発掘!インディーゲーム総研  vol. 29

Review

社畜の業務は魔女退治?『Yuppie Psycho EE』命がけの任務が始まる!

社畜の業務は魔女退治?『Yuppie Psycho EE』命がけの任務が始まる!

狂気に囚われたブラック企業……そこに就職した主人公の1日を描くホラーアドベンチャー『Yuppie Psycho(ユッピーサイコ)』。2019年にAnother Indie Studio からPC向けにリリースされて好評を博しました。今回、アップグレード版である『Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション』(以下、『Yuppie Psycho EE』)が、Nintendo Switch™とSteam®向けに発売! 本作では新しいエリアやボスなどのコンテンツが追加されたことで、さらに『Yuppie Psycho』の世界が楽しめるようになっています。ホラーが苦手な筆者がプレイして感じた印象を織り交ぜながら、『Yuppie Psycho EE』について紹介します。

文 / みかそ


入社初日に待ち受けていたのは異様な会社での変わった仕事

本作は、特に取り柄も実績もない主人公ブライアン・パスターナックが世界的大企業であるシントラ社の内定を得ることができ、初出社するところから始まります。電車に揺られながらシントラ社に向かうブライアンの様子を見るだけで、都会育ちではないことが一目でわかります。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲大企業からの突然の内定に騙されているのではと思いながら、慣れないネクタイをしめて会社に向かう姿は見ているだけで息苦しくなります……

シントラ社に到着すると、ブライアンは同じく内定をもらった階級重視の”チャップマン”と人当たりのいい”ケイト”にロビーで出会います。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲こちらが低階級だとわかると突然態度を変えるチャップマン。階級重視の会社なのかと思いながらも、画面左上に見える黄色と黒のテープで塞がれた扉が気になって仕方がありません

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲同じ低階級である素朴なケイトにほっとしますが、残念ながら同じ職場ではありませんでした。それにしてもなんだか薄暗いロビーが気になります……。とても大企業とは思えないロビーですよね?

チャックマンとケイトはシントラ社で働く気満々ですが、ブライアンはまだシントラ社に入社すると決めてはいません。ふたりが各階に移動するとブライアンもシントラ社との契約をするために移動することになるのですが、移動先で既にUターンしたいくらい怪しさ満点な場所に出ます。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲この階に移動するまでエレベーターは勝手に動いて停止しており、部屋の明かりは画面のふたつしかなく薄暗いまま……。正面のモニターからはノイズ音が発し、血が滴ったような赤い文字に釘付けになると思うのですが、契約書にサインをするべきかどうかで悩んでいるブライアンは鋼の心臓でも持っているのでしょうか? このチクハグさがプレイヤーの不安を煽ります

ゲームを進めるとしばしばこのように二択を選ぶことがありますが、選択によってその後の展開に違いがあり、プレイヤーはその都度必要な判断を迫られることになります。シントラ社と契約をしたブライアンは、宣伝用イメージとして作成された人工知能で教育担当の”シントラ”から仕事に伴う役割の説明をされるのですが、予想もしない内容でした。それは、”魔女”と呼ばれる生き物を排除することだったのです。冗談だと思うブライアンですが、シントラに「あなたは魔女ハンターとして雇われました」とキッパリと言い切られてしまいます。魔女は何十年もこの建物に棲んでいるとか。会社の業績に影響を与えているが、対処しようにも魔女に関する情報が不足していると言われたブライアンは、異生物の探索、特定、狩猟、排除する方法が記載されている”ヘクセンハンマー”という本を入手するよう指示されます。本を持ってくるだけならそんなに難しくなさそうだと引き受けたブライアンですが、そんな彼に次々とシントラ社での異様な状況が襲い掛かるのでした。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲シントラから仕事内容を聞くブライアン。自分のPCからアクセスすることでシントラが居る空間に移動し、指示を聞いたり報告を行います

