月曜の朝を待ちわびて。~「週刊少年ジャンプ」時評~  vol. 11

Column

2020年のジャンプ、印象に残った出来事は? 『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』……躍進続いた一年を振り返る!

2020年のジャンプ、印象に残った出来事は? 『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』……躍進続いた一年を振り返る!

こんにちは。週刊少年ジャンプ時評「月曜の朝を待ちわびて。」第11回です。2020年も残りわずかとなりました。今回は、本連載第1回で書いた予想の答え合わせをしながら、2020年のジャンプ関連トピックを振り返っていきます!

文 / おしこまん
イラスト / かずお


『鬼滅の刃』空前の大ヒット

2020年のジャンプを振り返るにあたり、まず最初に名前を挙げるべきは『鬼滅の刃』でしょう。天井知らずの記録が一体どこまで伸びるのか、本連載でも折に触れ扱ってきましたが、単行本の累計発行部数は電子版を含め1億2,000万部を突破し、また『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の興行収入は300億円を超え、『千と千尋の神隠し』の308億円に次ぐ歴代第2位となったそうです。12月26日(土)よりMX4D、4DXによる上映も決定し、歴代第1位となるのも時間の問題かもしれません。

そんな今もなお続く熱狂の最中、12月4日(金)に発売された最終第23巻で加筆された描き下ろしがすばらしい内容でした。最終話冒頭に補足されたあるキャラクターのモノローグは、ジャンプ掲載時にほんの少し感じた唐突さを払拭し心から納得のいく結末としてくれましたし、単行本の最後に追加されたページと作者からのメッセージにはハッとさせられました。

とりわけ強く印象に残っているのは「本当につらいことは雪崩のように一瞬で人を飲み込み何も選ばせてはくれない」という言葉です。原作者・吾峠呼世晴先生の考え方が端的に現れている一文だと思います。この考え方が根底にあるからこそ、「人の想いこそが不滅であり永遠である」という『鬼滅の刃』全体を貫くメッセージが、切実にわたしたちの胸に迫るのでしょう。

人気作品の完結と怒涛の新連載ラッシュ

週刊少年ジャンプにとっての2020年は、多くの人気作品が完結を迎えた1年でした。先ほど取り上げた『鬼滅の刃』の他にも、『ハイキュー!!』『約束のネバーランド』『ゆらぎ荘の幽奈さん』が完結。いずれもジャンプを支えた人気作品でした。

その一方で、新連載が非常に多かったのも2020年の特徴です。2020年1号(発売日は2019年12月2日)の『ZIPMAN!!』から2020年51号の『SAKAMOTO DAYS』まで、計18作品が新連載として始まりました。果たして、この中から2020年代のジャンプを担いうる作品は生まれるのでしょうか。現時点では、「次にくるマンガ大賞2020」で見事大賞に選ばれた『アンデッドアンラック』『マッシュル-MASHLE-』が読者からの人気を集め、また「ジャンプ新時代BOOSTキャンペーン」と銘打ち、この2作品が2週連続で巻頭カラーとして掲載されるなど、ジャンプ編集部からも推されているようです(連載期間が1年に満たない作品が巻頭カラーになるのは異例のことです)。個人的には、他の連載作品と異なる雰囲気の『SAKAMOTO DAYS』に期待しています。

[DAYS 1]SAKAMOTO DAYS/本誌新連載試し読み – 鈴木祐斗 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331750654102

新世代には負けられない! ベテラン勢も力を見せつける

また、2020年はベテラン勢の復帰がインパクトを残した1年でもありました。9月には『BLEACH』の久保帯人先生による『BURN THE WITCH』の短期集中連載(全4回)と、シーズン2制作の発表がありました。また、『ToLOVEる』の矢吹健太朗先生による『あやかしトライアングル』が好評連載中ですし、11月16日(月)発売の2020年50号からは、『世紀末リーダー伝たけし』『トリコ』の島袋光年先生による新連載『BUILD KING』が始まっています。筆者の予想した松井優征先生(『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』)の帰還はありませんでしたが、これは2021年中の新連載に期待することにします。

