Review

時代背景とウソに翻弄される『明治活劇ハイカラ流星組』日常が180度変わる大展開の快感

時代背景とウソに翻弄される『明治活劇ハイカラ流星組』日常が180度変わる大展開の快感

時は明治、帝都には人々の恨み辛みを晴らす集団がいた。彼らは“流星組”と呼ばれ、神社にある絵馬掛に頼みごとを書いておくと悪事を世間に公表したり、場合によっては殺しすら行っていたらしい……。主人公は父の死の真相を知るために、この流星組(以下、過去の流星組)と深く関わっていくことになります。甘い恋愛だけじゃなく、ときには現実的で複雑な人間関係、真実に近づくにつれてシリアスになってゆくストーリーも楽しめる『明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業-』(以下、『ハイカラ流星組』)について紹介します。

文 / みかそ


個性派揃いの仲間たちが起こす危険な化学反応

主人公”芳川 けい(名前変更可能)”は病弱な母親と長屋で暮らしており、米問屋で働きながら母親を支える日々を過ごしていました。そんな主人公の元に一着の洋服が届くことによって物語は始まります。差出人は不明。しかしそこには”これを着て今度の采緑館の夜会に参加されたし”と書かれた手紙が添えられていました。迷った末に差出人の意図を知るため洋服を身に纏い夜会に参加すると、背後から謎の男に「……お前の父の死の真相を知りたくないか?」と声を掛けられます。振り返って確認しても、すでに声を掛けてきた人物は見当たりませんでした。長屋に戻って事故死と聞いていた父の死について母親を問い詰めますが、会話中に母親が体調を崩したため詳しく聞くことができませんでした。
翌日から主人公は、徐々に隠されていた事実を知ることになります。同じ長屋に住む住人からは、父親について知ることができる場所まで連れて行こうと話を持ち掛けられます。「知れば元には戻れない」という忠告を受け入れついていくと、そこには”新しい流星組”を結成するべく4人の男性が待っているのでした。そこで主人公は、過去の流星組の初代組頭が自分の父親であること、父親は事故死ではなく誰かに殺されたということ、当時の活躍とその内容について知ることになります。主人公は真相を知るために新しい流星組に加わることを決意し、過去の流星組の意志を継ぎながら殺しは行わず人々の悩みを解決する”ハイカラ流星組”として、真相を求めながら活動することになります。激動の展開ですね。そんな主人公と心強い仲間となる5人について紹介しましょう。 
主人公である”芳川 けい”は、采緑館の夜会に参加するまで父親の名前を知ることもなく、死に疑問を持つこともなく過ごしてきた良くも悪くも素直で真っ直ぐな女の子です。母親の薬代のため、自分たちが生きていくことに一所懸命な庶民代表のような暮らしをしています。そんな彼女が動き出した途端、今までの日常が非日常へと変化します。その様子は訳のわからないところに放り出されたような不安と、わからないまま強い流れに巻き込まれていく状況がリアルに描かれています。本当のことが知りたいのに知ることができないもどかしい気持ち、誰も何も教えてくれなくて焦る気持ちをプレイしながら一緒に感じることができます。ハイカラ流星組では、主人公は依頼の選別及び下調べとしての情報収集がメインとなってきます。情報収集の際の聞き込みでは、主人公の素直ですぐに表情に出てしまう姿にハラハラしっぱなしで、プレイしながら「誰が聞いているかわからないのに声を潜めることもなく依頼対象について聞き込みして大丈夫なの!?」とひやひやしていました。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲熟慮すべきところで軽率な行動がめだつ主人公ですが、時代背景と主人公の家庭環境を考えると何かを疑ったり探ったり隠したりすることが、これまで必要なかったのだと気づきます

