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戦いという対話を通して、犬(おとこ)たちの絆は深まっていく──舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~開幕レポート

戦いという対話を通して、犬(おとこ)たちの絆は深まっていく──舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~開幕レポート

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~が、10月22日(木)に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。
1983年〜1987年にかけて「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載された、高橋よしひろによる人気漫画「銀牙 -流れ星 銀-」を原作に、昨年、舞台「銀牙 -流れ星 銀-」〜絆編〜として初の舞台化。そして、舞台化第2弾となる本作も、初演に引き続き丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)が脚本・演出を担当し、佐奈宏紀が秋田犬の“銀”を務めるほか、初演にも出演していた坂元健児、荒木宏文、郷本直也らに加え、田鶴翔吾、川﨑優作、滝澤 諒ら新キャストにも注目が集まる。
父の仇を討つために過酷な試練を乗り越えていく主人公・銀が挑む相手は、spi演じる殺人熊の赤カブト。熱戦はもちろんのこと、仲間との絆、犬(おとこ)としての生き様を丁寧に描く作品だ。
ここでは、ゲネプロと開幕を控えたキャスト陣によるコメントをお届けする。

取材・文・撮影 / 高城つかさ


銀たちは目の前にいる相手に真正面からぶつかることをやめない

絆は、“対話”を通して深められる。そう確信させてくれる作品と出会えた。舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~は、“犬(おとこ)”たちと、殺人熊の赤カブトの戦いを描きながら、友情やそれぞれの正義など、熱い想いも込められている舞台だ。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

前作「〜絆編〜」では、熊を狩る猟犬(=熊犬)の銀(佐奈宏紀)が、父・リキ(坂元健児)の仇を討つために、人間ですら歯が立たない殺人熊の赤カブト(spi)を倒すべく、仲間集めに奔走する姿が描かれた。ベン(郷本直也)や“甲斐三兄弟”の赤虎(赤澤遼太郎)、中虎(岩城直弥)、黒虎(松井遥己)、また、赤目(荒木宏文)と出会い、絆を深め、熊犬としての能力を開花させたところで、赤カブトに殺されたと思っていたリキと再会。記憶をなくしたリキを前に、複雑な想いを抱えながらも、銀はリキが総大将を務める奥羽軍の一員になることを決意する──。
続編となる「~牙城決戦編~」では、さらなる仲間を増やすために、銀たちが四国へと向かうシーンから始まる。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

まず目を奪われたのが、四国行きを決意した銀たちが荒れ狂う海に飛び込む場面だ。必死で波をかき分ける様子に、彼らの覚悟が表れていた。きっと、少し前の銀なら、おじけづいて飛び込めなかっただろう。ベンや甲斐三兄弟など“強い犬”との出会いを経てたくましくなった銀には、目指すべき場所、赤カブトへの勝利しか見えていない。弱音を吐くことなく突き進む姿勢から“赤カブトを倒したい”“もっと強くなりたい”という想いが伝わり、冒頭から胸が熱くなった。

四国では、武蔵(川﨑優作)やビル(田鶴翔吾)、紅桜(北代高士)と出会い、皆、銀の奥底に秘めた闘志、仲間を思う気持ちに自然と共鳴して仲間に加わっていく。同時に作中では、目を病んでいるベン(郷本直也)の葛藤をはじめ、ベンに対するクロス(輝馬)の想いなど、仲間の様子もしっかりと描いている。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

一方、モス(千代田信一)とハイエナ(尾関 陸)が辿り着いた東北・陸奥で待っていたのは、“陸奥四天王”のリーダー・如月(滝澤 諒)。そこで彼らは、東北にも赤カブトの魔の手が忍び寄っていることを知る。

そして、総大将・リキの元に全国各地から再び集結した奥羽軍は、銀を筆頭に、新しく仲間に加わった武蔵やビル、如月らとともに打倒・赤カブトを誓う。いよいよ、赤カブトとの決戦の日。果たして、彼らは勝利を勝ち取ることができるのだろうか──。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

初演でも話題を呼んだが、今作でも見どころは、佐奈宏紀をはじめとした皆の“犬”として生きる姿だ。棒を伝う、階段を勢いよく駆け上る、四つん這いで走る……。舞台では、銀の飼い主であった竹田五兵衛(平川和宏)以外に人間の登場はない。そのなかであそこまで自然に“犬”の世界を表出させる作品が他にあるだろうか。照明、音響を含めて、違和感なく作品に没頭できる演出が印象的だった。