[第1話]BUILD KING/本誌新連載試し読み – 島袋光年 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331743076511

原作とアニメの新しい関係『呪術廻戦』

続いて、アニメについて。現在、『呪術廻戦』のアニメが圧倒的なクオリティーで人気を集めています。アニメ放送以降、単行本の発行部数は1,000万部を突破したとのこと。筆者も、書店で何度も『呪術廻戦』が置いてあったと思われるスカスカのスペースを目にしました。

ジャンプ作品ならではの“神”バトルアクションで注目。TVアニメ『呪術廻戦』製作プロデューサーが作品に惚れ込む理由とは?

ジャンプ作品ならではの“神”バトルアクションで注目。TVアニメ『呪術廻戦』製作プロデューサーが作品に惚れ込む理由とは?

2020.11.19

TVアニメ『呪術廻戦』映像、脚本、キャスト、OP&EDもスゴい“最強のアニメ化”の舞台裏。「これからさらに面白くなります」

TVアニメ『呪術廻戦』映像、脚本、キャスト、OP&EDもスゴい“最強のアニメ化”の舞台裏。「これからさらに面白くなります」

2020.11.26

原作に思い入れがあればあるほど、アニメ化について複雑な感情を抱いてしまうこともあると思います。しかし、このインタビュー記事を読む限りでは、『呪術廻戦』においてそれはまったくの杞憂のようです。

インタビューでは原作・芥見下々先生がどのようにアニメの制作現場に関わっているのか語られています。それは筆者の想像を大きく超えるものでした。まさか、第3話から始まった「じゅじゅさんぽ」(本編とは関係のないおまけコーナー)が描き下ろしのネームを元に作られているとは……! 原作者の深いコミットと、制作スタッフがいかに情熱を持って取り組んでいるかがよくわかる記事でした。今後がますます楽しみです。

『チェンソーマン』アニメ化&第2部掲載決定!

また、2021年2号(12月14日発売)で『チェンソーマン』が最終回(=第1部の完結)を迎え、同時にアニメ化と第2部がジャンプ+で掲載予定であることが発表されました。アニメは『呪術廻戦』と同じくMAPPAが制作を手がけるとのことで、クオリティーについてはまったく心配していません。間の取り方やキャラクターのちょっとした仕草など、まるで映画みたいだな……と感じるシーンが度々ありました。それらがアニメではどのような表現になるのか、早く見てみたいです。

第2部がジャンプ+で掲載予定、というのはすごく腑に落ちました。ジャンプ+は本誌と比べてより自由な表現を試せる場だと思いますので、藤本先生の作風には合っているように感じます。ジャンプ+で連載されていた前作『ファイアパンチ』は実際かなり尖った作風だったので、『チェンソーマン』の連載が始まってすぐの頃はどんな展開になるのかドキドキしながら読んでいた覚えがあります。振り返ってみると、藤本先生の独特の感性は十分に炸裂させつつ、少年マンガらしく決めるべきところはきっちり決めていて、それはジャンプ本誌での連載だったからこそかも知れませんね。

大好きな作品なので、これからもデンジの活躍を見られることが素直にうれしいです。第1部が終わったばかりでこんなことを言うのは恐縮ですが、早く第2部を読みたいですね!

ギャグ・コメディー枠をめぐって

席の空いていた「ギャグ・コメディー」枠は1年経った今も何が生き残るのか読めない状況で、ある意味では、毎週ジャンプを読んでいていちばん楽しいところでもあります。筆者としては、現在は『僕とロボコ』が頭ひとつ抜けている印象です。ジャンプ作品のパロディーのチョイスと匙加減が絶妙(元ネタが分からなくてもおもしろい!)で、誰かを傷つけるようなギャグは絶対に描かない、もちろんそれだけでなくきちんと読んでいて笑えるという、今の時代にこの上なくフィットした作品です。

[第1話]僕とロボコ/ジャンプ本誌新連載マンガ試し読み – 宮崎周平 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331677875279

2021年、ジャンプはどうなる?

