Report

岡宮来夢ら5名が魅せる、演劇の“裏表”。5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]開幕!

岡宮来夢ら5名が魅せる、演劇の“裏表”。5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]開幕!

11月19日(木)東京・品川プリンスホテル ステラボールにて、5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]が開幕した。脚本・演出を手がける松崎史也がウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』をミュージカルとしてアレンジした本舞台は、主演・岡宮来夢を筆頭に、立花裕大、橋本真一、法月康平、中村誠治郎が出演。
女性役をはじめ、同じ役をシーンによってキャストが入れ替わりで演じたり、出ハケせずにステージ上で衣裳チェンジもさせたりなど、趣向を凝らした演出の妙も活きた作品だった。
ここでは、公演前に行なわれたゲネプロの様子とキャストからのオフィシャルコメントをお届けする。

取材・文・撮影 / 高城つかさ 写真(☆印)/ 小境勝巳


多面的に魅せる演出に引き込まれる

舞台に立っていたのは、役者なのか? 役なのか? それとも、“誰でもない何か”だったのだろうか? ……カーテンコールのあと、そんな疑問が浮かんだ。

5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]の原作は、ウィリアム・シェイクスピアによる『ハムレット』。『オセロー』『マクベス』『リア王』と並ぶ四大悲劇のひとつと呼ばれる名作だ。長い間引き継がれている物語で、内容は知っていたけれど、この舞台は、『ハムレット』のあらたな世界観を提示しながら、私にとって演劇への視点や価値観が変わるきっかけにもなった、衝撃的な作品だった。

はじめに、真っ黒な衣裳を身に纏った岡宮来夢、立花裕大、橋本真一、法月康平、中村誠治郎の5名がステージに登場。舞台上には、上手・下手に衣裳ケースと椅子が4つずつ並べられており、赤いドレスをはじめとした様々な衣裳がハンガーにかけられている。岡宮をのぞく4名は衣裳ケース前に一脚ずつ用意された椅子にそれぞれ座り、ただひとり、岡宮演じるハムレットだけが、ステージ中央の椅子に腰を掛け開幕する。

物語は、デンマークの王子・ハムレットの父が、ある人物に殺されるシーンから始まる。そして父の死から1ヶ月、ハムレットの母・ガートルートは父の弟であり、ハムレットにとっての叔父・クローディアスと再婚することになるが、母の振り切れた様子や、叔父の態度に、ハムレットは違和感を覚える。そんなある日、ハムレットは亡くなった父の霊から、父を殺したのが叔父であることを知る。亡霊からの「復讐せよ」という言葉を受けて、ハムレットは復讐の計画を企てる。

復讐心に支配されたハムレットは、だんだんと正気を失っていく。憎しみに満ち溢れたハムレットの発する言葉は短剣のように鋭くなり、ガートルートや、恋人で、大臣・ポローニアスの娘であるオフィーリアの心に傷をつくる。心が少しずつ壊れはじめ死を選んだオフィーリアの兄・レアーティーズは、妹の死はハムレットだと決闘裁判を申し込むが、果たして──。

言うまでもなく、『ハムレット』とストーリーは同じだけれど、この舞台の特徴は、ハムレット(岡宮)以外が役を“交換”する形で進行していくところだ。黒い衣裳を身につけた4名は、脇にある椅子に座り、芝居をしているキャストを見つめているときもあれば、いつの間にか着替え、先ほどとは違う役を演じていることもある。

衣裳チェンジは、観客に背を向けた状態で行なわれる。照明が当たっていないぶん、表情は読み取りづらかったけれど、この衣裳替えだったり、椅子に座りながらキャストを見つめていたりと、この作品には、 “誰でもない何か”が存在している瞬間がたしかにあったように思う。私たちの目の前にいるのは、役でもないし、役者本人でもない。では、舞台上にいるのは誰なのか? ……複数の役をひとりの役者が演じる作品はあるけれど、ひとりの役として存在しているわけでも、役者本人がいるわけでもない瞬間を“魅せる”演劇と出会ったのは、私自身、本舞台が初めてのことだった。

一般的な演劇では“表”とされる、役と役がぶつかりあう芝居も、従来の演劇では“裏”として隠しているであろう衣裳チェンジも、すべて舞台上で行われる。表と裏を同時に見ながら「自分たちは何を観ているのだろう」と多少混乱もしてしまうけれど、観客を置いていかない、スムーズな演出に魅力を感じた。

「生きるべきか死ぬべきか」。劇中では、この台詞が何度も繰り返される。これは『ハムレット』の中でも有名な台詞で、訳によっては「このままでいいのか、いけないのか」「生か、死か」など違いがあるけれど、その中で「生きるべきか死ぬべきか」が選ばれたのは、もしかすると、“死”の演出にこだわった作品だからかもしれない、と感じた。そのくらい、 “死”をあらわす表現が特徴的だったのだ。

5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET] WHAT's IN? tokyoレポート

そして、この舞台では、“衣裳”自体が心情や変化をあらわす役割を果たしていたように思う。オフィーリアやポローニアスが死んだことを示すときは、役者が衣裳を脱ぎ捨て、ステージには衣裳の抜け殻だけが残される。感情のゆらめきをあらわすときには、それまで脱いでいた衣裳をひらひらと漂わせる。大きな舞台転換はなく、きわめてシンプルに物語が進んでいくからこそ、そういった細やかな演出に目を奪われる。

父が殺される様子をハムレットが演劇という形で叔父と母に見せたり、「嘘もつらぬけば誠になる」と語ったり、クローディアスが兄を殺したことを悔いているように “演じ”たりと、シェイクスピアの芝居への価値観を感じさせるシーンは原作にも多くあるが、本作劇中で芝居について語る場面が比較的多くあったのは、演劇そのものにこだわった演出だからこそなのではないか、と思った。

