今、知っておくべき注目声優を解説します!  vol. 11

Column

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ポップ役の演技で要注目! 声優「豊永利行」と2010年代主演マスト3作品を解説

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ポップ役の演技で要注目! 声優「豊永利行」と2010年代主演マスト3作品を解説

この人の声を知っておけばアニメがもっと楽しくなる(はず)! 今、旬を迎えている声優の魅力をクローズアップする連載コラム。今月は『ユーリ!!! on ICE』の主人公・勝生勇利役などで知られ、現在放送中の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』でも重要キャラ・ポップ役として出演中の豊永利行さんを徹底分析。ミュージカルの子役時代から活躍し、舞台や歌手活動でも積み上げてきた長いキャリアを振り返りながら代表作をご紹介します!


ミュージカルで培った歌唱力も活かした演技、役柄の幅広さも強みに

昨今の声優に求められるものは、じつに幅広い。誰もが頷くいい声、その人にしか出せない個性的な声。与えられた役柄を大切に、芝居に昇華し演じきる演技力を持っていることは当然。その上で、ラジオや顔出しの番組、ライブイベントなどでファンを楽しませる巧みなトーク力、キャラクターソングを歌いこなす歌唱力、ステージ映えするダンス力などなど、一般的なタレント以上のスキルを求められてしまうのが、イマドキの声優事情であることは、皆さんも実感しているはずだ。声の芝居ができた上でさらに “何でもできる”ことが、特に競争相手の多い若手声優としての生き残りには、より重要なポイントになりつつある。

その意味でも、芝居だけでなく歌や踊り、タレント力を子どもの頃から鍛えてきた子役出身声優は、 “何でもできる”実力派として長く輝きを放ち続けている人が多い。若手実力派であり、歌、ダンス、トーク力にも定評のある豊永利行もそのひとり。ミュージカル子役としてキャリアをスタートし、劇団四季の『美女と野獣』などでも活躍していた豊永は、ドラマや映画、舞台への出演を重ね、2000年代初頭からはアニメ声優としてもさらに大きく華を咲かせている。

筆者が豊永利行という役者を知ったきっかけもミュージカル作品。2003年~2006年まで青学の1年生トリオのひとり・加藤勝郎役で出演していた“テニミュ”こと『ミュージカル テニスの王子様』1stシーズンだ。達者な歌唱、キビキビした踊りとコミカルな芝居で舞台を盛り上げていたのも印象的。同時期には、アニメ『テニスの王子様』のほうにも葵剣太郎役で出演していたというのも面白い。余談だが、初期のテニミュには、宮野真守、増田俊樹、KENN、小野賢章など、今では声優活動のほうが有名になった面々も出演。アイドルグループ物コンテンツでメインを張る、作品に欠かせない存在として活躍中なのも、そんなキャリアを考えれば納得だ。

もちろん豊永も、ミュージカルで培った歌の巧さが設定に活かされ、キャラクター造型にさらに説得力を持つ女性向けグループアイドル物、音楽がメインとなる作品――特に、リズムゲームが主体のアプリゲーム発コンテンツへの出演は多い。『B-PROJECT』シリーズの金城剛士は、音楽へのこだわりも強く、ミュージカルでも活躍するというキャラクター設定も豊永と重なる部分があり、クールなツンデレ低音ボイスが魅力。劇中ユニット「THRIVE」としても、キャパ5,000人規模の単独“リアル”ライブが大成功を収めている。

ミュージカルカンパニーそのものを舞台とした『夢色キャスト』の知的で温和な橘蒼星役では、劇中劇で演じられる多種多様な役柄と多彩なジャンルの楽曲を、豊永が演じる“橘蒼星が役を演じて、歌っている”ことをリアルに感じさせるという高度な芝居で、ファンを魅了した。

『ツキプロ』シリーズでは、高校生バンド「SOARA」の元気で明るいボーカリスト・大原空役を、初々しく若々しい歌唱と演技で表現。奇天烈な行動を起こす詩人キャラで超個性的な『A3!』シリーズの有栖川誉役、二面性キャラでその音楽的才能を“百年にひとりの逸材”と呼ばれるバンドボーカリストの『ディア ヴォーカリスト』のモモチ役、作品のライブイベントでは豊永本人が披露する高難度のダンスも話題の『MARGINAL#4』のアイドル・牧島シャイ役など、音楽が重要な役割を果たすコンテンツへの出演が非常に多いのも豊永ならではだ。しかも少年から大人まで、繊細なキャラクターから破天荒なキャラクターまで、演じている役柄も非常に幅が広い。キャラクターによって歌い分けを確実なものとしている歌唱力の高さだけでなく、演技者としての表現力の豊かさがあってこそのキャスティングなのだ。