それでいて人間に通ずる感情や感覚も丁寧に描いているのが、舞台「銀牙 -流れ星 銀-」だと思う。仕草も姿勢も“犬”そのものなのだけれど、紅桜が飼い主について語る場面で、「ああ、これは“犬”の物語だった」とふとよぎるくらいで、私たち人間にまっすぐに響く部分が多い。飼い主への愛情や離れてしまう寂しさ、新しい環境へ飛び込む不安など、“犬”として舞台に立ちながら、人間ドラマも見せていく。そのバランスが見事だった。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

特にグッとくるのは、守りたいもののためなら死をもいとわないところだ。「リキ(親)の仇をとりたい」「仲間を見捨てたくない」。……銀の視点は、つねに相手を向いている。死と隣り合わせの日々のなかで、自分よりも守りたいもののために生きる彼を、本物の“おとこ”と呼ぶのだろうと思った。

彼らは、凄まじいスピードで成長していく。しかし、それぞれの信念は変わらない。何よりも強く結ばれた“絆”が印象的だ。出会いと別れを繰り返し、生と死を目の当たりにしてもなお、銀たちは目の前にいる相手に真正面からぶつかることをやめない。向き合うことで銀と仲間の絆は深まっていくし、彼ら自身の守りたいものもはっきりとしていく。“戦い”は、銀たちにとってお互いを知るための手段であり、“対話”と言い換えられるのかもしれない。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

敵として現れたが、戦いを経て仲間になったり、親子だったが師弟関係に変わったりと、関係性は少しずつ変化するけれど、彼らの絆はなくなることがない。それどころか、より強固なものとなっていく。なぜ、銀たちはしっかりとした絆で結ばれているのか。それはもしかすると、相手の本質を見つめているからなのではないか、と思った。

私たち人間は、“家族”“恋人”など名前のついた関係性によって守られている。何かモヤッとしたことがあったとしても「“家族”だから許せる」「“恋人”だから大切にできる」と、感情を関係性に当てはめてしまうこともあるだろう。そうやって無理やり納得した方が平和に過ごせるかもしれないけれど、相手の本質を見られているのかと聞かれると、すぐには頷けない。関係性が変わってしまったら、絆もなくなってしまうように思う。変わらぬ絆を信じられるほど、相手と向き合えていない。私たちには、“対話”が必要なのだ。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

ただ話すだけでは“会話”で終わってしまうけれど、“対話”は、相手や自分の本質を見つめることを指すのだと思う。犬も、人も、ひとりだけで変わっていくことはできない。つねにまわりの影響を受けているし、支えられて生きている。だからこそ、戦いはせずとも、相手を知りたいと思うこと、お互いを知ること、納得するまで向き合うことを大切にしたい、と思った。

赤カブトは、作中においては“敵”という立ち位置だけれど、もしかしたら、別の世界線では銀と赤カブトは“対話”できていたかもしれない、仲間になれたかもしれない。そう感じる台詞も残されており、最後まで我々に“絆”に関する問いを与えてくれた。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

劇中では、数ある楽曲にも注目していただきたい。奥羽軍の仲間が増えるシーンで使われる楽曲のほか、武蔵登場では土佐犬らしく「どすこい!」と歌い、見得を切る。一方で、ドーベルマンのビルは軽やかな雰囲気が特徴的だった。ときには切なく、ときにはポップに、歌い、踊る。楽曲や振付に、それぞれの個性が観客に伝わるような工夫が随所にほどこされていた。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~は、11月1日(日)まで天王洲 銀河劇場にて上演。千秋楽公演は有料LIVE配信を実施することが決定している。

どんな状況にも負けない力強さを持った最強の軍団

下記はオフィシャルにて届いたキャストたちの開幕コメント。

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ WHAT's IN? tokyoレポート

●銀 役:佐奈宏紀
銀牙、無事初日を迎えることができました!
過酷な稽古を全員で助け合い乗り切りました!
とんでもない作品が出来上がったと思います。
やっぱり何事も上を目指すには、発見と努力そして助け合いが必要で、しんどい時にこそ進化の種が見つかるものだなと改めて思いました。苦楽を共にしたこのメンバーはどんな状況にも負けない力強さを持った最強の軍団です。
このカンパニー最高。みんな大好き!
銀牙というパワーのある舞台がこのご時世に少しでも光を与えられますように。皆様の楽しみになれますように。
誰一人かけることなく千秋楽を迎えられますように!