ハイカラ流星組の1人目は”南郷 久史”(CV:榎木淳弥)。帝都音楽学芸学校に通う予科壱年生で主人公とは同い年であり、主人公の勤め先のお坊ちゃまです。お世辞や愛想笑いとは無縁でサバサバかつズケズケと言いたいことをはっきりと言い、曲がったことが大嫌い。家族とは幼いころからつき合いが上手くいっておらず、実家を飛び出し主人公のいる長屋に住むことになります。ハイカラ流星組としては相手を捕縛したり、不正の証拠を盗んだりする実行係という少々危険な役割を担っています。どこで培ったのかわかりませんが、彼の身の軽さにも注目してください。久史は父親が過去の流星組の一員だったということもあり、対抗心からハイカラ流星組に加わります。とはいえ、過去の流星組と同じではなく自分たちに合った方法でやればいいと言う久史には、しっかりとした考えと強い意志を感じます。最初は久史の態度にムッとすることもあるかもしれませんが、主人公を馬鹿だとかそそっかしいと言いながらも彼の言っていることの正しさ、優しさ、さりげなく面倒を見てくれる姿は物語を進めるほど知ることができますよ。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲長屋の縁側でまったりする姿に憧れちゃいます! キツい物言いが多々ある久史ですが、そんなことで傷つくような主人公ではありません。ふたりのやり取りが緊張したものから徐々に親密になっていく様子を楽しんでくださいね

2人目は”守田 楓花”(CV:井口祐一)。大松屋の女形の歌舞伎役者で、生まれたときに父親で三代目の守田楓花が亡くなったため、名跡を襲名してそのまま本名としています。通常の女形は男性が女の恰好をしますが、大松屋は特別で女が女形を演じる代があり、それが四代目である楓花の特殊な環境に関与しています。祖母が厳しいため家からなかなか出してもらえず、稽古ばかりの日々に泣きながら主人公の元を訪れる楓花は、それはもう凄く可愛いんです! 主人公に対して「殿方なんてやめたほうがいいわよ。もじゃもじゃなのよ?」というセリフは、愛らしくて何度でも聞けます……。ところで、楓花を見て「突然の百合(女性同士の恋愛)ルート!?」とお思いの方、ご安心ください。序盤で楓花が男性ということはプレイヤーも察することができるようになっていますが、その経緯と理由についてはぜひ本編をプレイして確かめてくださいね。楓花は過去の流星組とは何の関係もありませんでしたが、主人公と同じく自分の父親の死について疑問を持っておりハイカラ流星組に参加することになります。お香に詳しく、相手を惑わせたり眠らせたりと用いてサポート係で活躍します。主人公と楓花の双子の妹である”守田 優花”(CV:丸山有香)との3人のやり取りはとても賑やかで、可愛らしく癒されるので必見です。 楓花のルートでは三代目の死の真相に迫ることで複雑な家庭の事情が明らかとなり、さらにその先で主人公の父親に繋がってゆくストーリーになっています。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲サバサバとした優花(左)と違い、おっとりおしとやかで世の男性をメロメロにしている楓花ですが、芯の強さも魅力のひとつ。どのスチルでも本当に可愛らしくて、攻略対象とした際はそんな楓花がどのように成長していくのか見届けてあげてください

3人目は”咲村 賢”(CV:石川界人)。銀座のはずれに店を構える咲村洋服店の店主であり、弐階をハイカラ流星組の拠点として提供してくれている頼れるテーラーです。賢がほぼ無一文の状態で横須賀から帝都にきた際、ひと月ほど主人公の長屋で世話をした経緯があり、そのときのお礼ということでさまざまなことに協力してくれます。お礼にしては度を越していることがあるため主人公も不思議に思いますが、本心を聞き出すにはかなり時間を要します。生い立ちが少々複雑で、賢ルートに入るとそのへんをたっぷりと堪能することができます。ハイカラ流星組では拠点及び衣装提供のほかにしばしば頭脳を使い、実行係も担うというオールマイティーなキャラクターです。飄々としていますが、主人公の父親の死の真相についてある程度の真実を掴んでいるひとりでもあります。賢からは何を聞き出すことができて、どのような結末が待っているのか……。年上で経済力もあって優しく頼りになる賢と、主人公がどのような関係を築いていくのか楽しんでください。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲手土産として毎回大量の野菜やお肉を長屋に持ってきてくれる賢。裁縫だけでなく、料理もできるというパーフェクトな姿を見ることができます

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲本作では全員参加のスチルが他作品に比べて多く、登場人物たちの和気あいあいとした姿や賑やかな雰囲気を感じることができるのもいいところです