ぜひ観てほしい主演3作『デュラララ!!』『ユーリ!!! on ICE』『風が強く吹いている』

そんな豊永の表現力の巧みさをじっくり味わえるストレートプレイも、見どころは多彩だ。豊永の演技の最大の魅力は、ナチュラルなリアリティの表現。もちろんキャラクター性重視のアプリゲーム作品のように、実際にはいないであろう個性的な人物を演じるときは、その作品の世界感にしっかり寄り沿った濃い芝居もお手の物だが、豊永が本領を発揮するのは、より現実的な世界を描いた作品での演技だ。

主人公・竜ヶ峰帝人を演じ、声優・豊永利行の名を世に知らしめたアニメ『デュラララ!!』シリーズでは、破天荒で超個性的な仲間や敵に囲まれながらも、存在感たっぷりに熱演。おどおどした普通の高校生だった繊細な帝人が、さまざまな事件への関わりを経て、次第に冷たい狂気へと傾いていく変化を、“日常”の雰囲気を損なわずに印象的に演じ上げていた。

さらに、豊永のリアルなナチュラリズムを推し進めた作品として外せないのが、フィギュアスケートアニメ『ユーリ!!! on ICE』の主人公・勝生勇利役だ。柔和で繊細な性格で自信のなさがいつも見え隠れするというのに、誰よりも頑固で負けず嫌いな努力家。それゆえ、意思を固く持ったときは、思いも寄らぬ大胆さで周囲を驚かせる、アンバランスで振り幅の大きな勇利を、豊永はけっして外連に傾くことなく、セリフにも絶妙なニュアンスをつけながら、ごくごく自然な人間らしさを伴って演じていくという見事な技を見せた。

後のとあるインタビューで豊永は、『ユーリ!!! on ICE』の頃は、アニメキャラクターにより現実的なアプローチができないか?と思い、我々の日常的な普通の喋り方にチャレンジして、アニメキャラクターを実在の人物と思わせるくらいのリアリティを追求していったと語っていたが、その挑戦は見事に実を結んだといえる。

さらに、その豊永のアニメの演技におけるリアリティの追求、ナチュラルさの表現が、高レベルで融合したことを実感させてくれたのが、アニメ『風が強く吹いている』のハイジこと清瀬灰二役だ。大学駅伝に賭ける熱い思いを、挫折心や内なる葛藤を表に出すことなく、常に冷静沈着に固い信念を持って進めていくハイジ。それを演じる豊永の口調は常に淡々としているが、そっけなく冷たい響きとユーモラスで飄々とした響きの声質を、揺らぎを持った滑らかなニュアンスで繋いでいくことで彼は、ハイジの心の奥にある温かさと優しさをナチュラルに浮き彫りにしていった。『風が強く吹いている』という作品がいかに良作だったかは、当サイトのレビュー記事でも紹介させてもらっているので、目を通していただけたら幸いだ。

“何でもできる”声優・豊永利行の今後が楽しみ!

豊永の演技を支えている、彼の清涼感に満ちた爽やかな声質もまた魅力的だ。低めの声では、ハスキーとまではいかないが、柔らかな紗がかかった温かみが匂い立ち、音程が上がると、クールにも響く張りのある芯の部分が際立ってくる。そんな二層構造の声は本質的にはクセがないが、豊永はそこに細やかな息のニュアンスを巧みに混ぜ込むことで、豊かな感情をより効果的に演出していく。

例えば『風が強く吹いている』のハイジは常に淡々とした口調だが、豊永のセリフの語尾の息の入れ加減、抜き加減がそこに微妙な感情の揺らぎを察知させてくれたように、押さえた演技でも平坦にならず、繊細な感情を生み出せるのだ。逆に大きな芝居では、その絶妙な息の芝居と巧みなセリフの抑揚が、より強い感情表現を生み出していく。

ちなみに、シンガーソングライターとしても活躍する豊永は絶対音感の持ち主であり、歌唱力の高さも折り紙付き。音程やブレスを自在に操る歌手としての実力は、役者としての声のコントロール力とも連動しているのではないか。そういえば、演技力のある声優には、歌の上手い人も多いよなぁ……と、豊永の職人芸を見ていてふと思ったりもする。

そうした巧みな感情の操り方が、アニメキャラクターらしい芝居にもナチュラルに発揮されているのが、現在放映中の『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のポップ役だ。臆病で根性ナシのくせにお調子者というコミカルなシーンの多い少年役を演じる機会は、最近そう多くなかっただけにじつに新鮮だ。豊永本人もユーモア精神あふれる人なだけに、明るいコメディタッチの作品もよくハマる。物語はまだまだ序盤だが、これから人間的にもどんどん成長していくポップを、豊永がどう演じていくかが楽しみだ。

どシリアスな役から弾けた役まで何でもこなし、エンターテイナーとしてのパフォーマンススキルも高い “何でもできる”豊永利行が、今度はどんな役柄で驚きを与えてくれるのか。大いに期待している。

文 / 阿部美香

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