●ベン 役:郷本直也
無事に幕を開ける事が出来るのだろうか? 最後まで誰1人欠ける事なく走り切れるのだろうか?
このご時世、そんな不安を抱えながら物作りをしている現場が殆どだと思います。我ら銀牙カンパニーも万全の態勢、対策を取りながらなんとかこの日までやってこられました。それだけでも奇跡に近い事かもしれません。
この1か月強の間、四つん這いになり滝のような汗を毎日流しながら踊り歌い叫び続けてきました。
我らの思いが無事に皆様のもとに届きますように…。
さぁ、いよいよ漢達の熱い戦いが始まります!

●赤カブト 役:spi
皆様こんにちはspiです。率直に申し上げまして、観劇後、僕は皆様に違和感を残したいと思っております。どんな違和感かと申し上げますと、それは「争いというものに対しての野性の違和感」です。我々人間は争うものだ、仕方がないと教えられてきましたが、果たしてそうなのでしょうか? 派閥と派閥がぶつかり傷つけ合う事は必然なのでしょうか? 優しい心を持った我々人間は争いに対して違和感があるはずです。そんな野性の違和感を思い出させてくれるような役回りに徹したいと思っています。楽しみにしていて下さい。

●赤目 役:荒木宏文
犬と熊の戦いを描いた舞台「銀牙」の続編が開幕出来るところまで来れた事を嬉しく思います。
この環境下でこの作品を安心して楽しんで頂けるように、細心の注意を払って参りました。
この作品は最上級に今、公演するのが難しい作品だと感じています。
それは今でも変わっていません。ではなぜやるのか。
私達は恐れて可能性を潰して出来る事がなくなっていくのを黙って見ている事は出来ない。
私達は演劇がやりたい、皆様には演劇を安心して楽しんで観て頂きたい。
この作品をやる事が、その未来の形を見つけるとても大切な一手になると思っています。
なのでこのまま、何も不安を与える事なく千秋楽を終えられるよう、公私共に必要以上に気をつけて参りますのでどうぞああたたかく見守って頂けると幸いです。応援よろしくお願いいたします。

●リキ 役:坂元健児
「舞台の幕が無事に開く」という喜びを今強く感じています。と同時に千秋楽まで走りきれるのかという不安もあります。長年、舞台をやってきて当たり前だった「始まって終わる」という事がこんなに難しくて尊い事だとは。コロナに感謝はしませんが、舞台に立つうえで大切なものを改めて思い出した気がしています。この状況の中で劇場にお越し下さるお客様、色んな理由で劇場にはお越し頂けなくても応援して下さる皆様のお陰で私たちは舞台に立てます。打倒赤カブト! 打倒コロナ!! 客席のお客様と共に闘いたいと思います!

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~

2020年10月22日(木)~11月1日(日)天王洲 銀河劇場


<千秋楽 LIVE配信>
配信媒体:スカパー!オンデマンド
配信スケジュール:
千秋楽公演
・LIVE配信:11月1日(日)12:30公演(追っかけ再生あり)
・見逃し配信:11月1日(日)18:00~11月4日(水)17:59
価格:3,700円(税込)
詳細はこちらにてご確認ください


原作:高橋よしひろ「銀牙 -流れ星 銀-」(集英社文庫コミック版)
脚本・演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
振付:辻本知彦 ※辻本知彦の「辻」の字は1点しんにょうが正式表記です。

出演:
銀 役:佐奈宏紀

ベン 役:郷本直也
ハイエナ 役:尾関 陸
赤虎 役:赤澤遼太郎
中虎 役:岩城直弥
黒虎 役:松井遥己
モス 役:千代田信一

スナイパー 役:鮎川太陽
ビル 役:田鶴翔吾
紅桜 役:北代高士
武蔵 役:川﨑優作
如月 役:滝澤 諒
クロス 役:輝馬

竹田五兵衛 役/語り:平川和宏

赤カブト 役:spi

赤目 役:荒木宏文

いっとん(KoRocK)
岡田治己
前山義貴
山﨑貴登
新井智貴(BLUE TOKYO)
有木真太郎

リキ 役:坂元健児

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@ stage_ginga)

©高橋よしひろ/集英社・舞台「銀牙 -流れ星 銀-」

舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~牙城決戦編~ DVD発売

発売日:2021年5月予定
価格:9,900円(税込)