4人目は”松原 銀之助”(CV:伊東健人)。高等中学校の英語講師をしており、容姿端麗で帝國壱を争うほどの秀才ながら激辛料理愛好者というギャップが魅力を倍増しています。主人公の父から課せられた大きな役目があり、それを全うしようとしているため数多の縁談を断り長屋に住み続けている、という知れば知るほど謎が深まる人物でもあります。ハイカラ流星組では主に参謀役を務めており、活動は銀之助の立案した計画に沿って実行されています。主人公に過去の流星組について教えてくれた人物で、自身も与していたひとりです。主人公の父親の死について犯人を確信しているものの証拠を探しており、それがどのようにストーリーに影響するのかも見どころ。銀之助ルートは最も重要な鍵を握るルートとなっており、さまざまなルートで謎だったことが判明する要素を多く含んでいます。ただし混乱も大きかったキャラクターで、頭のいい人の頭のなかは凡人には理解しかねます……。しかしわからないことや知らないことがたくさんあるなかで銀之助に助けられることも多いため、主人公と一緒に頭を悩ませながらぜひ攻略を進めてほしいです。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲父親の死について疑問を持ち始めた主人公に銀之助が手を差し伸べるシーン。まさにここで主人公の運命が変わりました

5人目は”中井 徳治郎”(CV:小林親弘)。主人公の長屋に黄身丸というチャウチャウ犬と共に住んでいる、寡黙で仕事熱心な人力車俥夫のお兄さん。実直かつ真面目な性格で、過去の流星組では銀之助と一緒に頼みごとを選別する仕事を行っており、ハイカラ流星組では久史と同様に実行係で活躍します。徳治郎も主人公の父親の死の真相について真実を掴んでいる、重要なひとりになります。他のルートではいまいち何を考えているのかよくわからなかった徳治郎のことが、このルートではやっとわかるようで……じつはわからなくなります。ネタバレになってしまうため詳しくは伝えられないのですが、ひとつが解決してもさらにわからないことが出てきて、何を信じたらいいのか混乱するといった感じです。とはいえ徳治郎にも複雑な生い立ちがあり、それが強く影響して今の人となりが出来上がっているのでそこにも注目して翻弄されてもらいたいと思います。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲爽やかでみんなとはちょっとズレてて不思議な雰囲気をもつ徳治郎ですが、人力車を引く姿は男らしくてとても格好いいですよね

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲徳治郎の飼っている黄身丸は、間違いなく全プレイヤーの癒しとなることでしょう

本作では攻略制限解放条件があります。つまり、初回プレイでは攻略不可能な人物がいるということです。攻略制限が設けられているキャラクターを解放するには、南郷 久史と松原 銀之助の各ENDをひとつ見る必要がありますが、攻略順は気にせずにプレイすることが可能です。主人公の目的をメインとして攻略を進めたい方は、解放条件のふたりはもちろんですが過去の流星組への関りも重要なキーとなってくるため、先に説明した登場人物紹介を参考にして進めればより一層楽しめると思います。

機能と活動が楽しい情報収集パートを遊ぶ

物語の間に差し込まれるハイカラ流星組の活動は、絵馬の依頼を決めたのち情報収集パートに移動します。帝都の町を行き来して、依頼内容について本当に困ったことや苦しんでいることが起きているのか、書かれている漠然とした依頼について何が原因でどのような事態が起こっているのかを知るため詳しい情報の収集・裏取りを行います。”語句(キーワード)”を集め、取得した語句について”聞き込み”を行うことで進行。情報収集パートでは攻略対象の好感度への影響はありませんので、いろいろな人からさまざまな情報を聞いてどのような反応があるのか楽しみましょう。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲MAPを移動することでその場所にいる人物へ移動し、会話をすることができます

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲手に入れている語句を聞くことによってさらに新たな語句を入手したり、聞き込みを完了することができます。語句を入手するとその語句がアクティブになって右上のマークも白くなり、聞き込みが完了している場合は赤色に変化します

物語を進めていると、しばしば赤文字の単語を目にすることになります。これは辞書から調べることができる単語を意味しており、辞書を活用することで言葉の意味だけではなく本作の時代背景や詳細な情報を知ることができるのでとっても役に立ちますよ。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲辞書で単語を調べると原稿用紙に表示。味わい深くて気に入ってます

