LIVE SHUTTLE  vol. 433

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マオ from SID 様々な伝えたい想いを胸にファンとの再会を果たした“Weekly Live”

マオ from SID 様々な伝えたい想いを胸にファンとの再会を果たした“Weekly Live”

マオ from SID
Weekly Live 2020 〜再会〜
<2nd SHOW>
2020年11月18日@SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

客席は定員の半分、常時マスクを着用で声出しも座席を立つこともできない。それでも「会って伝えたいことがある」。そんな想いが、マオからあふれ出た“Weekly Live 2020 〜再会〜”だった。
シドのヴォーカル・マオが、自身のソロプロジェクトである“マオ from SID”として、新型コロナウイルスに対する最大限の対策を講じたなか、観客を迎え入れてのリアルライブをついに再開。今年予定していたソロでのライブツアーがすべて延期となって以降、夏にはオンラインで配信ライブを実施したものの、観客と対面してステージを行うのは今年のバレンタインライブ以来である。そうして、10月7日から東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREを拠点にスタートした今回のライブ。蓋を開けてみると1日2回公演の各セットリストの変更はもちろん、週ごとにサックスやフルート、パーカッションなどバンド編成まで変えて、毎週同じステージに立ち続けるという自身にとっても非常にチャレンジングな構成になっていた。そのなかから、ここでは11月18日、同会場で開催した追加公演のファイナル<2nd SHOW>の模様をレポートする。

取材・文 / 東條祥恵


80~90年代の日本の歌謡曲からピックアップしたカバーソングを絶妙な歌声とアコースティックアレンジで楽しませていく

この日はいつものおなじみのメンバー、nishi-ken(Bandmaster&Key)、木島靖夫(Gt)、門脇大輔(Vn)をサポートに迎え、マオは細身のスーツスタイルでエレガントにオンステージ。手を広げ、1階席から2階席まで視線をゆっくりと回したあと、今回の“Weekly Live”では1度も歌っていなかった安全地帯の「ワインレッドの心」で幕開け。自身のオリジナル曲は少なめ、毎回80〜90年代の日本の歌謡曲からピックアップしたカバーソングを絶妙な歌声とアコースティックアレンジで楽しませていくソロライブ。この曲は、マオのモノローグ風な歌い方とガットギターのカッティングで余韻を残し、情感を揺さぶる2番の歌い出しのアレンジが秀逸だった。続くUAの「ゼリー」は、今回のライブを通して様々な編成で歌い続けてきたナンバーだけあって、ねちっこく絡んでいく官能的な歌詞を物憂げな表情と息遣いで歌うアクトは、まるでオリジナルソングを歌っているような心地よさ。2番で音が一瞬無音になるタメのパートを作り、夜のさらに深い時間帯へと誘われるような息のあった演奏も素晴らしかった。

聴き手をハートフルな気持ちにさせて、ロマンチックな高揚感へと導いていったラブソング3連発

2曲を歌い終えたところで挨拶をした後、マオは今回のライブ開催について「このコロナ禍な時期、何ができるのか。そこで見つけた答えがこの“少人数で集まる”というものでした」と説明。「それにみんなが応えてくれて心強かったし、うれしかった。ありがとう」と観客に素直な気持ちを届けた。そして「この曲はすごく久しぶり。2部でちょっとハスキーになった声がこの曲とどう混じっていくのか楽しみ」と話したあとに、始まったのはオリジナル曲「マニキュア」だった。温もりある色彩感を生み出すイントロからシーンは少し遅めな朝へとチェンジ。マオは右手親指をポケットに掛け、オシャレなビートをやわらかな声で乗りこなしていく。“出会った 水曜日”(ライブ当日も水曜日!)でハッとさせ“大好きより 心地いいところだけ 選んで 一緒にいよう”で観客をときめかせたあとは、優しいフェイクでオーディエンスのハートをぎゅっと包み込み、「最後の恋」へと展開。この偶然の出会いは必然、泣きたくなったらこの胸に帰っておいでと、心に沁みわたるようなフレーズを次々と語りかける。そして極め付けは“振り返ると いつも君が 笑ってくれた”と藤井フミヤの「TRUE LOVE」。サビの歌声でとどめを差すかのようにファルセットを使い、どこまでも聴き手をハートフルな気持ちにさせて、ロマンチックな高揚感へと導いていったこのラブソング3連発のコーナーは、この日の名場面となった。

