月曜の朝を待ちわびて。~「週刊少年ジャンプ」時評~  vol. 10

Column

ジャンプの実写化作品には「ある傾向」が? 劇場版『鬼滅の刃』の大ヒットとともに考察

ジャンプの実写化作品には「ある傾向」が? 劇場版『鬼滅の刃』の大ヒットとともに考察

こんにちは! 週刊少年ジャンプ時評「月曜の朝を待ちわびて。」第10回です。今回は映画・アニメ・ドラマと、ジャンプ作品の映像化について取り上げます。よろしくお願いします!

文 / おしこまん
イラスト / かずお


劇場版『鬼滅の刃』、映画史に残る大ヒット!

本連載でも繰り返し取り上げている、『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』。10月16日(金)からの10日間の興行収入が107億5,423万2,550円、動員数は798万3,442人であると発表されました。公開から10日間での興行収入100億円超えは、日本で上映された映画の中で最も速い日数です。

筆者は公開翌日に劇場に足を運び、映画を観てきました。原作をすでに最終話まで読んでいるため大丈夫だろうとタカをくくっていたのですが、それでも終盤の怒涛の展開には息を呑み、気が付けば涙で前が見えませんでした。

10月2日(金)には、同日発売の単行本22巻の初版が370万部、累計発行部数が1億部を突破したことが発表されています。いったい、この勢いはどこまで続くのでしょう……? ジャンプで第1話が掲載された時には、こんな社会現象になるとは誰も予想していなかったと思います。「万人受けする作品ではなさそうだが、この作者にしか描けない独特の空気はあり、一部に熱狂的な支持者を生み出しそう」というのが筆者の抱いた当時の率直な感想でした。いやあ、まったく当たりませんでしたね!

わたしが言うまでもなく、おすすめの作品です。ぜひ映画館のスクリーンと音響で楽しんでください。

10月26日(月)発売のジャンプ2020年47号では、キャラクター人気投票の結果発表がありました。応募券制で個人での複数投票が難しい中、13万316票もの応募がありました。上位にはまだアニメではあまり活躍の描かれていないキャラクターがたくさんランクインしています。アニメ第2期が始まるのか、はたまた劇場版の続編が制作されるのか、まだわかりませんが、きっとここで終わりにはならないでしょう。ぜひとも最後まで見届けたいものです。

2クール放送決定! アニメ『呪術廻戦』の見どころ

前回取り上げたアニメ『呪術廻戦』ですが、第1話の放送から間もない10月5日(月)、早々に2クールにわたって放送されることが発表されました。これなら筆者の楽しみにしていたシーン(前回参照)も描かれそうです。

第1話のダイナミックなカメラワークとスピード感のあるアクションシーンや、第4話での「領域展開」の描写はまさにわたしたちファンが期待していたものを、想像を遥かに超えるクオリティーで提供してくれました。一方、日常シーンでの良い意味で肩の力の抜けた、ほのぼのとした雰囲気もうまく表現されています。エンディングムービーでの五条悟登場シーンは何度見てもクスッとしてしまいます。

筆者の肌感覚では原作ファン以外にも評価されつつあるように思いますので、この2クールでそういう人たちの心をがっつり掴んでほしいなと思います。

2021年1月から放送されるアニメのうち、ジャンプ作品としては『Dr.STONE』と『約束のネバーランド』(ともに第2期)の2作品がすでに発表されていました。ここに『呪術廻戦』が加わることとなります。

筆者イチ押し作品! 『ワールドトリガー』アニメ第2期、2021年1月スタート

上記の3作ですでに十分すぎるほど厚いラインナップですが、10月23日(金)、『ワールドトリガー』のアニメ2ndシーズンの放送開始日が解禁となりました。2021年1月9日(土)深夜1時30分よりテレビ朝日系列で放送されます。

『ワールドトリガー』はジャンプ本誌で2013年2月から2018年11月まで連載した後、同年12月からは姉妹誌である「ジャンプSQ.」に連載の場を移しています。ネイバーと呼ばれる異世界からの侵略者と対ネイバー防衛機関・ボーダーの戦いを描く、SFアクション作品です。2014年にはテレビアニメ1stシーズンが開始、2016年4月まで放送されました。

『ワールドトリガー』は筆者が最も推しているジャンプ作品です。緻密すぎる世界観やキャラクターの設定や複雑な集団戦闘をわかりやすく見せる技術など、語り始めたらキリがないのですが、それはアニメ放送開始のタイミングにとっておこうと思います。

筆者の好きなキャラクターは香取葉子と犬飼澄晴です。2ndシーズンでのふたりの活躍が今から楽しみです。

『岸辺露伴は動かない』まさかの実写ドラマ化!