“偽り”も、芝居という形で貫けば“真実”へと変わる。“真実”に見せられた“偽り”の世界の中を、私たち観客は浮遊している。もしかすると、 “誰でもない何か”が存在していると感じたことも、“偽り”を“真実”として受け止めたからなのかもしれない。劇場空間に存在する “真実”=演劇の本質をあらためて思い知らされた。

主演・岡宮は、唯一衣裳チェンジがなく、“ハムレット”としてずっと舞台上に存在していた。発する一つひとつの台詞は力強く、魂が込められており、“大黒柱”とは彼のことを指すのかもしれないと思った。何が起こっても動じないたたずまい、それでいて、どの芝居も受け止め、しっかりとボールを返すあたたかさを、岡宮演じるハムレットからは感じ取れた。ハムレット以外の4名のキャストも、岡宮を “支える”というよりも、全員の個性を活かしながらひとつの作品を作り上げようという姿勢が印象的で、芝居からカンパニーの絆が伝わり、胸が熱くなった。

偽りも真実も、生と死も、共存していて、切っても切り離せないものなのだろう。作品がひとつの事実だとすると、それをどこからどう見るか、どのように解釈するかによって受け取り方は変わってくる。ひとつの言葉を偽りだと思う人も、真実だと感じる人もいる。“衣裳”という個体が、死をあらわすための“道具”となったり、ただ身に纏い、誰を演じているのかを伝える“情報”になったりするように。長い歴史の間に様々な解釈が生まれている『ハムレット』の物語を通して、多面的に魅せる演出に引き込まれた1時間50分。心情を丁寧に描きながらも、考える余白や、複数の視点を持つ余裕を与える──これが、松崎が手がける『ハムレット』なのかもしれない。

5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET] WHAT's IN? tokyoレポート

5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]は、11月23日(月・祝)まで品川プリンスホテル ステラボールにて上演。千秋楽公演のライブ配信も決定している。また、DVDは2021年5月31日(月)に発売予定。

これが僕たちのハムレットだと自信を持って皆様にお届けします

以下、開幕に向けて寄せられた出演者のコメントをお届けする。

●岡宮来夢
無事幕が開くことが本当に嬉しいです。これまで支えてくださった全ての皆様に感謝です。
見どころは全部です!
お芝居も歌も殺陣もその他の演出も全て凄いです。
僕がハムレットでいるために、先輩方がそれぞれ任されている「役目」にも注目していただきたいです。本当に支えていただいています。
400年前に作られたこのハムレットはたくさんの解釈がある作品です。
これが僕たちのハムレットだと自信を持って皆様にお届けします。それがどう届くのか楽しみだし凄くドキドキしています。
熱く繊細に演じます。
上演をお楽しみにお待ちください!

●立花裕大
まずは無事に公演できることを心から嬉しく思います。
こんな素敵なキャスト、 スタッフさん達に囲まれて本当に毎日楽しく勉強になる稽古でした。
我々が作ってきたハムレットという作品のお芝居、解釈、舞台上で起きる様々な出来事を是非皆さんに観ていただきたいです!
見どころとしては5人で奏でるクインテット。ハムレット以外は役を交換しながら進んでいく様子。どのように役を渡し、引き継ぐのか、内容以外にもそんなところも注目していただけると嬉しいです。
それではぜひお楽しみに!よろしくお願いします!

●橋本真一
とても級密に、そして繊細に一つ一つを積み重ねて完成させる作品。
稽古を終えて、僕がこの作品に抱く印象です。
役と役者。板の上と板の下。芸術。哲学。
いろんな要素や世界が混じり合っているからこそ、少しでも何かを掛け違えると壊れてしまう。そんな作品です。
出演者全員が1秒足りとも集中を切らせない時間/空間という、とても張り詰めた緊張感の中に居る事は、俳優として怖さと楽しさが共存する不思議な感覚です。
お客様もきっと、その感覚に近い何かを感じてくださるのではないかと思います。
5Gハムレットの世界を僕達俳優と一緒に体感し、楽しんでいただければと思います。

●法月康平
5人だけで全ての役を演じ紡いでいく今回ですが、ここまで己の技量を発揮できる舞台もなかなかありません。
色とりどりな衣装や、 光と闇を表現した楽曲や振付、見どころは様々です。
何より5人が一度も舞台上からはけず、ハムレットの苦悩を舞台上でずっと見続けます。皆様もその1人になるわけです。 共に、僕らが出した一つの物語を見届けてください。
“5G HAMLET”いよいよ幕が開きます!ご来場お待ちしております。

●中村誠治郎
台本を初めて見た時、衝撃と同時に不安がありました。稽古をするまでは具体的な想像すらできなかったからです。しかし稽古を重ねる度にそれがおもしろさに変わり、唯一無二の自信の持てる新しい作品になりました。
演出の松崎さんを信じてきてよかったなと心から思っていますし、役者としても新しい景色を見させてくださいました。
そして今回殺陣振付もさせていただいておりますので、殺陣シーンがやはり自分的には見所の一つだと思います。
一瞬一瞬を大切に全力で生きて、板の上には5人しかいませんが、スタッフさんたちと全員で力を合わせて頑張りたいと思いますので、ご声援の程よろしくお願いいたします。

5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]

2020年11月19日(木)~11月23日(月・祝)品川プリンスホテル ステラボール

<千秋楽公演のライブ配信>
配信公演:2020年11月23日(月・祝)18:00
詳細はシアターコンプレックスにてご確認ください。

原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本・演出:松崎史也

出演:
岡宮来夢 立花裕大 橋本真一 法月康平 中村誠治郎

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@HamletGuys)