ENDは、各人物に”歓喜END”と”紲(きずな)END”の2種類が用意されています。キャラクターの好感度が80以上で歓喜END、79以下で紲 ENDに分岐しているため、好感度の高い選択肢を選ぶことはもちろんですが、紲 ENDを迎えたい場合はあえて好感度が下がる選択肢を選ぶ必要も出てきます。好感度確認画面に注意して進めてください。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲好感度確認画面で各登場人物を選択すると簡単な人物紹介を見ることができるので、忘れず確認してくださいね

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲好感度が上がる選択肢の場合はエフェクトが出るのでわかりやすくなっています。画像のような”時間制限付き選択肢”の場合は、好感度アップの選択肢を選ぶと倍増するので慎重かつ素早く選ぶように心がけましょう! 選択肢を間違えてしまった場合は落ち着いてロードするか、会話履歴から戻ることもできるので安心してください

ひとりの攻略にあたりスキップ機能等を使用せずに進めると、ENDまでに10時間前後を要す大ボリュームとなっています。個別ルートはもちろんのこと共通ルートもそれなりのボリュームがあるため、周回する際には既読スキップ機能やイベントジャンプ機能がとても便利です。

明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業- WHAT's IN? tokyoレビュー

▲イベントジャンプ機能は設定から変更することができますが、既読スキップのように本編の流れも見られなくなるため好みによって使い分けるといいでしょう。未読イベントをスキップしてしまうことはありません

ENDを見たあと、”最初カラ始メル”からプレイを行うと初回では見ることができなかったイベントが発生します。すでに攻略対象選択まえのセーブを使い周回プレイをしている方は、最後となる5人目の攻略キャラクターになったら最初からプレイすることを強く……強く勧めます。また”後日談”もアクティブになるため見逃さないように気をつけてください。筆者はすべてプレイしてから後日談に気づいたため慌てて全員ぶんをプレイしましたが、できればひとり攻略するたびに後日談を確認し、最初からプレイするほうが混乱せずストーリーをより楽しめると思います。プレイしてみて筆者が感じたのは、ストーリーボリュームは大満足の量で久々にかなりの量の文章を読んだ気がしています。スチルも多く、美しく多彩な服装が目を楽しませてくれました。
ストーリー全体として伝えられることは、”プレイ中に頭のなかで整理しながら進めていても混乱する”ということです。この手探り状態を作り出したことに驚きながら、恋愛要素も各ENDの展開も納得したり予想外で驚いたりと楽しめたものの、ひとりやふたりを攻略したくらいではもやもやとした消化不良な状態が残ります。しかし各攻略対象のルートをいくつも進めることで、本当に少しずつなのですが欠落したヒントが手に入り、「これ……ここのルートでこの内容を見ないと、あの人のルートじゃ全然わからないじゃん!」みたいな納得や合致があったりします。しかし、それでも驚くことに「うーん?」という疑問が残るんです。それを最終的に解消するのが先ほども強く勧めた、最初からのプレイによって出てくるイベントや後日談なのです! 

最後の最後まで振り回されてしまった……というのがプレイ終了後の筆者の感想です。よくわからない漠然とした不安と焦りと知りたいというイライラが主人公と同じ気持ちにさせられているような気がして、これを体感させるためにこのシナリオであったのだとするともう凄いとしか言えません。各登場人物との恋愛模様も気になるところではありますが、ハイカラ流星組の活動が主人公の父親の死の真相にどのように関わってきて、どのような変化があり何が明らかとなってくるのか。はたして主人公は父親の死の真相に辿り着くことができるのでしょうか。そして真相を知った主人公は何を思い、どのような行動に出るのか……。物語の厚みに圧倒される体験、あなたも『ハイカラ流星組』をプレイして確かめてみませんか?

フォトギャラリー

■タイトル:明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業-
■発売元:アイディアファクトリー
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:明治世直し恋愛AVG
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2020年9月24日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 6,500円+税


『明治活劇ハイカラ流星組-成敗しませう、世直し稼業-』オフィシャルサイト

©2020 IDEA FACTORY/ichicolumn inc.