル、ベース、ギター、ドラムっていう4人組だったんですけど、途中でベースの子が抜けちゃって、私がベース&ボーカルになって。それまでは楽器は全然やってなかったんですけど、頑張って覚えて。そのあとに部長になったので、もし、何にも知らないけど興味があって、バンド組んでみたい子が入ってきた時に、何も教えられないと嫌だなと思って、ギターとドラムもできるようにして。楽譜を読んだりとか、基本の演奏だけは教えられるようにしてましたね。

すごいですね。その努力というか、やると決めたら必ずやり遂げる姿勢というか。

我慢強くて、努力するのが嫌いじゃないんですよね。頑張って結果を出すのが好きなタイプなんだろうなと思います。

高校時代にはもう歌手になろうと思ってました?

うちの母親は、大学に行って、いい会社に入って、結婚するのが一番いいっていうタイプなんで。だから、中学生までは、母親の「こうなってほしい」っていう希望に沿うように勉強もがんばってきったんですけど、中3になって進路を考えるようになった時期に、母親が入ってほしい高校に入学できたら、歌が好きだし、音楽をやりたいなって思い始めて。高校生になったらオーディションを受けはじめて、高校卒業するまでに何かを掴めたらいいなと思ってたんですけど、第一志望には受からなくて。高校に入って、軽音楽部でバンドを組んで、ライブに出演した時に声をかけてもらって。あ、これだ! 私は音楽を仕事としてやっていこうと思ったんですけど……。

4年間、大学に通いながら、札幌でレッスン受けて、レコーディングや撮影で東京に通うっていう生活をしてました

お母さんは反対しますよね。これまでの流れだと。

そうですね(笑)。「歌が上手い子なんていくらでもいるし。声をかけられる人もいっぱいいるんだから。それだけはダメだ」って言われたんですけど、「いや、私は歌がやりたい」って思って。それまでは親に反抗したことはなかったんですけど、「音楽がやりたい」って言ったら、大学に合格したらいいよっていう条件を出してくれて。結果的に大学に受かることができたので、4年間、大学に通いながら、札幌でレッスン受けて、レコーディングや撮影で東京に通うっていう生活をしてました。

歌うのが好きだなと自覚したのはいつですか。

最初の頃はなんとなく好きだから惹かれて、歌があるところに自分がいっていたと思うんですけど、デビューするまでの準備期間に辛いことも大変なこともたくさんあって。でも、そこで、歌をやめたいと思わなかったんですよね。それだけ辛くて大変なら辞めればいい。でも、やめようとは考えなくて、また歌いたいなと思った時に、やっぱり音楽が好きなんだなって自覚して。それは、割とこの5〜6年かなと思います。

デビューに向けた準備を始めてから気づいたということですよね。その過程で、どんなシンガーになりたいかっていう理想像のようなものも見えてきましたか。

最初はダンスをやりたかったんですね。漠然と、歌って踊れる人になりたいって思っていたんですけど、デビューが決まった時に、ちゃんとどういう活動がしたいのかを決めなきゃいけないって感じて。それまでの自分は、歌が好きだから歌手になりたいって漠然と思っていて。そしたら、声をかけていただいて、音楽をやりたいって思ってる、その指針が……「歌が好き」しかなかったというか。

諦めなかった人が、今、世に出てる人たちだって思ったんですね

最初はみんな、漠然としてるものだと思いますし、「歌が好き」という気持ちも大切ですよね。

でも、それだけは生き残っていけないって。芯になるものを持ってないといけないと思ったんですけど、その時の自分にはなかなか思いつかずに悩んでて。ただ、歌が好きで、歌をやめたくなくて、レッスンを頑張るという感じだったんですけど、もしかしたらこれはもうデビューできないかもしれないと思った時があって。でも、そこで諦めなかった人が、今、世に出てる人たちだって思ったんですね。

それは音楽だけじゃなくて、他の仕事においてもそう。死にそうなくらいに悩んだり、追い込まれたする人って多いと思うんです。自分の周りにはいないかもしれないけど、全国や世界中を探したらきっといっぱいいると思って。自分はその辛い気持ちがわかるから、歌でできることがあると思ってから、自分の中で歌をやる意味や芯ができて。そこから、そこが決まると書いていく歌詞も変わるし、自分の中で、切り替えというか、立ち上がることができたなと思いますね。

聴くだけで強くなれるような楽曲を歌いたいし、私の活動を見て、自分も頑張ろうって思ってもらえるようなシンガーになりたい

改めて、聞いていいですか。佐藤さんはどんなシンガーになりたいですか。

聴いて強くなれるとか、背中を押されるとか、頑張ろうと思ってもらえるシンガーになりたいです。昔は悲しい曲や切ない曲、恋愛がうまくいかない曲とか、辛くてわかってもらえない曲を聴く傾向にあったんですけど、自分がほんとに辛くなった時や悩んだ時は、そういう曲は辛くて聴けなくて。逆に、悲しい時や辛い時は、明るい曲の方が素直に入ってきて、頑張ろって思える自分がいたんですね。世の中には、音楽がなくても生きていける人ってたくさんいると思うんです。それは全然いいと思っていて。歌がなくても人生楽しく充実してやれているんだったら、それはそれでいいと思うけど、歌をやる以上は歌を聴いてくれる人たちと関わっていくわけですよね。歌の力を必要してる人が聴いてくれると思うので、聴くだけで強くなれるような楽曲を歌いたいし、私の活動を見て、自分も頑張ろうって思ってもらえるようなシンガーになりたいなって思いますね。

