LIVE SHUTTLE  vol. 428

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BBHF 現実感とファンタジーが交差するストーリー性。圧倒的な音質の良さと手持ちカメラを中心にした映像。没入感に満ちたオンラインライブを振り返る

BBHF 現実感とファンタジーが交差するストーリー性。圧倒的な音質の良さと手持ちカメラを中心にした映像。没入感に満ちたオンラインライブを振り返る

BBHFが10月25日(日)にオンラインライブ『BBHF LIVE STREAMING -YOUNG MAN GOES SOUTH-』を開催した。

今年6月に行われた『mugifumi ONLINE』に続く2度目のオンライン公演は、2nd アルバム『BBHF1 -南下する青年- 』の完全再現ライブ。北から南へ南下する青年の物語を描いたコンセプトアルバムの壮大な世界観をリアルに堪能できる貴重なステージが繰り広げられた。

開演時間の20時になると、会場全体の電源が入れられ、DiGiCo(デジタルコンソール)が起動。手持ちのカメラがシールドを辿っていくと、そこにはギターを持った尾崎雄貴(Vo,G)の姿が。「氷の上にいる 安物の アイスキャンディー」(「流氷」)というフレーズからライブをスタートさせた。佐孝仁司(Ba)、尾崎和樹(Dr)による骨太のリズム、浮遊感とシャープな手触りを併せ持ったDAIKI(G)のギターが絡み合い、肉体的なバンドサウンドが出現する。メンバーそれぞれが六角形の台の上に立ち――互いに目視できるが、決して触れることができない距離が保たれている――音だけを交差させるステージ構成も印象的だ。

続く「月の靴」では、アルバム『BBHF1 -南下する青年-』の主人公“青年くん”が登場。暗闇のなかに佇み、真っ直ぐ前を見据えた視線は、“青年が南下する”物語の始まりを告げているようだった。

2019年にBird Bear Hare and FishからBBHFに改名し、2作のEP「Mirror Mirror」「Family」を発表した彼ら。今年9月にリリースされた2枚組アルバム『BBHF-南下する青年-』は、全体的なコンセプト、楽曲のアレンジ、サウンドメイクを含め、このバンドのポテンシャルが大きく飛躍した作品だ。本作の軸にあるのは、前述した通り、“南下する青年”をモチーフにした、現実感とファンタジーが交差するストーリー性。Bon Iver、The NationalなどのUSインディー系のアーティストを想起させるサウンドメイク、肉体性を増したメンバーの演奏が加わり、芸術性と身体性を併せ持った作品へと昇華されているのだ。小出祐介(Base Ball Bear)、井上竜馬(SHE’S)、福永浩平(雨のパレード)などにも絶賛された本作の魅力は、この日のライブにおいて、さらに増幅されていた。

ライブの前半(=アルバムの『上』収録曲)は、冷たさ、暗さを感じさせる楽曲が中心。DAIKIが演奏するシンセとサックス奏者の研ぎ澄まされた音を加えた「Siva」では、<暗闇こそが真実なんだ恐れずにみつめて差し出し それ自体に触れてみればいい>というフレーズが広がり、リバーブをかけたドラムと憂いを帯びた旋律が溶け合う「N30E17」では、<南へ下る 生きるために>という決意を描き出す。女性ダンサーによる演劇的なパフォーマンス、メンバーの生々しい演奏を含め、アルバムの世界観が生き生きと躍動するシーンはまさに圧巻だ。

煌びやかなギターサウンドと80’s的なビートが絡み合う「クレヨンミサイル」、Tears For Fearsを想起させるサウンドメイクとともに彩りに溢れたメロディが響く「とけない魔法」など、際立ったポップセンスを感じさせる楽曲も気持ちいい。

ライブ前半のクライマックスは「1988」。疾走感のあるビート、80’sニューウェイブの進化型とも言える音像、そして、<死ぬまで飲め 愛そのものを>というラインが融合したこの曲がもたらすカタルシスは、アルバムの軸になる曲の一つであり、この日のライブの重要なポイントだった。

