Interview

内山拓也監督×井口 理(King Gnu)が語る映画『佐々木、イン、マイマイン』の撮影現場――エネルギーの方向が同じ人と一緒にやれることって本当に幸せなこと

内山拓也監督×井口 理(King Gnu)が語る映画『佐々木、イン、マイマイン』の撮影現場――エネルギーの方向が同じ人と一緒にやれることって本当に幸せなこと

King Gnu「The hole」(19)や平井 堅「#302」(19)、Uru「あなたがいることで」(20)のMVディレクターを務めた内山拓也の映画『佐々木、イン、マイマイン』(11月27日公開)にKing Gnuの井口 理が出演している。

文化服装学院を卒業後、23歳の時に初監督作『ヴァニタス』(16)を制作し、PFFアワード2016観客賞を受賞した内山監督と、藝大の声楽科出身で、King Gnuのヴォーカリストとしてはもちろん、近年は映画『ヴィニルと鳥』(19)や『劇場』(20)をはじめ、俳優としても活動の場を広げている井口。「理(さとる)」「うっちー」と呼び合い、友人でありながらも、誰の心の中にもいる高校時代のヒーロー=忘れられない友達を描いた青春映画となった本作で初めて現場を共にした二人が語る“友達”と“表現”とは?

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 斎藤大嗣


内山監督にも内緒で受けたオーディション。「ちゃんと手順を踏んでいかないと失礼だなと思った」(井口)

まずは、おふたりの出会いからお伺いできますか。

内山 おそらく2017年くらいかな。共通の友達に(常田)大希を紹介してもらって。PERIMETRON(King Gnuの常田大希が主宰するクリエイティブチーム)の作業場の前にある定食屋で出会ったのが最初ですね。大希とPERIMETRONと出会ったら必然的にKing Gnuと繋がっていったっていう感じですね。それで、PERIMETRONの事務所でなにかをするときに、理がめっちゃ暇だって言って、荷物運びを手伝ってくれて。

井口 MVの撮影かなんかね。最初は建て込みのバイトみたいな認識だったかもしれない(笑)。

内山 今は声が綺麗で、日本一歌がうまいらしい人になってますけど、当時は印象が全然違ったんですよね。もっとシュッとしてたし、ヒゲも生えてなくて。そのあと、新宿の小さいライブハウスでヌーのライブを見させてもらったり、みんなで飯を食ったり、お酒を飲んだりするようになって。当時、理はTwitterでめちゃめちゃ遊んでたんですよ。ジャスティン・ビーバーにDMを送ってみたり。そういう変な人って見えてたのに、少人数で会ってみると、超シャイだし、生きづらそうだなって思いましたね。

井口 あはははは。

内山 本当は真面目だし、好青年なのに、いろんなものを背負って戦ってるんだなって。僕もわりと無口で。「こいつら楽しいのか?」って思われるくらい静かでいるタイプなので、そこは似てるなとは思いましたね。

井口 確かにそういう面では同タイプですね。『佐々木』の撮影までほぼほぼ話してないよね。

内山 大人数でいる時とか、ほぼ消えてるからね(笑)。だから、ガッツリ話をしたことはなくて。

佐々木、イン、マイマイン 内山拓也 WHAT's IN? tokyoインタビュー

内山さんが監督したKing Gnu「The hole」のMV撮影が昨年ですが、清水尋也さん主演のドラマになっていました。

井口 メンバーは出てないんですけど、僕、現場には行ったんですよ。撮影が深夜に終わって、プロデューサーと4人で中華を食べたんですけど、その時もほぼほぼ、喋んなかった(笑)。

内山 思い出した! 立川だった。

井口 ね。僕は3人が話してるのを見てるだけ。だから、今回の映画がきっかけで、より飲みに行ったりするようになった感じですね。

現場で一緒に仕事をするのは今回が初めてということですよね。お互いにそれまでは知らなかったような、違った一面も見えましたか。

内山 現場の居方や向き合い方は、率直にいって、真面目さがとても溢れていたなと思います。撮影中は、みんな無言だったり、張り詰めた空気で、和気藹々とした雰囲気ではなかったんです。終わった後、糸が切れた瞬間を見ると、理はその役柄に真剣に向き合ってくれていたんだなって思いました。撮影が終わった後はみんなで「よかったね」とか言って、記念撮影したりして、いつも通りに戻るんですけど、真面目に、泥臭いシーンを真剣に撮った感じはありますね。

