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シングルプレイ特化『オクトパストラベラー 大陸の覇者』はスマホで遊べるRPGの理想形

シングルプレイ特化『オクトパストラベラー 大陸の覇者』はスマホで遊べるRPGの理想形

2018年に発売され、「HD-2D」をコンセプトとしたドット絵調の美麗なグラフィックと奥深い戦闘システム、そして8人の主人公が織りなす多彩な物語で好評を博したNintendo Switch用RPG『オクトパストラベラー』。2019年にはPCへ移植され、2020年3月時点で売り上げはNintendo Switch版/Steam版あわせて200万本を超えるセールスを記録。JRPG好きにとっては金字塔ともいえる作品の完全新作『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(以下『オクトラ大陸の覇者』)が、10月28日にスマホ用RPGとしてサービスがスタートした。11月9日時点でプレイヤー数がすでに888万人を突破するという大ヒットを飛ばしている。

すでに各方面で高い評価を得ているが「前作をプレイしてないから敷居が高い」とか「ゲームにあまり課金したくない」という理由で敬遠している人もいるだろう。はたして『オクトラ大陸の覇者』は「前作未プレイ」でも「課金なし」でも楽しめるのか。それらの疑問に、前作にどハマりし、本作にも同じようにどっぷりハマっている「オクトラ信者」である筆者が、数々の魅力を深掘りしつつお答えしていこう。

文 / 福西輝明


総勢8人パーティでの戦闘に進化。シンプルにして戦術性の高いバトルシステム

本作の舞台となるのは、前作で8人の主人公の物語が繰り広げられる数年前のオルステラ大陸。この地には、神の力を秘めた指輪によって「富」「権力」そして「名声」を極めた3人の人間が君臨しており、プレイヤーは指輪に導かれし旅人「トラベラー」として、各地を旅しながら欲望に支配された3人の巨悪と対峙していくこととなる。ゲームスタート時に「富」「権力」「名声」3つから物語を選択すると、ルートに沿ったストーリーが展開していく。ただし、ある程度ストーリーを進めれば、他のルートのストーリーも遊べるようになるので、迷わず好みで選んでかまわない。

『オクトラ大陸の覇者』の魅力的なポイントは多々あるが、まずは筆者が前作を遊んで「これは!」と感じたバトルシステムについて触れていこう。本作の戦闘はJRPGではおなじみのターン性バトルとなっている。『オクトラ』シリーズの特筆すべき点は、「コマンドブースト」と「ブレイク」の2つを駆使したバトルだ。「コマンドブースト」はキャラクターごとに毎ターン1ずつ増えるBP(ブーストポイント)を消費することで、攻撃回数の増加や各種アビリティの強化を最大で3段階まで引き上げられるシステム。たとえば、BPを3消費すると通常攻撃の回数が4回に増えるだけでなく、攻撃や回復といった各種アビリティの効果も強化される。

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▲BPを1消費するごとに、通常攻撃やアビリティのLVが上昇。最大でBPを3消費したLV MAXのコマンドとなる。LVを引き上げるごとに通常攻撃の場合は攻撃回数が増え、攻撃系アビリティは威力の増加、回復系アビリティは回復量の増加、支援系アビリティは効果ターンの延長など、さまざまな効果がもたらされる

また、出現する敵には「シールドポイント」が設定されており、弱点となる武器や属性で攻撃されるごとにこのポイントが減少。これが0になると「ブレイク」状態となり、ブレイクしたターンと次のターンが行動不能&与えられるダメージが約2倍になる。

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▲敵の中には準備動作に1ターンを費やした後で強力なチャージ攻撃を放つ者もいる。その準備動作中にブレイクさせることができれば、チャージ攻撃の発動自体を防ぐことができる

『オクトラ』の戦闘においては、とりわけ敵をブレイクさせることが非常に重要になる。通常攻撃だけでは自分よりも格下のザコにすら効果的なダメージを与えられず、苦戦を強いられるからだ。そのため、まずは「コマンドブースト」で敵の弱点となる武器で連続攻撃を叩きこむ。そしてブレイクさせて無防備になった敵を、パーティ総員で袋叩きにするのである。戦術がうまくハマりさえすれば、格上の強敵にも互角以上にわたり合える。画面上に表示された行動順を踏まえてコマンドを吟味し、敵に攻撃させる暇を与えることなく封殺する。これが『オクトラ』シリーズのバトルの醍醐味なのだ。

バトルシステムで前作から大きく変わったのは、味方が4人編成から8人編成に増えた点。本作では前衛と後衛に隊列がわかれており、戦闘中は任意に前衛と後衛を入れ替えて戦えるようになった。たとえば、敵の弱点属性攻撃を持つメンバーで前衛を構成し、敵のシールドポイントを削る。そしてブレイクに成功したら、BPを温存していた後衛と交代してLV MAXの攻撃を叩きこむ、というように前衛と後衛を効果的に入れ替えて戦うという新たな戦術が生まれた。また、後衛にいると戦闘中はターンごとにHP(体力)やSP(アビリティの仕様に必要なポイント)が少しずつ回復していく。敵の攻撃も受けずに済むので、消耗した仲間を後衛で休ませることもできる。前作の戦闘も奥深いものだったが、本作では戦闘に参加する人数が増えたことで戦術の幅がより広がったのである。

