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『BEASTARS』アニメ第2期はここに注目すべし! 「動物のヒューマンドラマ」が見せる「関係性」の妙

『BEASTARS』アニメ第2期はここに注目すべし! 「動物のヒューマンドラマ」が見せる「関係性」の妙

2021年1月より、アニメ『BEASTARS』第2期が放送されます!
動物が人間のように友情と恋愛に生き、そして肉食と草食の壁に悩む姿を描く、「動物のヒューマンドラマ」たる本作。2016年に連載開始した原作は見事「マンガ大賞2018」で大賞を受賞。2019年秋アニメとして放送された第1期も、人形劇をモチーフにしたOP映像が話題となるなど、大好評でした。

本記事ではその第2期を楽しめるよう、注目ポイントを紹介してみたいと思います。
第1期でレゴシの成長を描いた本作は、第2期でいよいよ本作の原点、すなわちアルパカ殺しの犯人捜しに入っていきます。そしてその犯人捜しに、第1期から続くレゴシの成長、さらには彼を取り巻く動物たちのドラマがからみあっていく。最後にはそれらが一本の線となって、やがて私たちは、花火が弾けるような最高のクライマックスを目にすることになるのです!

文 / いさお


まずはアニメ第1期のストーリーから振り返っていきましょう。

第1期のストーリー振り返り

レゴシはハイイロオオカミの高校生。オオカミらしい肉体とは裏腹に、穏やかでおとなしい性格をした彼は、演劇部の裏方として目立たず活動していました。
『BEASTARS』のストーリーは、そんなレゴシに2つの大きな出来事が起こるところから始まります。

1つ目は、演劇部で「食殺事件」が起こったことです。「食殺」とは、肉食動物が草食動物を食べてしまう、この世界でタブーとされている犯罪。演劇部のエースであるアカシカのルイが部を引っ張りますが、部内で食殺事件が起き、そして犯人が分からない異常事態に、演劇部の動揺は広がっていきます。

2つ目は、レゴシがウサギのハルと出会い、恋をしてしまったことです。レゴシは初めて「草食」と交流し、しかも愛してしまうことで、草食を守ることの尊さを強く認識します。しかし、それだけではありません。彼はウサギのハルに食欲を感じてしまう自分の肉食性を知り、その恐ろしさに苦しむようになるのです。自分はハルのことが好きなのか? それとも、ただハルを食べたいだけなのか? レゴシは、自らの本能に悩みます。

そんな中、ライオンの反社勢力「シシ組」が、ハルを誘拐する事件が起こります。この世界には、草食の肉が流通する「裏市」というものがあり、肉食と草食の共存が謳われているにもかかわらず、その存在がもはや公然の秘密となっている。シシ組は、その裏市を取り仕切る存在です。
ハルが食べられてしまう、そう考えたレゴシは一念発起し、シシ組のアジトに乗り込みます。ライオンたちと戦う中で、自分はハルを「食べたい」のではなく、シンプルに「好き」なのだと確信したレゴシは、その確信を強さに変えてシシ組を撃破。ハルに告白し、この社会にも本能にも負けない、強い男になることを約束するのです。

第2期の注目ポイント

アルパカ殺しの犯人は誰?

そんなストーリーに続く第2期。その1つ目の注目ポイントはずばり、アルパカのテムを食べた犯人です。
シシ組との抗争で一皮むけたレゴシはいよいよ、テムを食殺した犯人を捜し始めます。
犯人は演劇部で肉食の誰か。それだけはわかっているけど、犯人が誰なのかはわからない。これはつまり、レゴシの部活仲間の誰かが、人一人を殺しているにもかかわらず、表情やふるまいを変えずに平然と高校生活を続けているということです。

しかしなぜ犯人は、高校構内で食殺するというリスクをわざわざ犯したのでしょうか? 肉を食べたいだけなら、それこそ裏市に行ってこっそり肉を買えばいい。テムと仲違いをしただけなら、わざわざ死なせるまでしなくてもいい。そんな犯人の内面の謎も、この『BEASTARS』という作品はちゃんと、丁寧に語ることになるのです。
フーダニット(誰がやったか?)だけではなく、ホワイダニット(なぜやったか?)にも注目して、犯人のドラマを受け止めてみてください。

ルイはどうなったの? ~草食の苦しみ~

アニメ第1期で残ったもう1つの大きなドラマが、ルイの物語です。
ルイは、レゴシがハルを救った後にシシ組のアジトに侵入、シシ組のボスを銃殺します。そして、「角以外残しちゃだめだ、感謝して食えよ」と自らを食うようにライオンたちに促し、そのまま行方不明となるのです。
その後ルイはどうなったのでしょうか? それも、第2期で注目したいポイントです。