井口 僕は、『佐々木』のオーディションを受けに行ってるんですけど、その時のうっちーが印象的で。ひと芝居が終わった後に、頭を抱えながら、「ちょっと今のお芝居ではなく、別の感じでやってくれませんか?」って言われて(笑)。「ああ、なるほど。こういうタイプなんだ」って思いました。あんまり知らなかったから、いつもとは違うんだなってことが、余計に印象に残っていますね。

内山 俺、それ、理に言った?

井口 いや、その場に言ってる感じだった。仕事というか、作品に向き合う姿勢はこういう感じなんだって。

内山 なんか、恥ずかしいね(笑)。

佐々木、イン、マイマイン 内山拓也 井口 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

井口 サプライズを求めるというかね。うっちーが自分自身で面白くないと思ってしまったら、もうダメなんですよ。オーディションもそうだし、現場でもそう。もっと、面白くしたいんだけど、どうしたらいい?って話し合ったりする。それまでちゃんと話してこなかったからこそ、そこで一緒に1つのものに向き合うことができてることがすごく幸せだったんですよ。ああ、楽しいなって。

内山 「こういう日をいっぱい過ごしたいな」って言い合って、バイバイしたね。あの日は、3週間半に及んだ『佐々木』の撮影の中でもすごく楽しい日々でしたね。

緊張感が漂う中でも楽しかったんですね。

内山 そうですね。(佐々木を演じた細川)岳と理がやりあうんですけど、理は目血走って、ゾーンに入っていたし、岳は顔が痙攣してて。そのために何十分か待ったりしたんです。あのシーンを撮るために張り詰めた時間が早朝から夜まであったね。

井口さん演じる吉村と佐々木のケンカですが、言うなればアクションシーンでもありますよね。

内山 どう捉えられるかわからないんですけど、生臭いのを撮りたくて。一見拙い感じかもしれないですけど、泥臭くて、ひたすらに縋っていく佐々木のどうしようもなさを撮りたかった。でも、あれって、「じゃあ、やってください」って言ってできることではないので、リハーサルで動きを固めて。決まりごとをどうナチュラルにやるかの連続ではあったと思いますね。

井口 岳くんの胸辺りを蹴るシーンがあるんですけど、彼に「もっと強く蹴って欲しい。大丈夫だから、もっと蹴って」って言われた時に、こいつ正気か? って思ったけど(笑)、そのストイックさが好きだなと思って。

内山 そうね。

井口 ちょっと強めに蹴りました(笑)。

内山 シーンの後半には理が佐々木に蹴られる瞬間もあって。いろんなケアや撮り方をしてるんですけど、僕は全部見せたいから、アングルを下に下げたいって言ったんですよ。下を映すのであれば、理は本気で転ばなきゃいけない。理も「やんなきゃダメでしょ」ってなってくれて。理は本気で蹴られて、前のめりに倒れたんですよね。そういうアドレナリンがみんな出てたと思う。

井口 体育会系みたいなね。それが正しいとは言わないけど、そういうのっていいよね(笑)。なんていうか、強豪の野球部の部活みたいというか。

内山 誰も強要はしてないんですけどね。

井口 自ずとね。

内山 みんなの意志統一はあったと思いますね。

その熱は伝わってくるシーンになってると思います。それにしても、オーディションだったっていうのが驚きでした。友達関係から始まったことかと勘違いしてました。

内山 インターネットでオーディションを募集したのですが、誰かにお願いして誰かに出てもらうっていうオーディションは今まで一回もしたことないんですよ。だから、応募されたページを見て、「あ、理だ」って感じで。

