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お米を育てて強くなる!『天穂のサクナヒメ』稲作とアクションが最高のとんでもないゲーム爆誕

お米を育てて強くなる!『天穂のサクナヒメ』稲作とアクションが最高のとんでもないゲーム爆誕

発売まえから各所で、ビジュアルのかわいらしさやゲームのテーマが話題になっていた『天穂(てんすい)のサクナヒメ』。発売後は犬と猫のしぐさがかわいいことや本格的な稲作を経験できることなどが瞬く間に評判となり、Twitter上では毎日稲作についての話題がのぼるようになった。なんでも農林水産省やJAのホームページが最有力攻略サイトになるとかなんとか……。しかし驚くことに本作は稲作シミュレーションゲームではない、和風アクションRPGなのだ。武神と豊穣神を両親に持ち、その能力を受け継いだ女神サクナヒメはより良いお米を作るほど強くなる。稲作で力をつけて鬼が湧き出る鬼島の謎を探る、それがサクナヒメに課せられた使命なのだ! 今回の記事では、『天穂のサクナヒメ』がこれほどまでに人気となった理由を実際にプレイしながら確認し、主に稲作についてドドンと紹介していきたいと思う。

文 / 大部美智子


ダ女神サクナの島流し生活が開幕

『天穂のサクナヒメ』の舞台は、神々の住む“頂の世(いただきのよ)”と人々が住む“麓の世(ふもとのよ)”からなる“二つ世(ふたつよ)”という世界。人は神を畏れ敬い、神はその信心で力を得て人に利益を賜る。神代の時代を思わせるけれど、我々の知る日本神話とは違うオリジナルの世界のようだ。
主人公のサクナヒメは武神タケリビを父に、豊穣の女神トヨハナを母に持つ生粋の女神。その生まれから絶対的な地位が約束されているがゆえに日々怠け、尊大な態度で振る舞い、二つ世でいちばん偉いとされる主神カムヒツキにへつらい、宴と聞いては酒浸りになるダメな女神……通称ダ女神なのだ。

天穂のサクナヒメ WHAT's IN? tokyoレビュー

▲こんなにかわいらしいのに中身がひどい。サクナヒメの右にいるのはタマという剣霊。つねにサクナヒメといっしょにいるお目付け役のような存在

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▲女神ココロワ。サクナヒメはココロワのことを友だと言っているけれど、彼女は困惑気味

ある日、頂きの世にある“御柱都(みはしらのみやこ)”へ人間が迷い込んだところから物語は始まる。本来なら交わることのないふたつの世界が“天浮橋(あめのうきはし)”によって繋がれ、田右衛門(たうえもん)、きんた、ゆい、ミルテ、かいまるの5人は神々の世界に来てしまったのだ。宴の出番まで暇を持て余していたサクナヒメが追い払ったはずだったが、飢えと疲労に苦しむ田右衛門たち5人は食料を求め御柱都に忍び込む。

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▲人間たちを追い出さないと立場が危うくなると考えたサクナヒメ

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▲人間を追っている最中にうっかり、カムヒツキへの捧げものがある建物“御饌殿(みけでん)”を爆発させてしまう……

天浮橋を渡って来た田右衛門たちだったけれど、つぎにいつ天浮橋が現れるかはカムヒツキでもわからない。人の世に戻ることができない田右衛門たちはサクナヒメといっしょに騒動の責任を取ることになり、頂の世にありながらカムヒツキの支配が及んでいない、鬼がつぎつぎと生まれるという謎に包まれた鬼島の調査を命じられる。鬼島は父タケリビが悪神“大龍(オオミズチ)”討伐に出向き、この地に住む母トヨハナと出会った島でもある。サクナヒメは謎が解明するまで御柱都を追放、いわゆる島流しの刑に処された。

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▲島流しはかわいそうだけど、そんな境遇もなぜだかサクナヒメを魅力的に見せるのだ。キャンキャンコロコロと喋るサクナヒメが本当にかわいいので、記事トップやオフィシャルサイトにある動画をぜひ見てほしい