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▲敵がブレイクするまで弱点となる武器や属性で攻撃。次のターンで、BPを温存した後衛による総攻撃をくらわせる。メインストーリーの中ボスや、道中のマップ上に配置されている「シンボルエネミー」などの強敵は、これらの戦術を駆使してようやく渡り合える

HD-2Dの美麗でノスタルジックな世界を放浪

前述のとおり、前作はスーファミ作品を思い起こさせるドット絵に、3DCGの画面効果を加えた「HD-2D」と呼ばれるグラフィックが話題を呼んだ。ここで掲載しているキャプチャ画像を見れば、「ドット絵の進化系」といえるものであることが伝わるだろう。前作で初めて触れた時は、唯一無二のビジュアルに衝撃を受けたが、スマホゲームとなった本作でもその美麗さは健在。背景の奥の方はたちこめるモヤでぼやけて見えたり、劇場のステージに差し込む光が細かいチリを浮かび上がらせたり。まるでミニチュアで作られたかのようにも見えるフィールドを歩き回るだけで、『オクトラ』独特の世界に引き込まれること請け合いだ。

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▲手前はくっきり、奥に行くほどぼやけて見える。ドット絵風なのに妙にリアルな存在感がある

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▲時折、フィールド上に立ちふさがる敵がいることがある。これは「シンボルエネミー」と呼ばれるもので、ほとんどの場合はかなりの強敵。自分から挑まなければ戦いは避けられるが、勝利すれば貴重なアイテムが入手できる

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▲フィールド上には宝箱が置いてあることもある。ただし、宝箱への道が木や坂に隠れて見えにくくなっていたり、道をシンボルエネミーがふさいでいることも

訪れた町での人々との触れ合いも、『オクトラ』の醍醐味のひとつだ。人々に話しかけると情報収集できるのは他のRPGと同様だが、画面右下の「聞き出す」コマンドが異彩を放っている。これをタップすると、そのキャラクターの意外なバックボーンが明らかになる。たとえば、街を訪れたばかりのプレイヤーにキツい口調で接してくる老婆は、じつは治安の悪い街に不慣れな旅人に注意喚起するため、あえて厳しく接していた……といった具合だ。話しかけられるキャラすべてにこうしたバックボーンが設定されており、いたるところにドラマが転がっているのを肌で感じられる。

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▲治安の悪い街で出会った強面の男。ここで幅を利かせているマフィアかと思ったら、ただのちょっと怖い顔の真面目なきこりだった……

また、街の人々にお金を払って雇って戦闘に参加させたり、所持しているアイテムをねだったり、はたまた力ずくで奪ったりすることもできる。5回失敗すると街との関係が悪くなり、それ以上はコマンドを実行できなくなってしまうが、そうなっても酒場のマスターにお金を払えば関係を改善できるし、1日1回の割合で関係性が改善。場合によっては貴重な装備品を入手できるので、臆せず挑戦してみるといい。

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▲街の人に「勝ち取る」を実行すると、所持品を賭けて戦いを挑むことができる。戦闘に勝てばアイテムを譲ってもらえるが、中には「こいつ本当にただの街の人か!?」と思うほど手強いキャラもいる

「導かれし旅人たち」は使いよう。ガチャで増えていく旅の仲間たち

前作では8人の主人公を仲間に加えることができ、それぞれの物語が描かれた。しかし、本作では課金要素である「ルビー」を消費して「聖火の導き」で旅人を導く――いわゆる「ガチャ」を引くことで、仲間が増えていく。その数は11月中旬時点で60人以上。覚えていくアビリティや能力は千差万別で、どんなキャラクターを引けるかはその時の運次第だ。ここで本作未プレイの諸兄が気になるのは「とにかく課金しないと強いキャラを仲間にできないから、十分に楽しめないのでは?」という点だろう。筆者の個人的な意見だが、声を大にしていいたい。『オクトラ大陸の覇者』は課金に縛られることなく十分楽しめる!と。

ゲーム開始直後、★4以上のキャラが確定で入手できる「聖火の導き」を無料で1回引くことができる。お目当てのキャラが引けなかった場合、ゲームデータをアンインストールして再インストールして始める、いわゆる「リセマラ」を繰り返せば最初から★5キャラを入手することが可能だ。望みのキャラを引けるまでリセマラを繰り返すのは手間がかかるが、現状で★5キャラを引くもっとも確実な方法だろう。

また、「聖火の導き」に必要なルビーは、個数は少ないものの「日替任務」や「週替任務」「初心者任務」といったクエストでも入手できるし、ゲーム開始当初は運営サイドから配布されるものだけでもそこそこガチャを引くことができた。筆者はこの記事を書いている時点でサービス開始から10日ほど遊んでいるが、同じキャラが何回かかぶりつつも、仲間の数は30人を超えている。たしかに高レアなキャラは強いが、パーティメンバー全員を★5でそろえないとクリアできない、ということはない。★4でも有用なアビリティを持つキャラは何人もいるし、メインストーリーを進めるだけならそこまで過剰な戦力は必要ない。それに、本作は「完全シングルプレイ」であることが明言されている。特定の高レアキャラを持っていないからといって、他のプレイヤーとの戦力差に悩むことがない。高レアキャラの所持は、いってしまえば「自己満足」の領域なのだ。