佐々木、イン、マイマイン 内山拓也 井口 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

内山さんにも言わずに応募したんですね。

井口 そうですね。自分から「次の映画に出させてよ」ってお願いするのは、恥ずいっていう感じです。友達だから言えちゃうかもしれないけど、友達だからこそ、言えなかったというか、言いたくなかったというか。ちゃんと手順を踏んでいかないと失礼だなと思って。頼み込んで出たとして、やれるような力もないなって、そん時は思ってたし。ちゃんとゼロからスタートしようと思っていましたね。

内山 今でこそ、音楽以外でも理の露出は増えていると思うんですけど、1年半以上前にオーディションをしているので、僕としても、理としても、挑戦だったんです。当時の理の良さは閉じ込めようと意気込んで撮ったので、理が出てる、『佐々木』以外の作品には絶対に負けないと思っていて。その気持ちは今でもこの作品の中に入ってるかなと思いますね。

井口 ありがとうございます! あははははは。

内山 オーディション、ガチガチだったよね。

井口 ガチガチ中のガチガチだった。すごい量の役者さんが受けてたし、なんで、役をくれたんだろって疑ったくらい、僕としては散々でした。あの日は、もう二度とオーディション受けたくねーって思ったからね。でも、ま、ありがたかったですね。

映画が完成した今、本気で思う。2021年は「僕としかできないことを理とやりたい」(内山)

音楽活動だけじゃなく、役者を始めた井口さんの願望と、監督から見た井口さんの役者としての魅力を聞かせてください。

井口 自分で納得するラインまで早く行きたいなって思ってます。納得することはないと思うんですけど、ここは1つよくやれたなっていうものを早くつかみたい。今回の完成作も観て、同世代の役者さんたち、やっぱりすげえなって喰らう部分があって。早く、こういう人たちと同じ土俵で……同じフレームの中にはいたけど、実力としても、同じところに立ちたいなっていう意識が芽生えましたね。

佐々木、イン、マイマイン 井口 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

内山 理は、身体性が伴ってる人だと思ってるんですね。最初に言った、佇まいや居方がうまいっていうのはそういうことで。声が綺麗だとか、歌がうまいとかは、ぶっちゃけどうでもいいんですけど、でも、実はそれがあるからできてることだなとも思っていて。だから、理には演技も歌もどっちも続けて欲しいと思ってます。どっちかをやめたら、どっちもダメになる気がする。お芝居とか音楽とか、表現みたいなものは、やりたいことがあれば全方位的にやり続けて欲しいなと。魅力という質問とは外れちゃうかもしれないですけど、この作品が完成した今、本気でそう思って、LINEで「今までとは違う引き出しを使う役や表現を2021年もやりたいね」って伝えました。僕としかできないことを理とやりたいし、僕自身も新しいフィールドに挑戦したいと思ってますね。

井口 あのLINE、一文だったけど、嬉しかったですね。トイレで便座に座りながら見てたんですけど、小声で「うっちー……」って呟きましたからね(笑)。僕はぜひ一緒にやりたいなって思う。今回の撮影の現場は短かったですけど、エネルギーが向かう方向が一致してる人と一緒にやれることって、本当に幸せなことなんですよ。そういうことをずっとやっていきたいし、『佐々木』で現場を共有できたことが、また次に繋がるのかなって思います。

佐々木、イン、マイマイン 内山拓也 井口 理 WHAT's IN? tokyoインタビュー

少し話は変わりますが、劇中でキーとなっている「佐々木コール」は、佐々木だけじゃなく、コールをしている自分の気持ちも奮い立たせるような気がしたんですが、お二人が自分のしんどい時や疲れた時に、自分の気持ちを奮い立たせるものはありますか。

内山 今、本当に大変な時世ですが、個人的にも変化の真っ只中に自分自身がいるなと思っていて。奮い立たせないといけない瞬間が、今、まさに自分の中で起きている気がしています。簡単に人と会えなくなった時代だと思うんですけど、大切な人やものと一緒にいられることがいかに幸せなのか。ありきたりな表現ですが、日常のありがたみをより強く感じているんです。自分が大切だなと思うもの、守りたいもの、共有したいものを維持することが、何よりも自分を奮い立たせているんですね。

