世代じゃないけど観てみたい!名作アニメ“初見”レビュー  vol. 4

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2000年代の京アニが手がけた名作!“食わず嫌いで観てなかった”『CLANNAD』、その魅力を再検証する

2000年代の京アニが手がけた名作!“食わず嫌いで観てなかった”『CLANNAD』、その魅力を再検証する

「世代じゃないアニメ」観てみない? 往年の名作&最新の名作を、これまで触れる機会のなかった“若者世代&おじさん世代”がそれぞれ観た初見の感想をご紹介。今回取り上げるのは、ゲームブランド「Key」の代表作を京都アニメーションがTVアニメ化した『CLANNAD(クラナド)』。原作は2000年代に流行した「泣きゲー」の代表的な恋愛アドベンチャーゲームで、“『CLANNAD』は人生”というフレーズが有名になったほど熱烈なファンが多い伝説的作品でもあります。

本作は、とある挫折からなげやりな日常を過ごしていた不良高校生・岡崎朋也が、ある少女との出会いをきっかけに大きく成長していく物語。タイトルの『CLANNAD』には、CLAN(家族・血族)という意味が含まれており、主人公を取り巻く多くの家族の再生が描かれます。

2007年放送の第1期(全22話+番外編2話)と、2008年放送の第2期『CLANNAD AFTER STORY』全22話+番外編2話)という長編として構成された本作。今回は、当サイトでもガンダム作品などを中心に多くのアニメを取材しているライターの山下達也さんによる全話初見レビューをお届けします。

構成 / WHAT’s IN? tokyo編集部


苦手意識の強かった00年代の名作を追体験。面白さの本番は第2期から!?

まずは簡単に自己紹介から。私は1975年生まれの45歳で、アニメはロボットアニメを中心としたSF作品が好み。ただし、リアルタイムでハマっていたのは『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年~)の頃までで、それ以降はほとんど観なくなり、『マクロスF』(2008年)で再入門するまでは、TVアニメ視聴に長いブランクがありました。

『CLANNAD』は、そのブランク時期に放映されていた作品です。ただ、その名はアニメファン、ゲームファンの友人から何度も聞いており、ずっと気になってはいました。何より、アニメ再入門後、『氷菓』『日常』『響け!ユーフォニアム』といった2010年代の京アニ(京都アニメーション)の学園モノにハマっていたこともあって、今回、レビューすることを決意。「dアニメストア」を利用して全話を視聴しました。

TVアニメ『CLANNAD』キービジュアル

作品を見終えたいま、結論を先に述べておくと「なるほど、これは伝説になる作品だな」と思いました。が、正直、視聴し始めた直後は15分でギブアップしそうになったことも告白しておきます。というわけで、最初はちょっと正直な感想も書きますが、ファンの方々はお許しください……!

キャラクターの絵柄がちょっと苦手なテイストであることはあらかじめ覚悟していたのですが、ギャグ描写や、随所のアニメ的な芝居(腰に手を当ててひとさし指を立てる、空に向かって手を伸ばす、など)や演出は、当時にしても少し古くさかったのではないかと思うところ。登場人物についても、主人公・朋也の視野の狭さ、ケンカっ早さにはイライラさせられました。ヒロインたちも、往年のゲームファンがいかにも好きそうなイメージを凝縮・具現化したようなキャラクターばかりと感じてしまい、なかなか好きになれませんでした。

第1期のラスト(22話)まで観た時点では、まだそれほど引き込まれる感じでもなく……そこで『CLANNAD』好きを公言している友人に話を聞いたところ、意外な回答が。友人いわく、『CLANNAD』の物語の本番は朋也たちの高校卒業後を描く第2期であり、特にラストの7話を観てほしいとのこと。そこで、初めて「『CLANNAD』は人生」というフレーズの意味もわかるというのです。

『CLANNAD AFTER STORY』より

そうして見始めた第2期は、なるほど、たしかに第1期と比べてグッと感情移入しやすくなりました。第1期ラストで彼女のできた朋也の性格がやや丸くなり、就職した企業がアットホームな良い会社だったこともあって、大人として共感できる部分も出てきたからでしょうか。高校卒業後、就職・結婚し……という、一般的な恋愛アニメの“先”を描いた物語は今見ても目新しく、何よりグッとくるものがありました。なるほど、これは「人生」だ。