ブライアンは、どこに魔女が居るかわからず、その手下も社員として潜んでいるため任務については誰にも言わないほうがいいというシントラの忠告に従い、自らが魔女ハンターだということを隠しながら魔女に関する情報を集めることになります。その過程で何人かの個性豊かで風変りなキャラクターたちと接していくことになり、次第にシントラ社の暗い過去の秘密を知ることになるのでした。
社内を歩き回りシントラからの任務をこなしていくと、話しかけても黙々と仕事をする社員や発狂する社員、死体が床に転がっているのに全く気にせず作業を続ける社員など異様な状況にあることを知ります。さらに社員たちを狂わせる恐ろしい生き物にも遭遇することに……。恐ろしい生き物に襲われ命を落としたり、ときには言葉を話しブライアンをそそのかしてきたりとさまざまですが、警戒すべきは恐ろしい生き物だけではなくブライアンの任務を妨害するようなキャラクターでしょう。それ以外にも風変りなキャラクターからの指示によって、シントラからの任務以外の行動を取ることが必要になることもあります。任務を進めるうちにブライアンは、自分たちは建物に閉じ込められていて、ここから出るためには魔女を殺すか自ら命を絶つしかないという現実に次第に向き合うことになっていきます。ちなみにブライアンが死亡した場合は”解雇”されることになります。
なぜシントラ社は魔女によって苦しめられるようになったのか。ブライアンは魔女の正体を暴き、排除することができるのか? シントラ社の暗い過去の秘密とは? ブライアンは数々の謎を解き明かしながら、真実を知り行動することでいくつかの結末を迎える長い長い1日を過ごすことに……。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲ヘクセンハンマーという本を探しに来ただけなのに……。入社初日にもかかわらず死体を見慣れてしまうブライアン。死体を調べてみるとどうやらこの女性も同じ本を探していたようで、嫌な予感しかしません。周囲を調べてヒントを探し出し、本を見つけることはできるのでしょうか

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲無事にヘクセンハンマーを入手後、出口を探しながら移動すると……。恐ろしい生き物はこの異常な状況下でもさらに異色のためすぐにわかります。戦う手段を持たないブライアンは、図書室のアイテムを上手く使うことで、恐ろしい生き物を退治することができます

本作では、シントラの任務や同僚からの頼みごとなどをブライアンがどう進めていくのか、恐ろしい生き物と遭遇したときに生き残れるかどうかが重要となってきます。まさに命がけの仕事! マルチエンディングとなっている本作では7つのエンディングが用意されており、ブライアンが任務に対してどの程度貢献したか、魔女についての知識量やシントラ社の正確な状況把握、キャラクターたちとどの程度親しくなっているかによってエンディングが分かれています。ホラーに立ち向かう強さと状況を冷静に見極める力、そしてバラバラに散らばっているヒントを集めて解決する能力が必要となります。

すべてを利用し、謎を解き明かして窮地を脱する

キャラクターとの会話による情報収集も大事ではありますが、基本的には社内を歩き回って確認することがメインとなります。シントラ社は10階まであるビルですので、各階に何があってどのような状況になっているのか確認し、誰がどの階に居て何が潜んでいるのかを把握しておく必要があります。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲エレベーター横には、各階の説明が書いてあるので参考にしましょう

社内にいるキャラクターから話を聞くことによって、行動が増えたり攻略のヒントとなることもあるので、できる限り話を聞き要望があれば手伝うようにするといいでしょう。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲「近くに恐ろしい生き物がいるときは……」と前置きして、可愛い笑顔で机の下に隠れることを教えてくれるケイト。教えてくれることは普通じゃないけど、ケイトだけはこの会社に染まらず無事でいてほしい……!

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲社内にいる数少ない”会話の通じる人”はとても重要です

四つん這いのマーケティング部の人、コードを齧られて困っているIT担当の”ドシ”。助けてあげるとドシからドライバーを貰えます。ケイトからはマーケティング部の4人を探して連れてくるよう頼まれるので、彼らが求める”スローガン”を室内にある雑誌などから探し出し4人に正しく提供すると、ハートマークを出して付いて来てくれるようになるのでケイトの元へ連れていきましょう

任務のために移動した先で遭遇する恐ろしい生き物の攻略、HP回復アイテムや便利道具の入手、セーブの回数に関してはとてもシビアになっています。恐ろしい生き物と遭遇した場合は基本的に状況を確認しつつ敵の動きを冷静に見極め、ときにはその場のものを使って敵を引き寄せながら足元にある地雷を発動させることでダメージを与えたり、敵の視界を机の下やロッカーに隠れることでやり過ごしながら目的の場所まで移動することになります。アイテムに関しては、初回で上手に使いこなすのは難しいと感じました。社内のロッカーやごみ箱、引き出し、倒れている死体や鞄等調べられるところはすべて調べることになるのですが、手に入れられるものには限りがありひと手間かける必要もあります。
例えば拾ったコーヒー豆はそれだけでは使えず、水を入手したうえでコーヒーメーカーを使うとHP回復アイテムとなる”コーヒー”を入手することができます。同様に冷凍食品はオーブンを使うことで”ピザ”など食べられるものとなり、これもHP回復に使うことができます。水だけでもHPは回復しますがコーヒーにしたほうが回復量が多いため、このひと手間が重要となってくるのです。
消耗品のアイテムでは暗いところを照らす懐中電灯は電池が必要で、電池がなくなると懐中電灯も使えなくなってしまいます。電池の残量を気にしつつ、懐中電灯を使う必要のないところではこまめにOFFにするなど節約しながら使うように気をつけなくてはいけません。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲水は社内に設置してあるウォーターサーバーから入手可能ですが、基本的に水の補充はされず現状のままで限りがあることがすぐにわかります。見つけたら必ず入手!