今のお話は最初のオリジナル曲でアップテンポのダンストラック「Play the real」の歌詞とも通じていますよね。

そうですね。コロナが流行している時期に作った曲なんですけど、いろいろ進行が遅れてしまって。北海道だったのでレコーディングも撮影にも行けなかったんですね。いよいよ動き出せる! って思った時に、逆に何にもできなくなっちゃって。辛かったんですけど、それはどの業種でも一緒で、みんな辛いだろうなと思って。そんな中でも、目標を持って頑張ってる人もいるし、何があっても一緒に乗り越えていきたいっていう思いがありましたね。佐藤ミキとして最初に世に出る曲になるのがわかっていたので、ほんとにはじまりの曲だし、新たな未来への決意、強い意志を込めたいなと思ってました。

「どんなことがあっても乗り越えていく」

決意表明の曲になってると思いますが、ご自身としては、どんな意思を込めました?

「どんなことがあっても乗り越えていく」ということですね。シンプルな言葉ですけど、今までの自分を振り返ったらその一言というか。大変なこともあったし、もしかしたら無理なんじゃないかなって感じたこともあったけど、それでも諦めずにやってきたから、今があると思っていて。ほんとにどんなことがあっても、目標があったら乗り越えられると思うんですね。辛いことがあって、諦めるか諦めないかという境目で悩んでる人たちに向けて、一緒に頑張って乗り越えていこうっていう決意を込めています。

タイトルを「Play」にしたのはどうしてですか。

思い詰めすぎないようにですね。真面目に「リアルを生きる」にしたり、辛いときにかっちりしよう、ちゃんとしようって思うと自分の首を絞める傾向に私はあるので(苦笑)。そうじゃなく、諦めないとか、絶対に頑張って乗り越えるっていう芯はあるんだけど、もうちょっとラフに、遊ぶように頑張れたらいいなっていう感じですね。

細かいことですけど、この曲に<この先に花咲く>というフレーズがありますよね。デビュー曲「名もない花」を連想させますが、意図的なものでした?

歌詞を書いていくうちに、自然と花が出てきて。ただただ、頑張っていればも実るよという意味だったんですけど、自然と繋がったんですよ。

知られちゃいけないとか、無くなった方がいいっていう意味で、この世に存在しない黒い花にしていて

ジャケットに黒い花が咲いてますし、「Play the real」の歌詞には<黒まみれの場所で>っていうフレーズもあって。

はい。「名もない花」のジャケットは、知られちゃいけないとか、無くなった方がいいっていう意味で、この世に存在しない黒い花にしていて。黒にしようっていうこだわりがあったんですけど、<黒まみれ>、自分の辛いことを表現するために使ってますね。生きていて、人の汚い部分とか、自分の嫌だなと思う部分とかを言おうと思った時に出してる。私が共作で作詞に参加してるという意味では通ずるものはあるのかもしれないです。

プレデビュー曲となったR&Bナンバー「A KA SA TA NA」にも<黒で塗られた夏夜>とあります。

黒は悲しい時に使うことが多いのかな(笑)。この曲は、最初に聴かせてもらった時に、すごくおしゃれでメロウなサウンドで、夏の夜の終わりに聴きたくなるような楽曲だなと思って。恋愛の曲にしたいと思ったのと、これもコロナの時期に制作した楽曲なので、近距離とか遠距離とか関係なくみんなが会いたい人に会えないと思ったので、今年ならではというか。

恋人同士がビデオ通話してる風景が浮かびますよね。

そうですね。付き合ってる二人ならほんとは花火にも行けるけど、今年は花火大会自体がやってない。そういうのも入れられたらなと思って。あと、リズム感がいい楽曲だなと思ったので、言葉遊びを入れたいなって。

<らわん>の続きは自分たちで作っていこうという思いで、途中までで切ってるところもポイントだったりしますね

サビ/Aメロ/Bメロ/サビ/Bメロ/サビ〜という構成ですが、Bメロの文頭が「あかさたなはまや」になってます。これはどっちが先ですか?

タイトルが先で、そうなるようにフレーズを考えました。<あかさたなはまや>まであるんですけど、それ以降は作ってなくて。今はこういう状況だけど、これからの自分たちは自分たち次第だから、変えられる。<らわん>の続きは自分たちで作っていこうという思いで、途中までで切ってるところもポイントだったりしますね。

そして、10月からは表題曲となっているバラード「名もない花」がアニメのEDテーマとしてオンエアされました。アニメのタイアップを聞いた時はどう感じました?