“俺たち”という響きが、今回の有観客ライブの尊さを象徴しているようでたまらなく胸が締め付けられた

会場に残るその余韻をゆっくりと胸に刻んだ後のMCでサポートメンバーを紹介。ここでは、門脇がこの状況のなかで、ライブ開催を決断したマオと、そこに集まってくれたファンに対し、深い感謝の気持ちを伝えると「めっちゃほめられたね。俺たち」とマオがおどけた表情で客席に視線を向けたワンシーンがあった。ここでマオがさりげなく言い放った“俺たち”という響きが、今回の有観客ライブの尊さを象徴しているようでたまらなく胸が締め付けられた。また、マオからは今回のライブ開催について、毎週同じ会場で平日のスケジュールが空いていたこと、その会場は着席型で、これまでソロのライブはたまたま椅子席でやってきた実績があったこと。これらの奇跡が重なって、このスタイルでも違和感なく有観客ライブができたのだと伝えられた。

ライブ後半戦は日本の昭和歌謡を代表する名曲からスタート

ライブは後半戦へ突入すると、ここからは昭和歌謡の名曲を2曲続けてパフォーマンス。山口百恵の「秋桜」では、サビ前にたっぷりとブレスを入れ、その後に続く美しくも切ない歌詞のドラマ性を、情感豊かな歌声で切々と伝えていった。続く村下孝蔵の「初恋」では見つめることしかできないというこの歌のストーリーを、ヴォーカルとバイオリンが離れた距離から違うフレーズを掛け合うコントラストで立体的に表現してみせた。ここでは、ピアノのグリッサンドでより一層センチメンタルな気持ちの高ぶりに勢いを与えていったアレンジも見事だった。

「シドでもソロでもここまでストレートな曲は選んでこなかったからこそ、今回チャレンジすることにしました」

「リアルタイムで聴いてはいないんだけど」と前述の2曲について前置きしながら「昔の曲は、こういういい曲がいっぱいあるんだよね」と昭和歌謡をカバーする意義を説明。「シドも、こんな感じで曲を残していきたい」と話したあとは「シドでもソロでもここまでストレートな曲は選んでこなかったからこそ、今回チャレンジすることにしました」と言って、爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」のカバーがスタート。こんなにストレートな歌い方をした姿はなかなか見られないんじゃないかというぐらい、真っ直ぐど真ん中を射抜くようにバラードを朗々と歌うマオの歌唱の新しさ、潔さに場内からは盛大な拍手が贈られた。そこから軽快なリズムに乗せて工藤静香の「くちびるから媚薬」が始まると、今度は場内からはクラップが沸き起こり、シッティングでも華やいだ空気に会場は包まれていった。それを観て「盛り上がったね〜」とはしゃぐマオ。「この曲は“いいよ いいよ いいよ”の(最後の)“いいよ”が好きなんよ」とお茶目な感じで伝えたあとは、その雰囲気のまま「サヨナララスト」へ。リズムに合わせ、手を左右に振って、いまのスタイルでこの曲を全力で楽しもうとする観客を目にしたマオは、フロントまで出ていって、曲中「心の中で歌って!」と叫び、観客たちと心を通わせていった。

「俺は2種類いるからね」「そろそろ観たいでしょ? もう1種類のほうも」

アップテンポなオリジナルナンバーを歌い終えたあと「俺は2種類いるからね」と、シドのヴォーカルをイメージさせるポーズを取り「そろそろ観たいでしょ? もう1種類のほうも」と言うと、客席から盛大な拍手が起こる。シドのライブを有観客で行うのは「なかなか難しくてね」と話しながらも「でも、もうこっち(シド)は17歳なので、ここからは勝手に育っていくから心配いらないよ」とファンを安心させるMCまではよかったが、「Shinjiが痛風にならない限りは」と言い出したあたりから、Shinjiのプライベートネタいじりでトークは一気にコミカルな方向に脱線。手を叩いて笑う場内を見て「ファイナルなんだからもっと感動的なこと言ったほうがいいのに。俺らしいね」と微笑んだ。