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲食べ物に関してはどのような組み合わせで何ができるのか一覧があります

作ったものはストックして持ち運べますが、見つけられる食材には限りがあり、さらに電子レンジやサンドイッチメーカーは1階の食堂にしか置かれていません。食べ物ごとにHPの回復具合は変わりますので、作れるときにたくさん作っておきましょう。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲持ち物画面の右上にHPが赤いバーで表示されます。HPが危険な状態になると画面上でわかるようにはなっていますが、通常画面では確認が不可能なためこまめに確認する癖をつけておきましょう

セーブは”コピー機”を使うのですが、専用の”紙”が必要でさまざまなところから探し出す必要があります。紙を集めても今度はコピー機がインク切れしている場合もあり、その際は”インクカートリッジ”を見つけ出さないとセーブができません。セーブをするにはコピー機、紙、インクカートリッジが揃っている必要があるのです。紙とインクカートリッジはストックして所持することが可能なため、きちんと社内を調べつつ回っていれば不足することはないと思いますが、暗いところに行くだけでも何が潜んでいるのかわからないため、こまめにセーブして進めたい筆者としては非常につらいものがありました……。ボス戦のまえや重要なストーリー展開がある場所などにはコピー機がひっそりと置いてあるので見逃さないように気をつけてください。

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲顔をコピーすることで”魂をコピー(セーブ)”するブライアン。毎回コピー機に押し付けるブライアンの様子が異なるため、コピーのたびに注目していました

Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション WHAT's IN? tokyoレビュー

▲HPが0になると解雇されてしまいますが、画面の状況は解雇どころの騒ぎじゃないですよ! 役に立たない魔女ハンターはシントラ社には不要ということでしょうか……。正真正銘の命を懸けた任務です

本作はドット絵でキャラクターも可愛らしく描かれていますが、血などが飛び散り凄惨かつ猟奇的な表現が多々あるため、苦手な方は注意が必要です。さらに注意が必要で注目すべきは”音”です。BGMも不安を煽ってくるのですが、登場人物や恐ろしい生き物などと出会うポイントでウィスパーボイスが凄くリアルに耳元で囁かれているように聞こえるんです! もうこれが個人的には凄く怖い! 逆を言えば本当に素晴らしい演出なんです。聞いた瞬間、思わず周囲をキョロキョロとしてしまうほど……。

重要なシーンなどドット絵からムービーに切り替わる箇所では、緊張感がさらに強調されて単調にならず楽しむことができるようになっています。物語は全体的に早い展開だと思いますが、進めるうえで次に何をすればいいのかわからなくなってしまうとぐるぐると社内を彷徨う可能性もあるため、個々でプレイ時間は異なってくると思います。ちょっとしたミニゲームもヒントが無い状態で手探りで進めていくため、筆者は何度も挑戦してクリアしましたが地味に時間がかかりました。
シントラ社の繁栄からブライアンが呼ばれた現在の状態になるまでの経緯も丁寧に描かれていて、最初は半信半疑だった魔女についても徐々に明らかとなり、ENDを迎えるころにはシントラ社の秘密や魔女のこと、周りのキャラクターたちの事情や立ち位置などについて詳しくなっていることでしょう。ブライアンの解雇あるいはすべての解決、魔女から皆を助け出せるか否かもちょっとした条件の変化で変わってきます。ブライアンは最後にどのような決断をするのか……。軽率にプレイヤーを地獄に突き落としてくる『Yuppie Psycho EE』。あなたもシントラ社に魔女ハンターとして雇われてみませんか?

フォトギャラリー

■タイトル:Yuppie Psycho エグゼクティブ・エディション
■開発元:Baroque Decay
■発売元:Another Indie Studio
■対応ハード:Nintendo Switch™、Steam®
■ジャンル:アドベンチャー
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2020年10月29日)
■価格:Nintendo Switch™ダウンロード版 1,790円(税込)、 Steam®版 1,730円(税込)


『Yuppie Psycho』オフィシャルサイト

© Another Indie Studio Limited. All rights reserved

vol.28
vol.29
vol.30