こうしてサクナヒメと5人の島流し生活が始まったけれど、人が住んでいない鬼だらけの島で調査をしながら暮らしていくには、自給自足の生活を始めなければいけないのだった。
この冒頭部分だけでもおなかがいっぱいになるぐらいサクナヒメのかわいさが詰まっている。尊大な態度、神なのに人間のせいにする器の小ささ、くるくると変わる表情……すべてが小憎らしくてかわいい。怠惰でぬるい生活しかしてこなかったサクナヒメがこれからの厳しい生活に身を投じる姿を想像すると、「かわいそう」という感情と「おう、がんばりなー」という生暖かい感情が芽生えてくる。他人事のような表現になってしまうけれど、新生活をがんばってほしい。

お米は力! ゼロから始める稲作生活

鬼島には母トヨハナが住んでいた小さな家があったので、そこで暮らすことになったサクナヒメたち。しかし神と人間が生きていくためには、何がなくてもまず食べ物がないと始まらない。幸い家のまえに田んぼがあり、田右衛門が種籾(たねもみ)を持っていたので稲作をすることになった。ただし米は実るのに半年ほどの時間がかかるうえに、それだけ食べていても生きてはいけない。島はあちこちに鬼が出るので探索と食べ物や武器などの素材採集はサクナヒメが行い、稲作は人間のなかでは年長者である田右衛門に任せようということになった。

▲アクションパートは横スクロール画面で島を探索し、雀や兎の形をした鬼を倒したり食べ物や鉱石などを採集したりする。一部の鬼の肉は食材になる

▲ときには強敵と戦うことも! アクションパートについては次回の記事で詳しく紹介する

初めての探索から戻ってきたサクナヒメだったが、そこで田右衛門のとてつもない不器用ぶりを知ることになる。以前もうっかり畔を破壊したり作物を枯らしたりしたらしい。これでは田んぼを任せられないので、稲作もサクナヒメ主導で行うことになった。そもそもサクナヒメは武神と豊穣の神の子で、それぞれの素質を受け継いでいる。彼女に任せるのが最適と言えるかもしれない。ここからが稲作生活の始まりだ!

▲何をしてもうまくいかない田右衛門。しかし穏やかでまじめな性格で、元々興味があった稲作の知識は豊富に持っていた。田右衛門のアドバイス、母トヨハナが残した農業の覚書を元に稲作を行うのだ

▲田んぼには、水を入れる樋と水を抜く樋がある

これまで何もせず、両親の威光を笠に着てぬくぬくと育ったサクナヒメ。何もかもが初めてなのだ。私も幼いころに田植えや稲刈りなどをひととおり体験したことはあるけれど、知識はあやふや。最近では某農作業系アイドル番組から知識を得るのみとなっている。日本の食文化の土台であり、これまでの人生でずっと寄り添い私の血となり肉となってくれていたお米。私たちはいったいお米のことをどれだけ知っているのだろうか。とにかく最有力攻略サイトである農林水産省やJAのホームページは見ずに、自らが持っている知識だけでお米作りと向き合ってみることにした。
1年目は種籾(たねもみ)から芽が出て、ある程度育った稲の苗を田んぼに植えるところから始まる。一見簡単そうな作業だが、稲作の工程がリアルで忠実な本作においては困難を極めるのだ。

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▲まずは田んぼに水を入れた……はず。実際に田植えをしたときも某アイドルたちが苗を植えているときも、田んぼはぬかるんでいた。しかしどの程度ぬかるんでいただろうか。思い出せない。加減がわからず、なみなみと水を入れてしまった

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▲水を張った田んぼに入ると水紋が綺麗に広がり、得も言われぬ郷愁に駆られる

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▲PlayStation®4版では△ボタンで苗を手に取り、□ボタンを長押しして植える。植えたところに黄色い点が表示されるが、等間隔で植えることがいかに難しいかよくわかる