正直なところ、それぞれのエピソードがクライマックスに向け盛り上がっていく中で、置いてきぼりにされてしまったような気持ちになる場面も多かったのですが、それも視聴する側の心持ち次第なのかもしれません。この作品は、キャラクターの行動や細かい物語の整合性のようなことをいちいち細かく突っ込むよりも、愛しさや切なさ、怒りや悲しみといった、シーンごとの感情の高まりに寄り添って楽しむべき作品なのでしょう。これからもし『CLANNAD』を観ようと考えている、ちょっと頭が硬くなりつつある世代以上の方がいたら、まず「心を開け!」と伝えたいです。それだけで、この作品本来のすばらしさにグッと近づけるような気がします。

『CLANNAD』より

ちなみに私は、視聴していく中で、ヒロインの1人・風子ちゃんが可愛らしいと思えるようになり、心のドアが少し開いたような気がします。野中藍さんの演技が最高なんですよね。姪っ子を愛でるおじさん視点なんですが、幸せになってほしいと思わずにはいられませんでした。

期待を裏切らない京アニの映像美。作画監督ごとに表れる味もまた良し!

そして改めて紹介したいのが、京アニによる映像がやはりすばらしかったということ。最近の京アニ作品では、中間色を多用した繊細な色味と、そこに差し込まれる光と影のコントラストの美しさ、そしてライトリークやレンズフレアなどといった実写映画的な画作りで語られることが多いのですが、そうした“京アニ的な映像美”は本作の時点ですでに高いレベルで成立しています。

『CLANNAD』より

特に分かりやすいのが、『CLANNAD』第1話冒頭の桜並木の映像。灰色の高校生活を送っていた主人公・朋也が、後に生涯の伴侶となるヒロイン・渚と出会い、世界が色付き、物語が動き始めるシーンを、美しい桜吹雪で彩っています。京アニ作品では第1話か最終話に桜吹雪のシーンがあることがとても多いのですが、本作のそれはとりわけ素晴らしい仕上がりです。また、そうした京アニの桜吹雪を比較することで、映像表現の進化も楽しめます。特に『氷菓』第22話「遠回りする雛」の桜吹雪は、主人公がヒロインに目を奪われるシーンという共通性があるので気付きも多いはず(そういえば、主人公の声優はどちらも中村悠一さんでしたね)。

また、今の京アニ作品ではあまり見られない良さもありました。40代以上のオールドアニメファンの昔語りで「昔のアニメは作画監督ごとに絵柄が大きく変わっていて、それが味だった」みたいなものがありますが、『CLANNAD』の頃には、京アニにもまだそういった(いい意味での)作画のブレがわずかに確認できるのです。たとえば『氷菓』で大きく名を上げた西屋太志さん作画監督による回はキャラクターがより繊細に、立体的に描き込まれているように感じますし、堀口悠紀子さん作画監督回は彼女がキャラクターデザインを担当した『けいおん!』を思わせる丸みを帯びた絵柄になります(特にシリーズ後半で顕著)。

『CLANNAD AFTER STORY』より

その他、映像面では「泣き顔」が見どころ。具体的には『CLANNAD』第18話「逆転の秘策」で藤林姉妹が失恋を受け入れて大泣きするシーン、『CLANNAD AFTER STORY』第18話「大地の果て」で汐が初めて朋也に抱きしめられて泣きじゃくるシーンの大粒の涙に心を打たれました。どちらも絵コンテ・演出が女性キャラの感情爆発表現に定評のある高雄統子さんで納得してしまったのですが、ここは作品全体の中でも特に気に入っているところです。

「ルートごとに物語をリセットできない」難しい構造をクリアした構成

さらに本作では作品全体のストーリー構成の巧みさ、特に、ゲーム原作作品ならではのギミックを上手にアニメに落とし込んだ手法に感心しました。

TVアニメ版『CLANNAD』では、原作ゲームでヒロインごとに存在する「ルート」を不自然にならないようミックスして1つの物語にする方式を採っています。これは定番のやり方ではあるのですが、物語の矛盾が大きくなるという副作用もはらんでおり、特に主人公が全ての女性キャラにちょっかいを出しているかのように見えてしまう問題があります。そこで近年の他作品では、ルートごとに物語をリセットするというオムニバス形式を採用することも。たとえばゲーム原作アニメとして異例の大ヒットを記録している『Fate/stay night』シリーズでは、3つのルートをそれぞれ個別にアニメ化するというやり方で、主人公のヒロインに対する想いを破綻なく描いています。