荒木飛呂彦原作の『ジョジョの奇妙な冒険』。「スタンド」と呼ばれる超能力を持ったキャラクターによるバトル、という説明では収まらない、ホラーやサスペンスなどの要素もふんだんに盛り込まれた、独特の絵柄と世界観が唯一無二の存在感を放つ作品です。コミックスはこれまでに100巻以上が刊行され、累計発行部数は1億部を超えています。

そんな同作の第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場したマンガ家・岸辺露伴を主人公にしたスピンオフ『岸辺露伴は動かない』の実写ドラマ化が発表されました。2020年12月28日(月)・29日(火)・30日(水)午後10時から3夜連続、NHK総合 / BS4Kにて放送されます。

原作:荒木飛呂彦×主演:高橋一生「岸辺露伴は動かない」12/28から3夜連続放送! | お知らせ | NHKドラマ
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/437457.html

『ジョジョ』第4部は1992年から1995年にかけてジャンプ本誌で連載され、ちょうど筆者がジャンプを読み始めた時期でした。第3部までと異なり舞台が現代日本・仙台をモデルとした「杜王町」だったこともあり、まだマンガ体験の乏しかった筆者もスッと作品に入っていけました。

しかし、登場人物はみな強烈な個性の持ち主ばかり。現実と地続きのような世界観ゆえにさらに際立つその特異性に、少年時代の筆者は大いに刺激を受けました。

中でも岸辺露伴は、自分の描くマンガのリアリティを追究するためおもむろにクモの腹をナイフで切り裂き、味見までするというぶっ飛んだエピソードとともに登場し、読者に強烈なインパクトを与えました。しかし、それはただ奇をてらっての振る舞いではなく、あくまでも己の信念に従ったからこそ。どんな物事にも真正面から向かっていく、ある意味では少年マンガらしい熱さを持ったキャラクターであり、スピンオフ作品が生まれるのも納得です。ドラマで高橋一生が露伴をどんな風に演じるのか、期待しています。

ジャンプ作品の実写ドラマ化には「ある傾向」が?

実写化されたジャンプ作品には、どんなものがあるのでしょう? 映画ですと、12月には『約束のネバーランド』の公開が控えていたり、近年は『るろうに剣心』や『銀魂』のヒットなどが記憶に新しかったりしますが、ここではテレビドラマに絞って考えてみたいと思います(なお、ピックアップにあたってはジャンプ本誌に連載されていた作品に限定しました)。

ジャンプ作品の最初のドラマ化は、1970年から1971年にかけて放送された『ハレンチ学園』(原作:永井豪)です。原作はジャンプの創刊から間もない1968年11号から4年半にわたり連載されました。筆者はまだ生まれていませんが、その過激な作風にPTAからクレームがつき、大きな論争を呼んだそうです。

次にドラマ化された作品は、原作:遠崎史朗、作画:中島徳博の『アストロ球団』です。1972年から1976年にかけて連載されました。『ハレンチ学園』と連載時期こそ近いのですが、ドラマになったのは完結から約30年後の2005年です。その間に一度もジャンプ作品のドラマ化がなかったのは意外でした。

2000年代になると、マンガが原作のドラマが目立つようになります。ジャンプ作品のドラマも少しずつ増えていきますが、マンガ原作ドラマの総数が増えているため、割合としてはあまり変わっていない印象です。以下、ジャンプ創刊から現在に至るまで、テレビドラマ化したジャンプ作品をまとめました。

  • 1970年『ハレンチ学園』(連載:1968年〜1972年)
  • 2005年『アストロ球団』(連載:1972年〜1976年)
  • 2008年『ROOKIES』(連載:1998年~2003年)
  • 2009年『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(連載:1976年〜2016年)
  • 2011年『ろくでなしBLUES』(連載:1988年〜1997年)
  • 2014年『地獄先生ぬ〜べ〜』(連載:1993年〜1999年)
  • 2015年『ど根性ガエル』(連載:1970年〜1976年)
  • 2015年『デスノート』(連載:2003年~2006年)
  • 2018年『電影少女』(連載:1989年〜1992年)
  • 2018年『I”s』(連載:1997年〜2000年)
  • 2019年『べしゃり暮らし』(連載:2005年〜2006年、のちにヤングジャンプへ移籍)

こうして見てみると、どれも連載からドラマ化までに大きな開きがあるのがわかります。

全体の傾向としては、当然といえば当然なのですが、現実世界を舞台にしたものが多いですね。空を飛んだり魔法を唱えたり、魔物を倒したりはあまりしません。映画ですと、先ほど取り上げた『ジョジョ』や『BLEACH』など、超現実的なバトル作品の実写化は決して珍しくありません。ドラマと映画の違いが現れていておもしろいです。

また『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』『べしゃり暮らし』の森田まさのり、『電影少女』『I”s』の桂正和と、一度実写化された作者の別作品が再び実写化されているのが目についたのですが、現実的な作風の作者のマンガの方がドラマにはしやすいでしょうから、必然なのかも知れません(もちろん、すばらしい作品であるというのは大前提です)。

少年マンガのドラマ化というと、筆者は小・中学生時代に観ていた『金田一少年の事件簿』『サイコメトラーEIJI』『GTO』など「週刊少年マガジン」連載作品のドラマ化が真っ先に思い浮かびます。これらの作品はマンガの連載中にドラマが放送されていたので、「あのシーンがどんな風に実写になるんだろう」と楽しみにしていた記憶があります。こうして比較してみると、「マガジン」と「ジャンプ」の立ち位置や戦略、ターゲット層などの違いが見えてくるようで興味深いです。

次回は2020年のジャンプを振り返ります

ジャンプは12月第1週の発売号が新年1号となりますので、ジャンプ的にはもう年末といってもいい時期です。ということで、少し気が早いですが、次回は2020年のジャンプを振り返ってみたいと思います。本連載の第1回に書いた予想の答え合わせや、新たに2021年のジャンプの行方を占ってみようと思っています。どうぞお楽しみに!

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