苗を植えるとき、サクナヒメはうしろ向きで移動する。そうじゃないと苗を踏んでしまうので、苗を植えたら少し下がってまた苗を植える……という動作のくり返しになる。Lスティックをまっすぐ下方向に押しているはずが少しずつ移動する角度がずれたり、それを直そうと体の向きを変えると予想外のところに植えてしまったり。等間隔で綺麗に植えたいのにままならないもどかしさ……! 植え直すことはできないので慎重に植えていく。ちなみに作業を田右衛門に任せることもできるが、お米の品質が下がってしまう。
これまで数々の育成シミュレーションゲームやサバイバルゲームで農作物を育ててきたけれど、群を抜いた細かさと難しさだと思う。一般のゲームではフィールドを1マス耕すためにコントローラーのボタンをポチッ、種を蒔くためにもポチッ、水をやるためにジョウロを手に持ってからポチッ……のようにやりたいことがワンアクションからツーアクションで済み、その積み重ねで作物は育っていく。どちらかというとオートマチックな作業を監視しながら、プレイヤーの判断が加味されていくスタイルだろう。
『天穂のサクナヒメ』は間違いなく完全手動式。だからこそ、「絶対においしいお米を作ってやるのだ」という強い意志の元で丁寧に作業をこなし、黙々と田んぼに向かい合ってしまうという力があるのだと思う。どちらがいいとか悪いとか言う話ではなく、本作の稲作がそういったいぶし銀のようなこだわりを持っていることを知っておいてほしい。

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▲そ、疎植とは!? 苗はただ植えればいいのではなく、植えつける密度も大事なのだと知る。今回はもうちょっと詰めて植えてもよかったみたいだけど、これがどう影響するのかいまはまだわからない

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▲水は多すぎてもダメ。たしかに根が張っていないときに水がたくさん入っていたら、苗が浮いてしまいそうだ

ここで田んぼの水量について注目。上の画像で「植えつけ後の水の量は足首が浸かる程度」と言われたので水の量を調整する。排水する樋を開けて水を流すのだけれど、どのタイミングで最適な量になるのかがわからない。時期が来れば田右衛門が教えてくれる、というわけでもない。はて。
樋を開けてしばらく放っておいたら水がなくなっていた……おやぁ? 目盛りがあるわけではないので水量がわかりにくいけれど、排水すれば確実に減り、水を入れれば確実に増えていく。となるとすることはひとつ、実際に田んぼに入って測るのだ!

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▲田んぼに入りながら排水用の樋を開けると、膝の高さまであった水が徐々に減っていく様子が確認できた!

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▲数分経つと足首が出る程度の水位に! ここで樋を閉める

この一連の流れが本当にリアルで、思わず膝を叩いてしまった。またリアルタイムで水は減っていく(蒸発している?)ので、適宜水量を調整しなくてはならない。これはとんでもないゲームが登場したものだ。しかもこの田植えは稲作において初期段階の作業で、このあとに雑草との戦いや施肥(せひ)、中干し、収穫、稲架掛け(はさかけ)、脱穀、籾摺りなどの作業が待っている。雑草は見つけしだい引っこ抜き、肥料は与えるタイミングや成分を考え、時期や天気によって水量を調整し、ザックザックと稲を刈ったり、干したり、稲から籾を取るためにガッシガッシと動き、籾刷りでは杵と臼でトントコ叩かなければならない。お米作りはワンボタンではできないのだ……! 賢明な方ならすでに『天穂のサクナヒメ』の稲作への桁違いの熱量を感じ取ってもらえることだろう……。

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▲肥(こえ)、いわゆる肥料を熟成させるための肥溜め。稲の生長具合によって成分を調整するといいらしい

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▲肥の原料はもちろん厠から汲み取った……

田植え以降のこだわりどころについてもひとつずつ紹介していきたいところだけれど、説明しだすと際限がないほどあちこちにこだわりが詰められているので、残念だけれど割愛。手間暇かけて育てた稲は秋になると収穫できる。そこでこの年のお米の出来がわかり、その質によってサクナがパワーアップするのだ。

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▲実るほど、頭を垂れる稲穂かな。なんて美しい光景だろう

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▲半年以上かけてやっと完成! 探索に出ている時間も含まれるので大まかだけれど、リアルで1時間強かかった。感慨もひとしお

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▲お米の出来によってステータスの伸び具合が変わる。食せば、ほかの効果も!