ルイは「演劇部の部長」以上の大きな責務を、自らに課していました。それは、肉食の草食に対する本来的な支配関係を、克服することです。
この世界では表向きは、肉食と草食の平等な共存が謳われている。しかしどう繕っても、結局肉食は草食を食べる存在であり、その上下関係は草食たちを見えないところで虐げている。だから、それを正さなければならない。そして、そのために自らが草食の強さを示すシンボルとならなければならない。そう考えて、彼は新歓公演の「アドラー」を熱演するのです。
このルイの強い思いの背景には、彼の重い過去があります。彼はかつて裏市で、食用の商品として育てられていました。言葉も話せず、まさに動物のような扱いを受けていたのですが、それを今の父に拾われ、努力の末に学園のスターに登り詰めているのです。彼の原点には、肉食が草食を虐げ、弄び、食らう凄惨な記憶がある。だからこそ、自分がそんな世界を変えてやる。そう決意しているのです。

しかし、ハルの誘拐をきっかけに、彼はこの世界、そして自らの実像を思い知ります。
ルイはライオンの市長から、ハルの誘拐を隠蔽するよう説得されるのです。市長の威光によってこの町は平和を維持できているのに、ここでシシ組の悪行が周知の事実になったら、ライオンのイメージ、ひいては市長のイメージの悪化につながってしまう。町全体の平和のためには、ハル一人の犠牲はやむを得ない、というのです。
そう、この世界は実は、必ずしも正しくあろうとはしていないのです。一見平和が保たれてさえいれば、草食が肉食に虐げられてもいい。いやむしろ、一部の草食が虐げられ、肉食がそれによって裏で食欲を満たしているからこそ、肉食は表の世界では平和に草食と共存できている。この世界は、一部の弱者が虐げられているおかげで、むしろうまいこと回っている。ルイがビースターとして引っ張ろうとしていた世界は、そういうものだったのです。
そして、ルイにはその世界をひっくり返す力がありません。いくら学園のスターであっても、彼は一高校生にすぎない存在であり、また、シシ組に単身乗り込んでライオンに打ち勝つ肉体も、彼は持ち合わせていません。
ルイはそんな事実に直面し、ハルの救出を諦めます。彼は変えるべき世界を見失ったどころか、愛する人一人さえ、救うことができないのです。

しかし、そのルイの無力感を傍目に、レゴシがハルの救出をやってのけてしまうのです。レゴシはその強い肉体を活かして、シシ組の構成員をなぎ倒し、ハルを一瞬のうちに救ってしまいます。
この事実を目にしたルイの心中は、想像を絶するものでしょう。彼は、肉食が草食を虐げるこの歪んだ世界を変えるべく、努力を重ねてきた。でも、世界にその歪みを変える気はなく、草食である自分にはその歪みを突破する力もない。一方レゴシは、自分と違って肉食であるからこそ、肉食が草食を虐げる歪みを簡単に突破してしまう。そして、愛する人もレゴシとくっついてしまう。では、ルイのこれまでの人生は、いったい何だったというのでしょう?

そんな失意に沈んだまま、ルイはシシ組に食べられてしまったのでしょうか? もしそれを逃れることができたとしたら、彼はこれから、どのように生きる道を見出したらいいのでしょうか?
ルイのふるまいには、ある意味レゴシ以上に、この『BEASTARS』という作品のテーマが凝縮されています。ぜひ、彼のこれからに着目してみてください。

レゴシはこれからどうなっていくのか? ~肉食の苦しみ~

ハルをシシ組から救出し、強い男になることを宣言したレゴシ。ハルに対する気持ちが「食欲」ではなく「愛」であることを確信するに至った彼ですが、そのもう少し広いスタンス、すなわち「草食」一般といかに向き合っていくか? という点では、彼はまだ悩みの途上にあります。

「常に死と隣り合わせの動物の気持ちなんて知りもしないくせに」

そう、ハルはかつてレゴシに言いました。レゴシが草食を思う気持ちは本物です。でも、肉食と草食には、「食べる立場」、「食べられる立場」という絶対に動かせない関係がある。その点でレゴシは、草食の考えること、感じることを、本当の意味で理解することはできないのです。
また、彼は裏市をはじめとする世界の歪みに強い憎悪を感じ、これを正したいと思っています。しかしその歪みを作っているのは、他でもなくレゴシが属する肉食です。そしてレゴシの中にもまた、その憎むべき肉食性は確実に内在しているのです。
そう、レゴシにとって「肉食であること」は、原罪のようなものなのです。自分は肉食だから、気を抜いたらいつでも草食を害しうる存在である。だから、耐えず自分を戒め続けることでしか、自分は草食と接してはならない。そうレゴシは考えるのです(なお、この考え方に対する対置として導入されるのがレゴシと同じハイイロオオカミのジュノです。彼女はレゴシが大好きですが、肉食の強さゆえの優しさを強調するその考え方は、レゴシと正反対です)。