頑張って俺たちは会おうとしたら、こうして会えたように、これからも小さな一歩を踏み出し続ければ、人生の光はかならず見えてくる

ソロライブの締めを飾るのは「月」だ。これまでずっとライブの最後に歌ってきたこの曲に“Weekly Live”の途中から違う意味が出てきたと観客に話しかけた。

「最後の曲って、みんなのなかに一番残るものだから、このメロディーでみんなを包み込みたいっていう気持ちでいまは歌ってるんだ。辛いとき、これを思い出してくれたら、温かくて優しい気持ちになれると思うから。最後の曲、受け取ってください」

いまの心情を伝えたあと、ものすごいポテンシャルでバラードナンバー「月」を絶唱。豊潤な響き、その内側に込められたマオの魂の想いが身体中に染み渡り、場内には感動の渦が広がっていく。「今日は歌い切った感がありました」。歌い終えたあと、そうつぶやいたマオはとても満足げな表情を浮かべていた。だが、ここにたどり着くまで「過去には、自分の気持ちが歌に追いつかなくて空回りして悔しい思いを何度もしてきた」と歌、喉のコントロールに苦悩した時期の思いを告白。さらに、この後もいつになくエモーショナルな告白が続いた。

「そこから本当に一歩ずつ。自分が頑張っても“なんでできないんだ”って思いながらも、ただそれを辞めなかった。それが、いまにつながったのかなって思うんだ。小さな一歩と言うのは簡単だけど、歩き続けるのは大変で、途中で投げ出したくなるんだけど。それでも、小さな一歩を踏み出せたら、光が見えてくる。それを僕の歌で証明していくんで、まだまだ成長途中ですけど、これからも一緒に頑張っていきましょう。俺のことも応援してください」

自分の心の痛みを伴う歌のことまで例に挙げながらも、それでも彼がここで直接会ってみんなに伝えたかったこと。それは、2020年秋、頑張って俺たちは会おうとしたら、こうして会えたように、これからも小さな一歩を踏み出し続ければ、人生の光はかならず見えてくるからというエールだ。最後にそんなメッセージをオーディエンスの胸に刻み込んで、ステージを後にしたマオ。その足取りは、涙が出るほどとても力強いものだった。

この後、マオは12月11~12日の2日間、東京・日本橋三井ホールにて毎年恒例の“X’mas Premium Live 2020”を開催。こちらは、“Weekly Live”とは編成もセットリストも変えて、クリスマスならではのゴージャスな内容で展開する予定だということなので、見逃せないライブだ。また、11月23日から「ほうき星」、「siren」、「声色」を3曲連続配信中のシドは2021年1月14日、バンド初の配信ライブ“SID LIVE 2021 〜結成記念日配信ライブ〜”に挑戦。クリスマスのマオ、さらには来年のシドの活動も含め、再び“新たな一歩”を踏み出していく。

マオ from SID
Weekly Live 2020 〜再会〜
<2nd SHOW>
2020年11月18日@SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

SET LIST

01.ワインレッドの心
02.ゼリー
03.マニキュア
04.最後の恋
05.TRUE LOVE
06.秋桜
07.初恋
08.大きな玉ねぎの下で
09.くちびるから媚薬
10.サヨナララスト
11.月

ライブ情報

マオ from SID
X’mas Premium Live 2020

12月11日(金) 東京都・日本橋三井ホール
<1st SHOW> Premium Original Night 開演16:00
<2nd SHOW> Premium Cover Night 開演19:30

12月12日(土) 東京都・日本橋三井ホール
<1st SHOW> Premium Original Night 開演15:00
<2nd SHOW> Premium Cover Night 開演18:30

シド

SID LIVE 2021 ~結成記念日配信ライブ~
2021年1月14日(木) 20:00開演
※詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。
2018年、バンド結成15周年を迎え、セレクションベストアルバムと初のミニアルバムをリリース。さらには二度に渡るライブハウスツアーを敢行。さらに2019年3月10日のグランドファイナル・横浜アリーナ公演を大成功のもとアニバーサリーイヤーを締めくくり、2019年9月には16年目への活動を見据えたニューアルバム『承認欲求』を発売。
そして、2020年11月23日に満を持して3曲連続配信シングル第一弾「ほうき星」をリリース。12月7日に「siren」、12月21日には「声色」も控えており、12月23日に3曲をまとめたCDをリリースする。
バンド活動と並行して2016年からソロプロジェクト「マオ from SID」をスタートさせた。

マオ from SID オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com

マオ from SID オフィシャルTwitter
https://twitter.com/mao_sid

シド オフィシャルサイト
https://sid-web.info/

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