田植えは毎年行うものだけれど、つぎの年も同じ田植えが待っているとは限らない。2年目は植えつけまえに田んぼを整える“田起こし”という作業が始まる。石を取り除き、冬の間に固くなってしまった土を鍬で耕して柔らかくするのだ。

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▲鍬を入れると土のグラフィックに変化があるけれど、これで耕せているのか? 鍬を1回入れただけではダメかもしれないので、同じ場所を4回ほどザックザックと耕す。ゲーム内時間の丸一日を費やしてやっと完了……

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▲耕していると、“地力視”という豊穣の神ならではの能力が開花。耕せている箇所は明るく光るようになった! 鍬を1回入れるだけでも耕せていたようだ

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▲稲作2年目ともなると、 “田植えの勘”という能力が開花。植えつけに最適な間隔が見えるようになった! が、目安のとおりに植えつけられるかどうかはまた別の話なのだ……

天候や水温などの気象条件によって稲の生育具合が変わったり、施肥の内容によって害虫が増えたりなど、リアルと同様に同じお米は二度と作ることができない。それゆえに毎年丁寧に、よりおいしくなるように稲を育てるのだ。向き合えばそのぶんしっかりとお米に反映されるこの細かさが、私を田んぼに誘うのだ……。つい夢中になってお米を育ててしまう。

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▲年を追うごとにお米の品質を表す格が徐々に向上し、収穫数も増えていく

作中で田右衛門が田植えのときは唄を唄うと言っていた。つらくてしんどい作業をしていると誰しも不平不満が口をついて争いになってしまうから、そんなときは“田植唄”を唄うのだと。このエピソードにはハッとさせられるものがあった。田植えは長時間中腰で前かがみになりながら広大な面積に苗を植えつけていく作業で、私も昔やったときはつらかった思い出がある。お米農家の人はきっと慣れているんだろうなんて思っていたけど、慣れていてもつらいものはつらいのだ。このエピソードをゲームに組み込んでいることからも、お米や稲作というものに真摯に向き合った作品なのだと改めて感じた。

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▲すぐにケンカしてバラバラになりがちなこどもたち(サクナヒメは大人だが)をまとめてくれる、人格者の田右衛門

『天穂のサクナヒメ』はあるのがあたりまえだと思ってしまっていたお米のありがたみや、お米を作ってくれている農家の方々への感謝を思い出させてくれる。なんだこのゲーム。すごいぞ。お米や稲作の知識が深まるし、義務教育に組み込んでもいいのではないか。
大事なことなのでもう一度言うけれど、『天穂のサクナヒメ』は稲作シミュレーションゲームではない、和風アクションRPGなのだ。しかし稲作にものすごく力を入れて作っており、稲作パートのさわりだけ紹介していたつもりがこのボリュームの記事になってしまった。次回の記事では本作のアクションRPG部分について紹介。作りこまれた稲作パートについ目がいってしまうけれど、サクナヒメが飛んだり跳ねたり攻撃したりするアクションパートは爽快感MAXなのだー! ほかに田右衛門以外の登場キャラクターや道具、食事についても紹介予定!

フォトギャラリー

■タイトル:天穂(てんすい)のサクナヒメ
■企画・開発:えーでるわいす
■発売元:マーベラス
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™
■ジャンル:和風アクションRPG
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2020年11月12日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 4,980円+税
PlayStation®4ダウンロード版デジタルデラックス 6,980円+税


『天穂のサクナヒメ』オフィシャルサイト

©2020 Edelweiss. Licensed to and published by XSEED Games / Marvelous USA, Inc. and Marvelous, Inc.