Interview

ジャンプ作品ならではの“神”バトルアクションで注目。TVアニメ『呪術廻戦』製作プロデューサーが作品に惚れ込む理由とは?

ジャンプ作品ならではの“神”バトルアクションで注目。TVアニメ『呪術廻戦』製作プロデューサーが作品に惚れ込む理由とは?

【TVアニメ『呪術廻戦』製作プロデューサーインタビュー・前編】

「週刊少年ジャンプ」にて連載中の人気コミック作品『呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)』(著・芥見下々)。「ジャンプ」作品らしいド派手なバトルアクション、そして少年マンガらしからぬダークな物語展開との絶妙な融合で、読み応えのある作品を欲するファンを惹きつける本作が、2020年10月より待望のTVアニメ化。これまで数々のヒット作を手掛けてきたMAPPA制作ということもあり、新たなファンも巻き込みながら、より大きな興奮を生み出しつつある。

ここでは、そんなアニメのスマッシュヒットを記念し、製作プロデューサーである東宝・松谷浩明氏にインタビュー。前編となる今回は、『呪術廻戦』アニメプロジェクトの始まりから、原作者・芥見下々先生との深い関わりまでを語ってもらった。

取材・文 / 山下達也(ジアスワークス) 構成 / 柳 雄大


凄腕のスタッフが結集して作り上げる、入魂のバトルアクション

【TVアニメ『呪術廻戦』あらすじ】

驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁(いたどりゆうじ)はごく普通の高校生活を送っていたが、ある日“呪い”に襲われた学友を救うため、特級呪物“両面宿儺(りょうめんすくな)の指”を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう。呪いである“両面宿儺”と肉体を共有することとなった虎杖は、最強の呪術師である五条 悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり……。呪いを祓うべく呪いとなった少年の、後戻りのできない壮絶な物語が廻りだす。

今回のアニメ化、原作ファンとして膨らんだ期待を遙かに上回るクオリティで毎話驚かされています。アニメファンとしては「さすがMAPPA!」と感心するばかりなのですが、今回、どういう経緯でMAPPAさんに制作を依頼することになったのでしょうか?

松谷 ありがとうございます。私はこの作品の魅力を、ダークだったりポップだったり、アツい一方ですごくクールだったり、シリアスだったりコメディだったり……そういう相反する要素が“王道“を接着剤に、渾然と、それでいて絶妙なバランスで混ざりあっているところだと思っています。そんな『呪術廻戦』をアニメ化しようと考えたとき、思い浮かんだのがMAPPAさんでした。

MAPPAさんはこれまでも数多くの素晴らしい作品を制作されていますが、良い意味で、作品ごとにスタジオの“色”が変わるという印象がありました。それは、逆にどんなジャンル・ターゲットでも原作やクリエイターごとに真摯に向き合って、作品に最も適したフォームで全力投球できる特性があるスタジオさんなのかなと思いまして、先ほどお話ししたような魅力を持つ『呪術廻戦』という作品にすごくフィットするんじゃないかと考えました。

たしかにMAPPAさんの携わった作品は『ユーリ!!! on ICE』『ゾンビランドサガ』『ドロヘドロ』など、ジャンルからターゲット層まで多岐にわたっていますよね。しかも、どれも非常にレベルが高い。

松谷 そうしたさまざまなジャンルの作品に参加してきたMAPPAのスタッフの皆さんが得てきた成功体験みたいなものが、『呪術廻戦』に活かされるのではないかという期待もありましたね。

監督に朴 性厚(パク・ソンフ)さんを起用した理由も聞かせてください。

松谷 朴監督はMAPPAさんからご推薦いただきました。この作品にはさまざまな魅力があるのですが、中でも映像にしたときに映えるのはやはりバトルアクションの部分です。これを最大限に表現できる人といったら朴監督しかいないかと。朴さんは“超スーパーアニメーター”として業界でも有名な方ですし、すでに監督経験もあります(『牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-』、『THE GOD OF HIGH SCHOOL』など)。また、現場ですごく人望があるというお話も聞いていたので、私としても異論はありませんでした。

書籍『TVアニメ 呪術廻戦 公式スタートガイド』掲載の座談会によると、現場では「朴兄(パクにい)」と慕われているそうですね。

松谷 そうなんですよ。『呪術廻戦』のようにスケールが大きく、この先も長く続けたいと考えている作品では、実はそういったこともすごく大事なことだなと思ってまして。また、実際にお会いして、クリエイターとしてだけでなく、人としての魅力にもあふれていることがよくわかりました。素敵な方だなあ、と。

朴監督が『呪術廻戦』を監督されるにあたり、こだわっているのはどんな点ですか?