“青年くん”の朗読による「南下する青年」――この曲のテーマである“関係の継続”は、アルバム全体の通奏低音だ――で「上」は終了。緑色のライトに照らされた「鳥と熊と野兎と魚」からアルバムの「下」の楽曲が演奏される。夕暮れをイメージさせる照明、歌詞の世界観を現出させるような女性ダンサーのパフォーマンスが交差する「夕日」、 女性シンガーのFurui Rihoが加わり、<認め合って 慰めあって 喜びを分かち合える>という言葉を共鳴させる「僕らの生活」、ハンドクラップとゴスペル風のコーラスが響くなか、いつの間にか傷付けあっていた“君”との関係を描いた「疲れてく」。ライブが進むにつれて、演奏の熱量が高まり、尾崎雄貴の歌も生々しさを増していく。以前は緻密なサウンドメイクを志向していたBBHFだが、アルバム『BBHF1 -南下する青年-』では明らかに肉体的のバンド感にシフトしていた。そのモードは、この日のライブでもはっきりと示されていたと思う。

穏やかなグルーヴが心地いい「君はさせてくれる」、トロピカルな雰囲気を感じさせる「フリントストーン」からライブはクライマックスへ。バウンシーなリズムと飛び跳ねるようなメロディが一つになった「YoHoHiHo」に続き、ラストは「太陽」。おおらかな解放感に溢れた演奏のなかで<僕らは太陽 だってさ はだしの痛みで 涙を流す>というラインが広がる。会場全体を煌びやかな光が照らし、“青年くん”が立ちすくむなか、ライブはエンディングを迎えた。

海外のインディーロックにもつながる音楽性、生々しい肉体性を帯びたサウンド、壮大なスケールと日常の機微を共存させた歌詞、そして、圧倒的な音質の良さと手持ちカメラを中心にした映像。現在のBBHFの世界観をたっぷりと体感できる素晴らしいステージだった。

文 / 森朋之

BBHF LIVE STREAMING -YOUNG MAN GOES SOUTH-
2020年10月25日

<SET LIST>

– OPENING –
1.流氷
2.月の靴
3.Siva
4.N30E17
5.クレヨンミサイル 
6.リテイク 
7.とけない魔法
8.1988
9.南下する青年
10.鳥と熊と野兎と魚
11.夕日
12.僕らの生活
13.疲れてく
14.君はさせてくれる
15.フリントストーン
16.YoHoHiHo 
17.太陽
– ENDING –

BBHF

2016年にチケットSOLD OUTの武道館公演を最後に活動を終了したGalileo Galilei、そのメンバーを軸に新たに結成された尾崎雄貴(Vo,G)、尾崎和樹(Dr)、佐孝仁司(B)、DAIKI(G)からなる4人組バンドBird Bear Hare and Fish。鳥と熊と野うさぎと魚という4匹の動物たちは、メンバーそれぞれのモチーフとして当てはめられている。メンバー全員が北海道出身で、札幌に拠点を置いて活動している。
2019年7月1日より、バンド名の正式な呼称をBird Bear Hare and Fishから、BBHF(ビービーエイチエフ)へと変更。
同日7月1日に配信限定EP“Mirror Mirror”をゲリラRelease。各所で話題になりiTunesのオルタナティブチャートで1位を獲得。7月2日に渋谷 hotel koeで行われたゲリラFREE LIVEには会場に入れないほど人が押し寄せた。その後「ONE MAN TOUR “Mirror Mirror”」では、ファイナルの赤坂BLITZ公演も早々にSOLD OUT。そんな中2nd EP“Family” がリリースされ、11月から全国10カ所を廻る全国ツアー「BBHF ONE MAN TOUR” FAM!FAM!FAM!”」が開催された。
2020年4月より地元北海道のラジオ局 ”AIR-G’ エフエム北海道 ” にて、レギュラーラジオ番組『BBHF Talks』をスタート。 2020年5月配信限定シングル「かけあがって」をRelease。

オフィシャルサイト
https://birdbearhareandfish.com

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