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▲「無理のない課金で楽しむ」というプレイスタイルの筆者にとって、限られたルビーでの導きは毎回ドキドキの瞬間。頼む! 高レアキャラよ来たれ! と念じながら画面をタップ

とはいえ、「それでも★5キャラがほしい!」という気持ちも理解できる。★5キャラはいなくてもなんとかなるが、仲間に加えることができたら強敵や高難易度のクエストに挑む際の心強い切り札となってくれるのは確実だ。そこで見逃せないのが、1日1回限定の有償ガチャ。『オクトラ大陸の覇者』では、この有償ガチャを30回引くと★5キャラが確定で当たるアイテム「歴戦の聖導印」がもらえる。しかも有償ガチャに必要なルビーは通常の1/3で済むので、実質的に10連ガチャ1回ぶんの課金で★5キャラを確定で1体もらえるのだ。約3,000円の課金で★5キャラが入手できるというのは、スマホゲームとしては破格といえる。

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▲「高レアキャラは必須ではない」とはいったものの、やはりお迎えできると格別に嬉しいもの

ちなみに、本作には「富」「権力」「名声」をテーマにした3つのメインストーリーとは別に、キャラクター個別の「トラベラーストーリー」が用意されている。こちらは登場する旅人それぞれに用意された物語となっており、クリアすることで報酬アイテムが手に入る。街で出会った旅人に話しかけることで「トラベラーストーリー」がスタートするが、楽しめるのは導入となる序章だけ。続きの物語は「聖火の導き」で仲間に加えないと解放されないようになっている。ガチャを回せばそれだけ仲間が増えて、「トラベラーストーリー」もより多く開放されるので、もし是が非でもお気に入りのキャラクターの物語を楽しみたいのなら、積極的にガチャを引くのもアリだろう。

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▲街にいる旅人に声をかけると、「トラベラーストーリー」が発生。メインストーリーとは違って、どちらかというと気楽に楽しめる箸休め的な内容が多い。ちなみに初心者狩人の少女・サニーの「序章 八つ子の旅 狩人編」には、前作の主人公のひとりであるハンイットが狩りのアドバイス役として登場。こうしたサプライズも盛り込まれている

前作を知らなくてもOK! でも前作経験者への「サービス」もバッチリ

本作は前作の物語から数年前を描いている。同じ「オルステラ大陸」を舞台にした作品ではあるが、物語に直接的なつながりは今のところない。そのため、前作の知識がまったくなくても、何も気にすることなく作品に没入できるはずだ。しかし、前作の主人公のひとりである獣使いの狩人・ハンイットが11月5日に新たな旅人として実装されるなど、前作プレイヤー垂涎の要素も盛り込まれている。

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▲12月7日まで「選ばれし旅人」での導きで出現する、前作の主人公のひとり・ハンイット。メインである弓のほか、槍または剣での物理攻撃も行えるアビリティ「リンデ呼び」を持つ。現時点では唯一無二の能力の持ち主である

あれこれ本作の魅力を語ってきたが、コンシューマゲームだった前作とほとんど変わらないクオリティの『オクトラ』を、無料で遊べてしまうこと自体が最大のセールスポイントだろう。他作品によくある「期間限定のプレイコンテンツ」も、実装する予定は今のところないという。他のプレイヤーとの競争などのわずらわされることなく、自分のペースで空いた時間にゆっくり進められる。本作はそんなコンシューマゲームならではの良さを受け継ぎつつも、新キャラやさらなるメインストーリーの開放など、スマホゲームならではの拡張性も備えた、いいとこ取りの作品なのである。

今後はプレイヤー自身が街を一から作り上げていく「名もなき町」や、通常の「討伐依頼」よりも強いシンボルエネミーに挑む「上級討伐依頼」、トーナメント方式の高難易度バトルコンテンツ「闘技大会」など、新規要素が目白押し。さらなる広がりを見せる『オクトラ大陸の覇者』の世界に引き続き注目していきたい。

なお、今回は『オクトラ』ならではシステムや魅力について紹介したが、後日ストーリーなどさらに掘り下げた記事を掲載予定だ。こちらもぜひ目を通してほしい。

フォトギャラリー

■タイトル:オクトパストラベラー 大陸の覇者
■ジャンル:シングルプレイRPG
■プラットフォーム: iOS、Android
■配信日:配信中(2020年10月28日)
■価格:無料(ゲーム内課金あり)
■メーカー:スクウェア・エニックス


『オクトパストラベラー 大陸の覇者』オフィシャルサイト
https://www.jp.square-enix.com/octopathtraveler_SP/

『オクトパストラベラー 大陸の覇者』オフィシャルTwitter
https://twitter.com/OCTOPATH_SP

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