井口 男らしい答え。『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしみたい(笑)。難しい答えのあとで話しにくいけど……、僕は、今日、レコーディングがあって。それに対して、自分を奮い立たせることができるのは、言葉じゃなくて、やっぱり練習量なんですよね。「大丈夫だよ。今日はいけるよ」って言われても、不安になるタイプなんです。それを補填できるのは、自分がどこまで向き合ってきたか、練習してきたかになってくるんですよね。

内山 それはめちゃくちゃわかる。それでしかないよね。

井口 ね。

内山 僕もですけど、理も超心配性。

井口 超心配性。だから、世論がいいと言ってくれても全然信じられなくて。身内や超近い人に「今日の歌、よかったよ」って言ってもらえないと安心できないし、それでもまだ疑ってるところもあって。だから、すごく厄介なんですけど、練習するしかないなって思ってます。

無口で心配性というのが共通点なんですね(笑)。お二人はとても似てるように見えますが、佐々木を含む友達関係にはご自身と重なる部分もありましたか。

内山 本当に身近な友達は無理して会わなくても大丈夫な人たちなんですね。『佐々木』はそういう人たちとの時間がどれだけ大切か、そして、有意義だったかっていうものを再確認できるものだといいなと思っているんです。当たり前がどれだけ美しかったか。そういう意味では、あの関係性が全てだとは思わないですけど、劇中の4人は、自分の写し鏡のようなものかもしれない。無理して会わなくてもいいけど、無理して会った方がいいこともあるよねってことが、もしかしたら僕らにもあるのかもしれない。そう思うと、同じような気持ちなのかもしれないなと思います。

井口 大人になってみると、結構、損得勘定で仕事したりすることもあるじゃないですか。でも僕はそれが嫌なんですよ。打算的に人と付き合うって、考えが破綻しちゃってるなって。劇中の4人の、自然に会いたければ会うしっていう関係性というのは、今、自分の置かれてる状況では尊いし、ありがたいことだなって感じますね。

劇中では、高校時代から4年後の22歳、約10年後の27歳の同級生4人が描かれてます。いつ会っても当時の関係性に戻れるけど、いつ別れが来るかわからないという怖さもありますよね。

内山 そうですね。僕はKing Gunuやmilenium paradeのメンバーのファンだけど、それとは別に井口 理とはただの個人的な友達でもあって。だから、一緒にいたい時は一緒にいるし、お酒を飲みたいと思ったら飲むし、ふざけて写真撮りたいと思ったら撮る。そういう気持ちでいますよっていうことは、この映画にいっぱい詰まってると思うんですけど、<俺たちは、きっとまた会える>のキャッチコピーの裏返しも伝えたいなと思いますね。

井口 俺、うっちーが会わない間に死んじゃったとしても後悔はないよ。

あはははは。急にどういうことですか?

井口 もっと会っておけば良かったとは思わないかも。十分に濃い時間を共有したし、不思議と悔いはないかも。

内山 それくらいの気持ちで会ってるかもしれないね。もちろん悲しむだろうけど。

井口 もちろん、悲しいよ。でも、あの時会っておけば良かったとか、現時点でそういう後悔がないっていうのはいいことだなと。

内山 そう思ってる人が友達なんでしょうね。友達と呼べるのはもしかしたら後悔があんまりない人たちなんじゃないかなって思いますね。

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※賞品には内山拓也さん&井口理さんの直筆サインが入ります

応募期間

※募集期間は終了致しました。

11月25日(水)~12月2日(水)23:59


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フォトギャラリー

映画『佐々木、イン、マイマイン』

11月27日(金)新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開

監督:内山拓也
出演:藤原季節 細川 岳 萩原みのり 遊屋慎太郎 森 優作 小西桜子 三河悠冴 河合優実 井口 理 ほか
配給:パルコ

オフィシャルサイト
sasaki-in-my-mind.com

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