松谷 全てにこだわっていただいています。原作に惚れ込んでいただいているというのが大前提としてあって、その上で、芥見先生の創られたキャラクターたちと世界観をどうやって表現しようかということを、ものすごく真摯に考えてくださっていますね。

そういった監督のこだわりが伝わってくるシーンを具体的に教えてください。

松谷 やはり元々、朴さんが得意としているアクションシーンは力が入っていますね。わかりやすい所では、第1話の後半、伏黒が階段を駆け上がって廊下を走っていくシーンでは、まるでカメラマンが画面の裏側にいて、キャラクターを追いかけ、追い越しながら撮っている、まるで実写アクション映画のような凝った見せ方をしています。

なんと、あのシーンは実写のテイストを取り入れているんですね。それはなぜですか?

松谷 原作者の芥見先生はアニメも大好きなのですが、実写映画もすごくご覧になっている方で、アニメ化に際してはそういうニュアンスも少し入れ込みたいなって話もいただいていました。もちろん、監督はアニメならではのケレン味も大事にしていて、第1話でいうと虎杖が校舎のガラスを蹴り破って飛び込んでくるシーンや、呪霊に振り回されるシーンなどはとりわけ力を入れてディレクションしています。

アクションシーンではそうした動きの素晴らしさに加えて、まるで和筆で描いたような呪霊の表現方法にも面白さを感じました。あれはどなたが考えられたんですか?

松谷 朴監督のアイデアです。呪霊という現実には存在しない、この作品ならではのおどろおどろしい何かを表現するために、撮影処理でああいった線のアウトラインを作ってもらっています。

「作家性を尊重しつつ、誰もが楽しめるエンタメにする」という重要な指針

話を少し巻き戻しますが、そもそも松谷製作プロデューサーが、どういうきっかけで『呪術廻戦』という作品を知り、アニメ化したいと考えたのか、その最初の部分もお聞きしたいです。

松谷 原作の芥見先生のことは、『東京都立呪術高等専門学校』(2017年にジャンプGIGAで短期連載されていた『呪術廻戦』の前日譚。後日、『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』として単行本化)のころから注目していました。もちろん、その翌年に週刊少年ジャンプ本誌で始まった『呪術廻戦』は最初から読んでいます。

『東京都立呪術高等専門学校』の頃からご存じというのはさすがですね! 『呪術廻戦』(原作)の第一印象はいかがでしたか?

松谷 第1話から面白かったんですが、個人的に第3話で虎杖悠仁という主人公がものすごく好きになって、そこで作品に対するテンションが一段上がったのを覚えています。その後、第8話の両面宿儺が領域展開するところでさらにボルテージが上がり、続く第15話で五条先生が漏瑚(じょうご)と戦うあのシーンを読んだ時には「もうこれは絶対にアニメ化しなきゃいけないな」と……。

その頃にはもうSNSなどでもすごく盛り上がるようになっていましたよね。ちなみに、松谷製作プロデューサーは虎杖のどういうところが「ものすごく好き」になったんですか?

松谷 「生き様で後悔はしたくない」というセリフのところですかね。ああいう気持ちのさらけ出しかたに個人的に感じ入るところがありました。

なるほど。では客観的に、製作プロデューサーという立場からは『呪術廻戦』という作品をどのように分析していますか?

松谷 生き生きとして血肉の通った魅力的なキャラクターたちと、領域展開や術式の開示といった、これまでのジャンプの遺伝子を受け継ぎつつも、新しくなによりカッコいいケレン味のあるバトルアクションを、「王道」という接着材を使ってオリジナリティのある作品に組み上げた作品だと考えています。

『呪術廻戦』は「王道」であると。

松谷 ここは少し説明が必要ですね。まず、芥見先生は以前「呪術廻戦は王道と向き合うのが目標」という言い方をされてました。これは私なりの解釈なのですが、(作家性は二の次にして)王道そのものをやるという意味ではなくて、作家性を大切にしつつ、王道=誰もが楽しめるエンタテインメントにすることに取り組んでいるという意味なんだと理解しています。この言葉は、アニメの製作現場・制作現場でも私は使ってる気がします。

原作者との密なコミュニケーションから生まれる、アニメならではのアレンジ

ここまでお話をお伺いしていて、アニメ制作の現場で原作の芥見先生の存在がとても大きいように感じました。原作者とアニメの関わりは作品ごとにまちまちですが、本作ではどのような関わり方をされているのでしょうか?