最初はデビュー曲でアニメ作品のエンディングを担当できることがすごい嬉しかったんですけど、アニメはすでに一期と映画があって。すでにオープニングやエンディングを担当したアーティストの方々がいる中で、初めての作品がエンディング曲というのは、ちょっと、プレッシャーというか、受け入れてもらえるのかなっていう不安はありましたね。でも、実際にアニメで流れた時に、“エンディングに合っていて切なさがある”とか、“ポジティヴさとネガティブさを備えた声が面白い”っていうコメントをいただいて。自分が表現したいと思っていたことが、聴いてくださっている方に伝わってるなと思いました。

楽曲では、その好きっていう気持ちを恋愛としての好きなんだっていうことをお兄様に知られちゃいけないという葛藤の部分に焦点を当てて

佐藤さんが表現したいと思ってたこととは?

アニメの中では妹の深雪がお兄様の達也を大好きなのは、周りから見ても分かることなんですけど、あくまで仲のいい兄妹として見られているし、今は兄妹だから一緒にいられるっていう状況なんですね。楽曲では、その好きっていう気持ちを恋愛としての好きなんだっていうことをお兄様に知られちゃいけないという葛藤の部分に焦点を当てて。好きっていう曲でもないし、好きだけど諦めますっていう曲でもない。どっちつかずの曖昧なところは残したいっていうのはこだわって描きましたし、レコーディングでは、一緒にいられる思い出の温かさと同時に存在する、儚さとか切なさも表したかったんですね。歌においても、温かいとか、冷たいとかじゃなくて、両方あるなって思えるような声で歌いたいなと意識して歌いました。

アニメの登場人物だけじゃなく、ご自身の思いも重ねてますか?

アニメは兄妹だから「好き」って言えないけど、そうじゃなくても、誰でにもある経験だと思うんですよね。例えば、友達のままだったらずっと一緒にいられるけど、どっちかが「好きだ」って言い出したら終わっちゃうかもしれないとか、相手には好きな人がいて、仲がいいけど、言ったら終わっちゃうとか。そういう気持ちはみんなもどこかに共感する部分があるんじゃないかなと思って。私もそういう時あったなって思って描いたし、共感できる部分はありますね。

生でライブをしたいですし、ライブではいろんな面を出したいと思ってます

3曲揃って、デビューシングルが完成して、今はどんな心境ですか。

今日、初めてCDの現物を手にしたんですけど、あんまり実感がなくて……。デビューするまでの準備期間が長かったので、ようやくというか、やっとデビューできるっていう嬉しさはあるんですけど、実感はないですね。

リスナーと会ってないからかもしれないですね。

そうですね。まだリリースイベントもライブもできていないから。いつできるようになるかわからないですけど、生でライブをしたいですし、ライブではいろんな面を出したいと思ってます。踊ったり、アコースティックギターで弾き語りをしたり、ピアノを弾いたりとか。1つのライブでいろんなことが楽しめるライブができるアーティストになりたいなと思ってるし、今はとにかくライブをやりたいですね。今は目の前にこと、できることを精一杯やるしかない。その先に見えてくる景色が変わったらいいなと思ってます。

INFOMATION

<出演情報>
「Sony Music Artists presents おなじむ vol.1」
2020年12月15日(火)20:00~生配信
・詳細はこちら➡ https://sma-event.com/onajimu/

佐藤ミキが所属するSony Music Artistsによる配信プログラムへの出演が決定。
第一回目となる配信では東京スカパラダイスオーケストラのドラマー・茂木欣一がメインMCとなり、CHEMISTRYをゲストに迎えた一夜限りのトークやミニライブを繰り広げ、佐藤ミキも参加することが決まっている。

佐藤ミキ

幼少期から音楽に囲まれた生活を送り、友人の誕生日会や遊戯会などで歌い続けてきた。周りから賞賛を浴びることで音楽の楽しさを実感し、更にのめり込んでいく。
そんな中、海外にも興味を持ち始め、小学校在学時には単身でオーストラリアへ留学。触れるもの全てが新鮮で、後の人生に大きな影響を与えるきっかけともなった。
高等学校は英語科に進学し、再びオーストラリアへ。Avril LavigneやTaylor Swiftなど海外音楽にも傾倒するように。在学時に友人と行っていた音楽活動では、ガールズグループを結成しVocal & Bassを担当。地元で開催された音楽大会では金賞を獲得するなど、繊細さと強さを併せ持ったその魅惑的なSilky Voiceの存在感が業界関係者の目に留まるようになる。
大学在学時には学業と音楽活動の両立を果たしながら、日中友好大学生訪中団員として中国へ派遣されるなど、音楽レッスン、自主トレーニング、歌詞の勉強など、日々準備を重ねてきた。
2020年、SONY MUSIC内の音楽レーベル″SACRA MUSIC″より遂に始動。メジャーデビューに先駆け、7月には初のオリジナル曲「Play the real」を自身のYouTubeチャンネルに公開、8月にはプレデビュー曲「A KA SA TA NA」を配信限定でリリース。そして10月から放送されているTVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』エンディングテーマに新曲「名もない花」が抜擢され、12月2日にDebut Singleとしてリリースした。

オフィシャルサイト
https://www.satomiki-official.com