本連載第2回で取り上げたジャンプ+との連携(電子版限定での連載)や、近年の短いスパンでの打ち切りや人気作品の引き伸ばしに対する柔軟な対応などを見るに、2020年は、ジャンプ編集部がこれからの10年やその先を見据えてさまざまなアイディアを試してきた1年だったように思います。

2021年のジャンプがどうなるのかは、正直に言うとさっぱり分かりませんが、きっとこれらのアイディアが実を結ぶ1年になるでしょう!

極私的・週刊少年ジャンプ2020年ベストエピソード

ここからは少し趣向を変えて、週刊少年ジャンプ2020年1号から52号までで、印象に残った号をランキング形式で発表します。個別の作品についてではなく、雑誌としてジャンプを捉えた時のインパクトで選びました。本誌で毎週読むことの楽しさが少しでも伝わることを願っています。なお、単行本派の方にとってはネタバレとなる要素を含みますのでご注意ください。

第3位 15号 – 『ぼくたちは勉強ができない』うるかルート完結 & パラレルストーリー発表

第3位は、『ぼくたちは勉強ができない』において各ヒロインをメインに据えたパラレルストーリーの開始が発表された15号です。

本連載第3回でも取り上げた通り、ビデオゲームならではの表現手法を逆輸入したようなこの試み。発表を見てわくわくした気持ちは、今でも昨日のことのように思い出せます。ちなみに今のところ、筆者のイチオシはあしゅみー先輩ルートです。

第2位 33・34合併号 – 『ハイキュー!!』最終回

第2位は、本連載第7回でも取り上げた『ハイキュー!!』の最終回が掲載された33・34合併号です。

日本代表としてコートに立った日向と影山。高校時代と変わらない様子で”変人速攻”を決める。ページを広く使ったコマ割りで描かれる、拳と拳を突き合わせる二人。余白には「長きに渡るご愛読、誠にありがとうございました!」というメッセージ。ああ、これでついに『ハイキュー!!』は完結したのだなあ……とページをめくるとまだ続きが!

アオリ文の後にまだ続きがあるという、ジャンプのお約束を逆手に取った演出。「最終話 挑戦者たち」というタイトルが最後に出てくる演出にもシビれました。

第1位 47号 – 『僕とロボコ』『アンデッドアンラック』まさかのネタかぶり

ギャグマンガである『僕とロボコ』と、触れた者に不幸をもたらす出雲風子(いずもふうこ)と、何があっても死ねない「不死」の能力者アンディのふたりの活躍を描いた『アンデッドアンラック』。まったく異なるジャンルのふたつの作品がどちらも「ジャンプ編集部にマンガを持ち込む」という話を描き、それらが同時に掲載された47号が第1位です。

連載作品同士が謎の共時性を発揮してしまうことはこれまでにもあったと思いますが、これほどまでにシンクロするのは相当に珍しいことではないでしょうか。このことをどう位置づければいいのか、自分でもまだ整理できていません。しかしながら、そのインパクトの大きさを考慮し、第1位としました。

月曜の朝を待ちわびて。

唐突ですが、本連載は今回で最終回を迎えます。約1年間、ジャンプに関するトピックをある程度中立的な立場からまとめるというのは、自分にとって非常に有意義な経験となりました。この連載が終わっても、ジャンプが発行され続ける限り、変わらずに月曜の朝を待ちわびましょう。

ご愛読ありがとうございました! 次回作にご期待ください!

追伸:筆者は、ジャンプについて友人と話す「ジャン談」というポッドキャストを配信しています。毎週月曜の22時からライブ配信もしていますので、よろしければぜひ!

vol.10
vol.11