松谷 原作の週刊連載がある状況下としては、これ以上ないほどコミットしていただいています。先生自身、アニメが大好きで造詣が深いこともあり、全体の構成からシナリオ、キャラクターデザイン、キャスティングなど、さまざまなパートでお力をお借りしています。もちろん、その前提として、集英社の「少年ジャンプ」編集部やライツの担当の方々が、非常に熱意を持ってご協力くださっているからで、先生はもちろん皆様にも感謝しかありません。現場サイドもそんな芥見先生ら皆さんの期待に応えるべく猛烈にがんばってくださっていますよ。

アニメの第3話「鉄骨娘」では、この話で初登場となる釘崎野薔薇の実家時代の描写など、原作でも最近になって出てきたようなエピソードが盛り込まれていましたよね。このあたりも芥見先生からの情報提供があったということなんですか?

松谷 原則としてはその通りで、芥見先生からはアニメ化に際してたくさんの情報や設定のご提供、そしてアドバイスをいただいています。ただ、第3話に関してはちょっと違っていて。実は幼い頃の釘崎や沙織ちゃんのデザインは、アニメサイドから提案した(キャラクターデザイン担当の)平松禎史さんのデザインを先生が気に入ってくださっていたようで、原作に逆輸入されたという経緯があるんです。原作に幼少期の釘崎が登場した回の「少年ジャンプ」巻末で芥見先生が(「幼少期の釘崎は平松さんがアニメ用にデザインしてくれました!!すご~い」との旨を)コメントされているのはそういうことなんですよ。

それでは、芥見先生のご協力で描写が深まったり、変わったシーンもありますか?

松谷 数え切れないほどあります。マンガとアニメは、そもそもメディアとしての特性が大きく異なっているので、原作のコマの通りにお話を進めても、同じ印象が得られないということが起こると思うんです。大事なのは全てにおいて原作のコマをそっくりそのまま並べて映像化することではなく、原作と同じ印象・感動を持っていただくこと。ですのでシーンによっては、原作への愛とリスペクトを持ったうえで、アニメに適したアレンジが必要になるのではないかなと考えています。

具体的には、たとえば第1話の虎杖悠仁とおじいちゃんとの会話シーンですね。虎杖というキャラクターを表現するにあたって重要な場面なのですが、アニメではもう少し描写を加えないと感情移入できないかもという懸念がありました。そこで朴監督とシリーズ構成・脚本の瀬古浩司さんから芥見先生に事情を説明し、こういうかたちにアレンジすることで視聴者がより感情移入できるのではないか、と具体的なプラン案も交えてご相談させていただいたんです。

芥見先生は何と?

松谷 こちらの意図を汲み取っていただいた上で、なんとネームの形で新しいアイデアを送ってきてくださいました。実はあのシーンはそういった形で作られているんですよ。

それは原作ファンとして興奮するコミュニケーションですね。そのネーム、見てみたいです(笑)。

松谷 第3話からサプライズでスタートした「アニメじゅじゅさんぽ」もそうした取り組みの一環ですね。芥見先生の描きおろしネームをアニメ化するかたちで、本編では語られないキャラクターの日常を描いています。そのほか、芥見先生の側から「原作単行本のおまけページに描かれている要素を拾ってもらえたらうれしい」といったお話があったりして、それを瀬古さんがシナリオに落とし込んでいったというケースもあります。これから登場するキャラクターの吉野順平についても、瀬古さんが彼にまつわる描写を掘り下げています。ぜひこれからの放送をご覧になっていただければ。

(続いてのインタビュー後編は近日公開予定!)

TVアニメ『呪術廻戦』

毎週金曜日深夜1時25分~
MBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠にて放送中

【スタッフ】
原作:芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:朴 性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本 唯
美術監督:金 廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希・木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介
音楽:堤 博明・照井順政・桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:Eve「廻廻奇譚」(TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」(MASTERSIX FOUNDATION)

【キャスト】
虎杖悠仁:榎木淳弥
伏黒 恵:内田雄馬
釘崎野薔薇:瀬戸麻沙美
禪院真希:小松未可子
狗巻 棘:内山昂輝
パンダ:関 智一
七海建人:津田健次郎
伊地知潔高:岩田光央
家入硝子:遠藤 綾
夜蛾正道:黒田崇矢
五条 悟:中村悠一
東堂 葵:木村 昴
禪院真依:井上麻里奈
三輪 霞:赤﨑千夏
楽巌寺嘉伸:麦人
吉野順平:山谷祥生
夏油 傑:櫻井孝宏
漏瑚:千葉 繁
花御:田中敦子
真人:島﨑信長
両面宿儺:諏訪部順一

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

オフィシャルサイト

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