だからこそレゴシは、「草食」として世界を変えようとするルイに、強い憧れと羨みを抱くことになります。演劇部の活動を通して草食の威信を知らしめ、自分より明らかに強いレゴシとベンガルトラのビルの喧嘩も華麗にいなしてしまい、密かにテムの死に心を痛め、そしてハルと愛し合う関係にあるルイ。その優しさを、強さを、レゴシは手にすることができない。自分には、その恐ろしい身体で誰かを傷つけ、屈服させることでしか、問題を解決することしかできない。肉食ゆえの野蛮さから逃れられない。だからこそ、他でもなくルイが先頭に立って世界を変えることに、大きな意義を見出すわけです。

『BEASTARS』とはどんな物語なのか

『BEASTARS』原作20巻書影

そう、ここまで考えると、この『BEASTARS』という物語作品が一体何を描こうとしているのか、その核の部分が徐々に見えてきます。『BEASTARS』とは、草食と肉食がわかりあえない世界で、草食のルイと肉食のレゴシが、強い両片思いの関係になっていく物語でもあるのです。
ルイは、草食である自らの生の意味を見失いかけており、肉食であるレゴシの強さと勇気を認めざるを得ない。
転じてレゴシは、肉食である自らを罪人と考えており、草食であるルイの活躍を望んでいる。
お互いがお互いのことを思っている。だけどお互いが自分自身を肯定できないから、相手の思いを素直に受け入れることができない。そんなどうしようもないかみ合わなさが、2人の間にある。これが、『BEASTARS』という作品の妙なのです。

では、ルイとレゴシはいかにして、その「かみ合わなさ」を脱却していけばいいのでしょう? レゴシはいかに、自分の肉食ゆえの「原罪」性と折り合いをつけ、ルイへの一方的な羨望を克服していくのか。ルイはいかに、自分の草食ゆえの劣等感と折り合いをつけ、レゴシを真正面から認めていくことができるのか。この点こそが、アニメ第2期が描く最大のドラマになっていきます。

そしてそのドラマの核が、食殺事件の犯人のドラマと触れ合ったとき、この『BEASTARS』という作品はクライマックスに到達します。それは、登場人物がそれぞれ思い悩んだ末に到達する答えが、最後の最後できれいに重なり合う、美しい収束です。ぜひその終わりを、あなた自身の目で見届けてほしい一心です。

TVアニメ『BEASTARS』第2期

2021年1月6日よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて毎週水曜日24時55分から放送開始
Netflixにて2021年1月5日独占配信開始
2話~:毎週木曜日配信(日本先行)

その他各局でも放送!
関西テレビ
東海テレビ
テレビ西日本
北海道文化放送
BSフジ

<STAFF>
原作:板垣巴留(秋田書店「週刊少年チャンピオン」連載)
監督:松見真一
脚本:樋口七海
キャラクターデザイン:大津 直 
CGチーフディレクター:井野元英二
美術監督:春日美波 
色彩設計:橋本 賢
撮影監督:蔡 伯崙
編集:植松淳一 
音楽:神前 暁(MONACA)
制作:オレンジ

<CAST>
レゴシ:小林親弘
ハル:千本木彩花
ルイ:小野友樹
ジュノ:種崎敦美
ジャック:榎木淳弥
ミグノ:内田雄馬
コロ:大塚剛央
ダラム:小林直人
ボス:下妻由幸
カイ:岡本信彦
サヌ:落合福嗣
ビル:虎島貴明
エルス:渡部紗弓
ドーム:室 元気
キビ:井口祐一
シイラ:原 優子
アオバ:兼政郁人
エレン:大内 茜
ミズチ:山村 響
レゴム:あんどうさくら
ピナ:梶 裕貴
ゴウヒン:大塚明夫
市長:星野充昭
オグマ:堀内賢雄
イブキ:楠 大典
フリー:木村 昴

<オープニングテーマ>
YOASOBI「怪物」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)

オフィシャルサイト
https://bst-anime.com/

オフィシャルTwitter
@bst_anime

©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会