『CLANNAD』より

しかし、『CLANNAD』にはその方式を採れない理由がありました。原作ゲームでは、ヒロインのルートを正しく攻略すると、それを証明する「光の玉」がスタート画面に増えていき、全ての玉を集めると真のエンディングに到達するという形式になっています(と、前述の友人に教えてもらいました)。この光の玉は「幸せ」の象徴で、たくさんの玉を集めることでどんな願いでも叶えることができるのだとか。たしかに物語中、それを示唆するようなセリフや展開が細かくちりばめられています。そして、それゆえに、物語の主体は同一の存在でなければならず、ルートごとに物語をリセットするということができなくなってしまったのです(ゲームであれば主体=プレーヤーになるため、リセットしてもあまり気になりません)。

そしてこの光の玉のギミックは、第2期『CLANNAD AFTER STORY』以降、明確に押し出されるようになり、それによって物語がどこに向かっていくのかが分かりはじめてきます。私はこのあたりから視聴が楽しくなってきました。これは途中で気がついたことですが、朋也が作中で誰かを幸せにすると、各話冒頭に表示されるタイトルカットに光の玉が書き加えられていく仕掛けは「おお……!」と感心した部分です。

この時代の作品ならではの良さに納得。今度は劇場版も観てみたい!

近年、さまざまな事情から物語を長期スパンで描く作品が減っています。しかし、1~2クールで描けることには限界があり、あまり凝ったことはできないというのが実情。その点、『CLANNAD』は計44話もかけてしっかりと朋也たちの物語(青春とその後)を描き切りました。さらにアニメ本編では描くことができなかった「ルート」(例:別のヒロインと付き合い始めた、など)を描いた番外編も計4話用意。こんな贅沢なアニメは今後なかなか登場しないかもしれません。

TVアニメ『CLANNAD AFTER STORY』キービジュアル

本作はキャラクターデザインや演出などの“時代性”が極度に強いため、今観るとさまざまな部分に古さを感じることも否めません。ただそれだけに、この時代に、このスタッフ、キャストでしか作れなかった作品でもあると感じました。シュッと上手に、コンパクトにまとまった佳作アニメが多い現在では考えられないパワーと情念に満ちあふれています。心底この作品に惚れ込むファンが多いと言うことも納得できました。

長らく食わず嫌いで観ていませんでしたが、観てよかった(正直、本当に最初はどうなるかと思いましたが)。またそう遠くないうちに、今度は最初から「心を開いて」観直してみようと思っています。ちなみに本作には劇場版もあるとのこと。当初は総集編か何かだと思っていたのですが、こちらは東映アニメーション制作による全く別の作品なのだそうですね。しかも『あしたのジョー』や『エースをねらえ!』で知られる出崎統監督が手がけているらしいと聞いてすでに興味津々。次はこちらも観てみるつもりです。

(文 / 山下達也)

TVアニメ『CLANNAD』

動画配信サービス各社にて配信中

【スタッフ】
原作:Key/ビジュアルアーツ
監督:石原立也
シリーズ構成・脚本:志茂文彦
キャラクター原案:樋上いたる
キャラクターデザイン・総作画監督:池田和美
アニメーション制作:京都アニメーション

【キャスト】
岡崎朋也:中村悠一
古河 渚:中原麻衣
藤林 杏:広橋 涼
藤林 椋:神田朱未
坂上智代:桑島法子
伊吹風子:野中 藍
一ノ瀬ことみ:能登麻美子
春原陽平:阪口大助
古河秋生:置鮎龍太郎
古河早苗:井上喜久子
相楽美佐枝:雪野五月
宮沢有紀寧:榎本温子

オフィシャルサイト

TVアニメ『CLANNAD AFTER STORY』

動画配信サービス各社にて配信中

【スタッフ】
原作:Key/ビジュアルアーツ
監督:石原立也
シリーズ構成・脚本:志茂文彦
キャラクター原案:樋上いたる
キャラクターデザイン・総作画監督:池田和美
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:竹田明代
撮影監督:山本倫
設定:高橋博行
音響監督:鶴岡陽太
音響制作:楽音舎
音楽:折戸伸治、戸越まごめ、麻枝准
アニメーション制作:京都アニメーション

【キャスト】
岡崎朋也:中村悠一
古河 渚:中原麻衣
古河秋生:置鮎龍太郎
古河早苗:井上喜久子
芳野祐介:緑川光
藤林 杏:広橋 涼
藤林 椋:神田朱未
坂上智代:桑島法子
一ノ瀬ことみ:能登麻美子
春原陽平:阪口大助
相楽美佐枝:雪野五月
宮沢有紀寧:榎本温子

オフィシャルサイト

Blu-ray & DVD

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■商品概要■
Blu-ray  各¥18,500(本体)+税
DVD   各¥9,000(本体)+税
発売元:TBS・光坂高校演劇部/販売元:ポニーキャニオン

©VisualArt’s/Key/光坂高校演劇部

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